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第69話 聖剣を守る魔物
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リレイラさんと一緒に中野ブロードウェイの2階へ降りる。探索者で賑わう狭い通路、そこを進んで行くと、喫茶店の隣に教えて貰った「伊達鑑定店」の看板があった。入口には筋骨隆々の探索者が1人。黒くゴテゴテした鎧、背中にバカでかい大剣……警備か?
「ん? アイツ……」
「知ってるんですかリレイラさん?」
「いや、見たことあるような気がしただけだ。中に入ろう」
その男の横を通り抜け店の中へ。
中へ入ると、奥でふくよかな男性がアイテムを覗き込んでいるのが目に入った。あまりの真剣さに声をかけていいか迷っていると、彼が俺とリレイラさんに気付く。そして商売人らしい愛想のいい笑いを浮かべた。
「お、管理局の方かね? 話は聞いてるよ。入って」
店の中に設置してあった革製のチェアに案内される。そこへ座ると男性が名刺を差し出した。
「私があの剣を鑑定した伊達だ」
名刺を見ると「なんでも鑑定魔法 伊達鑑定店」と書かれていた。
「へぇ。鑑定魔法で商売してんのか」
「そう! 鑑定魔法は優先して取得する者が少ないだろ? しかも、このブロードウェイはスキルや魔法使い放題。アイテムを単純に売るヤツらなんてセンス無いね。商売人ならその大元をガチっと押さえなければ! ああ管理局のお姉さん。私はちゃんと亜沙山一家に許可を得て商売してますよ! もし違反だなんだと言うなら彼らに」
「待て待て待て! そんなに一気に話されても困る! 私達はあの剣のことを知りたいだけだ!」
伊達があまりに早口で話すからか、リレイラさんは慌てて言葉を遮った。このオッサン……話し出したら止まらなそうだな。極力本題以外の話は振らないようにしよう。
「むむむ……それなら良かった。あの剣か。そう、アレは3日前。瑠璃愛嬢に頼まれダンジョンへと入った私はあの剣を見つけた。キラリと光る宝石に周囲を漂う神聖なオーラ。一目で確信したね、アレが希少な一振りだと」
「あ、ああ。そうだな……それでその剣を奪ったモンスターというのは」
「あ~! アレはもうねぇ……ビックリしましたよ! 黒い皮膚にデカい口! 全長10メートルはあったか? あんなモンスター私の探索者人生で遭遇したこと無い! 怖いね~! 口から火炎弾吐いて来るしな! ありゃあ一歩間違えてたら死んでたよ! 鑑定終えて持ち帰ろうとしたらいきなり現れてさぁ!」
「わ、分かった! これだけ答えてくれ! ソイツはどんな姿をしていた?」
「蛇だね~アレは」
蛇? 全長10メートルの蛇型。だが黒い体に火球を吐くのか。
リレイラさんを見ると、彼女は考え込むように腕を組んだ。俺も見た事無いな。戦ったことがあるのは白か緑……それに主体とする攻撃は締め付けや毒だ。火炎弾は流石に無かった。
リレイラさんは腕を組んで考え込むと、ハッとした顔でこちらを見た。
「……思い出した。それはナーガレイズだ」
「ナーガレイズ?」
「火山地帯に生息する大蛇だ。毒を精製する器官が変化し、発火物質を体内で作るようになった種。威嚇の後、敵が引かなければ火炎弾で攻撃すると聞いたことがある」
ナーガレイズ……話を聞く限りじゃ習性なんかは蛇型と共通みたいだな。
「リレイラさん、そのモンスターの火炎弾は反射可能ですか?」
「この世界の物理概念と我らの世界の概念は微妙に異なっている。モンスターの火炎弾ならば反射できるだろう」
「よし。ならここでショートソードに符呪してもらうか。ここなら符呪専門店くらいあるだろうし。なぁ伊達さん」
「私の知り合いで符呪をやってるヤツがいる。話を付けてやろう。君、ランクは?」
「Cだけど?」
ランクを言った瞬間、伊達はあからさまに顔をしかめた。
「C!? Cランクくらいで勝てるのかねぇ~! B級の護衛を付けても無理だった大蛇に!! 瑠璃愛嬢もなんだってこんなヤツに……」
何かをブツブツ言いながら、スマホを取り出す伊達。先程までとの態度と大違いだ。現金なヤツだなぁ。
電話が繋がった瞬間、彼は一層甲高い声で話し出した。
「ああ私だ。急ぎの客1人頼む……え? 忙しい? バカ言ってんじゃないよ! 瑠璃愛嬢のお客様だぞ!」
スマホ越しにガヤガヤと捲し立てる伊達。なんか商売人感あるな。
などと考えてその様子を見ていると、いつの間にか俺達の背後に先程のデカい剣を持った探索者が立っていた。
「すまんな。そのおっさん、ダンジョン配信見ない人なんや」
なんだか妙なイントネーション。それが関西弁だと気付いたのは数秒遅れてからだった。
リレイラさんも珍しそうに後ろの男を見る。男は照れるように短い髪をワシャワシャと掻いた。結構若いな。ジークと同じくらいか?
「失礼な! 私だって探索者の端くれ! S級の鯱女王やA級のジークリードとかは知っているぞ!」
「あんなぁオッサン……ここにいる人を誰だと」
「ええい鬱陶しい! そんなことはどうでもいい! サボってないで早く持ち場に戻らんか!」
「はぁ……ま、後で恥でもかけばええわ」
「なんだ武史その態度は?」
武史と呼ばれた男はため息を吐いた。しかし変わった話し方だな。関西弁ともまたイントネーションが違う気が……。
「え、な⚪︎J語……?」
「違う! 俺のは三重弁や! 一緒にせんといてくれ!」
リレイラさんの一言に烈火の如く怒り出す武史。よく聞こえなかったが今の言葉は怒らせるほどの物だったのか?
「リレイラさん、今なんて言ったんですか?」
「あああああいいいいや!! 気にしないでくれ! うん!」
なんでリレイラさん慌ててるんだ?
リレイラさんは慌てて武史に謝ると、伊達の方へ話を振った。
「コホン! それで伊達さん。符呪の方はどうだった?」
「それがなぁ、今日は仕事が立て込んでいるらしいんだ。明日の朝までには仕上げると言っているんだが……1日待つか?」
壁に掛けてある時計を見る。今は16時……元々予定になかった探索だ。できれば万全の状態がいいだろう。
どうする? 一度帰るか? でもなぁ、秋葉原に戻って準備して……ギリギリか? アキバの連中、店畳むの早すぎるんだよなぁ。
せっかくなら今日の空いた時間で準備を整えたい。そうするとアイテム抱えて電車に? うぅんそれも面倒だな……。
「なぁ、この辺りに宿はあるか?」
「あるで。オレが止まっとるビジホが近いわ」
宿があるならここに泊まっていくのも手だな。それなら早朝すぐに剣を受け取ってダンジョンに挑める。いやしかし、リレイラさんを1人で帰らせる訳には……何かあったら大変だしな。うぅん……。
「いや、やっぱり帰──」
「と、泊まって……行こう」
リレイラさんが俺の顔を上目遣いで見た。頬は少し赤くなり、俺と目が合うとキョロキョロと目を彷徨わせる彼女。そんな姿に思わず面食らってしまう。
(む、無理に泊まらなくていいですよ?)
(と、泊まっていく。ここなら道具も揃う。準備もできるし、それにお、同じ部屋にすれば就寝までダンジョンの打ち合わせができるじゃないか?)
(お、同じ部屋!? それはちょっと……)
(だ、ダメなのか? 前にヨロイ君の部屋に泊まったじゃないか)
(あの時とは状況が……)
(ほ、ほら……何かと物騒だし私としてはヨロイ君と一緒だと安心というか)
(なら帰った方が……)
(泊まって行く。泊まりたいの……っ!)
リレイラさん……おどおどしてるが、絶対に譲らないという意思が伝わって来る。これは……俺に選択肢は無いな……。
「何をコソコソ話してるんやアンタら?」
武史が呆れたような顔でこちらを見ていた。
……。
こうして、俺達は中野に一泊する事になった。準備をして、リレイラさんと打ち合わせ。明日の朝には剣を受け取り案内役の武史と俺がダンジョンに挑む。そういう段取りで。
「ふ、ふふふ……やったぞ……」
リレイラさんはポツリと呟いた。
「ん? アイツ……」
「知ってるんですかリレイラさん?」
「いや、見たことあるような気がしただけだ。中に入ろう」
その男の横を通り抜け店の中へ。
中へ入ると、奥でふくよかな男性がアイテムを覗き込んでいるのが目に入った。あまりの真剣さに声をかけていいか迷っていると、彼が俺とリレイラさんに気付く。そして商売人らしい愛想のいい笑いを浮かべた。
「お、管理局の方かね? 話は聞いてるよ。入って」
店の中に設置してあった革製のチェアに案内される。そこへ座ると男性が名刺を差し出した。
「私があの剣を鑑定した伊達だ」
名刺を見ると「なんでも鑑定魔法 伊達鑑定店」と書かれていた。
「へぇ。鑑定魔法で商売してんのか」
「そう! 鑑定魔法は優先して取得する者が少ないだろ? しかも、このブロードウェイはスキルや魔法使い放題。アイテムを単純に売るヤツらなんてセンス無いね。商売人ならその大元をガチっと押さえなければ! ああ管理局のお姉さん。私はちゃんと亜沙山一家に許可を得て商売してますよ! もし違反だなんだと言うなら彼らに」
「待て待て待て! そんなに一気に話されても困る! 私達はあの剣のことを知りたいだけだ!」
伊達があまりに早口で話すからか、リレイラさんは慌てて言葉を遮った。このオッサン……話し出したら止まらなそうだな。極力本題以外の話は振らないようにしよう。
「むむむ……それなら良かった。あの剣か。そう、アレは3日前。瑠璃愛嬢に頼まれダンジョンへと入った私はあの剣を見つけた。キラリと光る宝石に周囲を漂う神聖なオーラ。一目で確信したね、アレが希少な一振りだと」
「あ、ああ。そうだな……それでその剣を奪ったモンスターというのは」
「あ~! アレはもうねぇ……ビックリしましたよ! 黒い皮膚にデカい口! 全長10メートルはあったか? あんなモンスター私の探索者人生で遭遇したこと無い! 怖いね~! 口から火炎弾吐いて来るしな! ありゃあ一歩間違えてたら死んでたよ! 鑑定終えて持ち帰ろうとしたらいきなり現れてさぁ!」
「わ、分かった! これだけ答えてくれ! ソイツはどんな姿をしていた?」
「蛇だね~アレは」
蛇? 全長10メートルの蛇型。だが黒い体に火球を吐くのか。
リレイラさんを見ると、彼女は考え込むように腕を組んだ。俺も見た事無いな。戦ったことがあるのは白か緑……それに主体とする攻撃は締め付けや毒だ。火炎弾は流石に無かった。
リレイラさんは腕を組んで考え込むと、ハッとした顔でこちらを見た。
「……思い出した。それはナーガレイズだ」
「ナーガレイズ?」
「火山地帯に生息する大蛇だ。毒を精製する器官が変化し、発火物質を体内で作るようになった種。威嚇の後、敵が引かなければ火炎弾で攻撃すると聞いたことがある」
ナーガレイズ……話を聞く限りじゃ習性なんかは蛇型と共通みたいだな。
「リレイラさん、そのモンスターの火炎弾は反射可能ですか?」
「この世界の物理概念と我らの世界の概念は微妙に異なっている。モンスターの火炎弾ならば反射できるだろう」
「よし。ならここでショートソードに符呪してもらうか。ここなら符呪専門店くらいあるだろうし。なぁ伊達さん」
「私の知り合いで符呪をやってるヤツがいる。話を付けてやろう。君、ランクは?」
「Cだけど?」
ランクを言った瞬間、伊達はあからさまに顔をしかめた。
「C!? Cランクくらいで勝てるのかねぇ~! B級の護衛を付けても無理だった大蛇に!! 瑠璃愛嬢もなんだってこんなヤツに……」
何かをブツブツ言いながら、スマホを取り出す伊達。先程までとの態度と大違いだ。現金なヤツだなぁ。
電話が繋がった瞬間、彼は一層甲高い声で話し出した。
「ああ私だ。急ぎの客1人頼む……え? 忙しい? バカ言ってんじゃないよ! 瑠璃愛嬢のお客様だぞ!」
スマホ越しにガヤガヤと捲し立てる伊達。なんか商売人感あるな。
などと考えてその様子を見ていると、いつの間にか俺達の背後に先程のデカい剣を持った探索者が立っていた。
「すまんな。そのおっさん、ダンジョン配信見ない人なんや」
なんだか妙なイントネーション。それが関西弁だと気付いたのは数秒遅れてからだった。
リレイラさんも珍しそうに後ろの男を見る。男は照れるように短い髪をワシャワシャと掻いた。結構若いな。ジークと同じくらいか?
「失礼な! 私だって探索者の端くれ! S級の鯱女王やA級のジークリードとかは知っているぞ!」
「あんなぁオッサン……ここにいる人を誰だと」
「ええい鬱陶しい! そんなことはどうでもいい! サボってないで早く持ち場に戻らんか!」
「はぁ……ま、後で恥でもかけばええわ」
「なんだ武史その態度は?」
武史と呼ばれた男はため息を吐いた。しかし変わった話し方だな。関西弁ともまたイントネーションが違う気が……。
「え、な⚪︎J語……?」
「違う! 俺のは三重弁や! 一緒にせんといてくれ!」
リレイラさんの一言に烈火の如く怒り出す武史。よく聞こえなかったが今の言葉は怒らせるほどの物だったのか?
「リレイラさん、今なんて言ったんですか?」
「あああああいいいいや!! 気にしないでくれ! うん!」
なんでリレイラさん慌ててるんだ?
リレイラさんは慌てて武史に謝ると、伊達の方へ話を振った。
「コホン! それで伊達さん。符呪の方はどうだった?」
「それがなぁ、今日は仕事が立て込んでいるらしいんだ。明日の朝までには仕上げると言っているんだが……1日待つか?」
壁に掛けてある時計を見る。今は16時……元々予定になかった探索だ。できれば万全の状態がいいだろう。
どうする? 一度帰るか? でもなぁ、秋葉原に戻って準備して……ギリギリか? アキバの連中、店畳むの早すぎるんだよなぁ。
せっかくなら今日の空いた時間で準備を整えたい。そうするとアイテム抱えて電車に? うぅんそれも面倒だな……。
「なぁ、この辺りに宿はあるか?」
「あるで。オレが止まっとるビジホが近いわ」
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「いや、やっぱり帰──」
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(む、無理に泊まらなくていいですよ?)
(と、泊まっていく。ここなら道具も揃う。準備もできるし、それにお、同じ部屋にすれば就寝までダンジョンの打ち合わせができるじゃないか?)
(お、同じ部屋!? それはちょっと……)
(だ、ダメなのか? 前にヨロイ君の部屋に泊まったじゃないか)
(あの時とは状況が……)
(ほ、ほら……何かと物騒だし私としてはヨロイ君と一緒だと安心というか)
(なら帰った方が……)
(泊まって行く。泊まりたいの……っ!)
リレイラさん……おどおどしてるが、絶対に譲らないという意思が伝わって来る。これは……俺に選択肢は無いな……。
「何をコソコソ話してるんやアンタら?」
武史が呆れたような顔でこちらを見ていた。
……。
こうして、俺達は中野に一泊する事になった。準備をして、リレイラさんと打ち合わせ。明日の朝には剣を受け取り案内役の武史と俺がダンジョンに挑む。そういう段取りで。
「ふ、ふふふ……やったぞ……」
リレイラさんはポツリと呟いた。
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