461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

文字の大きさ
276 / 302

第263話 461さん、相棒の父親と知り合いになる

しおりを挟む
 赤髪に無精髭の男……アイルの父親、桜田さくらだ賢人けんとが不思議そうに顎を摩る。

「なんで俺の名前知ってるんだ? アイテムの取引した事あったか……? アンタ、名前は?」

「よ、461……」

「鎧? 変わった名前だな~。うぅん……客の名前忘れてるとしたらヤバイな……すまん兄さん、どこであったか詳しく教えてくれないか? 絶対思い出すからよ」

 どうする? 適当な事言って誤魔化すか? いや、でもこの時代に来たばかりだし誤った事でも話したら余計怪しまれるぞ……。

「い、いや……」

 考えろ。この時代にあったダンジョンで言えそうなヤツ……ヤバイと言えば群馬か? 

 あれ? 群馬の生態系変わったのいつだっけ? 群馬群馬……そういや、リレイラさんが転勤する前になんか群馬でヤバイダンジョンに行った気がするな……なんだっけ? 思い出せねぇ……。

「んん?」

 俺が悩んでいる間に桜田賢人がシンへ目を向ける。彼はズイッとシンに近付くと、怪訝な顔で首を傾げた。

「少年も……なんか知り合いにめちゃくちゃ似てるんだが。君、九条っていう親戚いるか?」

「え、はは……知らないですねぇ……他人の空似ですよ、きっと」

「なんか怪しい反応だなぁ」

 桜田賢人の顔が疑いの表情になってしまう。その時、突然タルパがシンの腕にギュッと抱きついた。

「九条なんて名前! く、九条ネギくらいしか聞いた事ありません! ねぇシン君!?」

 訳の分からないフォローを入れながらシンの腕へ抱き付くタルパ。目を泳がせながら顔を真っ赤にするシン。混乱してるのか恥ずかしいのか分からない顔してるなシンのヤツ……。

(た、タルパちゃん……!? 腕に胸が……!?)
(え……? きゃあっ!?)

 バッと距離を取って恥ずかしそうになる2人。顔を真っ赤にした2人はお互いに背を向けてモジモジしだした。

「なーにを惚気のろけておるのじゃこの2人は……」

 シィーリアが呆れたような顔でため息を吐く。桜田賢人がどんな顔をしているのか恐る恐る見てみると、彼は苦笑しながら頭を掻いていた。

「なんか変わったパーティだな。すまねぇな少年。俺の友人と関係あるのかと思っただけなんだ」

 カオス感あるが、タルパのおかげで場の空気が変わったな。この間に呼び止めた事も流すか。

「その腰の剣」

「これか?」

 桜田賢人が腰の剣……紫電の剣に目を向ける。

「そう、それって紫電の剣ってヤツだろ? 風の噂で聞いたんだ。桜田賢人ってヤツがスゲーレアアイテムを手に入れたってよ。それでつい……悪かったな、その、呼び止めて」

 どうだ……? 以前リレイラさんに紫電の剣は相当なレアアイテムだと聞いた事がある。それならこの時代でも有名なはずだ。もし誰に聞いたとか質問されたらダンジョン管理局の名前出そう。それで無理やり誤魔化してやる。

 緊張で汗が頬を伝う。しかし俺の焦りとは裏腹に、桜田賢人は嬉しそうな顔をした。

「ああ、これは京都の嵐山ダンジョンで手に入れたんだ。天雲あまくもりゅうってボスがいてよ。ソイツが飲み込んでた」


 天雲の龍?


 ……。


 そんなボス聞いた事もねぇぞ!?


 初めて聞くダンジョン名、初めて聞くボスの名前。俺の不安は一気に吹き飛び、胸の奥が燃え上がるほどテンションが高まってしまう。


「そんなヤツがいるのかよ!? 俺も行きたくなって来たぜ、嵐山ダンジョン!」


「お、兄さんも好きで攻略してるクチか!」


 桜田賢人はニカリと笑い、ゴソゴソと探索者用バッグからスマホを取り出す。その顔ですぐ分かった。桜田賢人もダンジョン攻略が大好きなんだってことが。

「今度行ってみるといい! 西のダンジョンも最高だぜ~? なんつってもこっち東京とは規模が違う!」

 桜田賢人がスマホを取り出して嵐山ダンジョンの位置を教えてくれる。俺の好きな西洋風なイメージじゃなく、寺や竹林がダンジョン化している雰囲気……これも楽しそうだな。

「この寺がダンジョンの入り口でよ! 裏には長い竹林があってモンスターが……」

 桜田賢人のスマホ。そのアルバムに映る4人のパーティメンバー。そこに九条の姿もあった。だけど、俺の知ってる九条じゃない。もっと楽しそうで、シンに近い雰囲気だ。

 ふと横を見ると、シンとタルパもスマホを覗き込んでいた。シンも思う所あるかもな……過去の記憶を共有していてもおかしくないし。

「そうそう、ここに中ボスがいてよ~! アオイが……あ、すまん、俺のパーティメンバーが舐めてかかるから危うく飲み込まれそうになってよ~俺達全員で引っ張り出して……」

 桜田賢人にダンジョンの話を聞いていると、急に腕を引かれた。下を見ると、シィーリアが指でチョイチョイとジェスチャーする。しゃがみ込むと彼女は俺に耳打ちして来た。

(ヨロイ、お主……コヤツと知り合いになっておくのじゃぞ。これは今日中になんとかできる問題ではないからの)

 今日中に解決できない? 

(じゃあこの12年前の世界でしばらく過ごすってことかよ)

(妾とタルパでまずは宿を確保する。お主は桜田賢人と連絡先を交換しておくのじゃ。ここでコヤツと会ったという事は絶対に願いの中心と関係がある)

 願いの中心か。元の時代に帰るには願いの中心を見つけなきゃいけないと言っていたな。アイルの親父さんが……? それじゃあここは……。

(ここで逃せば妾達の帰還は困難になるやもしれぬ。絶対に繋がりを持つのじゃぞ!)

(分かったって)

(スマホは……問題なく使えるのう)

 この時代でもスマホで連絡が取れる事を確認すると、シィーリアはわざとらしい演技でタルパの腕を引っ張った。

「ねぇ~お姉ちゃん~! 妾疲れたぁ~! ホテル戻ろ~!!」

「え、え? ど、どういう事ですシィーリアさん?」

 困惑するタルパを引きずりながらシィーリアは妻恋坂つまこいざか交差点の方へ歩いて行く。彼女は振り返ると大きく手を振った。

「おじさん~! 観光終わったら連絡してね~! いいダンジョン見つけておいてね~!」

 おじさんって俺の事かよ。


 ……否定はしないけどシィーリアよりは歳下だろ。なんか納得いかねぇな。



◇◇◇

 シィーリアとタルパと別れた後、俺とシンは、桜田賢人を手伝ってアイテムショップまでアイテムを運ぶ事にした。

 末広町交差点を御徒町方面へ。俺が知っている洋食屋、冒険家Bの近くの高架下……そこに目的のアイテムショップがあった。

 しかし、俺の知っている高架下とは違う。俺が通っている場所は探索者用のショップが立ち並んだスペースだ。だけど2020年のそこは、家具や小物を扱う店が立ち並んでいる洒落た空間。ガチガチの探索者装備で身を固めた俺達には全く似つかわしくない場所だった。

 アイテムショップに入るまでは良かったが、そこから出た瞬間、目の前にいたカップルが足早にその場を去ってしまった。

「え、何あれ……コスプレ?」
「不審者? 近付かない方がいいわ……」

 彼らの反応を見た桜田賢人は肩をすくめた。

「まだまだ探索者って珍しいのかねぇ……俺も街に出るたびに不審者扱いされて困るぜホント」

 アイルの親父さんもそんな悩み抱えてたのか。まぁ、マントやら防具やらを装備した上に腰に剣なんて下げてたら……浮くよなぁ。

 思い出す。俺も探索者始めたばかりの頃はよく警察に通報されたな。家の近くに鎧を着た不審者がいるって。毎回毎回説明するのが大変なんだよな。

「分かるぜ、その気持ち」

「鎧の兄さんもそうかい? お互い苦労するよなぁ……」

 うんうんと頷く俺達。ふと横を見るとシンが困ったような顔で俺を見ていた。

「いやぁ……全身鎧装備の461さんの場合はちょっと違うんじゃないですか?」

「うん? なんで俺は違うんだ?」

「あ、いや……! 気にしないで下さい!」

 苦笑いを浮かべるシン。そんなに俺の装備って変か? 実用性もあるしリレイラさんにも褒められるけどなぁ。


 ──か、カッコいい……!?


 頬を赤らめたリレイラさんの顔が浮かぶ。リレイラさんの為にも絶対元の時代へ帰らないと。


 ……。


 大通りまで戻って来た所で桜田賢人に礼を言われた。

「観光って言ってたよな? 今夜飯でも食わねえか? 手伝って貰った礼するからよ」

 シンへ視線を送ると彼は静かに首を振る。できれば早めに帰ってシィーリアに状況を確認しておきたい。知らず知らずのうちに墓穴掘っていたなんて勘弁願いたいからな。

「あ~ちょっと夜は用事あるんだ。それより良いダンジョン教えてくれよ。俺達まだ東京に詳しくないんだ」

 アイルの親父さんは俺に近いタイプだ。繋がりを持つにはダンジョン攻略が1番だろ、多分。

 そう思って提案してみると、彼が嬉しそうな顔になる。

「お、じゃあ明日珍しいダンジョンに連れてってやるよ」

「珍しいダンジョン?」

「そう、ボスしかいないダンジョン。中々ねぇ構造だろ?」

 ボスしかいないダンジョン……この辺にそんなのあったか?

 考えてもそれらしいのが思い付かない。だが上手くいったな。シィーリアも繋がり持っとけって言ってたし。

 こうして、俺達は桜田賢人と連絡先を交換し、ダンジョン攻略へ行く事になった。





しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...