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無計画なようで確実なモノ
24.その方角は貴方を
しおりを挟む気配というには不確かでその存在が灯った感覚に零蘭は気が付いた。
この頃すでに子供が覚えるような簡単な言葉の本をもらい目を通し暗記すると、雛野はすぐに言葉を口にし始めていた。
その本から目を離すと可愛らしく微笑んだ、零蘭と同じく気が付いたのだ。
「やっときたわね」
「来たねぇ、清くん達も一緒かな?」
「意地でも2人に付いてくるでしょうね。あーんな良い子達、晫斗達にはもったいないわよ」
零蘭の言葉に雛野はクスリと笑った。
魔力コントロールを使えるようになったとは言え、雛野と零蘭はあまりにも消費が激しいらしく循環だけでは足りないとウルエラから説明を受けたが、2人はイガルの疲労ぶりを見て最低限のみ供給をしてもらうことにした。
他のギルドメンバーからも貰うものの、その量は比にならない。イガルの魔力がいかに偉大かを悟るのに時間はいらなかった。
だがその魔力が突然落ち着いたのだ、零蘭も雛野もその理由は明確に感じる事が出来た。彼らが来たからだ。この身はおそらく彼らがいる事で通常の働きをするのだと、細胞が訴える。
ギルドから見えるのは城下町の一部と時計塔。朝の6時と夕方の6時に鐘が鳴る。朝の鐘には白い鳥が舞う美しいものだった。
その時計台の方向から明らかに気配がしたのだ。突然現れたそれはおそろらく同じようにこちらの世界に飛んできた4人だろうと。
まだ、近くはない。
雛野の頰を撫でると少し頰の骨が皮膚に近くなっていた。しかし敬紫と晫斗の存在がこちらに来たからにはすぐに元に戻るだろう。
「食べているけれど痩せたわね」
「疲れも取れないし不思議だったわ。魔力の基礎って本に休息、特に睡眠と同時に回復していくものと書いてあったの。他の人に聞いても同じ。それなのに減る一方なんておかしいと思っていたけど……でも今日はきっとたくさん寝たら治るね」
にっこり笑った雛野が本を閉じてテーブルの上に置いた。
「私たちは2人が居なければ休息の条件を満たせないのね」
この細胞全てが4人でいることを望んでいるのだろうか。それで良い、それが良い。幸せなのだから。
時間が来たら風呂に入れと言われていた2人は廊下からのイガルの声に返事をした。世話好きな彼はいつ用意したのか寝巻きまで完璧だ。
ひとしきり準備をしてドアを開けた。
零蘭が難問でも考えるように雛野に問う。
「何日で来るかしら」
「20日後かなぁ」
さらりと言った雛野の言葉。
だいたいこういう勘は当たるのだ。
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