461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第132話 魔王の姉、管理局を訪れる。

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 ~ダンジョン管理局 部長 シィーリア~

「シィーリア部長、あのぉ……」

 少年のような見た目の赤髪の魔族、アノラスは申し訳無さそうに俯いていた。恐らく責任を感じておるのじゃろう。

「良い。しばらくは補佐に回り、この世界の事を学ぶが良いのじゃ」

「は、はい!」

 ペコリと頭を下げて、アノラスは部屋を出て行った。新人探索者に新人の魔族を担当させることで低難易度ダンジョンを攻略させようと考えたのじゃが、こんなことになるとはの。気付いてくれた探索者がいて良かった。

「はぁ……」

 今日は監査官がやって来る日。恐らくここ最近起きたいざこざの調査じゃろう……憂鬱じゃ。

 管理局監査機関。ダンジョン管理局が魔王様へ反逆を企てぬよう設立された、軍直属の監査組織。何かある度いちいち調査に来る面倒なら奴ら。だが、最高責任者があの方・・・ではの……文句の1つも言えぬ。

 ……。

 瑠璃愛るりあの件は長谷部から情報を引き出し、九条商会と繋がっている探索者達を特定できたから良いが、アノラスの一件は……。

 新人のアノラスへの引き継ぎファイル。それに清澄白河の過去情報を紛れ込ませた魔族がおる。調査した結果、前任者はどう考えてもシロじゃった。となると管理局の中枢システムに精通しておる者か?

 だが、裏切り者がいるとは判明したものの、未だ特定までは至っていない。この状況で監査官に話が流れてしまえば冤罪を生んでしまう。いや、もしかしたら妾の首ごと飛ぶかもしれかもしれぬの。文字通りの意味で。

「はぁ~……」

 またため息が出てしまう。本当にめんどうじゃの……監査官を言いくるめて早く追い返したいところじゃ。とりあえず、アノラスの件は妾の失態として受け入れて、裏切り者の件は内密にせねば……。

 その時ノックの音が聞こえた。もうやって来たのか。頬を叩いて気合いを入れる。

「どうぞ」


 答えると、扉の隙間からリレイラが顔を覗かせた。

「部長、ちょっと問題が……」

「問題? 監査官が遅れておるのか?」

「い、いや……それが……」

 リレイラが最後まで言う前に扉がバンと開き、ツノの無い・・・・・魔族、「イシャルナ・アンダ・ファラベラム」が入ってた。数人の部下を引き連れて。

「い、イシャルナ様!?」

「久しいなシィーリア。直接会うのは式典以来か?」

 イシャルナ様がニヤリと笑う。妾とは全く異なる妖艶な身体つきに、翡翠ひすいのような瞳。そして、王の近親を表す白金しろがね色の髪。妾達魔族から見ても絶大な美貌を持つ女性がそこに立っていた。

「おい」

  イシャルナ様が部下を睨むと、彼らはビクリと体を震わせた。

「はっ! なんでしょうイシャルナ様」

「我は久々に血族の者と再会したのだ。いつまでそこに立っているつもりだ?」

「は……はっ!! 失礼致しましたっ!!!」

 部下達は慌てて扉を閉め、部屋の中には妾達2人となる。静まり返った執務室でイシャルナ様は優しげな笑みを浮かべた。

「すまぬなシィーリア。無粋な者達ばかりで」

「い、いえ! めっそうもございませんのじゃ!」

「座らせて貰うぞ。世界間の移動は流石に疲れた」

 イシャルナ様が応接用ソファに座り、脚を組む。背中まで伸びた髪が空中を舞い、ゆっくりと彼女の肩にかかる。思わず見惚れてしまいそうなのを振り払い、妾はすぐに彼女の対面に座った。

「なぜ魔王様の姉君あねぎみであるイシャルナ様が……」

 それに……監査機関の「最高責任者」でもあるイシャルナ様がなぜ?

「なんだその顔は? 何かやましいことでもあるのか?」

 不敵な顔。この反応……分からぬ。妾を試しておるのか? それとも……いざこざの数々がイシャルナ様の耳にまで入ってしまったのか……?

 か、覚悟した方が良いじゃろうか? すまぬ、ジーク、ミナセ、ユイ。お主達の子を抱きしめてやるという妾の夢は叶わぬようじゃぁ……。

 しかし、妾の心配とは裏腹に、イシャルナ様はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「心配するな。今日は監査に来たのではない。我は貴様に伝言を伝える為にやって来たのだ」

 よ、良かったぁ……どうやら先程の心配は杞憂だったようじゃな。しかしイシャルナ様が直接とは何事じゃ?

「して……伝言とは?」

「ああ。新宿迷宮ラビリンスの軍による調査は終わった。魔王軍よりダンジョンを解放せよとの通達だ」

「し、新宿迷宮ラビリンスを!?」

「そうだ。探索者から良い攻略データが取れるであろう。早速攻略申請の受理を」

「ま、ままま待って下さい! それでは死人が出てしまいます!!」

 いくらなんでもそれは……新宿迷宮は妾達の世界でも有数の難易度を誇るダンジョンを転移させた物じゃぞ……何も考えずに解放などしたら、データどころか死人が出るぞ。

 だがどうする? 軍がこう言う限りは時間を稼いで探索者を育成するという悠長なことは言っておれぬ。どうすれば……。

「ふむ」

 妾の顔を見てイシャルナ様が顎に手を添えた。

「今の貴様の反応で探索者レベルがどのようなものか分かった。ならこうしよう」

 人差し指を立てるイシャルナ様。彼女は、笑みを浮かべたまま言葉を続けた。

「新宿解放まで1ヶ月やろう。貴様達ダンジョン管理局が事前に試験を行い、クリアした者だけを新宿へ挑ませよ」

 試験じゃと? 1ヶ月というが相応のテスト選定、実施、解放の準備と考えれば今日から動かねば時間が足りぬぞ。鬼じゃなこのお方。

「これでも不服か? 我は最大限人へ寄り添ったつもりだが?」

 人に寄り添っている……現場を知らぬお方が何を言っておる? これではまだ足りぬ。このままでは単独攻略に挑む者ばかりじゃろう。もっと生存率を上げねば。

「パーティメンバーでのテストも行ってよろしいか?」

「なぜ?」

「他の者と協力することでランク以上の力を発揮する者もおりますのじゃ。妾達の仕事はデータを取るだけではありません。探索者達を無事に帰還させるまでが仕事なので」

「良かろう。我らの世界でも冒険者・・・はパーティを組む者。こちらの世界の探索者・・・にも当然の権利はあろう」

「感謝致しますのじゃ」

「ふふ。期待しているぞ。我も、魔王様もな」

 イシャルナ様は妾の肩をポンと叩くと部屋から出て言った。

 食えぬお方じゃ……妾に拒否させぬ為に自らが出向いたということか。

 デスクに戻り受話器を取る。内線をリレイラへと繋いだ。

「リレイラ。今すぐ新宿迷宮の攻略申請者のリストを出すのじゃ。新宿迷宮の解放命令が出た」

『え、新宿迷宮を……ですか?』

「そうじゃ。忙しくなるぞ。覚悟しておけよ」

『あ、あの……休みとか、どうなります?』

「はぁ……すまぬがしばらくこちらで手一杯になるじゃろう。何連勤して貰うか分からんのじゃ。いや、この1週間は泊まり込みになるかも……」

『そ、そんなぁ~!?』

 嘆くようなリレイラの声を聞きながら受話器を置く。妾とて帰りたいわ。じゃが、上から言われては仕方がない。こういう時はブラックじゃの、本当に。

「局員の皆に伝えねばの……」

 後は、探索者にも苦情が出ぬよう新規受付を告知して申請者への連絡と、テストの選定に準備に……試験官は当然魔族がやるべきじゃろうな。


 あぁ……。


 また頭痛の種が増えそうじゃ。



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