461さんバズり録〜ダンジョンオタク、攻略ガチ勢すぎて配信者達に格の違いを見せ付けてしまう 〜

三丈夕六

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第282話 1人じゃない

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 ──東京パンデモニウム内。

 ~リレイラ~


「ま、まさか……魔法障壁の中へ車で突撃するとは思わなかったぞ……」

 ガタガタと揺れる車内。メインの攻略ルートを外して走っているせいで荒野を走ることになった車。後部座席に乗っていたジーク君がゲッソリした顔で呟いた。

「すまないジーク君。先行しているヨロイ君達に追い付くにはこの方法しか無いと思って」

 ヨロイ君達はスージニアの狼で移動している。彼らがエモリアと戦う時に間に合わせるには管理局の車で東京パンデモニウム内を走り抜けるしかない。承認魔法アプロバルを施したこの車なら東京パンデモニウムを包む魔法障壁を抜けられる……そう考えて。

「い、いや……問題は無いが、ウプ……心臓に悪ウプッ……かった」

 ……突撃する時はあまりに皆が怯えるから不安になったが、上手くいって良かった。

 コクコクと頷くジーク君。顔色が悪そうだと思っていたら、左後ろに座っていたアイル君が声を上げる。

「ちょっとジーク! 吐きそうなら窓開けなさいよ!」

「あ~カズ君乗り物弱いからねぇ~」

 アイル君も、間に挟まれているミナセ君も元気そうだ。ジーク君はこの揺れにやられたのか?

「す、すまない……」

 窓を開けて外の空気を吸うジーク君。アイル君とミナセ君はそれを横目にスマホの操作を始めた。

「ミナセさん、ツェッターの方はどう?」

「みんなが拡散してくれたおかげで5万リツイート超えてるよ!」

インプレッション表示回数は?」

「2300万インプレッションいってる! こんなの初めて!!」

 ご、5万に2300万……? 私には理解できない世界だ……もしかして、アイル君達って物凄い子達なんじゃないか?

 戸惑いながらも運転していると、助手席に座っていたオルカ君が視界の隅に映った。一心不乱にスマホを操作してはニヤニヤと言葉にできないような笑みを浮かべている。な、何だか怖いな。

「ふひw ふひひひ……ブギくんが……な、名前……? 偶然だろうけど僕の名前を呼んでくれるなんて……www」

 ……声をかけてはいけない気がする。運転に集中しようとしていると、突然アイル君がニュッと顔を出し、オルカ君のスマホを覗き込んだ。

「ちょっと鯱女王オルカ、掲示板見てるけどちゃんと宣伝してる訳?」

「うわ!? 覗くなよ!?」

 慌てた様子でスマホを抱きしめるオルカ君。アイル君は首を傾げた。

「ほら、ツェッターで告知しなさいよ。アンタのファンが鯱女王からの告知が無いってざわついてるわよ!」

「仕方ないなぁ……」

 渋々といった様子でオルカ君がスマホの操作を始める。2人の様子を見ていたミナセ君は目を丸くした。

「アイルちゃん、鯱女王と仲良くなったんだね♪」

「別に仲良くなった訳じゃないわ。目的が一緒だし」
「別に仲良くなんて無いし。うるさすぎるんだよアイルは……」

「鯱女王がアイルちゃんのこと名前で呼んでる~!?」

「ふ、複数人で攻略するのに名前呼びしないと面倒なんだよ!!」

 ミナセ君の声にオルカ君の顔が真っ赤になる。すごい剣幕で反論するオルカ君。反面アイル君は涼しい顔だ。アイル君のコミュニケーション能力は群を抜いているな、本当に……。


「っと、それよりリレイラ? 私の話覚えてる?」

「ああ。ヨロイ君達が過去から戻るまで接触してはいけない……だったな」

「そう。私の記憶にもう1人の私が接触した記憶は無い。だから下手に先回りしてしまったら未来が変わっちゃうの。だから飛ばしすぎないで」

「分かってる。アイル君、時の迷宮までのナビは頼むよ」

「任せて」

 ……アイル君が未来から帰って来たと聞いた時は驚いた。だが、私は彼女が攫われた事を知っている。この状況でアイル君が私を訪ねて来た事を考えると、彼女の話を信じるのが最も筋が通っていた。

 情け無いな……同じ魔族がこんな事態を引き起こして、アイル君達が事態の終息にあたるなんて……管理局員失格だ。

「リレイラは気にしなくていいわよ」

「え?」

「これはイシャルナ個人の問題よ。それに、リレイラやシィーリアは私達の為に必死になってくれてるんだもん。そんな顔しないで」

 バックミラー越しにアイル君が私を見つめる。その顔に怒りや悲しみなど一切無くて……涙が出そうになった。本当に優しいな、アイル君は……。

「ありがとう……アイル君」

 私ができるのは遅れないことだけ。攻略情報はアイル君の頭に入っているようだし、私は運転に集中しよう。



 そんなことを考えていた時。


 頭上から甲高い声が聞こえた。外に顔を出していたジーク君が私達を見る。



「ペラゴルニスの群れだ!! 俺達に気付いたようだぞ!!」

 アイル君が真剣な表情になる。彼女は車内を見渡して声を上げた。

「ジーク! ペラゴルニスの数は!?」

「5体だ!」

 アイル君が顎に手を当てて考えるような素振りをする。しかしそれは一瞬の事で、彼女はすぐに全員へ指示を出した。

「ミナセさんはこの車に強化魔法。リレイラは運転して群れを引き付けて。私が車内から魔法で援護する。鯱女王とジークは車外に出て戦える?」

「ボスクラスが雑魚みたいに沢山いるの? いいね、ラスボスにも期待持てる」

 ニタニタと暗い笑顔を浮かべるオルカ君。彼女は、アイル君にパシンと肩を叩かれドアノブに手をかける。後部座席に目を向けると、ジーク君も今まさに飛び出そうとしていた。

「ミナセ、2人を頼んだぞ」

「りょーかーい!」

 オルカ君とジーク君は車のドアを開ける。走行中の車内へ一気に外の風が流れ込んだ。


「じゃ、行くよジークリード」
「鯱女王にそう言われるとは……光栄だな!!」


 ドアを開けて2人が飛び出す。オルカ君が水の爆発を巻き起こし空へと舞い上がり、閃光を発動したジーク君が高速で大地を駆けていく。

「よっと」

 アイル君が身を乗り出して助手席に移動し、オルカ君の出た後のドアを閉めた。

物理攻撃上昇魔法フィジカルシルド!!」

 ミナセ君が魔法を発動。車が青い光に包まれる。サイドミラーを見ると、後方でオルカ君が蒼海のスキルで空中に水を発生させているのが見えた。

「ジークも戦えるようにしないといけないわね!」

 アイル君が窓から身を乗り出して氷結晶魔法を放ち、空中に舞い散る水を凍り付かせる。ジーク君が落下する氷の足場を巧みに飛び移り、ペラゴルニスの1体に攻撃を仕掛けていた。

「すごいな……即席のコンビネーションとは思えない……」

「当然よ。みんなヨロイさんと一緒に戦った事あるから」
「そうそう! 鯱女王だって新宿で鎧さんに協力してたもんね!」

 アイル君とミナセ君の言葉に、思わず笑みが溢れてしまう。そうか。みんなそんな風に思ってくれていたのか。

 ……私と2人きりで攻略していた彼は、この東京でたくさんの仲間に恵まれた。孤独に攻略していた彼の経験がみんなを繋いで、そして信頼されたんだ。


 ヨロイ君。


 君はもう1人じゃないよ。


「ペラゴルニスが車を狙ってるわ! 加速してリレイラ!!」


 アイル君が私をまっすぐ見つめる。その瞳は真っ直ぐで、私の事を心から信用してくれている顔だった。


「安心してリレイラさん! 私の魔法でこの車は絶対守るからね!!」


 ミナセ君も。私を心配させまいと元気付けてくれている。


 ……1人じゃないのは私もか。ヨロイ君、私たちは本当にいい仲間に恵まれたな。


 絶対にみんなを君の元へ送り届けるからね。


「怪我しないようにな2人とも!!」


 私はアクセルを踏み込み、車を加速させた。





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