461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第74話 違和感

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 武史がドローンに配信終了を告げる。それを横目に地面に転がる剣……聖剣アスカルオを手に取った。

 赤い宝石の仕込まれた鞘から剣を抜く。あらわになる刀身。そこに刻まれた異世界文字の1つ1つが脈打つように光を放つ。確かに、こんな刀身は見たことがない……普通の剣じゃないな。

 その剣へ鑑定魔法アプレイザルを発動すると、脳裏に映像が浮かび上がる。戦闘の様子だな、これは。


 ──黄金の3つ首竜……これがリレイラさんの言っていたイァク・ザァドか。竜から放たれる電撃、空中へ飛び上がった剣士がアスカルオで電撃を受け止める。しかし、彼は感電する事なく剣を振い、刀身に蓄積された電撃を相手へと撃ち返した。


 これが……聖剣アスカルオの能力。雷返し? それとも魔法剣の類いか……後でリレイラさんにこの剣にまつわる伝説を聞いてみるか。

「じゃ、早速帰るか……って武史? 何やってんだ?」

 振り返ると武史が息絶えたナーガレイズの腹をさばいていた。

「ん? あ、あぁ……いや、はは! 珍しいモンスターやったから素材売れるかと思ったんや! ほら、金策は大事やろ?」


 金策?


 ……。


 確かに。


 ここクリアするのに符呪エンチャントまでしたしな。アイテムも含めたら12万以上かかったし……。


「そうだな。俺も素材貰っていいか? メリカリで高値が付くかも」

「お、何やヨッさんメリカリ民やったんか?」

「取引楽だからな。俺も捌くの手伝うぜ」

 この後、武史と2人でナーガレイズを捌いて素材を収集した。

 ヤツの血で全身真っ赤に染まった俺達。エレベーターでブロードウェイ商業地区に戻ると周囲は大パニックに陥り、亜沙山一家のルリア達が血相を変えて飛び出して来た。

 ナーガレイズを捌いたことを伝えると、ルリアの大人しい顔が般若のような形相に変わり、延々と説教を喰らう羽目になった。帰って来る前にちゃんと拭うなりしろと。それか、血塗れで人前に出る前に連絡しろと。


 小学生女児に社会性について説教される俺達……。


 なんか理不尽だ。


 ……。



 …。



 騒動も落ち着き、ルリアや伊達達と剣が本物かを確認した後、聖剣アスカルオを受け取った。

「ではリレイラ様、ヨロイ様、アスカルオをよろしくお願い致します」

 ルリア嬢がうやうやしく頭を下げる。優雅な動き、ホント、子供とは思えないな。

 リレイラさんが、ルリアと目線を合わすようにしゃがみ込む。

「ありがとう。シィーリア部長にもルリアさんの事を伝えておくよ」

「はい。ハンターシティを楽しみにしておりますとお伝え下さい」

 
 ハンターシティ?

 疑問に思っていると、武史が肩を叩いて来る。

「なんや? ヨッさんは出やんのかいな。池袋ハンターシティ」

「なんだそれ?」

「街丸ごと使う狩イベイベントやで。俺もそれに参加する為に東京に来たんや」

 狩りイベ? 狩りするのか? 街丸ごと使って。

 想像した瞬間、急激にテンションが上がって来る。どんな風になるのか想像も付かない。ダンジョンに挑む時に似たような未知への探求心、それが体の奥底からフツフツと湧き上がって来た。

「何だよその楽しそうなイベントは!」

「お、やる気やないか。楽しみにしてるで!」

 武史が色々と教えてくれる。チームでも参加できるらしい。後でアイルにも教えてやらねぇとな。

「ふふっ。登録申請が開始されたら伝えようと思っていたが、そうやって喜んで貰えると私としても嬉しいよ」

 隣で笑うリレイラさん。聞けばもうすぐ登録開始日。イベント1ヶ月前から登録が開始されるらしい。今からなら準備期間はたっぷりある、楽しみだなぁ。

「あ、そうそう。ほれ。これヨッさんの分や」

 武史が封筒を差し出して来る。妙に厚みのある封筒。なんだこれ?

「投げ銭貰ったからな」

「マジかよ……って12万も? こんなに貰っていいのか?」

「ええで。ほとんどヨッさんのおかげやし。俺は配信の収益もあるしな。視聴者のみんなも許してくれるやろ!」

 ケラケラ笑う武史。アイルも俺に分配してくれてるけど……1回の配信でこんなに投げ銭っていうの稼ぐのヤバすぎるだろ。探索者より儲かるんじゃないか?

 ……あれ?

 こんなに儲かったのならなんで武史はナーガレイズの素材収集なんてしたんだ?

「どうしたヨッさん? 俺の顔になんか付いとるか?」

 不思議そうに首を傾げる武史。……装備類揃えるのに金かかったかもしれないしな。まぁいいか。

「じゃ、またハンターシティでな。今度はライバルやで!」

 こうして、俺達はルリア達に見送られながら中野ブロードウェイを後にした。




◇◇◇


 中野駅まで戻って来て、布で包まれたアスカルオを抱える腕に力を込める。後はこれを管理局へ届けるだけ。だがレアアイテムだしな、これを狙うヤツも出て来るかも。完全に終わるまで気は抜けないな。

「はぁ……」

 ため息に振り返ると、なぜかリレイラさんがやつれているように見えた。

「どうしたんですか?」

「はは……いや、何というか……高カロリーな物を摂取してしまったというか、すごい配信を見てしまったというか……それを思い出して……すまない」

 高カロリー? 最後の方はなんて言ったかよく聞こえなかったな。


「うん……まぁ、ヨロイ君は気にしなくて大丈夫」

 なんか、せっかく任務終わったのに元気無いな。さっきまではルリアの前だから耐えていたのかも。

 うぅん……昨日もリレイラさん涙目だったしなぁ。

 彼女が悲しそうにしていると胸の奥がズンと重たいような気分になってしまう。

「あの……」

「どうしたんだヨロイ君?」

「リレイラさんが良かったら、ですけど……管理局にこれ届けたら甘い物でも食べに行きません?」

 甘い物? おいおい……励まそうとしてなんて典型的なセリフ言うんだよ……恋愛レベル1かよ。

 今度はこちらがため息を吐きそうになってしまう。しかし仕方ない。俺は経験したことしかできない。女性を喜ばせることなんて、漫画やゲームの決まり文句しか知らないし……。

 しかし、リレイラさんはバカにするどころか、パッと顔を明るくさせた。

「本当に!?」

 少女のような顔。それを見て、俺も恥ずかしいような……胸の奥が温かくなるような気持ちになる。

 変だ。俺は東京に来てから変なのかもしれない。 

 でも、まぁ……。

「それじゃあ早くこれを届けないとな! 午後から有休使って……部長を上手く言いくるめないと……いや、やってみせる!」

 リレイラさんが自分に言い聞かせるように言う。それが妙に可愛らしい。


 いいか、こういうのも。


 俺は、そう思った。
















 ……ん?


 ふと視界の隅に見覚えのある人影が見えた。ブロードウェイの方へ走って行く女。肩まで伸びた髪、いつもと違ってジャージ姿だが……。


「ミナセ?」


「どうしたヨロイ君?」

 名前を呼ばれ、視線を逸らしてしまう。もう一度視線を戻す。しかし、そこに人影は無かった。見間違いだったのか?


「早く届けに行こう!」


  ソワソワするリレイラさん。そうだ。のんびりしてる暇は無いな。まずはこれを運ばないと。


 中野改札を通って横目で商店街を見る。静まり返った中野の風景……俺は、何となく気持ち悪さのような物を感じた。



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