エスポワールに行かないで

茉莉花 香乃

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side和ー5

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ベッドと喫茶店の椅子と同じものが一脚置いてある。棚があって鞄が一つ入ってる。数冊の文庫本と雑誌が無造作に置かれていて、生活感はない。

誰の部屋なんだろう。

月島が出て行く時に部屋の明かりは付けてくれたけど、カーテンの半分引かれた部屋は殺風景で寂しい。
部屋の隅に置かれた観葉植物の緑が、そこだけ色を放ち心が冷える。
ベッドカバーの落ち着いたアイボリーが何故か余計に寂しくなる。

今の俺の心と同じ。

誰の部屋かわからないけど、いつまでもここにはいられないとしばらく放心していた頭を切り替えて、涙を拭いて部屋を出た。



◇◇◇◇◇



昼休みに裕樹と話していると、月島が来た。月島と一緒に来た矢嶋は宇喜多の所へ真っ直ぐ向かって行く。

この前のことはなかったことのようにいつもの月島だった。勿論裕樹に言うつもりはない。

「この頃翔ちゃんの友だちの永井さんがよく来るんだけどさ、ケーキとか和菓子とか持って来てくれるんだ」
「裕樹、甘いの好きだよね」
「ふふっ。本当は母さんにって持って来てくれるんだけど、僕の分もあるからいっつも楽しみなんだ」

裕樹と月島の会話を聞いていられない。

「ちょっと、トイレ行ってくる」
「あっ、うん…」

翔悟さんはやっぱりあの人と付き合ってるのかな…。

俺はもう翔悟さんを思い続けることもしてはいけないのかもしれない。
この気持ちを忘れるのには時間が掛かるかもしれないけれど、思い続けることも苦しくて、心の奥に閉じ込めてしまえるなら閉じ込めてしまいたい。

裕樹から聞く翔悟さんの幸せそうな話しはまだ少し辛いけど、翔悟さんの幸せはあの日別れを告げた時に俺の望んだことだったんだ。

それは今も変わらない。
出来れば俺が側にいて……でも、それは叶わない。

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