神亡き世界の異世界征服

三丈夕六

文字の大きさ
101 / 109
ヒューメニア戦争編

第101話 迷子達へ介錯を

しおりを挟む
 俺達の元に前線のゴーレム兵が壊滅的ダメージを受けたとの情報が入った。炎と爆風が巻き上がったと聞いた時、確信した。


 レオンハルトが戦場に立ったのだと。


 デモニカ達と共に駆け付けた頃には、辺り一面は焼け野原となり、フェンリル族達は屈強な獣人達に惨殺されていた。

「あの獣人達ってヴィダルの言ってた……」

「人身売買の行き着く先。あの半狂乱の戦士達は、恐らくレオリアの村の者達だ」

「……っ!?」

 駆け出そうとするレオリアを手で制す。

「止めないで!!」

「この損害状況、前線にはレオンハルトがいるはずだ。単独で動くな」

「で、でも……僕は、僕は……!?」

 レオリアが兵士達を見つめる瞳は、悲しみの色を写していた。

 ……。

 無理もない。獣人達にとって仲間はかけがえのない存在。それが、こんな目に遭わされているのだからな。

 あの体格……子供としてさらい、何年もかけ魔素を流し続けたとしか考えられない。

「この借りはレオンハルトへ返す。だから、今は俺の言葉を聞け」

「……」

 レオリアが手の震えを抑えながら双剣から手を離す。そんな彼女を見て、デモニカが声をかける。

「レオリアよ。あの者達はもう助からぬ。助けようなどとは思うな」

「……分かってます。デモニカ様」

「我がレオンハルトを引きり出す。ヴィダルとレオリアは兵を連れてあの者達へ対処せよ」

 そう言うと、デモニカが右手に青い炎を纏わせる。


渦巻く地獄火タービナス・インフェルノ


 彼女が炎を放つと、巨大な炎の竜巻が巻き起こり、敵兵達を飲み込むように襲いかかる——。


 が。


「フレイブランド!!」


 男の声と共に、デモニカの炎が収縮していく。炎の竜巻は聖剣・・に吸い込まれ、完全に消え去った。


「前線に出て来たかデモニカぁ!!」


 聖剣を構えたレオンハルトが真っ直ぐにデモニカへと突撃する。


「行け。レオンハルトは我が」


「行くぞレオリア」
「うん!」

 戦いを繰り広げる勇者と魔王を背に、俺達は獣人達の元へと向かった。



◇◇◇

 敵兵を倒しながら戦場を駆け抜け、魔法士には精神支配をかける。支配した魔法士は魔力尽きるまで魔法攻撃をさせ、ヒューメニアの統制を乱していく。

 そして、視界の先に獣人達が映った。魔神竜の魔素で無理やり戦士とされた強化兵士。錯乱したように魔王軍を攻撃する者達が。

「レオリア。あの強化兵士達の身体能力は未知数だ。遠距離から止めをさせ」

 レオリアは何かを思うようにその目を閉じる。

「僕の仲間達。せめて苦しまずに殺してあげるよ」

 仲間達に告げるように呟くと、彼女はその瞳を開いた。


 決意に満ちた瞳を。


 レオリアが双剣を抜き、大地を駆け抜ける。


 しかし、強化兵士を目前にした所でヒューメニア兵数人が彼女の前な立ち塞がった。


「敵だ! 取り囲むぞ! 隊列を——」

「邪魔をするなぁあああああ!!」


 レオリアが回転しながら飛び上がり、兵士の体を縦に真っ二つにする。大量の血飛沫を浴びながら、レオリアが着地した。

「な!? 隊長——」

「うるさい」

 驚愕の表情を浮かべる兵士に向かい、レオリアが双剣を突き上げる。顎から脳天を貫かれた兵士は体を痙攣けいれんさせながら血を撒き散らした。

 普段の彼女からは考えられない無の表情。それをたずさえながら残る兵士達へと告げる。

「魔王軍レオリア・リベルタスの名において、立ち塞がる者は最大限の苦しみを与えて殺す。その覚悟がある者だけ向かって来い!!」

 怒りをあらわにする彼女にたじろぐ兵士達。


精神拘束メンタル・バインド


 その生まれた隙を突いて兵士達に無数の光の鎖・・・を繋ぐ。

「ぐああああぁぁぁ……」
「あ、頭が……!?」

 瞳から伸びた鎖が兵士達へと命令を下していく。


「我が側近の介錯かいしゃくに水を差すことは俺が許さん」


 眩いまでに鎖が輝き、兵士達が苦しみにのたうち回った。

「仲間が待っている。行ってやれ」

「うん」


 レオリアが双剣を構え、ゆっくりと歩いて行く。そして、うめき声を上げながら戦う強化兵士達の元へ辿り着いた。


「みんな……ごめんね」


 彼女の双剣が交差される。その内に秘めた悲しみに呼応するように、双剣クラウソラスは光を放った。


連環煌舞れんかんこうぶ


 彼女は静かにスキル名を呟く。

 その双剣から無数の斬撃が放たれる。彼女の技量が、斬撃が、クラウソラスの力によって光の刃へと変換される。その光が戦場一帯を眩く照らす。


「……ガッ」


 戦場を光の刃が駆け抜け、刃に触れた者の首を一瞬にして斬り飛ばした。

 獣人達が力無く倒れ込んでいく。

 しかし、大地へと転がった獣人達の顔には一切の苦悶の表情は無かった。


「みんな……みんな、どうか……」


 レオリアが双剣へ額を当てる。その姿は、仲間達が苦しむことなく逝けたことを願っているように見えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勝手にダンジョンを創られ魔法のある生活が始まりました

久遠 れんり
ファンタジー
別の世界からの侵略を機に地球にばらまかれた魔素、元々なかった魔素の影響を受け徐々に人間は進化をする。 魔法が使えるようになった人類。 侵略者の想像を超え人類は魔改造されていく。 カクヨム公開中。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界ランドへようこそ

来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。 中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。 26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。 勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。 同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。 ――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。 「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。 だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった! 経営者は魔族、同僚はガチの魔物。 魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活! やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。 笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。 現代×異世界×職場コメディ、開園!

主人公は高みの見物していたい

ポリ 外丸
ファンタジー
高等魔術学園に入学した主人公の新田伸。彼は大人しく高校生活を送りたいのに、友人たちが問題を持ち込んでくる。嫌々ながら巻き込まれつつ、彼は徹底的に目立たないようにやり過ごそうとする。例え相手が高校最強と呼ばれる人間だろうと、やり過ごす自信が彼にはあった。何故なら、彼こそが世界最強の魔術使いなのだから……。最強の魔術使いの高校生が、平穏な学園生活のために実力を隠しながら、迫り来る問題を解決していく物語。 ※主人公はできる限り本気を出さず、ずっと実力を誤魔化し続けます ※小説家になろう、ノベルアップ+、ノベルバ、カクヨムにも投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...