461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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閑話 シィーリアと461さん

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 ~461さん~

 シィーリアに腕を引かれて妻恋坂交差点まで戻り、そこからさらに末広町の方へ。シィーリアはこちらを一切振り向かずに歩き続けた。

「おい、あの2人だけ残していいのかよ?」

「新宿以来の再会じゃろ? 再会直後にイシャルナとの戦闘、さらに時間魔法での転移……流石に可哀想すぎじゃ。少しはあの子らの気持ちも汲んでやらねばな」

 ふぅん……シィーリア、なんか怒ってるみたいだったが2人の事気にしてたんだな。素直じゃねぇなぁ。

 そんな事を考えながら彼女の後を着いていく。蔵前橋通りを歩いていると、親子丼専門店の前で肩を叩かれた。

 ん? なんだ?

 振り返った先には警察官が立っていた。

「あの~すみませんが、身分証をお願いします」

「え? ああ」

 身分証と言われて、反射的に探索者用スマホを差し出してしまう。警官は、俺のスマホをしげしげと眺めた。

「探索者ですね。なら、その格好でも……ん? なんだ? 『エキスパート』って」

 あ、しまった。エキスパートは新宿迷宮攻略の証……この時代にはまだそんな表記ねぇじゃん。

「なんだか怪しいな。本当に探索者? その子供も本当に知り合いか分からないし……」

 警官が腰の無線に手をかける。おいおい勘弁してくれよ。今日だけで何回疑われるんだよ俺……。

 考えていると、シィーリアが俺の前に仁王立ちした。

「申し訳無いが彼は妾の担当しておる探索者での。これから打ち合わせがあるのじゃ」

「え? 君、何を言って……」

 警官の言葉を遮るようにシィーリアがスマホを見せる。覗き込む警官。俺も一緒になって画面を見ると、そこにはダンジョン出現のニュース記事とシィーリアの写真が大きく映っていた。

「うん……? ダンジョン管理局東京本部の部長……シィーリア・エイブス!? ま、魔族!?」

 彼はシィーリアの顔と彼女のツノ、そしてスマホ画面を何度も見て後退りする。怯んでいる警察官にシィーリアが詰め寄った。

「なんじゃ? 妾は別に危害を加えようなどとは思っておらぬぞ。まぁ、お主が妾の探索者を連れて行くというのなら……考えがあるが?」


「す、すみません!! これで失礼します!!」


 足早に去って行く警官。それを見送りながらシィーリアはため息を吐いた。

「12年後も妾達を嫌う者はおるが、この時代よりマシじゃな」



◇◇◇

 警察官に止められた場所から少し歩いて、末広町交差点近く、ステーキ屋の横にあった喫茶店へ入る。シィーリアは手慣れた様子で注文し、奥のボックス席でコーヒーを啜り出した。

 俺も同じくコーヒーを頼んで席に着く。カウンターからやたら店員が見て来るが、シィーリアが一瞥すると店員は目を逸らして奥の扉へ入っていった。

 俺達以外誰もいない喫茶店。シィーリアと2人で店に入る事なんてないし、不思議な感覚がするな。

 「ふぅ……やっと一息吐いたわ」

 シィーリアがコーヒーをゴクリと飲む。瞬間、彼女の全身が波打ち、その目には涙が溜まっていた。苦いのか?

「なんだよ、苦いなら砂糖とか入れたらいいじゃねぇか」

「この苦味が好きなんじゃ。好きにさせてくれんかのう」

 変わったヤツ……。

「そういえば、お主……リレイラとはどこまで行ったのじゃ?」

「は? なんだよいきなり……?」

「もちろん、お主達に子が産まれたらこの世界初じゃからの。早めに聞き取りして迎える準備をせねば」

 ククッと笑うシィーリア。子供って気が早すぎだろ。

「というか、できるのか? 子供」

「大丈夫じゃ、やってできぬ事はない。成せばなるのじゃ。見てみたいのぅ……ジーク達の子と同じくらいお主達の子も見てみたい」

「ま、まぁ……がんばるけどよ……」

 シィーリアがぼんやりと遠くを見つめる姿は、見た目は幼いのにまるで人生の余暇を楽しむ老人のようだ。流石に言ったら怒るだろうな、これは。

 嬉しそうにコーヒーを飲むシィーリア。しかし、一口二口と口をつけるうちに彼女の顔が切なそうなものになっていく。

「……のう」

「なんだ?」

「妾はどうしたら良いのじゃろうな」

「なんだよそれ」

「イシャルナ様が引き起こした事が大き過ぎる。世界を壊すほどの罪……どう償って良いのか分からぬのじゃ」

 視線を彷徨わせて、やがてテーブルの隅に行き着くシィーリア。初めて見る弱気な顔。彼女のそんな様子に思わず言葉を失ってしまう。

「結局の所、妾はお主達にどう謝れば良いのか……」

 そんな彼女に、俺は若干イラッとした。

「そんな事言うなよ」

「え?」

 このイラつきの正体はアレだ。水臭い事言うなってヤツだ。

「イシャルナは個人的な理由で動いていた。シィーリアも個人的な理由で俺達を助けてくれた。だったら魔族とか関係ねぇだろ? 勝手に自分で線引くなよ」

 つい感情が昂ってしまう。俺はどうもこういうタチらしいな……1人の時は分からなかったが、俺は自分を助けてくれたヤツや、慕ってくれるヤツが落ち込んだり、傷付くのが嫌なんだ。

 自分の事は自分じゃ分からない……か。これはシィーリアが教えてくれた事だったな。

「お前が魔族だろうと関係無い。お前は仲間・・だ。イシャルナの事で責任を感じる事なんて、何一つねぇよ」

 なんだか恥ずかしい事を言った気がして、コーヒーを口に運ぶ。口元の装甲をカシャリとずらして飲んだコーヒーは、ぬるくなって酸味を強く感じた。

 横目で彼女を見ると、シィーリアは目を潤ませたような気がした。しかし、それを確かめる前に顔を逸らしてしまう。しまった、ちょっと語気が荒かったか……?

「おい、大丈夫か?」

「う、うるさいのじゃ! 妾より何倍も若いクセに説教など抜かしおって……!」

「悪かったって」

「謝るでない!!」

 めちゃくちゃ怒ってくるな、おい。

 でも、彼女の雰囲気が戻って安心した。

 ……そうだ。せっかく2人になったんだ。シィーリアに言おうと思っていた事を言うか。

「なぁ、シィーリア。お前に1つ頼みがあるんだけどいいか?」

「? なんじゃ改まって」

「ここから帰還した後はさ、時間神との再戦だろ? その間にタルパを鍛えてやって欲しいんだ。ちょっと耳貸してくれ」

 シィーリアに耳打ちする。俺のアイデアを聞いたシィーリアは、ふっと笑った。

「またそんな事を……お主、かなり無茶言うの。あんな物・・・・をタルパに再現させようとするなんて」

「でも、空想魔法を使えるタルパならできるだろ? 不死鳥じゃ時間神の相手はできなかった。だったらもっと強いヤツを呼び出して貰うのが正攻法だろ」

「良かろう。妾があの娘を限界まで鍛えてやるのじゃ!」


 シィーリアは、一気にコーヒーを飲み干した。




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