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第189話 想う者、想われる者。
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~天王洲アイル~
ヨロイさんがラムルザを倒した瞬間、私達と戦っていた竜人達は静まり返った。戦闘を終えたと感知したドローンが私の肩に止まる。それを掴んでドローン用のポーチに戻した。
竜人達の戦意は嘘のように消えてしまって、最後にラムルザの名前を呼んだ竜人の魔導士は座り込んで泣き出してしまった。
「ラムルザ様ぁ……」
「な、泣くなよミュゼ……アイツは俺達を裏切って……」
「ラムルザ様は裏切ってなどおりません! 裏切っているのなら、なぜ私達にあのように語りかけて下さったのですか!? 死の淵で残された言葉が嘘だとでも!?」
「い、いや……そんな事は……」
ミュゼという竜人と他の竜人達が揉めている。ジークもミナセさんも、みんな困惑したような顔で彼らから距離を取って私の所にやって来た。
「どういう事なんだこれは……」
「なんだかあの竜人達子供? っぽくない……?」
ジークとミナセさんが戸惑ったように周囲を見渡す。私もさっきからビックリしてる。いくら仲間がやられたとはいえ、戦闘を放棄するなんて……もしかしてこの竜人達、戦い慣れてないの?
ラムルザは本丸は北棟だって言ってた。リザードマンばかりの配置。最上階は戦闘に慣れていない竜人にラムルザだけなんて……彼らに南棟を守らせたヤツは最低じゃない。どう考えてもおかしいよ、こんなの。
その時、ラムルザに殴り飛ばされた竜人が仲間達に呼びかけた。
「な、何をやってるお前達! 早く人間を倒せ!」
「ザイトス……だ、だけどラムルザ様を倒したヤツがいるんだぞ!? 俺達には……」
「馬鹿か!? 人間を倒さなければ我々は……っ!?」
戸惑う竜人達にザイトスという竜人は怒りをぶつけた。
「我々は……なんだよ?」
ふらりとザイトスの前にやって来たヨロイさん。彼は、問い詰めるようにその竜人の顔を覗き込む。ザイトスは、ヨロイさんに向かって喚き散らした。
「我々はあの魔法障壁に閉じ込められたままだ!! お前達を贄にして神様を復活させないとここから」
「出られない……か?」
ヨロイさんがザイトスの腕をグイッと掴み上げ、その右手の腕輪を外した。
「ぐっ!? 何をする!?」
「この腕輪には装備者が死ぬとレベルポイントを吸い出す仕掛けが施してある。神を復活させてここから出ようって連中がなぜそんな装備を付けている?」
「それは自分が死んだ時に仲間達の糧になる為に……」
「糧、ねぇ。お前達は糧になる為にここに置き去りにされているのか? なぜその状況を受け入れている?」
「う、うぐぐ……司祭様の言葉を愚弄する気か!!」
「分からねぇようなら教えてやるよ」
ヨロイさんは、ザイトスの顔を殴り付けてその胸ぐらを掴んだ。
「ラムルザは命を賭けてここで戦った。お前達と一緒にな。司祭は? 他の竜人達を抱え込んで北棟にいる司祭様はお前達を救ってくれようとしてんのかよ!?」
「あ……」
「お前らはなぁ!! 司祭に見殺しにされたんだよ!! 俺達を分断して! 足止めする為だけにな!!」
ザイトスは反論しようと口を開けたけど、何も言えずに俯いてしまった。ヨロイさんはザイトスが視線を逸らすの許さないように、その顎を持って無理矢理にその目を覗き込んだ。
「言ってみろ!!! お前達にここから逃げろと言ったヤツはいるのか!? 一緒に戦ってくれたヤツは!? 司祭がやってくれたのか!?」
ザワザワと竜人達が騒ぎ出した。彼らはハッとした顔になってラムルザの名前を呼びだした。
「ラムルザ様は俺達に逃げろって……」
「よく考えたらおかしいよ。なんであの人が囮になってるの?」
「司祭様が……俺達を……?」
「ラムルザ様は分かっていて私達の側にいてくれたの……?」
仲間達の様子を見てミュゼが手で顔を覆った。
「バカよみんな……私も……なんで……ここに来る前に気付かなかったの……戦う前に気付かなかったの……ラムルザ様に……守って貰ってたって……」
ミュゼの啜り泣く声が聞こえる。彼らは1人、また1人と嗚咽を漏らし始めた。
ヨロイさんは、その様子を見て右手を震わせた。
「泣くんじゃねぇ!!! お前らが後悔したってもう戻らねぇんだ! 俺がヤツを殺した! 弱虫のお前らと最後まで一緒にいたアイツをだ!!」
ザイトスも、何かに気付いたように目を見開いて、剣を離した。カランと甲高い音を鳴らしながら剣が転がる。
「お、俺は……ラムルザ、様に……酷い事を……あの人の誇りを、穢して……」
声を震わせるザイトス。ヨロイさんは、彼を睨み付けて絞り出すように声を出した。
「馬鹿野郎。お前ら仲間じゃねえのかよ……なんで今更後悔してんだ……」
ヨロイさん、怒ってる。前に私を守ってくれた時みたいにすごく……。
ザイトスから手を離したヨロイさんはアスカルオの鞘に手をかけた。彼のヘルムの奥の瞳がギラリと光る。
「ラムルザのお前達への言葉……きっと助けたかったはずだ。だから……だから!! 今だけは見逃してやる!! さっさと行け!!」
「は、はい……」
竜人達がみんな腕輪を外してその場から去っていく。唯一、ミュゼという魔導士だけは、去り際にペコリと頭を下げてからその場を立ち去った。
腕をダラリと下ろすヨロイさん。その姿が心配で、私はヨロイさんの所に駆け寄った。ヨロイさんは私の顔を見て項垂れてしまう。
「俺は甘かったか……?」
「ううん……そんなことない。きっとラムルザも喜んでるわ」
「……」
沈黙が続く。しばらく黙り込んだあと、彼はポツリと呟いた。
「アイル、ラムルザの体燃やしてやってくれ。このままにはしておけねぇ」
「分かったわ」
魔力を込めて杖をラムルザへ向ける。なぜか、隣にいるヨロイさんが泣いているような気がしてしまう。彼は戦っている時何を感じていたんだろう? 戦っていた相手の為にここまで……私があの戦闘で隣にいられなかったことがすごく悔しい。
あそこにいたら、ヨロイさんの悲しみをほんの少しでも分かってあげられたかもしれないのに。
「火炎魔法」
杖から放たれた魔法がラムルザの体を燃やしていく。私達は、その様子をヨロイさんの側で見守っていた。
◇◇◇
ラムルザの遺体を燃やし尽くした後、ヨロイさんはいつものような間の抜けた声を出した。
「そろそろ降りるか。北棟の攻略終わる前にボス戦の準備しないとな」
ヨロイさんが伸びをして階段を降りていく。なんて声をかけていいのか迷っていたらミナセさんに耳打ちされた。
「ほら、アイルちゃん行ってあげてよ」
「え……」
「俺達にはどうしてやることもできない。天王洲しか適任はいないだろう」
「ジークまで何言ってるのよ……」
「ここにいるメンバーだとアイルちゃんしかヨロさんを癒してあげられないにゃ」
ナーゴも腕を組んでウンウンと頷く。隣で勝者マンも同じように私を見て頷いた。
「……そうね、うん。やってみる」
私は駆け出してヨロイさんの腕に抱き付いた。突然抱き付かれてヨロイさんはさっきよりも、もっと間の抜けた声を出した。
「なんだよ。危ねぇだろ」
バランスを崩してヨロヨロと階段を降りるヨロイさん。彼が落ちないようにその腕をギュッと抱きしめる。
「離してくれよ」
「嫌。絶対離さないもん」
「はぁ……好きにしろ」
何度か離そうとしてヨロイさんは諦めたようにため息を吐いた。私は何か別の話題が無いか考えて、思い付いた事を口にしてみる。
「ねぇ、イァク・ザァド戦にプラン変更とか無いの? 結構レベルポイント稼いだからみんなスキルツリー強化できると思うし」
「そうだな。俺もラムルザから「ストルムブレイド」って技引き継いだからな。それも使っていこうかと思うけどよ」
「けど?」
ヨロイさんが急に言い淀む。何か重大な問題が起きたのか心配して言葉を待っていると、彼は私から顔を逸らした。
「ん~いやぁ……」
なぜかヨロイさんは言いにくそうだ。
「言ってよ。相棒でしょ?」
「それがなぁ……」
なんだか煮え切らない。ヨロイさんはうんうん唸った後、申し訳なさそうに呟いた。
「……必要魔力が多すぎて使えねぇ」
「へ?」
「スマホでスキルの詳細見たんだけどよ、魔力消費量が今の俺の魔力全部使っても足りないんだよ。俺の全魔力の1.5倍はかかる」
「どうするのよ?」
「分かんねぇ」
「なんで最初に言わなかったのよ?」
「いや……だってよ……あんな託され方した技使えないとか、その、恥ずかしいだろ……」
恥ずかしい。なんだか、本当に申し訳なさそうな、恥ずかしそうな姿に吹き出してしまった。
「笑うなって」
まだ引きずってるかもしれないけど、少しだけ安心する。
「ちょっと私にも見せて……ホントだ。これは確かに」
2人でスマホを覗き込んでいると、後ろからナーゴの声がした。
「ふっふっふ。そんな時はナーゴにおまかせにゃ! 実は昨日、一時的に最大魔力を上げるドリンクが完成したのにゃ!」
「マジか! 言ってたヤツか!?」
「にゃ! そうだにゃ!」
「調合したヤツ見せてくれ……って5本も作ったのか!? 天才かよナーゴ!」
ヨロイさんが興奮したようにナーゴの背中を叩く。褒められたナーゴが胸を張る。そのやり取りは、新しい発見をした時の……いつもの2人の様子そのものだ。
「しかし鎧が獲得したスキル……継承とはすごいな。初めて見たぞ」
「ここ出たらリレイラさんに聞いてみないとね~!」
いつの間にかジークとミナセさんも隣を歩いていた。2人とも、いつもの調子で。
「勝者ナイフッ!!」
勝者マンが、私達の横をすり抜けようとしてナーゴに裏拳をされてしまう。ナーゴは、勝者マンの首をガッと掴んで逃げられなくする。
「ちょ!? 勝者マン! 倒したリザードマンに攻撃しようとするのはやめるにゃ!」
「勝者! ……」
一気にしおらしくなる勝者マンにまた笑ってしまった。
ヨロイさんの周囲が一気に賑やかになる。なんだ、みんなヨロイさんのこと元気付けたかったんじゃない。
横を見ると、ヨロイさんも小さく笑っていた。
「ほら、早く降りましょうよ! ボヤっとしてたら北棟のみんな攻略終わっちゃうわよ!」
「おい、引っ張るなってアイル」
「嫌だもーん!」
……良かった。元気になってくれて。
攻略を完了した私達は、南棟を降りていった。
ヨロイさんがラムルザを倒した瞬間、私達と戦っていた竜人達は静まり返った。戦闘を終えたと感知したドローンが私の肩に止まる。それを掴んでドローン用のポーチに戻した。
竜人達の戦意は嘘のように消えてしまって、最後にラムルザの名前を呼んだ竜人の魔導士は座り込んで泣き出してしまった。
「ラムルザ様ぁ……」
「な、泣くなよミュゼ……アイツは俺達を裏切って……」
「ラムルザ様は裏切ってなどおりません! 裏切っているのなら、なぜ私達にあのように語りかけて下さったのですか!? 死の淵で残された言葉が嘘だとでも!?」
「い、いや……そんな事は……」
ミュゼという竜人と他の竜人達が揉めている。ジークもミナセさんも、みんな困惑したような顔で彼らから距離を取って私の所にやって来た。
「どういう事なんだこれは……」
「なんだかあの竜人達子供? っぽくない……?」
ジークとミナセさんが戸惑ったように周囲を見渡す。私もさっきからビックリしてる。いくら仲間がやられたとはいえ、戦闘を放棄するなんて……もしかしてこの竜人達、戦い慣れてないの?
ラムルザは本丸は北棟だって言ってた。リザードマンばかりの配置。最上階は戦闘に慣れていない竜人にラムルザだけなんて……彼らに南棟を守らせたヤツは最低じゃない。どう考えてもおかしいよ、こんなの。
その時、ラムルザに殴り飛ばされた竜人が仲間達に呼びかけた。
「な、何をやってるお前達! 早く人間を倒せ!」
「ザイトス……だ、だけどラムルザ様を倒したヤツがいるんだぞ!? 俺達には……」
「馬鹿か!? 人間を倒さなければ我々は……っ!?」
戸惑う竜人達にザイトスという竜人は怒りをぶつけた。
「我々は……なんだよ?」
ふらりとザイトスの前にやって来たヨロイさん。彼は、問い詰めるようにその竜人の顔を覗き込む。ザイトスは、ヨロイさんに向かって喚き散らした。
「我々はあの魔法障壁に閉じ込められたままだ!! お前達を贄にして神様を復活させないとここから」
「出られない……か?」
ヨロイさんがザイトスの腕をグイッと掴み上げ、その右手の腕輪を外した。
「ぐっ!? 何をする!?」
「この腕輪には装備者が死ぬとレベルポイントを吸い出す仕掛けが施してある。神を復活させてここから出ようって連中がなぜそんな装備を付けている?」
「それは自分が死んだ時に仲間達の糧になる為に……」
「糧、ねぇ。お前達は糧になる為にここに置き去りにされているのか? なぜその状況を受け入れている?」
「う、うぐぐ……司祭様の言葉を愚弄する気か!!」
「分からねぇようなら教えてやるよ」
ヨロイさんは、ザイトスの顔を殴り付けてその胸ぐらを掴んだ。
「ラムルザは命を賭けてここで戦った。お前達と一緒にな。司祭は? 他の竜人達を抱え込んで北棟にいる司祭様はお前達を救ってくれようとしてんのかよ!?」
「あ……」
「お前らはなぁ!! 司祭に見殺しにされたんだよ!! 俺達を分断して! 足止めする為だけにな!!」
ザイトスは反論しようと口を開けたけど、何も言えずに俯いてしまった。ヨロイさんはザイトスが視線を逸らすの許さないように、その顎を持って無理矢理にその目を覗き込んだ。
「言ってみろ!!! お前達にここから逃げろと言ったヤツはいるのか!? 一緒に戦ってくれたヤツは!? 司祭がやってくれたのか!?」
ザワザワと竜人達が騒ぎ出した。彼らはハッとした顔になってラムルザの名前を呼びだした。
「ラムルザ様は俺達に逃げろって……」
「よく考えたらおかしいよ。なんであの人が囮になってるの?」
「司祭様が……俺達を……?」
「ラムルザ様は分かっていて私達の側にいてくれたの……?」
仲間達の様子を見てミュゼが手で顔を覆った。
「バカよみんな……私も……なんで……ここに来る前に気付かなかったの……戦う前に気付かなかったの……ラムルザ様に……守って貰ってたって……」
ミュゼの啜り泣く声が聞こえる。彼らは1人、また1人と嗚咽を漏らし始めた。
ヨロイさんは、その様子を見て右手を震わせた。
「泣くんじゃねぇ!!! お前らが後悔したってもう戻らねぇんだ! 俺がヤツを殺した! 弱虫のお前らと最後まで一緒にいたアイツをだ!!」
ザイトスも、何かに気付いたように目を見開いて、剣を離した。カランと甲高い音を鳴らしながら剣が転がる。
「お、俺は……ラムルザ、様に……酷い事を……あの人の誇りを、穢して……」
声を震わせるザイトス。ヨロイさんは、彼を睨み付けて絞り出すように声を出した。
「馬鹿野郎。お前ら仲間じゃねえのかよ……なんで今更後悔してんだ……」
ヨロイさん、怒ってる。前に私を守ってくれた時みたいにすごく……。
ザイトスから手を離したヨロイさんはアスカルオの鞘に手をかけた。彼のヘルムの奥の瞳がギラリと光る。
「ラムルザのお前達への言葉……きっと助けたかったはずだ。だから……だから!! 今だけは見逃してやる!! さっさと行け!!」
「は、はい……」
竜人達がみんな腕輪を外してその場から去っていく。唯一、ミュゼという魔導士だけは、去り際にペコリと頭を下げてからその場を立ち去った。
腕をダラリと下ろすヨロイさん。その姿が心配で、私はヨロイさんの所に駆け寄った。ヨロイさんは私の顔を見て項垂れてしまう。
「俺は甘かったか……?」
「ううん……そんなことない。きっとラムルザも喜んでるわ」
「……」
沈黙が続く。しばらく黙り込んだあと、彼はポツリと呟いた。
「アイル、ラムルザの体燃やしてやってくれ。このままにはしておけねぇ」
「分かったわ」
魔力を込めて杖をラムルザへ向ける。なぜか、隣にいるヨロイさんが泣いているような気がしてしまう。彼は戦っている時何を感じていたんだろう? 戦っていた相手の為にここまで……私があの戦闘で隣にいられなかったことがすごく悔しい。
あそこにいたら、ヨロイさんの悲しみをほんの少しでも分かってあげられたかもしれないのに。
「火炎魔法」
杖から放たれた魔法がラムルザの体を燃やしていく。私達は、その様子をヨロイさんの側で見守っていた。
◇◇◇
ラムルザの遺体を燃やし尽くした後、ヨロイさんはいつものような間の抜けた声を出した。
「そろそろ降りるか。北棟の攻略終わる前にボス戦の準備しないとな」
ヨロイさんが伸びをして階段を降りていく。なんて声をかけていいのか迷っていたらミナセさんに耳打ちされた。
「ほら、アイルちゃん行ってあげてよ」
「え……」
「俺達にはどうしてやることもできない。天王洲しか適任はいないだろう」
「ジークまで何言ってるのよ……」
「ここにいるメンバーだとアイルちゃんしかヨロさんを癒してあげられないにゃ」
ナーゴも腕を組んでウンウンと頷く。隣で勝者マンも同じように私を見て頷いた。
「……そうね、うん。やってみる」
私は駆け出してヨロイさんの腕に抱き付いた。突然抱き付かれてヨロイさんはさっきよりも、もっと間の抜けた声を出した。
「なんだよ。危ねぇだろ」
バランスを崩してヨロヨロと階段を降りるヨロイさん。彼が落ちないようにその腕をギュッと抱きしめる。
「離してくれよ」
「嫌。絶対離さないもん」
「はぁ……好きにしろ」
何度か離そうとしてヨロイさんは諦めたようにため息を吐いた。私は何か別の話題が無いか考えて、思い付いた事を口にしてみる。
「ねぇ、イァク・ザァド戦にプラン変更とか無いの? 結構レベルポイント稼いだからみんなスキルツリー強化できると思うし」
「そうだな。俺もラムルザから「ストルムブレイド」って技引き継いだからな。それも使っていこうかと思うけどよ」
「けど?」
ヨロイさんが急に言い淀む。何か重大な問題が起きたのか心配して言葉を待っていると、彼は私から顔を逸らした。
「ん~いやぁ……」
なぜかヨロイさんは言いにくそうだ。
「言ってよ。相棒でしょ?」
「それがなぁ……」
なんだか煮え切らない。ヨロイさんはうんうん唸った後、申し訳なさそうに呟いた。
「……必要魔力が多すぎて使えねぇ」
「へ?」
「スマホでスキルの詳細見たんだけどよ、魔力消費量が今の俺の魔力全部使っても足りないんだよ。俺の全魔力の1.5倍はかかる」
「どうするのよ?」
「分かんねぇ」
「なんで最初に言わなかったのよ?」
「いや……だってよ……あんな託され方した技使えないとか、その、恥ずかしいだろ……」
恥ずかしい。なんだか、本当に申し訳なさそうな、恥ずかしそうな姿に吹き出してしまった。
「笑うなって」
まだ引きずってるかもしれないけど、少しだけ安心する。
「ちょっと私にも見せて……ホントだ。これは確かに」
2人でスマホを覗き込んでいると、後ろからナーゴの声がした。
「ふっふっふ。そんな時はナーゴにおまかせにゃ! 実は昨日、一時的に最大魔力を上げるドリンクが完成したのにゃ!」
「マジか! 言ってたヤツか!?」
「にゃ! そうだにゃ!」
「調合したヤツ見せてくれ……って5本も作ったのか!? 天才かよナーゴ!」
ヨロイさんが興奮したようにナーゴの背中を叩く。褒められたナーゴが胸を張る。そのやり取りは、新しい発見をした時の……いつもの2人の様子そのものだ。
「しかし鎧が獲得したスキル……継承とはすごいな。初めて見たぞ」
「ここ出たらリレイラさんに聞いてみないとね~!」
いつの間にかジークとミナセさんも隣を歩いていた。2人とも、いつもの調子で。
「勝者ナイフッ!!」
勝者マンが、私達の横をすり抜けようとしてナーゴに裏拳をされてしまう。ナーゴは、勝者マンの首をガッと掴んで逃げられなくする。
「ちょ!? 勝者マン! 倒したリザードマンに攻撃しようとするのはやめるにゃ!」
「勝者! ……」
一気にしおらしくなる勝者マンにまた笑ってしまった。
ヨロイさんの周囲が一気に賑やかになる。なんだ、みんなヨロイさんのこと元気付けたかったんじゃない。
横を見ると、ヨロイさんも小さく笑っていた。
「ほら、早く降りましょうよ! ボヤっとしてたら北棟のみんな攻略終わっちゃうわよ!」
「おい、引っ張るなってアイル」
「嫌だもーん!」
……良かった。元気になってくれて。
攻略を完了した私達は、南棟を降りていった。
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