461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第223話 海底ダンジョン

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 海ほたるから転移魔法陣に乗った俺とアイルとタルパ。目の前を包んでいた白い光が消え去った時、目の前には大きな三角形の建物、風の塔があった。円柱を斜めにカットしたようなその見た目はかなりのインパクトがある。

「大きい……」

 タルパが上を見上げる。アイルが周辺をキョロキョロと見渡した。風の塔の遥か向こうに俺達がいた海ほたるが見える。結構距離があるな。

「確かこの塔って海底トンネルへ外気を送ってるのよね。ネットに書いてあったわ」

 海ほたる海底ダンジョンはそれ自体がダンジョンじゃない。もしココがダンジョン化していたら、神奈川と千葉を繋ぐ海底トンネルが塞がれて大混乱していただろう。結果として、ダンジョンの座標がズレたのは良かったかもな。

 ……っとリレイラさんの話じゃここからさらに魔法陣に乗るんだったよな。どこだ?

 3人で風の塔周辺を探すと、海ほたるとは反対側に大きな魔法陣があった。その中へ入ってしばらく待つ。しかし、魔法が発動しない。

「あれ? この魔法陣壊れてる?」

「そんな事あるのでしょうか?」

 アイルとタルパが不思議そうに周囲を見渡した時、魔法陣から透明な壁が現れる。それは俺達を包むようにドーム状の球体になると、フワリと空中に浮かんだ。

 空中に浮かんだ俺達は魔法陣を中心にして大きなシャボン玉のような魔法障壁に包まれていた。

「わ!? すごいわよこれ! 映像撮っとこ!」

「すごい……綺麗……」

 アイルが慌ててドローンを飛ばす。俺達にカメラを向けたドローンに赤いランプが灯った。


〈配信開始早いな〉
〈あれ? 461さん達浮いてる?〉
〈おっきいシャボン玉に包まれてるんだ!?〉
〈海底ダンジョンまではこの球体障壁で侵入する:wotaku〉
〈やば〉
〈海の中に入っていくお!〉


 球体が海の中に入る。球体が明るい光を発し、真っ青な海中の風景が見渡せた。

「すご~! ねぇヨロイさん! こんなの見た事ある!?」

「いや、俺も初めてだ」

 海底か……栃木の地底湖ダンジョンは挑んだ事があるが、あれは洞窟みたいなダンジョンだった。こういう趣向は珍しいな。

 そう考えると無性にワクワクしてくる。タルパの為と思ったが、かなり楽しめそうだ。

 海の中を球体が進む。魚の群れの中を球体障壁が通り抜けて、まるで水族館にでもいるような錯覚を覚えた。


〈!?!?!!?〉
〈ビックリおじさんがいつもと違うw〉
〈めちゃくちゃ映えるな~〉
〈綺麗だお!〉
〈海底ダンジョンは日本に3つしかない。映像に映る事は少ない:wotaku〉
〈見られてラッキーなんだ!〉
〈ひゃだ!?私も行ってみたいわ!〉
〈ネキも来たw〉


 しばらく球体が進むと、海底にドーム状の魔法障壁が見えてくる。球体が魔法障壁の中へと入った。

 フワフワとダンジョン内を浮かぶ俺達。それがやがてゆっくりと下へと降りていく。海底ダンジョン内を見渡す。透明な半球に全体が包まれたような造形。その中に四角い石舞台があり、通路や階段でいくつも石舞台が繋がれていた。ここから見える最奥には、ピラミッドのような建造物も見えた。

「見渡せる分迷いはしないだろうが、あの構造……進む度に敵が出現しそうだな」
「渋谷ヒカリエを横にしたみたいな構造ね。敵と連戦していくタイプかも」

 俺とアイルが同時に同じような事を言ったので、思わず顔を見合わせてしまう。隣で見ていたタルパは、俺達の様子にクスクスと笑いをこぼしていた。

「ふふっ。同じ事を考えてるんですね」

「ちょっと! その……アレよ! 相棒、だし……」

 アイルは顔を真っ赤にして両手をブンブンと振っていた。


〈wwwww〉
〈相棒だからね、仕方ないね〉
〈尊い〉
〈アイルちゃん顔真っ赤なんだ!〉
〈青春ね~〉
〈なぜか胸が痛い〉
〈ダメージ受けてるヤツいるぞw〉
〈これがいいんだお!〉


 俺達の乗っていた球体が最初の石舞台に到着する。球体が消え、魔法陣から石舞台へ一歩踏み出すと、アイルが周辺を歩き回った。

「見てタルパちゃん!! 下もすごく綺麗よ!」

「本当ですね……魔法障壁が光ってて海の中が見えます」


〈想像以上の景色だな:wotaku〉
〈魚が飛んでいるみたいなんだ!〉
〈俺ちょっとツェッターで拡散してくる!〉
〈僕もみんなに見せたいお!〉
〈私もみんなに教えなきゃ!!〉
〈絶対バズるだろこんなのw〉


(見て、みんなすごくテンション上がってる! 成功よ!)

 アイルが耳打ちして来る。確かに、人を呼ぶと考えた時、このダンジョンほど最適な場所は無いな。リレイラさんのリサーチ力はすごいな。ダンジョン配信者のマネージャーもできるんじゃないか?

 そんな事を考えていると、早速モンスターが現れた。軽自動車ほどの大きな魚。それが魔力の波を起こしながら空中を泳いでいた。

「な、何ですかあれ……!?」
「デカッ!? ていうか空を泳いでる!?」


〈!!?!!!?〉
〈え、ジョー⚪︎?〉
〈サメじゃないだろ〉
〈カサゴに見える〉
〈めちゃくちゃ強そうなんだ!?〉
〈空飛んでるとかやば!?〉
〈いきなり出てきたわね!〉
〈あんなの目の前にしたら失神するお!〉
〈綺麗だけど危なそうなダンジョンだなぁ〉


 アイルとタルパが驚いたような声を出す。このタイプのモンスターは俺も滅多に見ないからな。俺が見たのも地底湖ダンジョン以来か。しかもここのは空中を泳いでいる。アイル達が驚くのも無理ないか。

「ニドロックフィッシュの亜種だろう。ヒレについてる針……アレを飛ばしてくるから気を付けろよ」

「よ、461さん。私が戦ってみて……いいですか?」

 タルパがオドオドと手を上げる。……初めて見るモンスターに挑みたいか。気合い入ってるな。

「いいぜ。さっき言ったみたいに針には気を付けろよ」

「危なかったら助けるからねタルパちゃん!」

「はい!」

 タルパがニドロックフィッシュに向かい合う。彼女は、目を閉じると魔法名を告げた。



◇◇◇

 ~タルパマスター~

夢想魔法レヴァリエ

 現れる2体の人間大の熊のぬいぐるみ。私は、その2体と共にニドロックフィッシュの元へ駆け出す。まずは敵の観察。そこで空想魔法で何を呼び出すか見定めるんだ。


〈タルパマスター1人で大丈夫!?〉
〈Bランクだから大丈夫だろ〉
〈でもなったばっかりだお!?〉
〈きっと大丈夫なんだ!〉
〈その行動力……嫌いじゃないわ!〉


「シャアアア!!」

 私達に気付いたニドロックフィッシュがヒレに付いた針を発射する。1メートルはあるかという巨大な針が地面に突き刺さる。撹乱が必要か。

「お願い!」

 ぬいぐるみ達を散開させてニドロックフィッシュの狙いを逸らす。

「シャ!?」

 右のぬいぐるみに針を発射するニドロックフィッシュ。その隙を突いて、魚の下に滑り込んだ。

「夢想魔法《レヴァリエ》!!」

 翳した手に魔法陣が現れ、拳ほどの小さなぬいぐるみ達が大量に発射される。弾丸のように飛んだそれは、ニドロックフィッシュのお腹に直撃する。

「ジャアアアアア!?」

 しかし、ニドロックフィッシュは体を捻ると、残りのぬいぐるみ達を避けてしまった。


「シャッ!!!」


 空中でクルリと身を翻したニドロックフィッシュ。そのエラから周囲に針が発射される。私はなんとかローリングで躱せたけど、他のぬいぐるみ達は貫かれて消滅してしまう。



〈!!?!?!?!?!?〉
〈うわあああああ!?〉
〈範囲攻撃なんだ!?〉
〈タルパちゃん……死なないでぇ……〉
〈もう次の針が装填されてるお!〉
〈連続でも発射できるんか!〉
〈通常のニドロックフィッシュより強力だな:wotaku〉


「シャアアアアア!!!」


 連続で発射される範囲攻撃。それを躱しながら石舞台の上を駆け抜ける。攻撃範囲は広いけど、あの攻撃中は動きは遅い。なら、強力な攻撃も当てられるはず……っ!

 問題はあの針だ。あの針を受けないモノを呼び出せばいいんだ。

 硬いもの……威力が高い……鉄? ポイズン社長に見せて貰ったあの映画に出るヤツなら……そのイメージに、461さん達が試験の時に戦っていた精霊のイメージを混ぜれば……。


 イメージを固める。想像で足りない所は実際に目にした物から引っ張って、頭の中で形を練り上げる。


 目を閉じながら走って、固めたイメージを出力するように魔法名を告げた。


空想魔法ハイレヴァリエ!!!」


 直後、地面から鉄でできた巨人が現れる。上空に伸びた大きな円柱のような頭。その中心に四角い形をした1つ目がビカリと光る。5メートルほどの大きさの異形の巨人は、金属音を鳴らしながらゆっくりと立ち上がった。


「……」


〈は!?〉
〈え、何これ?〉
〈召喚魔法かお?〉
〈夢想魔法の派生?いや、そんなのは無かったはず:wotaku〉
〈これってチェルノアル……〉
〈ファッ!?ロボットやんけ!〉
〈頭の形が変だしゴーレムじゃない?〉 
〈大きいけど可愛いわね!嫌いじゃないわ!〉
〈強そうなんだ!!〉


「シャッ!?」


 ニドロックフィッシュが焦ったように全方位に針を発射する。巨人に当たった針は、甲高い音を立てながら地面に落ちていく。

 巨人がゆっくりと歩き出す。ニドロックフィッシュの前までやって来たゴーレムは、その拳を振り上げた。

「グオオオオオオ!!!!」

 巨人の右拳がニドロックフィッシュの胴体に叩き込まれる。そのまま絡めとるようにニドロックフィッシュを地面に叩きつける巨人。ニドロックフィッシュは、ビクビクと痙攣すると、体中からレベルポイントの光を溢れさせた。

『レベルポイントを2000pt獲得しました』

〈!!?!!!??〉
〈え、初見だろ?〉
〈やるわね、あの子〉
〈てかあの魔法凄すぎぃ!?〉
〈2000pt級を一撃!?〉
〈ニドロックフィッシュはかなりの強敵:wotaku〉
〈めっちゃ強いじゃん!〉
〈タルパマスターってこんなに強かったっけ?〉
〈エキスパートだから当然なんだ!〉
〈さすが新宿攻略組だお!〉



「すごいわタルパちゃん! あんな魔法初めて見たわよ!」

「フィリナさんに特訓して貰って……頭の中で想像した物を召喚できるようになったんです」

 驚いてくれるアイルさんと対照的に、461さんが顎に手を当てて考え込む。どうしたんだろう?

「今の魔法、以前の夢想魔法よりも魔力消費上がって無いか?」

「え……そ、そうです」

 確かに、今の魔法で自分の魔力を3分の1くらい使ってしまった。元々夢想魔法自体が燃費が悪い魔法だったから、より強力な存在を生み出せるようになった代わりに、それに比例して魔力消費が高くなってしまう。でもそれを一目で見抜かれるなんて……。

「あんまり戦わせると後半息切れしそうだな。次からは俺とアイルがメインで戦うぜ」

「はい……」

 ちょっと残念な気持ちになる。461さんは最初に私に戦い方を教えてくれた先生だ。期待していた訳じゃないけど、もう少し褒めて貰えると思ってた……。

「だが」

 なぜだか461さんが笑ったような気がした。

「新宿で身に付けた撹乱、行動制限に加えてヤツの攻撃特徴を見抜く観察力も上出来だ。その上であの巨人を召喚したんだろ? 強くなったな、タルパ」

「え」

「その魔法、切り札にさせて貰うぜ」

 461さんは、クルリと振り返ると「早く先に行こう」と言った。ビックリしてその背中を見ていると、アイルさんに肩を叩かれる。

「良かったね、アレは相当頼りにされてるわよ?」

 頼りに? 私が?

 嬉しい気持ちになる。自分が1人前の探索者だと言って貰えたような……そんな気がした。

「はい!」

 最初のモンスターを倒した私達は、海底ダンジョンの奥へと進んだ。


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