461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第36話 鎧の男は許さない。

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 リレイラさんを追いかけたが、全く見つからない。おかしい……前に聞いたリレイラさんの家なら秋葉原駅から電車に乗るはずだ。なのに、なんで……。

 周囲を見渡しているとスマホが鳴る。画面にはメッセージアプリの通知、送信元はリレイラさん。一体どこにいるんだ?

 彼女とのトーク画面が表示される。そしてその1番下には表示されたのは──。

「……」

 リレイラさんがどこかで縛り付けられている画像が送信されていた。


 眠っているリレイラさん。周囲は遺跡のような……ダンジョンか?

 画像の場所がどこかを思考を巡らせていると「音声着信」と表示される。通話ボタンをタップする。俺のヘルムの中に男の声が響いた。

『探索者461だな。お前の担当魔族は預かった。1時間以内に東京ドームダンジョンに来い』

「何の真似だ」

『勧誘だよ』

 勧誘……?

『お前が素直に応じていればこのようなことにならなかったんだよ。今度は良い答えを待っているぞ』

 ブツリと消える通話。最後に聞こえた名前。九条商会……だと? 昨日の夕方に勧誘されたヤツか。

 俺を入れる為にリレイラさんを攫うなんて、そんなヤツらかよ。クソッ。あの時無理矢理でもリレイラさんを引き止めていれば。

 脳裏にリレイラさんの姿が浮かぶ。再会してもう一度担当になってくれた時の顔、少し目を逸らして、でも俺のことを信頼してくれる感じ……。

 それに、さっきのあの顔。


 ──ヨロイ君は、私のことをどう思っているの?


 


 そんなの、決まってる。



 俺は、リレイラさんと一緒に東京のダンジョン探索をすると決めた。リレイラさんもそれを喜んでくれた……。


 ……。


「対人戦。久々だな」


 九条商会……だったか。お前ら何か勘違いしてるぜ。俺は誰の指図も受けない。俺のことは俺が決める。


 俺から大事な物を奪おうって言うなら……。


 俺は、急いでリレイラさんと見たショップへ向かった。


◇◇◇


 ──東京ドームダンジョン周辺。


 急いで秋葉原で対人用装備を整え総武線に飛び乗り、秋葉原駅から二駅先の水道橋駅へ。直結の西口ではなく、東口で降りて迂回して行く。すれ違う人にチラチラと見られるが、無視して先を急いだ。

 大通りの交差点を越えた先にはダンジョン周辺地域を表す看板。それに比例するように一気に人が少なくなった。すっかり暗くなった周囲と、人のいないダンジョン周辺は不気味なほどの静けさに支配されていた。


 信号を渡り、東京ドームへ。物陰を移動しながらダンジョンを目指すと、背が低い男と高い男、2人の黒服が見回りをしているのが見えた。懐中電灯片手に何か話をしている。


「つか鳴石さんはなんであの野郎が気に入ってるんだろうなぁ? 言ってもD級なんだろ?」

「九条様がアイツのことを気に入ったらしいぜ。鳴石さんも出世する為に必死だよなぁ」


 周囲に気を配ってもいない……素人か。これなら巣を守るゴブリン達のがマシだな。

 2人に聞こえるようにワザと鎧の音を立てる。ガシャリという音が周囲に響いた。

「おい。なんか音がしなかったか?」

「み、見に行くか。お前は向こうから回り込め」

 2人がこちらに向かって来るのを確認した後、探索魔法「消音魔法ミュート」を発動。自分の体が淡く紫に光ったのを確認し、その場を後にする。先程自分が隠れていた壁が見える位置へと移動し、隙を伺う。


「……何もいねぇ」
「ビビらせんなよなぁ」


 男達が懐中電灯を壁へと向けた瞬間、全力で走る。消音魔法の効果と夜の暗闇で俺に気付いている様子は無い。

 背の高い男に飛びかかり、ショップで購入した「ショックホーネットの針」を首筋に刺す。

 ジワリと浮かぶ赤い色。その直後、背の高い男は悲鳴のような声を上げた。


「ぎああああ゛ぁっ!?」


 ショックホーネットの針には、触れた者の全身に麻痺成分を流し込む効果を持つ。その効果によって男は痙攣しながら虚空を見つめた。目は開いているが意識は無い。予想通りの性能だな。

「お、おい!? 何が──」

 もう一方の男がこちらへ懐中電灯の光を向ける前に殴り付け、首筋にナイフを押し当てる。

「お、お前……」

「何人でこのダンジョンに来た? 警備の人数は? お前達が捕らえたには何人が付いている?」

「そ、そんなの言える訳」

「じゃ、拷問・・して吐かせるしかないな」

「え、え?」

 極力声を抑える。北関東でもアイテム狙いの人間に襲われることはあった。相手に情報を吐かせるにはこれ・・が1番効く。

「ゴブリンのは素材として高く売れるんだ。剥がす為にはナイフを駆使して慎重に肉から皮を引き剥がす。ここで焦ったりすると皮が切れて価値が無くなるからな。だから、慎重に・・・少しずつ・・・・。仮に相手が生きていようが一切の躊躇ためらいなく、ナイフで皮を削がなきゃいけない」

 ナイフで男の頬をなぞる。

「ひっ……」

 男が悲鳴を上げそうになるのを口を押さえて黙らせる。その眼前にハッキリと見えるようにナイフの刀身を見せた。夜空の雲の隙間から、月明かりが差し込む。その光が反射しナイフの刀身がギラリと光る。


「ゴブリンにできるっつーことは人間・・にもできるんだよ俺は。意味、分かるよな?」


 コクコクと頷く小柄な男。男のベルトを外し、両腕を後ろに回す。暴れないことを確認してからその両腕をベルトで縛り上げた。

「言え」

「ど、ドーム周辺に4人……女の周辺に3人と……鳴石なるいしさんが……」

「どうして俺に執着する?」

「い、言ったら殺される」

「へぇ」

 男の喉元に再びナイフを当てる。男の表情が恐怖に固まり、おずおずと話し出した。

「な、鳴石さんは九条商会の……幹部の1人、だ。六本木の映像を見たボスがアンタを気に入ったから、それで……」

 そういや、さっき出世がどうとか言っていたな。俺とリレイラさんを巻き込みやがって。

「……鳴石の武器は槍か?」

「そ、そうだ……」

「探索者ランクは?」

「び、B……」

 Bランクの槍使い……槍系の技に全振りしていたとしたら、奥義まで到達していてもおかしく無いな。

 ……槍使い。昔戦ったボス「漆黒騎士」のモーションを頼りに対応できるか。アイツは槍系奥義まで使って来るボスだったからな。


「お前は用済みだな」

「ひっ!? 殺さな」

 男の首筋にショックホーネットの針を突き刺す。

「ヒギィッ!?」

 先ほどの男と同じように痙攣した男は、泡を吹いて気絶した。

 鳴石……槍使いか。俺の剣とは間合いが違う。タイマンに持ち込まないとキツイかもな。護衛から潰して行くか。

 リレイラさん……もう少し待っててくれ。


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