461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第17話 ジークリードとミナセ、六本木ヒルズを進む。

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 ~探索者ジークリード~

「はっ!」

 六本木ヒルズ内にいるモンスター達を一太刀で斬り伏せる。コウモリ型やゴブリンも目に付いたが、最も多いのはクモ型モンスター。入り口にマザースパイダーがいたように、この場所がクモの縄張りということか?

 商業施設が並ぶ通りを進み、3階を目指す。

「みんな~ちょっと配信切るね。またボス戦前に再開するから~」

〈乙~〉
〈待ってる〉
〈ミナセちゃんがんばって〉
〈再開するまで461さんの方見て来るか〉
〈ジークリードさん応援してます!〉

「はーい! また内部攻略はアーカイブで出すからね♪」

 ミナセがスマホを操作する。ドローンが動きを変え、彼女の肩付近をホバリングした。

「なぜ配信を切るんだ?」

 襲いかかる3匹の子グモをぎ払い、生き残った1体に愛剣バルムンクを突き刺す。断末魔の悲鳴と共に子クモは息絶えた。

「ちょっと話したいことがあって……っとその前に」

 ミナセが杖を構え、「物理攻撃上昇魔法インクリズ・アタック」を発動する。彼女の体が青い光を帯びる。

「ギャギャッ!!」

「ほいっと!」

 杖をクルクルと回した彼女は、背後から襲いかかったゴブリンの顔面を殴り飛ばす。

「ギャアッ!?」

 殴られたゴブリンは壁に激突し、青い血飛沫と共に動かなくなった。

「これでゆっくり話せるかなぁ?」

 ダンジョン奥へと歩きながらミナセが口を開く。

「なんでアイルちゃん達を妨害したの? ファンの子達ちょっと引いてたよ?」

 妨害? そんなつもりは毛頭無いが。

「あれは試験だ。ヨロイの実力を見る為のな」

「試験?」

「ミナセも知ってるだろ? 最近の探索者はマトモなのがいない」

 3階までやって来た所でミナセが壁に寄りかかる。先に進もうとしたが、彼女に動く気配が無いので仕方なく足を止めた。

「あ~ラルゴとかあの辺のこと言ってる? ほっとけばいいじゃん」

「この日本でマトモにモンスターと戦えるのは探索者しかいないんだぞ。ダンジョンからモンスターが溢れ出したらどうする?」

「自衛隊がいるじゃん」

「全くダメだ。ヤツらはダンジョン管理局の許可無くスキルすら使えない。だが、俺達A級は違う。己の判断で力を行使できる。俺達しか力無き人々を守ることはできない」

 考えるだけで腹が立つ。俺達のこの力は他者を守る為にあるのではないのか? 配信? 登録者数? 金? 快楽? 下らない。そんな私欲に取り憑かれた者がA級クラスに上がろうなど俺が許さない。

「A級に上がる可能性がある者は俺が見定める」

 ヤツの……鎧のドラゴンゾンビとの戦闘は確かだった。ヤツなら入り口のマザースパイダーにやられることはまずないだろう。そんな力を持ちながら……楽しいからだと? ふざけているのか。

「ジークリードの言ってることは分かるよ? でもさ、カズ君が……ジークリードがそんなこと背負わなくていいじゃん」

「……俺にはその責任がある」

 バルムンクを握り締める。

 俺の恩人。真の探索者である「彼」の武器を。


 ……。


 ダンジョンからモンスターが溢れ出すことは起こり得る。俺は12年前に……実際に襲われたことがあるから分かる。どうなるのかを。

 本来なら安全な地域のはずだった。俺の学校からダンジョンは離れていたのだから。

 しかし、その日にモンスターは現れた。日常の風景の中に。

 現れたのはボスクラス。巨大な大蛇だった。

 周囲が血に染まり、友人達はみんな死んだ。

 誰も助けてくれなかった。自衛隊も警察も……皆怯え、子供のことなんてどうでも良かったんだろう。

 だが、1人のA級探索者だけは違った。

 彼は決して強い探索者では無かった。だが、大蛇に薙ぎ払われ全身に血を滴らせながら戦ってくれた。自分の命と引き換えに俺を助けてくれた。


 戦いの後、傷だらけの彼に聞いた。なぜ助けてくれたのか。それに対して彼は消え入りそうな声で言った。


「気付いていたら体が動いていた。子供の死ぬ所は見たくなかった」と。


 ……その時俺は思ったんだ。


 彼こそ真の探索者。英雄ヒーローだと。


 ……。



 …。


「その日から俺は自分を鍛え続けた。探索者になった後は、弱き者を救う為に戦い続けて来た。俺には彼を死なせてしまった責任がある……その責任を果たすにはより多くの人々を救う他ないんだ!」


「そうだねぇ~」


 なぜかミナセが微笑みを浮かべながらこちらを見て来る。

「なんだその顔は?」

「いやぁ? その話をしてるカズくんはカッコいいな~って思って」

「そ、そんなにしていたか……?」

「3ヶ月に1回はしてるね」

「う……それは……すまなかった。だが、俺の本心なんだ」

「だから中途半端なヤツがA級に上がるのは許せないってことね。ジークリードを助けてくれた『探索者』というイメージを壊すから」

「そうだ。A級以上の探索者は世間もダンジョン探索者のイメージとして受け入れる。だからこそ俺は許せない」

 ミナセが俺の顔を真っ直ぐ見た。そして笑顔で口を開く。


「じゃ、私達もゆっくり進まないとね~」


「なぜだ?」

「このままじゃ『A級探索者の顔』であるジークリードが無名の新人を妨害・・して勝利を奪い取ったように見えるから」

「俺はそんなつもりは……っ!!」

「下手をすると殺そうとした・・・・・・と思われるかも」

「な……何……?」

 俺がアイツらを殺す? 俺はアイツに力があると思ったから……。 

 ズイっとミナセが俺の顔を覗き込む。その顔はいつもの笑顔ではなく、どことなく暗いものが宿る顔だった。

「いいカズくん? カズくんの理念は素晴らしいと思うよ? でもね、イメージは見る方が決めるの。私はカズくんのその理念が大好き。それを他人に誤解されたくないから配信してるの。君の活躍をみんなに見せる為にね」

 何も言い返すことを許さないと言った顔。正直言って、その笑顔が今まで戦ったどんなモンスターよりも恐ろしく見えた。

「だからね、次からこういうこと・・・・・・をする時はちゃんと私に相談して欲しいな?」

「あ、あぁ……気をつけるよ」

「勘違いしないでね。私はいつでもカズくんの味方だよ。だから、カズくんを馬鹿にするヤツは許せないだけ。つけ込まれるを作りたく無いだけ」

「……分かってる」

「ふふっ。じゃ、じっくりボスに向かうとしましょ~! ジークリードは鎧さんに試練を与えた。それを見届ける為にボス手前で待機していた。そういうシナリオね♪」


 ミナセは再びいつもと同じ笑顔に戻った。
 
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