461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

文字の大きさ
4 / 302

第4話 461さん、呼び出される。

しおりを挟む
 ~探索者461ヨロイさん~


「ひぇ~ここが渋谷かぁ」

 目の前に広がるスクランブル交差点。天までのびるビル群に「109」の看板。まばらに歩いている人がかつてのにぎわいを感じさせた。しかし、それでも昔テレビで見た時よりも圧倒的に人が少ない。

「渋谷駅地下は巨大ダンジョンになってるしなぁ。当然か」

 ダンジョン周辺では抜刀が許可されてる……つまりモンスターがあふれ出ることがあるということだ。そのせいで一般人や観光客はほとんど寄り付かなくなってしまったらしい。

「その辺は北関東と変わらないんだな」

 東京だからもっと進んでるのかと思ってたぜ。


 スマホを取り出して地図アプリを見ながら進む。


「道玄坂2丁目を左折……真っ直ぐ進んでコンビニのある交差点を右に行くのか」

461ヨロイさんだ」
「オフでも鎧なのかよw」

 ん? なんかさっきからすれ違う人からチラチラ見られてるんだが? それに俺の探索者名も呼ばれてる気がするし……。


 ……この格好だしな。目立つのは当然か。気にしないでおこう。


 そもそも、どんだけ人が居ても俺の人生と関わるのなんて数人だけだし。それ以外は気にしても仕方ない。うん。そういうことにしよう。


 デカい家電量販店を越え、やたらラーメン屋が立ち並ぶ通りを進み、しばらく高そうな住宅地を歩く。


 そして地図アプリ通りにしばらく歩き続けると……指定された鍋島松濤公園なべしましょうとうこうえんに着いた。


「何あれ? 鎧?」
「怖いわねぇ……帰りましょう」


 俺の姿を見て子供を遊ばせていた母親達が足早に去っていく。


 ……。


 傷付くんだけど。


 でも仕方ないか。フルヘルムの探索たんさく用装備で歩いてるヤツがいたら警戒するよな。


 公園のベンチに座り、池を眺める。チュンチュンと聞こえる鳥の声が辺りに響いた。

「はぁ~でもなんだかのどかな所だな。巨大ダンジョンがある渋谷とは思えないぜ~」


「この辺りは富裕層が多いからな。ダンジョン管理局が特別な障壁しょうへき魔法を展開している」


 声に振り向くと、スーツ姿の女性が立っていた。長い紫の髪に羊のような角の生えた・・・・・女性……ダンジョン管理局のリレイラさんが。


「リレイラさん! 久しぶり!」

「こんな所まですまないな。隣に座っても?」


 頷くとリレイラさんがベンチに座る。彼女の長い髪がフワリと舞い、花のような香りが伝わってきた。

「懐かしい。リレイラさんは全然変わらないなぁ」

「ははっ。よく言われるよ……ヨロイ・・・君は立派になったな」

「え、そうですか? リレイラさんに言われると照れるなぁ……」

 リレイラさんが俺をマジマジと見つめる。

「鎧越しでも君の成長具合は分かるよ。鍛え上げられた肉体。3本の得物……泣きながらダンジョンに挑んでいたのが嘘みたいだ」

「やめて下さいよ恥ずかしい! ま、まぁ? ダンジョン挑み始めたばかりの頃はただの引きこもりだったし……」

「だが、努力を重ねて今に至る……だろ?」

「努力って……ただ好きなことやってただけですよ。俺、他の仕事とか全然ダメなんで」

「……そうか」

 12年前。リレイラさんはダンジョン管理局の職員として俺の担当をしてくれて、現実のダンジョンのことを色々と教えてくれた……恩のある女性だ。

 俺が東京に来たのは、彼女から久しぶりに連絡があったからだ。俺としてもずっと目標にしてたダンジョンを制覇して宙ぶらりんになっていた所だったから、彼女の「東京に来ないか?」という誘いをすぐに了承した。

「東京のダンジョンはどうだ?」

「めちゃくちゃ良かったです」

 実際、雰囲気からボスまで「らしい」ダンジョンだった。これからこんなダンジョン達に挑めると思うとワクワクするな。

「いや、東京に来るよう勧めてくれたリレイラさんには感謝してます」

「私もだな……君を呼んで本当に良かったと思うよ」

 リレイラさんが俺のヘルムを覗き込んでくる。


「12年も良く無事で……いや、ダンジョン探索者で居てくれた。そして、よく私の誘いに応じてくれたな」


 リレイラさんの瞳はどことなく悲しげだった。ダンジョン管理局の人間は守秘義務があると聞いたことがある。俺には言えない事情とかあるのかな。

 彼女は一瞬考えるような素振りをして、口を開いた。


「昨日のドラゴンゾンビだが……どうやって攻略した?」


「攻撃モーションを覚えていたからですけど?」


「そう。それが正攻法。だがな……の東京にそれができる探索者はほとんどいない。だから君を呼んだ」


「ううん? どういうことですか?」

「すぐに分かるさ。嫌でも君の周りに集まってくるよ。ダンジョン配信者達がね」

「配信者……」

「昨日会った2人……あのような者達さ」

「ああ。あの女の子と金髪の死にかけたヤツか」


 あの後大変だったよなぁ。金髪のヤツ背負ってダンジョン外まで連れ出して救護隊呼んで……外に置いてきたけど死んでないよな?

「だが、それはそれとして今日呼び出したのは……」

 リレイラさんが鞄の中からスマホを取り出す。背面に符呪エンチャントの刻印の入ったスマホを。

「新しい探索者用スマホだ。君、随分ずいぶん長いことスマホの更新してなかったろ?」

「あ、すみません。困ってないから忘れてました」

「ふふっ。君らしいな」

 スマホを起動する。俺の探索者名「461さん」と表示されて数秒後、ホーム画面が現れた。

 そこに1通の通知が入る。メールの差出人は「ダンジョン管理局」になっていた。

「これは?」

「開いてみなさい」

 メールをタップすると、合成音声がスマホから流れる。

『ダンジョン管理局東京本部に登録されました。探索者「461ヨロイさん」。全区画のダンジョンへの立ち入りを許可します』

「うお……っ!? これって……?」

「私からの推薦すいせんだ。君ならどこでも入って良い」

「嘘? マジで?」

「ああ。マジだよ」

 リレイラさんが優しく微笑んでくれる。その顔を見た瞬間、一気にテンションが上がった。


「いやったあああぁぁぁ!! これでもっと難易度高いダンジョン行けるぞ!!」


 どこがいいだろ!? いきなり高難易度の新宿ってのも違うよな……っ!? となると品川? 虎ノ門? 上野も捨てがたいな……早速後で下調べしよう!


 リレイラさんは立ち上がると視線をらした。

「あぁそれと……君の担当は私になった」

「嘘!? いや~初めての東京だからリレイラさんが担当だと心強いよ!」

 嬉しすぎて彼女の両手を持ってブンブンと振ってしまう。

「……っ!? そ、そうか。それなら……こ、今度食事にでも行こう」

「リレイラさんとなら喜んで!」

「う、うん……」

 急にオドオドするリレイラさん。彼女はスマホを確認すると、小さな声で「もう時間か……」と呟いた。

「すまない。ちょっとこの後用事があるんだ。次に挑むダンジョンが決まったら連絡してくれ」

 リレイラさんは、俺が使っていた古いスマホを受け取ると、公園を後にした。


「気心知れてる相手がサポートしてくれるなんてラッキーだな」



 ……。


 あ。


「そういや……なんでリレイラさんドラゴンゾンビやあの2人のこと知ってたんだ?」



◇◇◇

 ~ダンジョン管理局 課長 リレイラ~

 彼と別れて東京ダンジョン大学駒場キャンパスへと向かう。その大学の教授からダンジョン局へ問い合わせがあったからだ。

 本当は……もっと話したかったのだが……。

(アレ、ダンジョン管理局じゃね?)
(しっ。魔族・・に目を付けられるとまずいわよ)

 まばらに歩いていた人々が私を見てヒソヒソと声を上げる。


 聞こえているぞ。


 これだから人間・・は嫌なんだ。私達職員はただ派遣されてこの地に来ただけなんだぞ? 危害を加えるつもりも無いと言うのに。


 ……。


 でも彼は違う。成長はしても、12年前と変わらぬまま。私を普通に扱ってくれる。

 彼へ連絡するのをずっと躊躇ためらっていた。彼が変わっていたらと思うと不安で……。


 でも、今日話せて良かった。また彼の担当になれただけで私は幸せだ。


「あ、そういえば」


 ふと気になって彼から回収した古いスマホを開く。

「なぜ彼はDランクのまま・・なんだ? 彼のことだからずっとダンジョンへ潜り続けていたはずだ」

 ロックを解除し、探索者管理ファイルへと入る。

「それが私が担当していた頃のままなんて……」

 探索者の実績送信プログラムへとアクセスすると、その原因が分かった。


「ふふふ……実績送信がオフ・・になってる。本当に、彼は昔のままだな。12年もうっかりしていたのか。ふふっ」


 笑える。本当にダンジョン探索にしか興味が無いんだな。後で教えてやらないと。


「だが、そうか。やはり私の目に狂いはなかった。461ヨロイくん。君は……必要な人間だよ」


 先ほどまで感じていた胸の奥の重みは、嘘のように軽くなった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...