461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第226話 シンに届け

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 ~タルパマスター~

 ボスが消滅する。溢れるレベルポイントの光。いつもだったらどれくらいのポイントが入ったか気になるけど、今日はそうじゃない。心臓がうるさいほど高鳴って、手が震える。

「ここからよ。タルパちゃん、準備はいい?」

「はい」

 アイルさんがドローンを操作すると、ドローンのカメラが私を向いた。461さんが私を見てコクリと頷く。大きく息を吸ってカメラの方へと目を向ける。同時接続数も120万人を超えていた。

 言うんだ。この為にここに来たんだから。

「皆さん、今日は私達の配信を見て頂きありがとうございます。実は今日、伝えたい事があって配信を企画しました」


〈タルパマスターだ〉
〈伝えたいこと?〉
〈どしたん話きこか?〉
〈お知らせかな?〉
〈真剣な顔だお〉
〈大事な話なんだ!〉
〈新チャンネル開設とか……ではなさそうね〉
〈がんばれ:wotaku〉
〈気になる〉
〈ユニット結成とか?〉
〈それいいな〉
〈次もコラボ?〉


 大量に流れるコメント。みんな、私が何を言うのかと疑問に思っているようだった。

「新宿迷宮に挑んだ時、私はある人とパーティを組む約束をしました。だけど、その人はダンジョンを攻略した後から行方不明になってしまって……きっと、何かの事情で私と連絡を取れないのだと思います」


〈は?〉
〈なんだそれ〉
〈なんか流れが……〉
〈俺イァク・ザァド戦で見たかも〉
〈見たわ!かわいい男の子よ!〉
〈マジ?〉
〈タルパちゃんの彼氏?〉
〈ショックなんだけど〉
〈なんかコメ民怒ってる?〉
〈当たり前だろ〉
〈やめて〉
〈そういうの良くないよタルパちゃん〉
〈きっと大事な人なんだ!〉
〈配信までして健気だお!〉


 手を握りしめる。私のファンになってくれた人達はガッカリしてる。私のことを嫌いになるかもしれない、だけど……私は伝えたい。


 私のワガママだけど、それが私のしたいことなの。私がもし、配信者でいられなくなったとしても……。


「シン君。私は……君の事が好き、です。君とパーティを組んで、また冒険がしたい。それがどうしても伝えたくて……」


 それを言葉にした瞬間、涙がこぼれ落ちた。


〈!!?!?!?!!?〉
〈ええええええええええ!?〉
〈ひゃだ!?告白よ!?〉
〈がんばるのだ〉
〈ちょ、待て〉
〈頭回らん〉
〈はぁ?〉
〈素敵なんだ!〉
〈泣けるお!!〉
〈やるじゃん〉


 シン君とのことが頭に浮かぶ。


 あのビルで交わした約束のことが。


 私を助ける為にラムルザと戦ってくれたことが。

 一緒に461さん達に教えて貰ったことが。


 パララもん達を助けたことが。


 ……短い間だったけど、その全部が、私にはかけがえの無いものばかりだったから。


 少しの間のことだったのに、私って変なのかな? でも、好きなの。好きで好きで仕方ないの、君の事が……ちょっと気が弱くて、でもいつも誰かを助けたいって思っていて、一生懸命な君が。


 涙が止まらない。君の声が聞きたい。話がしたい。その顔が見たい。その手に触れたい。何気ない話をして、一緒に驚いたり、怖がったり、笑ったりして……冒険をしたい。色んな物を一緒に見たい。



 会いたい。



 会いたいよ……シン君。



〈いや、配信で言っても無理だろ〉
〈そういう所見たくない〉
〈配信者失格〉
〈推してたのに……〉
〈好きな男いるとか〉
〈騙された〉


 こういう事が嫌いな人もいる。私に裏切られたって思ってる人もいる。初めから分かってた事だ。この配信をやると決めた時から覚悟してた。ごめんね……みんな。でも、私は……。


「君を引き止められなかったのが最後なんて、嫌、なの……」


〈タルパちゃん、泣かないでぇ……〉
〈あんまり叩くなよ〉
〈泣いてるじゃん〉
〈可哀想だお〉
〈思いつめてたんだと思う〉
〈キツイ事言うのやめてあげて〉
〈そんな思いで攻略してたのね……〉
〈何とかしてあげたいんだ!〉
〈気持ち分かる:wotaku〉


 応援してくれる人もいる。だから私は自分の想いを伝えるだけ。それが今、私がやりたい事だから。


「シン君」


 笑顔で伝えないと。もしかしたらシン君も不安な気持ちになってるかもしれない。私が泣いてちゃ……笑顔を作るけど、涙が止められない。


「ま、待ってるから……ひぐっ、私、ずっと君のこと待ってるから……だから、お願い。声を聞かせて? また君に会いたいよ……」


 とめどなく涙が溢れて来て、私はそれ以上話せなくなってしまった。それ以上言葉が伝えられなくて俯いてしまう。アイルさんが私のところにやってきて、そっと抱きしめてくれた。


「見てくれたみんなにお願いがあるの。タルパちゃんのメッセージを拡散してくれない? みんなが協力してくれたら、今の言葉もきっとシンに届くと思うの」

 
 嗚咽が止まらない。アイルさんは、私の背中をさすりながら言葉を続けた。


「みんな、この方法を選んだタルパちゃんの想いを、覚悟を……分かってあげて」


〈悪かったって〉
〈もう泣かないでぇ……〉
〈しゃあないな〉
〈俺、切り抜きあげてくるわ〉
〈俺も〉
〈僕はスレ立てするんだ!〉
〈じゃあツェッターで拡散するお!〉
〈私、知り合いにまとめサイトの管理人いるのよね〉
〈ネキが強すぎる〉
〈俺もなんかやってみる!〉
〈推しが泣くとこ見たくないしな〉


 目の前に大量のコメントが流れていく。もっと厳しいコメントが来ると思ったけど、みんな優しいコメントばかりだった。

「ありがとう……みんな」

 私は、色んな人に助けられてる。ずっと1人だった昔と違う。色んな人と仲良くなれて、助けて貰って。ここにいる。でも、シン君は今1人かもしれない。孤独だと思っているかもしれない。

 違うよシン君。

 みんなが私に協力してくれたのは……461さんや、アイルちゃんや、みんなが君を心配してくれたからでもあるんだよ? 君がみんなの仲間だから。



 お願い。


 どうか、シン君に届いて。



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