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第112話 シィーリア vs 亜沙山瑠璃愛
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~シィーリア~
「部長。まもなく中野ブロードウェイに到着します」
車を運転していた部下に声をかけられ、周囲を確認する。ブロードウェイに近付くにつれて人の姿が少なくなり、ダンジョン周辺地区の様相が見えてくる。
前方には式島の乗る車。この車の背後にも亜沙山の探索者が乗った黒いバン……妾達を誘導すると言っておったが、逃げ出さぬように見張る為でもあるか。
「シィーリア」
後部座席から声をかけられる。振り返るとピタリと体にフィットした白銀竜の装備をした青年……ジークリードが目に入った。彼が落ち着いた顔で妾を見る。
「いざとなったら俺が動く。心配するな」
「ぬかしおって」
その瞳に弱さは見られない。ひと月前とはまるで別人……いや、妾が課した地獄のような訓練をやり切ったのじゃ、ジークの努力の賜物か。
肉体を破壊寸前まで追い込み、回復薬と回復魔法で再構成する修行。閃光の真の力に耐えうる肉体を手に入れる為の荒業をやり遂げたのじゃから。
隣のミナセを見る。ミナセも強くなった。己の全てを使いユイを倒した。それには相当な覚悟があったはずじゃ。
「……絶対説得しないと」
ミナセが眠ったままのユイに視線を向ける。彼女の目に迷いは無かった。きっとどんな手を使ってでも妹を守る気なのじゃろう。
「ミナセ、ジーク。妾に任せておくのじゃ」
この子達の行く末のために亜沙山との遺恨は残してはならぬ。それを務めるのが妾の仕事じゃ。
……。
この子達が帰って来た時、涙が出るほど嬉しかった。それに……ミナセがユイを助けたいと願った。ジークもそれを望んでおる。ならば、それを汲んでやりたい。
エゴじゃ。これは管理局の長などでは無く、妾自身のエゴ。
だが、それでも妾は……。
◇◇◇
中野ブロードウェイ。
通されたのは応接室だった。3列に並ぶソファーの1番奥に座る。中央にミナセが。そしてジークがユイをミナセの隣へと座らせた。ぐったりとミナセに寄りかかるユイ。それを見届けるとジークは、妾達の後ろに立った。
向かいのソファー、その背後には刀を持った式島。周囲にも亜沙山の探索者達が妾達を囲むように配置されていた。
そして、しばらく経った頃。ヤツが現れた。
扉から入って来た亜沙山瑠璃愛。齢12にもかかわらず、気品すら思わせる空気を纏っている者が。その空気は、妾の世界の王族に近いものに感じた。
ミナセもジークも目を見開く。彼らには瑠璃愛のことを話していた。それでもなおこの反応。きっと彼女の纏う空気が、彼らの想像を上回っていたのじゃろう。
妾の向かいに座った瑠璃愛。彼女はユイを横目で見たあと、ゆっくりと口を開いた。
「式島から話は聞きました。我らの仲間、伊達を襲撃したのはミナセではなく、そのユイという探索者だと」
ミナセが唇を噛み締める。
「……事情は話したはずだよ。ユイは九条に」
「黙れ」
静かな声。だがミナセも式島も、亜沙山の探索者達も皆ビクリと身体を震わせた。重苦しい空気。たかが少女の一言のはずであるにもかかわらず、彼女の言葉には逆らえないような「力」があった。
「洗脳? スキル? 関係無い。お前の妹は私の領域を踏み躙った。それは命でしか償えません」
「そ、それは……」
「何か反論が? お前はその妹の罪を、九条に責任転嫁しているに過ぎません。被害者の無念は? 我らの怒りは? そんな物が同情でチャラになるとでも?」
「う……あ……」
ミナセは何かを言おうとして声を発せられないようだった。彼女の手を取り座らせる。
瑠璃愛から放たれるこの圧力……亜沙山の探索者達も彼女が一言「殺せ」と言えば従わざる負えないだろう。恐らく、彼女の命令ならば亜沙山の部下達は仲間の式島すら殺す……この娘、探索者でもなくスキルすら持っておらぬのに、とてつもない言葉の力を、才能を持っておる。人を従わせる為に生まれたとしか思えぬ。
中野の地を取り戻したのも彼女……このような力を持っていなければ、この地を奪い返すこともできぬか。
「今後のことは妾が話そう」
「……シィーリア様が?」
「ああ。ユイを引き渡す以外であれば、妾の全てをかけて願いを聞き届けよう」
「ユイの命以外に私が欲しい物はありません」
こんな言葉ではやはり靡かぬか。まずは……責任の所在で攻めるとしよう。
「瑠璃愛よ。今回池袋で起こったことは聞いたじゃろう? 事の発端はそちらが支配者の指輪を秘匿していたことじゃ。それで言えば亜沙山にも責任はあると思うが?」
「それについては申し訳ございません。我らの目の届かぬものでしたので」
認めたな。ならばここから瑠璃愛達へ非を認めさせ和解へ……。
「ですが」
瑠璃愛が言葉を続ける。
「大金を使い中野を取り戻した我らが、みすみすこの地を手放すようなことをするでしょうか? きっと指輪を手に入れた伊達は私に報告しようとしたはず。それをユイに奪われてしまったのですから……管理局に伝えられなかったのはユイの妨害によるものとお考え下さい。我らも被害者なのです」
「……伊達は指輪を我が物としようとしていたのかもしれぬぞ?」
「証拠でもおありで?」
ちっ。小癪な娘じゃ。伊達という探索者を亜沙山が持っておる限り、証明のしようがない。これ以上この手は使えんの。
「これでお分かりでしょう? 我らは被害を受けた無念を晴らしたいだけ。シィーリア様には止められるはずもない」
「それでも、ユイは渡せぬ」
「決裂でしょうか? ならば我らも我らなりに動かざるを得ないですが?」
ここは……あまり使いたくないがこちらの手で行くか。
「……魔族に逆らう意味、亜沙山の血を引くオヌシなら分かっておるはずじゃが?」
瑠璃愛の目が鋭くなる。瑠璃愛の父は魔族に逆らって粛正され、中野の地を一度奪われた。この地が何より大切だと想うのならば、この言葉には従わざるを得ないはず。遺恨は妾に向ければ良い。ユイ達から目を逸らすことができれば……。
「……」
だが、瑠璃愛は怯みもしない。ジッと妾を見つめる両眼……それは一切魔族を恐れない瞳であった。
「力で要求を通されると? 貴方も所詮小物だったのですね」
「なんじゃと?」
「私が気に入らなければどうぞ殺して下さい。魔王の血縁であるシィーリア様がこの程度の小物だったとは……私は貴方を買い被っていたようですね。昔聞いた王族の誇りとやらは言葉だけだったようです」
「貴様……」
血液が沸騰しそうになるのを無理やり抑える。コヤツ、妾にも同じ挑発を。妾の性質を把握した上で言って……。
「気に食わなければ殺せばいい。殺してみろ。私を殺せば魔族は人の庇護者ではなくなるぞ? そうなれば我ら人は2度とお前達の言うことは聞かない。ダンジョンに人を送らねばならないお前達の目的は達せられなくなるな?」
瑠璃愛の口調が強くなる。……本当に少女か? この年で人と魔族のパワーバランスを理解しておる。
ここまでするということは、この部屋にはカメラでも仕掛けられておるのかもしれぬ。録画もされておるかもしれぬな。まぁ、ここに来た瞬間から覚悟はしておったことじゃ。
人同士のダンジョン内での争いは、たとえ映像という証拠が残ってもなんら外の世界に影響しない。それは妾達魔族が探索者を管理しておるからじゃ。一般の者を傷付けぬように。
だが、妾達魔族に同じことは許されぬ。
魔族は絶対的な力をもって人間を屈服させた。しかし、統治してしまった今、人を手にかけてしまえば再び人間は恐怖に支配される。恐怖によって次に起こるのは屈服ではない……反抗じゃ。そうなればもう止まらぬ。不平、不満が噴出し、怒りは妾達魔族全体へとぶつけられる。最後の1人になるまで抵抗が起きるじゃろう。
九条の戦い方がそれなのじゃ。妾達が手を出せぬことを知ってやっておる。この娘はそれを知った上で挑発しておるのじゃ。
だが、そこまで分かっているのなら、この手に意味が生まれるかの。
「ユイを見逃してくれるのならば、管理局に引き渡された長谷部を亜沙山へ返そう。ヤツはオヌシの領域を犯すよう指示した主犯格。そちらの方が怒りをぶつける価値は高いと思うが」
「なに……? それは管理局にとって合理的ではないと思われますが?」
瑠璃愛の顔色が変わる。このタイミングだからこそ掴めたきっかけ。決して離してはならぬ。
長谷部は九条商会の情報を持っておるじゃろう。管理局にとって重要な人物じゃ。だからこそここでカードにする。より重要な者を渡すことで伝えたい。怒りを解きたいだけだと。
瑠璃愛へ頭を下げる。ミナセが動揺したのを感じて、その手を掴んだ。彼女を安心させる為に。
「先程の非礼は謝ろう。すまぬ。亜沙山であるオヌシにあのような脅しをかけるとは……浅はかであった」
「……シィーリア様。なぜそのようなことまでなさるの? 明らかにダンジョン管理局シィーリア・エイブスの発言として迂闊すぎます。普段の貴方ならそんなことはされないはず」
瑠璃愛の顔に浮かぶ困惑。妾の腹の中を探りたいという顔。細い橋ができた。だがこれもガラスのようなもの。建前で答えようものなら、一瞬にして壊れてしまう。
ここは、本心が必要じゃ。
「妾は……我が子らの切実な願いを叶えてやりたいだけじゃ」
「我が子? 何を言って……」
「ジークもミナセも妾の大事な子達と思うておる。その彼らがユイを助けたいと願ったのじゃ。ならばそれを叶えてやりたい。管理局など関係ない。間違っておるのも分かっておる。じゃが!! それでもユイは……渡せない」
「……」
瑠璃亜がそっと目を逸らした。
「ダメ、です……私の怒りは治りません。私は土地を穢された。それは私の人生そのものを否定した事になる。私の母を侮辱した事になる。その罪は、その怒りは……消えません」
「お嬢。これは」
「黙りなさい」
話に割って入ろうとした式島にピシャリと言い放ち、瑠璃愛は妾の瞳を覗き込んだ。冷たい中に、怒りの炎を込めた瞳。妾もその瞳を見つめる。妾も引く気は無い。賢い瑠璃亜ならば、妾が真に差し出した物が、何かに気づくはずじゃ。
視線がぶつかる。しばらくの沈黙のあと、瑠璃愛は苦しげに呟いた。
「追加の、条件……」
手を強く握りしめ、怒りを抑えるような素振り。彼女は一度深呼吸して口を開いた。
「2つ条件を追加しなさい。まず、そのユイが正気に戻ったら、必ず我らに誠意をもって謝罪すること」
「もう一つは?」
「九条アラタを殺す権利……それを私に下さい」
「なんじゃと?」
「貴方達魔族は人に制裁を加えられないのでしょう? ならば、人への罰は人が加えるべき。そう、私は思います」
コヤツ。
「だからこそ我ら亜沙山はなりましょう。九条へ罰を与える存在に」
やはり只者ではない。怒りを鎮めるように見せ、亜沙山という組織をより優位な存在にするよう持ちかけおった。
「これは管理局への提案ではありません。シィーリア様への提案です。貴方が条件を飲んで下さるのならば、私はユイの罪を全て許し、亜沙山は全力を持って貴方の駒となりましょう」
妾の出した条件に被せ、さらなる条件を……か。そして妾と瑠璃亜にとってこれ以上の条件は無い。
「……分かった。その条件、飲もう」
「それは良かったです」
瑠璃亜が普通の少女のように笑った。
……。
帰り道。隣に乗っていたミナセはやっと緊張が解けたのか、深くため息を吐いた。
「はぁ……生きた心地がしなかったよ」
「これでもう安心じゃ。瑠璃亜は約束を守るじゃろう。こちらが約束を守る限りはな」
「シィーリアは良かったのか? アレで」
後部座席からジークの心配そうな声が聞こえる。妾自身も緊張していたのか、手をずっと握りしめていたことに気が付いた。
「大丈夫じゃ。後はユイを治す方法を探すだけ。ヨロイ達にも協力してもらおう」
緊張していた手をゆっくり開くと、なぜかジークに頭を撫でられた。
「なんじゃ?」
「い、いや……無意識で……すまん」
なんじゃそれは……?
今度はミナセに撫でられる。
「ちょ!? やめるのじゃ!?」
「なんか、改めて感じたよ。いつもシィーリアに守って貰ってるんだなって。だから……本当にありがとう、シィーリア」
「ミナセ……」
急に照れ臭くなって窓の方へ顔を向けた。なんじゃ2人とも子供扱いしおって。妾がどれほど心配したと……。
チラリとジークとミナセを見る。ミナセがいつもの調子を取り戻してジークの身だしなみを注意していた。ジークも少し間の抜けたような返事をし、さらにミナセに注意される。
良かった。2人が無事帰って来てくれて。本当に……。
妾達を乗せた車は夜の暗闇を抜けて、光の灯るビル郡へと走っていった。
◇◇◇
~亜沙山瑠璃愛~
「……式島。貴方が目指したのはこれなのでしょう?」
「いや、想像以上の結果ですよ。お嬢が怒りを飲み込んだのは、本当に立派だった」
式島がニヤリと笑う。よく言う……収拾がつかなくなりそうであれば無理矢理にでも割り込もうと思っていたクセに。
だけど、感謝しなければならないな。あそこで式島が声をかけてくれたから、私は冷静になれた気がする。
「……ありがとう。少し、1人にさせて下さい」
式島は軽く頭を下げると扉から出て行った。部屋の中には私1人。ソファーに深く座り直すと、緊張の糸が解けた。
「はぁ……シィーリア様はやっぱり手強いな……」
いきなり亜沙山の責任を追求してくるか? 躱わすので精一杯だった。伊達め。支配者の指輪を私に黙って売り捌こうとして……そのせいで危うく亜沙山が解体されるところだったぞ。後でキッチリ罰を与えないとな。
それに……。
同じような姿をしているとはいえ、シィーリアは魔族だ。下手をするとこの場にいた全員殺されていたかもしれない。
まぁ、その場合でも手はあったのだけど。
リモコンを操作し、部屋に設置してあった隠しカメラをオフにする。いざとなれば、私のリモコンからネット中継できるようにしてあった物を。
使うような自体にならなくて良かった。
最初のシィーリアの提案、あれはただ長谷部を引き渡すというものじゃない。あの女の運命を私に委ねるという物だ。アイツの独断で長谷部を渡し、九条商会の情報が何も得られないとなれば、シィーリアは責任を問われるだろう。今の地位も失う。そこまでの覚悟に、私は動揺してしまった。
……私も、甘いな。
長谷部を拷問して情報を吐かせるか。シィーリアにも共有してやろう。魔族では行えない手段も、人間同士なら……ダンジョンに居を構える我ら亜沙山ならできる。
管理局内でアイツの独断への反感は持たれるだろうが、シィーリアの判断が最善だったと見せ付けてやれば追い込まれることはないはずだ。
「それにしてもあの目……」
シィーリアの目、アレはお母様の目に似ていた。私のことを想って下さった時の目に。
母親、か。
変わった魔族だな、アイツ。
リモコンを操作する。録画してあった交渉記録……それを消去した。
「部長。まもなく中野ブロードウェイに到着します」
車を運転していた部下に声をかけられ、周囲を確認する。ブロードウェイに近付くにつれて人の姿が少なくなり、ダンジョン周辺地区の様相が見えてくる。
前方には式島の乗る車。この車の背後にも亜沙山の探索者が乗った黒いバン……妾達を誘導すると言っておったが、逃げ出さぬように見張る為でもあるか。
「シィーリア」
後部座席から声をかけられる。振り返るとピタリと体にフィットした白銀竜の装備をした青年……ジークリードが目に入った。彼が落ち着いた顔で妾を見る。
「いざとなったら俺が動く。心配するな」
「ぬかしおって」
その瞳に弱さは見られない。ひと月前とはまるで別人……いや、妾が課した地獄のような訓練をやり切ったのじゃ、ジークの努力の賜物か。
肉体を破壊寸前まで追い込み、回復薬と回復魔法で再構成する修行。閃光の真の力に耐えうる肉体を手に入れる為の荒業をやり遂げたのじゃから。
隣のミナセを見る。ミナセも強くなった。己の全てを使いユイを倒した。それには相当な覚悟があったはずじゃ。
「……絶対説得しないと」
ミナセが眠ったままのユイに視線を向ける。彼女の目に迷いは無かった。きっとどんな手を使ってでも妹を守る気なのじゃろう。
「ミナセ、ジーク。妾に任せておくのじゃ」
この子達の行く末のために亜沙山との遺恨は残してはならぬ。それを務めるのが妾の仕事じゃ。
……。
この子達が帰って来た時、涙が出るほど嬉しかった。それに……ミナセがユイを助けたいと願った。ジークもそれを望んでおる。ならば、それを汲んでやりたい。
エゴじゃ。これは管理局の長などでは無く、妾自身のエゴ。
だが、それでも妾は……。
◇◇◇
中野ブロードウェイ。
通されたのは応接室だった。3列に並ぶソファーの1番奥に座る。中央にミナセが。そしてジークがユイをミナセの隣へと座らせた。ぐったりとミナセに寄りかかるユイ。それを見届けるとジークは、妾達の後ろに立った。
向かいのソファー、その背後には刀を持った式島。周囲にも亜沙山の探索者達が妾達を囲むように配置されていた。
そして、しばらく経った頃。ヤツが現れた。
扉から入って来た亜沙山瑠璃愛。齢12にもかかわらず、気品すら思わせる空気を纏っている者が。その空気は、妾の世界の王族に近いものに感じた。
ミナセもジークも目を見開く。彼らには瑠璃愛のことを話していた。それでもなおこの反応。きっと彼女の纏う空気が、彼らの想像を上回っていたのじゃろう。
妾の向かいに座った瑠璃愛。彼女はユイを横目で見たあと、ゆっくりと口を開いた。
「式島から話は聞きました。我らの仲間、伊達を襲撃したのはミナセではなく、そのユイという探索者だと」
ミナセが唇を噛み締める。
「……事情は話したはずだよ。ユイは九条に」
「黙れ」
静かな声。だがミナセも式島も、亜沙山の探索者達も皆ビクリと身体を震わせた。重苦しい空気。たかが少女の一言のはずであるにもかかわらず、彼女の言葉には逆らえないような「力」があった。
「洗脳? スキル? 関係無い。お前の妹は私の領域を踏み躙った。それは命でしか償えません」
「そ、それは……」
「何か反論が? お前はその妹の罪を、九条に責任転嫁しているに過ぎません。被害者の無念は? 我らの怒りは? そんな物が同情でチャラになるとでも?」
「う……あ……」
ミナセは何かを言おうとして声を発せられないようだった。彼女の手を取り座らせる。
瑠璃愛から放たれるこの圧力……亜沙山の探索者達も彼女が一言「殺せ」と言えば従わざる負えないだろう。恐らく、彼女の命令ならば亜沙山の部下達は仲間の式島すら殺す……この娘、探索者でもなくスキルすら持っておらぬのに、とてつもない言葉の力を、才能を持っておる。人を従わせる為に生まれたとしか思えぬ。
中野の地を取り戻したのも彼女……このような力を持っていなければ、この地を奪い返すこともできぬか。
「今後のことは妾が話そう」
「……シィーリア様が?」
「ああ。ユイを引き渡す以外であれば、妾の全てをかけて願いを聞き届けよう」
「ユイの命以外に私が欲しい物はありません」
こんな言葉ではやはり靡かぬか。まずは……責任の所在で攻めるとしよう。
「瑠璃愛よ。今回池袋で起こったことは聞いたじゃろう? 事の発端はそちらが支配者の指輪を秘匿していたことじゃ。それで言えば亜沙山にも責任はあると思うが?」
「それについては申し訳ございません。我らの目の届かぬものでしたので」
認めたな。ならばここから瑠璃愛達へ非を認めさせ和解へ……。
「ですが」
瑠璃愛が言葉を続ける。
「大金を使い中野を取り戻した我らが、みすみすこの地を手放すようなことをするでしょうか? きっと指輪を手に入れた伊達は私に報告しようとしたはず。それをユイに奪われてしまったのですから……管理局に伝えられなかったのはユイの妨害によるものとお考え下さい。我らも被害者なのです」
「……伊達は指輪を我が物としようとしていたのかもしれぬぞ?」
「証拠でもおありで?」
ちっ。小癪な娘じゃ。伊達という探索者を亜沙山が持っておる限り、証明のしようがない。これ以上この手は使えんの。
「これでお分かりでしょう? 我らは被害を受けた無念を晴らしたいだけ。シィーリア様には止められるはずもない」
「それでも、ユイは渡せぬ」
「決裂でしょうか? ならば我らも我らなりに動かざるを得ないですが?」
ここは……あまり使いたくないがこちらの手で行くか。
「……魔族に逆らう意味、亜沙山の血を引くオヌシなら分かっておるはずじゃが?」
瑠璃愛の目が鋭くなる。瑠璃愛の父は魔族に逆らって粛正され、中野の地を一度奪われた。この地が何より大切だと想うのならば、この言葉には従わざるを得ないはず。遺恨は妾に向ければ良い。ユイ達から目を逸らすことができれば……。
「……」
だが、瑠璃愛は怯みもしない。ジッと妾を見つめる両眼……それは一切魔族を恐れない瞳であった。
「力で要求を通されると? 貴方も所詮小物だったのですね」
「なんじゃと?」
「私が気に入らなければどうぞ殺して下さい。魔王の血縁であるシィーリア様がこの程度の小物だったとは……私は貴方を買い被っていたようですね。昔聞いた王族の誇りとやらは言葉だけだったようです」
「貴様……」
血液が沸騰しそうになるのを無理やり抑える。コヤツ、妾にも同じ挑発を。妾の性質を把握した上で言って……。
「気に食わなければ殺せばいい。殺してみろ。私を殺せば魔族は人の庇護者ではなくなるぞ? そうなれば我ら人は2度とお前達の言うことは聞かない。ダンジョンに人を送らねばならないお前達の目的は達せられなくなるな?」
瑠璃愛の口調が強くなる。……本当に少女か? この年で人と魔族のパワーバランスを理解しておる。
ここまでするということは、この部屋にはカメラでも仕掛けられておるのかもしれぬ。録画もされておるかもしれぬな。まぁ、ここに来た瞬間から覚悟はしておったことじゃ。
人同士のダンジョン内での争いは、たとえ映像という証拠が残ってもなんら外の世界に影響しない。それは妾達魔族が探索者を管理しておるからじゃ。一般の者を傷付けぬように。
だが、妾達魔族に同じことは許されぬ。
魔族は絶対的な力をもって人間を屈服させた。しかし、統治してしまった今、人を手にかけてしまえば再び人間は恐怖に支配される。恐怖によって次に起こるのは屈服ではない……反抗じゃ。そうなればもう止まらぬ。不平、不満が噴出し、怒りは妾達魔族全体へとぶつけられる。最後の1人になるまで抵抗が起きるじゃろう。
九条の戦い方がそれなのじゃ。妾達が手を出せぬことを知ってやっておる。この娘はそれを知った上で挑発しておるのじゃ。
だが、そこまで分かっているのなら、この手に意味が生まれるかの。
「ユイを見逃してくれるのならば、管理局に引き渡された長谷部を亜沙山へ返そう。ヤツはオヌシの領域を犯すよう指示した主犯格。そちらの方が怒りをぶつける価値は高いと思うが」
「なに……? それは管理局にとって合理的ではないと思われますが?」
瑠璃愛の顔色が変わる。このタイミングだからこそ掴めたきっかけ。決して離してはならぬ。
長谷部は九条商会の情報を持っておるじゃろう。管理局にとって重要な人物じゃ。だからこそここでカードにする。より重要な者を渡すことで伝えたい。怒りを解きたいだけだと。
瑠璃愛へ頭を下げる。ミナセが動揺したのを感じて、その手を掴んだ。彼女を安心させる為に。
「先程の非礼は謝ろう。すまぬ。亜沙山であるオヌシにあのような脅しをかけるとは……浅はかであった」
「……シィーリア様。なぜそのようなことまでなさるの? 明らかにダンジョン管理局シィーリア・エイブスの発言として迂闊すぎます。普段の貴方ならそんなことはされないはず」
瑠璃愛の顔に浮かぶ困惑。妾の腹の中を探りたいという顔。細い橋ができた。だがこれもガラスのようなもの。建前で答えようものなら、一瞬にして壊れてしまう。
ここは、本心が必要じゃ。
「妾は……我が子らの切実な願いを叶えてやりたいだけじゃ」
「我が子? 何を言って……」
「ジークもミナセも妾の大事な子達と思うておる。その彼らがユイを助けたいと願ったのじゃ。ならばそれを叶えてやりたい。管理局など関係ない。間違っておるのも分かっておる。じゃが!! それでもユイは……渡せない」
「……」
瑠璃亜がそっと目を逸らした。
「ダメ、です……私の怒りは治りません。私は土地を穢された。それは私の人生そのものを否定した事になる。私の母を侮辱した事になる。その罪は、その怒りは……消えません」
「お嬢。これは」
「黙りなさい」
話に割って入ろうとした式島にピシャリと言い放ち、瑠璃愛は妾の瞳を覗き込んだ。冷たい中に、怒りの炎を込めた瞳。妾もその瞳を見つめる。妾も引く気は無い。賢い瑠璃亜ならば、妾が真に差し出した物が、何かに気づくはずじゃ。
視線がぶつかる。しばらくの沈黙のあと、瑠璃愛は苦しげに呟いた。
「追加の、条件……」
手を強く握りしめ、怒りを抑えるような素振り。彼女は一度深呼吸して口を開いた。
「2つ条件を追加しなさい。まず、そのユイが正気に戻ったら、必ず我らに誠意をもって謝罪すること」
「もう一つは?」
「九条アラタを殺す権利……それを私に下さい」
「なんじゃと?」
「貴方達魔族は人に制裁を加えられないのでしょう? ならば、人への罰は人が加えるべき。そう、私は思います」
コヤツ。
「だからこそ我ら亜沙山はなりましょう。九条へ罰を与える存在に」
やはり只者ではない。怒りを鎮めるように見せ、亜沙山という組織をより優位な存在にするよう持ちかけおった。
「これは管理局への提案ではありません。シィーリア様への提案です。貴方が条件を飲んで下さるのならば、私はユイの罪を全て許し、亜沙山は全力を持って貴方の駒となりましょう」
妾の出した条件に被せ、さらなる条件を……か。そして妾と瑠璃亜にとってこれ以上の条件は無い。
「……分かった。その条件、飲もう」
「それは良かったです」
瑠璃亜が普通の少女のように笑った。
……。
帰り道。隣に乗っていたミナセはやっと緊張が解けたのか、深くため息を吐いた。
「はぁ……生きた心地がしなかったよ」
「これでもう安心じゃ。瑠璃亜は約束を守るじゃろう。こちらが約束を守る限りはな」
「シィーリアは良かったのか? アレで」
後部座席からジークの心配そうな声が聞こえる。妾自身も緊張していたのか、手をずっと握りしめていたことに気が付いた。
「大丈夫じゃ。後はユイを治す方法を探すだけ。ヨロイ達にも協力してもらおう」
緊張していた手をゆっくり開くと、なぜかジークに頭を撫でられた。
「なんじゃ?」
「い、いや……無意識で……すまん」
なんじゃそれは……?
今度はミナセに撫でられる。
「ちょ!? やめるのじゃ!?」
「なんか、改めて感じたよ。いつもシィーリアに守って貰ってるんだなって。だから……本当にありがとう、シィーリア」
「ミナセ……」
急に照れ臭くなって窓の方へ顔を向けた。なんじゃ2人とも子供扱いしおって。妾がどれほど心配したと……。
チラリとジークとミナセを見る。ミナセがいつもの調子を取り戻してジークの身だしなみを注意していた。ジークも少し間の抜けたような返事をし、さらにミナセに注意される。
良かった。2人が無事帰って来てくれて。本当に……。
妾達を乗せた車は夜の暗闇を抜けて、光の灯るビル郡へと走っていった。
◇◇◇
~亜沙山瑠璃愛~
「……式島。貴方が目指したのはこれなのでしょう?」
「いや、想像以上の結果ですよ。お嬢が怒りを飲み込んだのは、本当に立派だった」
式島がニヤリと笑う。よく言う……収拾がつかなくなりそうであれば無理矢理にでも割り込もうと思っていたクセに。
だけど、感謝しなければならないな。あそこで式島が声をかけてくれたから、私は冷静になれた気がする。
「……ありがとう。少し、1人にさせて下さい」
式島は軽く頭を下げると扉から出て行った。部屋の中には私1人。ソファーに深く座り直すと、緊張の糸が解けた。
「はぁ……シィーリア様はやっぱり手強いな……」
いきなり亜沙山の責任を追求してくるか? 躱わすので精一杯だった。伊達め。支配者の指輪を私に黙って売り捌こうとして……そのせいで危うく亜沙山が解体されるところだったぞ。後でキッチリ罰を与えないとな。
それに……。
同じような姿をしているとはいえ、シィーリアは魔族だ。下手をするとこの場にいた全員殺されていたかもしれない。
まぁ、その場合でも手はあったのだけど。
リモコンを操作し、部屋に設置してあった隠しカメラをオフにする。いざとなれば、私のリモコンからネット中継できるようにしてあった物を。
使うような自体にならなくて良かった。
最初のシィーリアの提案、あれはただ長谷部を引き渡すというものじゃない。あの女の運命を私に委ねるという物だ。アイツの独断で長谷部を渡し、九条商会の情報が何も得られないとなれば、シィーリアは責任を問われるだろう。今の地位も失う。そこまでの覚悟に、私は動揺してしまった。
……私も、甘いな。
長谷部を拷問して情報を吐かせるか。シィーリアにも共有してやろう。魔族では行えない手段も、人間同士なら……ダンジョンに居を構える我ら亜沙山ならできる。
管理局内でアイツの独断への反感は持たれるだろうが、シィーリアの判断が最善だったと見せ付けてやれば追い込まれることはないはずだ。
「それにしてもあの目……」
シィーリアの目、アレはお母様の目に似ていた。私のことを想って下さった時の目に。
母親、か。
変わった魔族だな、アイツ。
リモコンを操作する。録画してあった交渉記録……それを消去した。
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「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
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である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
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「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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