エスポワールに行かないで

茉莉花 香乃

文字の大きさ
17 / 48
side和ー3

04

しおりを挟む
今迄と違う生活は翔悟さんの余裕を奪い、俺と会う時間は極端に少なくなった。

俺の焦りと疑問は益々酷くなり、遂に諦めになった。

その頃には、もう俺には何も感じないし、何時別れを言われるかわからないなと思い始めていた。

翔悟さんが望むなら、翔悟さんが幸せになれるなら…何も言わずに身を引こうと思った。


社会人となり研修が終わり、配属先が決まった。翔悟さんは生活の変化で疲れていたと思う。

歓迎会や付き合いという名の飲み会を断ることが出来ないのか、裕樹から聞く翔悟さんの日常は大分変わって帰りが遅くなっていた。

そう、裕樹に聞かなくては翔悟さんのことを知る術が無かった。

メールも電話もし辛くなっていたから。

日曜日の早朝、母さんの用事で駅に行った時、前から歩いてくる人に何も考えられなくなる。

『やっぱり』

これが最初に思ったことだった。

翔悟さんと可愛い女の人。
腕に腕を絡めて豊満な胸を翔悟さんの腕に押し付けているように見えた。
その人へ向ける翔悟さんの笑顔を見ていられなくて、その場を離れた。

すると「和希!待って」向こうで女の人に別れを言って、翔悟さんは直ぐに近寄って来た。

「ごめん。和…ねえ、聞いて。…ごめん…違うんだ。愛してるのは和希だけだよ。許して。ごめん」

いいんだ…わかってた…。


でも、掴まれた腕に縋りたい。
どうしてって、なじりたい……。


「…俺はまだ子どもですし、翔悟さんにはもっと相応しい人がきっといます。

俺は貴方の枷になるのは嫌です。

だからもう…俺に構わないで…

……さようなら」



絞り出すように、それだけ言ってその場を離れた。
もう限界だった。


………今も好きだ、翔悟さんだけが。


翔、会いたい。

抱きしめて。

キスして。

あの優しい腕に包まれたい。

もう、その先は望まない。

翔、ただ抱きしめて欲しい。

ただ、側に居られるだけで良いんだ。


……会いたい。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラベンダーに想いを乗せて

光海 流星
BL
付き合っていた彼氏から突然の別れを告げられ ショックなうえにいじめられて精神的に追い詰められる 数年後まさかの再会をし、そしていじめられた真相を知った時

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

長年の恋に終止符を

mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。 そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。 男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。 それがあの人のモットーというやつでしょう。 どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。 これで終らせることが出来る、そう思っていました。

【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜

キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。 モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。 このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。 「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」 恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。 甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。 全8話。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

死に戻り騎士は愛のために願う 〜10回だけの奇跡〜

湯川岳
BL
「一生苦しむがいい。その呪いは俺からのプレゼントだ」 幼い頃に出会った友から呪いを貰ってしまったユーリ。 時は流れ、シューベルト家次男のアルトを追って騎士団に入隊をし、副団長まで上り詰めたユーリ。 毎日アルトの世話をしていく内に心惹かれていく。 「キスしてみろよ。それでオレが嫌じゃなければ……考えてやってもいい」 ユーリはアルトに口付けをする。そして呪いがこの時を待っていたかのように発動してしまった。 意識が乗っ取られ、目を覚ませばそこにあったはずの幸せは鮮やかな赤で染まっていた。 その日を境に始まったのは、暗くて長い道のりだった。 ※アルト編、ユーリ編。どちらから先に読まれても大丈夫です。 エンディング異なります。それもお楽しみ頂けたら幸いです。 ※最後はハッピーエンド確定。4話までだいぶ暗めの話なので苦手な方はお気をつけ下さい。 ※タイトル変えてみました。 旧:死に戻り騎士の願い 表紙素材:ぱくたそ

処理中です...