意地悪お兄さんと親ぎつねギシャァァ!

石月煤子

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22-意地悪お兄さんと親ぎつね!!一家でコンコン!!純真無垢な灰色ぎつねは総愛され!!-最終章

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雪やこんこ、狐やコンコン。

雪化粧したお山に映えるは南天の赤い赤い実。

枯れ木の間に冬毛のふっさふさ尻尾が過ぎります。


「キューーー……」


でも。
獣じゃあ、ありません。


「つめた……い」


ぱっと見は人の子です。
でも。
人じゃあ、ありません。
何せ尻尾がついています。
そして頭には灰色の狐耳が。


「はーーー……」


作務衣姿で裸足、凍えた雪山で寒そうな格好をして、赤くなった両手に息を吹きかけます。


厚い雲に閉ざされてうすら暗い空。


しんしんと降る雪の中、ひとりで跳ねて回って遊ぶ、まだまだ小さそうなこども。

サクサクと音の鳴る真白な絨毯に寝転がり、作務衣の上下隙間からお股へお目見えしている自分の尻尾にじゃれつくのに夢中になっています。


「キューーー!」


そんなこどもの鳴き声に招かれたのか。


「ーーそんな格好でいたら風邪を引いてしまうよ」


すぐそばへ音もなく舞い降りた彼にこどもはびっくり、尻尾をさらに膨らませて飛び上がりました。





一方、火鉢を入れ込んだ炬燵でぐうたら丸くなるのは。


「やっぱ冬は炬燵に熱燗だよな~」


意地悪お兄さんです。


「きゅるる、そのお酒はお前のじゃないでしゅ、とっとと自分のおうち帰れでしゅ」


しかも余所様のおうちでべらぼうに寛いでいます。
相も変わらずな体たらくぶりで……す……?


「ちぇっ、けちくされ」


お下品な言動はともかく、常にぴょっこんしていた狐耳が見当たりません。

それに灰色だった髪はまっくろくろ、白髪染めでも使用したのでしょうか?

まるであやかし狐の九と出会う前の意地悪お兄さんに戻ったかのようです。


「蜜柑を食べたらいい」


幼女風男子の成りをした九九にあっかんべーされてプンスコしていた意地悪お兄さんに向かい側から蜜柑を差し出したのは。


「九九が山から取ってきてくれたんだ。飛び切り甘くておいしいよ」


優男お兄さん……もとい、優男イケ爺さんです。


「食ってやってもいいけどよ、皮剥いてくれ」


優男イケ爺さんに意地悪お兄さんが駄々をこねれば、九九は懐から巨大ハリセンをにゅっ、手加減なしに真っ黒頭をシバキました。


「いでぇッ」
「手土産もなしに人様のおうちに長居するなでしゅ、ブス狐」
「お前なぁッ、いい加減その呼び方やーめーろ!!」
「きゅー!」


両手グーで頭をグリグリされて鳴く九九、騒がしい光景に優男イケ爺さんはゆっくり笑います。




『魚ぁ? 肉のほうがいーんだけどよ、ま、しゃあねーか』
『きゅるきゅる』


『うわー! 殺されるー!』
『ギシャァァァァァァァア!!!!』




意地悪お兄さんが化けもん狐の九にブチ犯され……運命の出会いを果たしてから、彼是、五十年ほどの年月が過ぎようとしていました。




「お前、いつの間にやらシワがどっと増えたよな」
「だんな様は古稀を迎えたでしゅ」
「じゃあ俺も七十ってことかよ。やっぱりたまにはコッチに下りてこねぇと自分の年齢忘れちまうな」


五十年前と外見が変わらない意地悪お兄さん、深い皺が刻まれた旧友の優男イケ爺さんをまじまじと眺め、舌打ちをひとつ。


「ちぇっ。シワだらけで年食ってるくせに相も変わらず優男ときてやがる」
「違うでしゅ。前よりも優しくて二枚目でセクシーでしゅ」


張り切って褒めちぎった九九はくるんと一回転して子ぎつねの姿に。

炬燵に入っている優男イケ爺さんのお膝の上でまぁるくなりました。


「九九、テメェ猫かよ」
「にゃあにゃあ」
「カマトトぶりっこ狐がにゃあにゃあ鳴いて猫かぶってやがる」


五十年経っても子ぎつねの姿でだんな様に甘える九九、甘やかす優男イケ爺さん、相も変わらずらぶらぶな模様です。


「……胸やけしてきたわ」
「蜜柑で胸やけかい」
「もう行く、じゃあな」
「まだ雪が降っているから傘を持っていくといい」
「いらねぇよ、面倒くせぇ」
「また返しにおいで。いつでもいい。九九と待っているよ」
「フン、仕方ねぇなぁ、じゃあ借りてってやらぁ」


優男イケ爺さんと、その膝の上できゅるきゅるしている九九に別れを告げて。

意地悪お兄さんはいつまで経っても新婚ムードなマイホーム民家を後にしました。


「ふぅ……あいつら甘ったるくて胸やけがひでぇ……口直しに蕎麦屋で酒でも飲んでくか」


番傘を差して雪の降る中へ踏み出そうとしましたら。


「あら、丁度いい」
「!?」


いきなり傘の中へ入ってきた人物にぎょっとした意地悪お兄さん。


「あんたは……夜叉小町……」


九の元嫁、九九の母親である雪鬼女(ゆきおんな)の夜叉小町(やしゃこまち)は、呆気にとられている意地悪お兄さんにするりと腕を絡ませます。


「ご相伴にあずからせてくださいな」
「おい……九九に用があって来たんじゃねぇのかよ?」


出てきたばかりの出入り口を指差せば夜叉小町は言います。


「そうね、でもいつまでも新婚さんムードな二人のお邪魔になりそうだし、今日は遠慮しておくわ」
「俺は思いっきり邪魔してきたけどな」
「さぁさ、行きましょう」
「勘弁してくれよ、あんたと一緒にいると九が……」


艶やかな着物に裏地つきの羽織を纏って、魅惑のボンキュッボンは隠されていましたが、それでもお色気むんむん、道行く男たちの視線を独り占めしている夜叉小町。


「あらまぁ。嫁入りして半世紀が過ぎたというのに、まだまだ狐(あれ)の祟りが怖いのね」


ほっそり長い五指で狐をコンコンかたどってみせた夜叉小町の挑発に意地悪お兄さんは。


「祟りなんざ怖くねぇ、いいぞ、連れてってやる」


まんまと乗せられました。


「ただし折半だかんな」
「あらまぁ」



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