容姿端麗文武両道なカップルは異世界でも悠々自適だが少し特殊だ。

仔犬

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自由でこその愛がある

58.新たな仲間と

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出店の前に出来た人の山を綺麗に入り込むと、雛野と清、涼の姿を見つけ口の端をあげる。

ショートカットに色黒の肌。その女性らしい細い腰は鍛え上げられ、ウエスト周りが出る服装からそれは見て取れた。引き締まったその身体にはしっかりと豊満な胸が付いていたが女性すらも虜にしてしまいそうな爽やかな笑顔で彼女は言った。

「随分と可愛い子が入ったね」

ハスキーなその声に雛野が笑った。

「御機嫌よう、お菓子はいかが?」

「あたしはあんたの方が欲しいけど」

「まあ」


冗談に笑った雛野だが、その横で清と涼は警戒した。雛野が昔女性にも慕われ、それがエスカレートした事があるからだ。

その気配を悟った彼女はさらに笑みを深めた。

「番犬まで付けて……イガルー!あんたの拾いもんかー?」

店の奥、ギルドのフロアーまで届く大きな声に未だ零蘭達と話をしていたイガルがその大きな体を震わせた。

「……リザ?」

「あら、知り合いなの」


ソファに座っていた零蘭と晫斗もリザと呼ばれたその女性を見る。零蘭としては素晴らしい腹筋が気になるところだ。

「前言っただろ、女のギルドメンバーもいるって。まああいつはそこら辺の女とは程遠いが……依頼から戻ってきたみてえだな」

「へえ!」


初めて見る女性の魔法師に零蘭はすぐに駆け寄る。その黒く長い髪をリザが見つけるとヒュウと口笛を吹いた。

「なんだよイガル。可愛い子ばっかり拾って、寂しさのあまりギルドに入れちゃえってか?ギルドマスターともなれば好き勝手にやれて良いねぇ」

「物騒なこと言ってんじゃねぇ!リザ!」

イガルも怒りながらで店の方に向かうと、晫斗も付いてきた。相変わらずあくびをしているが零蘭達がいるからと一応付いてきたのだろう。

「良い男まで入れちゃって……そっちの趣味も?」

「リザ良い加減にしろよ……相変わらず口がへらねぇなぁ」

「あれ、リザじゃん」



食堂からいつのまにか戻ってきたウルエラが声をあげた。その横の敬紫を見てリザは声を上げて笑った。


「あんたいつから面食いになったんだよ!」

「リザあ……」


堪忍袋の尾が切れたようだ。いつのまにか大剣を握ったイガルがリザに斬りかかる。余裕の表情で障壁を出したリザはその大剣の平にのっかるとイガルはさらに殺意を膨らませた。
ウルエラはやれやれと大きな声で叫んだ。

「ねえマスター!ロビーでやらないでよー!」

「すごーい、イガルの得意な接近戦なのにひらひら避けてる」

「あの腹筋本当に綺麗……」

零蘭と雛野がちがう理由できゃっきゃと喜ぶ。戦いで壊れていくギルドの破片から2人を守るために晫斗と敬紫が障壁を張った。

「 犬猿の仲なの?」

敬紫が真顔でウルエラに聞けばうーんと悩み出す。

「これはストレッチみたいなもんかな」

「へえ」

聞いた割に興味は無い。
店に来ている客も見慣れた光景なのか呆れ顔だ。

「またやってるよリザとイガル……久々に帰ってきたっていうのに騒がしいなぁ」

「リザ強いのに……あの性格がな」


街の人間のおかげで人間性まで垣間見えた。
自由すぎるとリザは有名である。

そんな彼女は背中の弓を取り出すと炎が絡みついた矢をイガルに放つ。イガルはそれを簡単に切り落とすがその炎がギルドの床に移った。

「なんかあの2人が揃うと、戦いになっちゃうんだよね。リザはからかい方が露骨だしイガルは単純だから……」

「そうなんだ?」


雛野が呑気に返事をしながらも水をうさぎの姿に変えて炎の元へ走らせて消していく。随分と可愛らしい魔法に変わってしまったとウルエラは苦笑した。

「しかも止めると逆に被害が出るし……こういうのはカインに……ああ、今日は居ないんだった」

カインは国王の側近として今日は出かけている。この国でのカインはかなり有名な神様の一人で、国王にも気に入られ、こういう生誕祭などは必ずかり出されているという。

雛野がにこにこと水と同時にギルドの至る所に障壁を出してこれ以上壊れないようにしていく。敬紫がそれを手伝い、零蘭と晫斗が楽しそうに目で合図した。

「清くん、涼くん、2人も手伝ってくれる?」

「え……もちろん!」


すぐに理解した2人は腰の剣を抜いた。


「ええ、ちょっとやめなよ下手に突っ込むと怪我するよみんな」

ウルエラの忠告にありがとう零蘭が笑うと目にも留まらぬ速さで4人がイガルとリザの間に入った。


「な!」


避け切れず振り落とされた剣と放たれた弓をそれぞれ清と涼が剣で受け止める。その後ろで零蘭と晫斗がその指を掲げた。

「喧嘩はダメよ?」


妖艶に微笑まれた零蘭の顔はすぐに見れなくなる。相当な重力でイガルとリザの体が地面に叩きつけられた。不意打ちとはいえイガルとリザは驚く、全員が綺麗なタイミングで二人の間に飛び込んだのだ。普通の人間ならその速度にすら付いていけない。


「外でやれよ。零蘭と雛野に当たる」


晫斗が珍しく淡々と話すとリザが驚いたように笑い出した。重力がなくなると2人があぐらをかいて力を抜く。


「イガル、あんたいい趣味してるじゃん」

「……教え込んだかいがあるよ全く」


イガルの教えなどほとんど守ってくれないが。


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