ショコラな本能

石月煤子

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ショコラな本能

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「どうぞよろしくお願いします」


中高一貫制である私立男子校のα・β混合クラスにやってきた転校生。

名前は式(しき)といった。

自己紹介の際に自らβ性だと名乗ったが、担任である隹(すい)を含め教師一同は彼が特殊なΩであることを前もって知らされていた。


「席はあそこだ」


隹の言葉に式は浅く頷いた。

クセのない髪がさらりと揺れ、どこか物憂げで切れ長な目許にかかる。


新学期の始まり。


新しい教室で知らないクラスメートも多い中、大半の生徒たちが興味深げに転校生を眺めている。

式は落ち着いた表情と足取りで自分の席へと歩いていった。


(コクーン・オメガ……か)


黒板前から華奢な背中を見送っていた、美術科の専任教諭である隹はシンプルなフレームの眼鏡をかけ直す。




春休み中に開かれた職員会議、自分が受け持つことになった転校生の「第二の性」を聞いて驚かされたものだった。

二十七年というこれまでの人生において「コクーン・オメガ」とは巡り会ったことがない。

一般のΩとは異なる体の構造・特徴を持っていて非常に稀有(けう)な存在だと認識していた。


式の両親はどちらもβ性である。


全国展開型の法律事務所に所属する弁護士の父親が新規に開設された支店を任され、よって家族で引っ越し、それが転校理由だった。





コクーン・オメガは男性にのみ現れる特殊な第二の性である。

彼らは子宮を擁していた。

一般のΩ男性は直腸奥に子宮代わりとなる独自の生殖器を有している、しかしコクーンの場合、女性生殖器系なる外性器・内性器そのものが男性器と共に備わっていた。


ただでさえ人口比率の低いΩ。
その50万人の内一人の割合で誕生すると言われている。


(紛れもない奇跡の両性具有(アンドロギュヌス)というわけか)


Cocoon(コクーン)は繭を意味していた。

彼らの体の中に在る子宮を表しており、番(つがい)と結ばれると其処は胎児の揺り籠になる。


人口統計学研究所の調査によるとコクーンはいわゆる「エリート」を出産する確率が非常に高いと言われていた。


一般のΩ性男女と対比したところ、健康面でも学力面においても優れた遺伝子を残すという結果が出ている。


謎めいていて神秘的ですらある繭の揺り籠。


公的機関なる生物学研究施設で国を挙げて取り組んでいるコクーン・オメガ研究プロジェクト、その被験者として定期検査が義務付けられている一方で、日常生活に支障が出ないよう手厚い補助金制度などで式の暮らしは守られていた。



いや、守られているというよりも。
監視下に置かれているというべきか。




「おれね、宇野原(うのはら)! 何かわからないことがあったら聞いて!」


前年度でも隹が受け持っていたβ性の宇野原が隣席から声をかければ、式は、控え目な笑みを浮かべて頷いた。


きちんと締められたストライプ柄のネクタイ。
細身で、中性的で、頼りないシルエット。
エンブレムつきのネイビーのセーターは袖が余っていた。


(βと偽っても、一般のΩならヒートでばれる恐れがある、でも)


コクーンには発情期(ヒート)が発現しない。

よって番と出会うまでβとして生活するよう推奨されていた。


(貴重な繭の持ち主だ、正体を明かせば、いつどこでどんな危険に遭遇するかわかったもんじゃないんだろう)


「なんか式ってΩみたいじゃ!?」


宇野原の無邪気な声が聞こえてきて隹は思わず吹き出しそうになった。

α性の生徒が動揺しているのがわかる。

当の式は動揺するでもなく静かに首を左右に振った。


色白で、どこか翳りを纏う眼差し、薄幸そうな雰囲気。

難儀な生徒を担当することになった、そう、隹は思っていた。



『トイレが全個室だからウチに決めたのか』



教室に到着する前、職員室を出て階段を上っている途中、場でも和ませてやるかと冗談紛いに転校生に尋ねてみた。

すると式は露骨に顔を背けて回答した。



『そうです。じゃないと、貴方みたいなデリカシーのない教師がいる学校になんか来ない』



「どこから転校してきたの!?」
「宇野原、おしゃべりはその辺にしておけ」


注意された宇野原は「すみませんっ」と、肩を縮めてあたふたと謝った。

隣の式は恐ろしく無反応でいた。


(ただの難儀な生徒じゃない、恐ろしく難儀な生徒だ)


中学三年生になったばかりの生徒らに一旦背中を向け、αの隹は、密やかに一人笑った。


■■■


式は正直なところ密かに自己嫌悪に陥っていた。



『貴方みたいなデリカシーのない教師がいる学校になんか来ない』



(どうしてあんなことを言ってしまったんだろう)


講堂で開かれた中学・高校合同の始業式。


通路側のイスに姿勢正しく座り、壇上で長々と挨拶する理事長に視線を向けつつも、その内容はまるで頭に入ってこなかった。


あそこまで言う必要なかった。
反応なんかしないで聞き流したらよかったのに。


式は少しだけ顔を傾けて講堂の壁際へ、着席せずに間隔を開けて立っている教師たちの方をチラリと見やった。


担任の隹は教師陣の中で抜きん出て目立っていた。

180を超える長身で無駄な贅肉がなさそうな体躯にフォーマルスーツがよく映えている。


(あの目)


視界の端で隹を捉えたまま式は思い出す。


階段の踊り場、窓から差し込む朝日を浴び、レンズの向こう側で一瞬だけ青水晶色に煌めいた双眸を。


(隹先生って、外国人……ではなさそうだけど)


カラーコンタクトではないだろうし、近しい人が海外の生まれだったりするのかもしれない。


想像もしていなかった色がいきなり視界に飛び込んできて、胸がざわざわして、狼狽えて、それに気づかれたくなくて……咄嗟に言ってしまった。


(でも、あの質問は本当にデリカシーがなかった、だからイライラするのも仕方ない……うん)


他者に対して敵意を振り翳すことに慣れていない、自分が口にした嫌味を気にしていた式は、次に反対側へさり気なく視線を向けてみた。


中央の通路を挟んでβ・Ωの混合クラスが着席している。

講堂後方を占める高等部は中等部と比べて生徒数がやや少ないように感じられた。


(……ヒートの生徒が休んでいるのかな……)


β・Ωの混合クラスではなくα・βの混合クラスに入ったのは両親の要望によるものだった。

いずれ番うαにそろそろ耐性をつけておいた方がいいとやんわり促されて式は同意していた。


(……でも、おれに番(つがい)なんて……)


式は、もう一度、壁際に立つ教師陣を横目で窺う。


ほとんどがβ性だ。
Ω性の教師はいない。
数少ないα性の教師はβ・Ω混合クラスの担任や授業の受け持ちからは除外されていた。


先月まで式が通っていた学校も似たようなものだった。


前年度の担任は今回の隹と同じくα性の男性教諭であった。

物心ついた頃から第二の性を偽ってβ性を装い続けてきた式に親身になって接してくれた。


過剰なまでの愛情を一方的に注いでくれた……。


「ッ……」


式は俯いた。
白磁色の頬がさっと青くなる。
薄く色づく唇をきつく結び、斜め下ばかりを頑なに見据えた。


目を閉じると瞼の裏に「あの日」の記憶が蘇りそうで。


雨の日の放課後、いつも通りの優しい笑顔を浮かべて近づいてきた担任の足音まで聞こえてきそうで、ついつい耳を塞いだ。


(ごめんなさい、せんせい)


始業式の最中にあるまじき振舞であったが、鮮明な過去の記憶から逃れたく、心配した近くの生徒の呼びかけにも答えられずに硬直していた式の元へーー


「式」


式は瞬きした。

特に大きな声でもないのに、鼓膜にしっかり届いた呼びかけに小さく肩を震わせ、ぎこちなく横を見た。


「理事長の話がそんなに耳障りだったか」


隹がいた。

通路に跪いて窮屈そうに背中を丸め、あろうことか笑みを浮かべて真下から式を覗き込んでいた。


「……隹先生……」
「思いきり共感するが、な。どうする。外に避難するか? それとも耳栓でも用意するか」


他の生徒がクスクス笑うと、隹は自身の唇の前に人差し指を立てて牽制し、式の方に向き直った。


「大丈夫か?」


講堂の格子窓を満たす日の光。


すりガラス越しに柔らかく通路を照らし、やけに鋭い目が青水晶色に再び耀いて、式は微かに息を呑んだ。


「……大丈夫です、すみません、平気です」


顔を背けて答えれば「無理するなよ」と言い残し、隹は速やかに壁際へと戻っていった。


一分にも満たなかった束の間の出来事。
何事もなかったかのように保たれゆく静けさ。


(……隹先生の目、怖い……)






「式、なんか具合悪そうじゃなかった!?」


講堂での式典が済んで教室へ戻れば隣席の宇野原に心配された。


「あ……ちょっと疲れてて、頭痛がして……でも、もう大丈夫だから」
「本当っ? また具合が悪くなったらすぐに教えて! あ、そーだ、後で保健室とか体育館とか案内するから!」
「ありがとう、宇野原……えっと……」
「うん!?」


ちょっと迷った式は思い切って尋ねてみた。


「隹先生って、どういう先生なんだろう?」
「怖いよ!!」


迷いなく即答されて苦笑してしまった。


「一年も二年も担任だったけど、うん、怖かった!! でもかっこいいよね!! Ωにも美術教えてるし!!」
「え……? そうなのか? αの先生はΩのいるクラスの担当から外されてるんじゃ……」


担任の隹はまだ職員室から戻っておらず、程々に賑やかな教室の片隅で式は怪訝そうに首を傾げた。


「うん、基本はそうだよ。美術科って隹センセイ以外は非常勤で、美術部の顧問は隹センセイがやってる。で、放課後、希望者のΩを指導してあげてるんだって。本来、Ωは部活動禁止なんだけど……うん。隹センセイ独自の活動っていうのかなー」


ありとあらゆる場で制限を課せられるΩ。


年齢を重ねるにつれて不遇な扱いを目の当たりにする回数が増え、止む無くβを装う式は内心遣りきれなくなることが多々あった。


(でも、隹先生は)


αなのに、美術に関心があるΩの生徒のために行動を起こしているんだ……。


「……隹先生の目って、ちょっと青みがかってる……?」


遠慮がちに式が尋ねれば宇野原は何でもないことのように溌剌とした笑顔で回答した。


「おじーちゃんが外国人らしいよ!」


そのとき、教室に隹が戻ってきた。

不意討ちのタイミングで担任と目が合って狼狽した式はすぐに顔を伏せた。


「五秒以内に席に着くように、無駄に多いプリント配るぞ」


(聞かれたかもしれない……)


詮索していることに気づかれたかもしれないと、式の胸は過剰にささくれ立った。


……ううん、別に大したことじゃない……。


転校してきて、担任の目の色が青かったから気になってクラスメートに聞いてみた、ただそれだけの話だ……。


「宇野原、配るのを手伝え」
「え~、なんでおれだけ……」






指先にふわりと滲んだ赤。
小さな血の玉が見る間にできあがる。


ラックに準備していた微量用採血管に数滴落とし込むと、まずはアルコール面で傷口を消毒し、指に巻きつけていた圧迫用テープを剥がして絆創膏をはった。

採血管のキャップをしっかり締めて専用の小袋に入れる。

日々の基礎体温などを記した調査票や他の採取物と共に緩衝剤つきの返信用封筒に入れ込み、勉強デスクの上で封をした。


「完成」


昔は穿刺針(ランセット)で自分の指を刺すのが怖くて躊躇していたが、今ではもうすっかり手慣れたものだった。


研究機関から送られてくる検査キットを用いて月に一度、式はこうして自分で検体を採取している。

半年に一度は直接出向いて定期健診を受けなければならない。

これまで新幹線で片道二時間半かかっていた交通費は全額支給されており、隣県へ引っ越した今現在でもその条件は変更なしとのことだった。


新学期の始業式が行われた転校初日を終え、学校から徒歩で帰宅して数時間が経過していた。

制服姿のままでいる式以外、築浅物件なる中古マンション上階の角部屋に人の姿はない。

母親は買い物に出かけており、夜は父親と待ち合わせ、家族三人で外食する予定だった。


「制服のままでいいか」


βの両親はコクーン・オメガの式にとても優しかった。


自分たちとは異なる第二の性を持つ我が子を極端に特別視することもせず、見守り、まだ詳しく解明されていない未知なるコクーンについて家族総出で学んできた。


(お父さんにもお母さんにも、これ以上、余計な心配や負担はかけさせたくない)



だから。
式は「あのこと」を優しい両親に伝えられずにいた。



約束の時間が迫り、制服姿の式は携帯電話と大きめの封筒を手にして部屋を出た。

エレベーターを待つ間、家族と落ち合うレストランを検索し、情報がヒットせずに首を傾げる。


(そういえば先月にできたばかりのお店だとか言ってた)


お母さん、どうやって探したんだろう、もしかして街を回ってるときに偶然見つけたのかな。


エレベーターに乗り込んで一階まで下りた式はまた携帯を覗き込んだ。

次はSNSを頼りに検索してみようと、下を向いたままエントランスホールを横切り、緑豊かな植え込みが両脇に広がるアプローチへーー


「あ」


携帯操作に意識を傾けていた式は歩道に出たところで通行人にぶつかった。


小脇に挟んでいた封筒を落としてしまう。
拾う前に謝ろうとしたら厳しい一声が飛んできた。


「歩きスマホするな」


式はぐっと言葉を詰まらせた。


「新しい街で迷子になっても知らないぞ」


耳を疑い、顔を上げてみれば。

講堂で目にしたときと同じ笑みを浮かべた担任の隹が目の前に立っていた。


「落とし物にも気をつけろよ」


隹はそう言って落ちていた封筒を片手で拾い、式に手渡した。


夕闇が地上を浸食していく時間帯。


市街地から近い表通りは通行人の行き来が絶えず、今は帰宅途中の人々が多くいる中、式は眼鏡をかけていない隹に問いかけた。


「隹先生……どうしてこんなところにいるんですか?」
「俺もお前と同じマンションに住んでる」


(え……?)


「最初にお前の住所を確認したとき驚いたよ」
「そうなんですか……」
「親には内緒にしておけ」
「え?」
「何かと押しかけられたら面倒くさい。もちろん周りの生徒にも口外するなよ」


自分の両親はそんなことしない、式は言い返そうとして、はたと口を閉ざした。


隹には連れがいた。
見るからにαとわかる女性が彼の背後に立っていた。


「どうもこんばんは」


容姿端麗という言葉が恐ろしいほど当てはまる彼女に挨拶されて式はぎこちなく礼をした。


「このひとの生徒さんよね? 彼のこと、教室でよろしくね」
「俺の保護者ぶるな、繭名(まゆな)」


知的で深みのあるベルガモットの香りを纏う彼女は悠然と微笑する。


「彼、君にわざとぶつかりにいったのよ、意地悪でしょう」
「身をもって歩きスマホの危険性を教えてやっただけだ。何か緊急の調べものでもあるのか」


フォーマルスーツにブラックレザーのブリーフケースを携えた隹は、強張っている式のスマホを無遠慮に覗き込んできた。


「み、見ないでください」
「イタリア語のお勉強中か」


検索していたレストラン名を隹が口にすれば、繭名と呼ばれた彼女は「そこ、友人がプレオープンに招待されていたわ」と言い、オフホワイトのショルダーバッグから携帯を取り出した。


「そこで家族と待ち合わせしていて……でも、調べても地図が出てこなくて」
「ふぅん。案内してやろうか」


驚いた式は首を左右にブンブン振った。


「このお店の隣にあるの」


繭名に教えてもらった飲食店の情報を携帯に表示し、式は、洗練された身のこなしやセンスで自然と周囲の目を引く二人を見上げた。


「ありがとうございます……」
「ちゃんと一人で行けるか」
「小学生じゃないのよ、隹」
「こっちに引っ越してきたばかりなんだよ、この生徒は」
「あの、もう大丈夫です、失礼します、さよなら」


式はぺこりと頭を下げ、それからもう視線を合わせずに二人の元から歩き出した。


「さようなら」
「迷子になるなよ」


(やっぱり、隹先生って、デリカシーがない)


どうして眼鏡を外していたんだろう。
まさか同じマンションに住んでるなんて。
わざとぶつかってくるなんて、ひどい。
暗くて目の青さはよくわからなかった……。


(……あの女の人は隹先生の恋人……?)


式は振り向いた。


数人の通行人の向こう側、並んで歩く二人の後ろ姿を視界に捉えると、大人びた切れ長な双眸を静かに波打たせた。


腕を組むわけでもなく僅かな距離をおいた同じ歩調の二人は、式が越してきたばかりのマンションへ入っていった。


(……嫌だ……)


胸に抱いた封筒がぐしゃりと歪む。

込み上げてくる負の感情に喉を塞がれて、息苦しそうに咳をして、式はその場から足早に去った。





それから。
式は自身の視界から隹を締め出すようにした。
学校生活において、可能な限り、担任と接触を持たないようにした。


(こんな世界、汚い、嫌いだ)


■■■


よくもまぁこうも嫌われたものだと隹は思う。


「はいっ、式の分のプリントです!」
「宇野原、お前はアイツの小間使いか」
「え? 隹先生の小間使いじゃなくて!?」
「……」
「いたたッ、ごめんなさい! ほっぺた抓らないでください!」


露骨なまでに避けられている。
思い当たる節は……まぁいくつかある。


まともな会話を交わしたのは始業式のみ、それからは視線もろくに合わずにパターン化された最低限の返事を機械的に繰り返されるだけ。

悪癖である揶揄めいた言動が繊細な性格には相容れられなかったか。

それとも。


(一般のΩよりコクーンは多感なんだろうか)


転校初日の放課後、恋人未満友人以上の繭名と一緒にいるところを見られて幻滅でもされたか。


(所詮α同士、お互いその場しのぎの解消係で恋愛感情はナシ、ある意味クリーンなんだがな)


隹は式の好きなようにさせた。

担任だからとコミュニケーションを無理強いすることもなく、信頼を勝ち取ろうともしなかった。


悪く言えば放置した、だった。


悪化してしまった自分との関係を抜かせば、式はβ性のクラスメートや他の教師とはうまくやっており、これといって顕著な問題はない学校生活を送っているように見えた。

α性の生徒はα同士でつるんでいるし、誰もコクーンである式の正体には気づいていない。


自分との軋轢は致し方ない。
相性上における向き不向き程度の話だろう。


(俺への反発以外では生活態度でも成績面でも優秀な生徒だ)


その場しのぎの信頼関係を強制して確立されていたペースを崩すのも憚られる。

来年度の高等部、式の担任からは外してもらおう。

αの俺よりβの教師に担当してもらった方が安定した関係を築けるかもしれない。



(前の担任はαかβか、どちらだったんだろう……な)



「三者面談の日程調整に関するプリントを今から配る」


朝のホームルーム、隹は窓際に着席する式に目をやった。

机に頬杖を突いた生徒は眩い日の光が満ちる外へ頑なに視線を縫いつけていた。


細く開かれた窓から訪れる風に僅かに靡く髪。
相も変わらず物憂げな光を宿す目の端にかかっている。
仄かに色づく唇はキュッときつく結ばれていた。


(俺との問題を除いて、コクーンにとって幸多き日常が流れているのなら、それでいい)





そして。

コクーンであることを伏せた式が転校してきて大きな波風も立たずに日々は流れ、三学期に突入し、学年末テストを控えたところで。

凪いでいた水面に不測の一滴が落ちて不穏な波紋が生じた。


「式の前の担任って自殺したらしいよ」


教室に妙な噂が立った。


「しかも学校で」
「その先生、αだったって」
「αが自殺って珍しいよな」
「一年前らしいよ」
「式が転校してくる前?」
「式が転校してきたのと何か関係あるのかな?」


たった一日で瞬く間に増殖していったゴシップ。

クラスメートの好奇の眼差しが式に集中するのが目に見えてわかった。


式は何も言わなかった。
否定も肯定もせず、ただじっと沈黙を守っていた。


(そんな話、聞いていない)


耳聡い隹はその日の内に校長に確認をとった。
以前に式が通っていた隣県にある中学校にも連絡を入れ、直に情報を仕入れた。


翌日、朝のホームルームで腫れものにも等しいゴシップに担任自ら触れた。


「式の以前の担任の先生について昨日から或る噂が出回っている。誰が最初に言い始めたのか、情報源はどこなのか、誰か言えるか」


β性の生徒は顔を見合わせ、α性は素知らぬ顔、式は顔を伏せていた。


「存命する人を亡くなったと言い触らすなんて冒涜でしかない」
「え。自殺したんじゃないんですか?」


一部の生徒がざわつき出す。

ダークカラーのワイシャツを腕捲りした隹は教卓に両手を突いて前屈みになると「その情報源は、ソースはどこだ」と聞き返した。


「だって、式に聞いても何も教えてくれないから、やっぱり死んだのかなって」


(確かに、どうして説明しなかったんだろうな、式は)


顔を伏せ続ける式を横目でチラリと見、隹は教え子たちと向き直る。


「雨の日の放課後、その先生は校内の階段で足を滑らせて転落事故に遭われた。まだ復帰するのは困難で、現在もリハビリを続けられている。つまり噂はデマだ。出所が曖昧な情報を鵜呑みにするなと日頃から言ってるよな。誰かの悪意に踊らされる前に、自分の五感で見極めて、地に足つけろ。容易く掬われるんじゃない」


宇野原は力一杯うんうん頷き、他のβ性の生徒は何とも言えない面持ちで肩を竦めたり、首を傾げたり。


「それから内部進学が決まってるからと言って気を抜くな。学年末テストで目も当てられない点数をとったら居残り追試だからな」
「えええっ」


逐一リアクションする宇野原にクラスメートの半数が笑う。

視界の端で確認してみれば式はまだ顔を伏せたままだった。


(余計なお節介だと腹を立てているのか)







午後から雨が降り出した。


「隹センセイ、ちょっといいですか?」


放課後、特別棟の一室。
テスト代わりの課題として中等部一年生に作成させた絵本を読んでいた隹は顔を上げた。


「テスト前で課外授業は休みだぞ」


油絵具の匂いが染みついた広々とした美術室に入ってきたのは高等部の生徒数人だった。

皆、Ω性だ。

校則として部活動は禁じられているものの、純粋な創作意欲や探究心を折るなんて馬鹿げていると、美術部指導の傍ら隹が特別に教え込んでいる生徒たちだった。


「あの、これ、どうぞ」
「いつもお世話になってるお礼です」


手づくり絵本が無造作に積み重なった木造の作業台へおずおずとやってきた彼らに、隹は、腰を上げた。

掲げられた紙袋を受け取って「ありがとう」と礼を告げる。


「っ……みんなで買ったんです」
「あと、二年の渡瀬センパイも……一昨日から重いヒートで学校休んでて」
「そうらしいな」


(そういえば今日はバレンタインデーだった)


丁寧なお辞儀をして美術室を出て行った彼らの背中を見送り、隹は、シックなリボンが巻かれたチョコレートの箱を覗き込んだ。





まとまった量で長々と降り続く雨。


『すぐに他の先生方が気づかれて……早い発見で不幸中の幸いでしたが、もしも見つけるのが遅れていたら……』


隹はいつになく慎重な足取りで家路についた。


市街地の中心地区に建つ学校から、徒歩で十五分ほどかかる自宅マンションまで、山ほどの事務処理が濃縮されたUSBメモリを普段使いのトートバッグに忍ばせて歩く。


もうじき夜七時になる。

渋滞気味の表通りではヘッドライトが騒がしげにせめぎ合っていた。

眼鏡を外し、膝上丈のウールコートを着込んだ隹は光溢れる車道から視線を逸らす。


二月半ばの雨は骨身に凍みるようだった。


夕食はどうしようか、まだ何か冷蔵庫に残っていただろうと、最寄のコンビニは素通りしてマンションのアプローチに差し掛かったところで。

隹は不意に足を止めた。

視界の端を掠めたその姿に、まさかと思い、特に定めていなかった焦点を絞ってそちらを見やった。


式がいた。
ビニール傘を差して歩道脇にポツンと佇んでいた。


「式」


大股になって隹が歩み寄れば、式は、恐る恐る担任と視線を交わらせた。


「隹先生……」
「お前、何やってる。顔色悪いぞ。肩もそんなに濡れてーー……」


スクールバッグを肩から提げ、下校しても帰宅せずに雨の降り頻る外にずっと立っていた式は。


たった一人で途方に暮れていた生徒は担任のコートをそっと掴んだ。


「せんせいがああなったのはおれのせいなんです」



■■■



「ええ、ご心配なく、責任もってご自宅へ送り届けますので……はい? ……いえ、それは大丈夫です。問題ありません。立場上、耐性はついています……いいえ、気にされないでください。不安になるのは無理もないでしょうから」


コクーンの我が子がαである教師の自宅にいると知って動揺し、心配していた式の母親。

通話を終えた隹は何とはなしに片手で顔を覆う。


(さすがに罪悪感を覚える)


同じマンションに住んでいることは伏せておいた。

もちろん面倒事を回避するためではない、生徒のことを考えての選択だった。


(この先、共有スペースでバッタリ会ったら……その時はその時だな)


式は家に帰らずにわざわざ外で俺を待っていた。
家族には知られたくない「何か」を抱えているんだろう。


2LDKの部屋に住む隹は、冷え込む玄関前の廊下からリビングへ移動した。

必要最低限の家具が配された室内。

ダイニングの天井から吊り下げられた橙色のペンダントライトが淡く灯っている。

リラックスできるかと音量を小さくして点けているテレビはニュース番組を流していた。


「何か飲むか」


クリーム色のゆったりした三人掛けソファに浅く腰かけた式は首を左右に振った。

隹が渡したバスタオルを細い肩にかけ、ぼんやりと虚空を眺めていた生徒は、斜向かいに立った隹を見上げる。


「マンション内で出くわすこともなかったのに。まさか部屋に招くことになるなんてな」
「……どうして眼鏡をかけていないんですか?」


当たり障りのない話をすれば予想外の質問を喰らい、暖房が効き始めた部屋でワイシャツを腕捲りした隹は「あれは伊達だからな」と答えた。


「紫外線対策のためにかけてる。色素が薄くて目が日焼けしやすいんだ。だから夜になれば外す」


答えを聞いた式は相槌も打たずに俯いた。


「あの日、せんせいに告白されました」


前置きも疎かに本題に突入した生徒に青水晶色の眼は大きく波打った。


「せんせいは結婚していて、こどももいました。Ω性の男の人がせんせいのパートナーでした。それなのに、おれのこと、愛してるって」


外から聞こえてくる単調な雨音とテレビの音声にか細い声音が溶けていく。


「放課後に面談室に呼び出されて言われたんです。転校して離れ離れになるなんて耐えられないって。転校してからも会いたいって……びっくりしました」


膝上に置かれた式の手に一雫(ひとしずく)の涙が落ちた。


「何も言えなかった。答えなんか出てこなかった。向かい側に座っていたせんせいが、いつもと同じ笑顔のまま、こっちへ来ようとしたから……廊下へ飛び出して……そのまま帰りました。今日みたいに雨が降っていて……ずぶ濡れで帰ったからお母さんにすごく心配された……」


ーーその日にせんせいは階段から落ちましたーー


「おれのせいです」


隹は「お前のせいじゃない」とも「誰も悪くない」とも言えずに、ただ、涙ながらに懺悔を続ける式を黙って見ていた。


「あのとき、逃げなかったら……拒絶しなかったら……せんせいに応えていたら……きっと、せんせいは階段から落ちなかった。後遺症にも悩まされないで、教師の仕事を続けていられた。せんせいは先生のままでいられた」


(今、式は誰の話をしている?)


隹は式に背中を向けた。

片手で口元を覆うと密かに歯軋りし、重たげに深呼吸した。


不意に加速を始めた鼓動。
瞬く間に体を支配した暴力的な熱。
獣性の鋭さに漲った眼。


(まさか発情期(ラット)か……?)


α特有の発情期が我が身に訪れたのかと隹は内心危ぶんだ。


勤務先の学園は定期健診において貴重な人材であるα性教員に高額となる抑制剤接種を全額負担で実施していた。

そのおかげで教職に就いてから一度も発情期を引き起こしたことはない。


それなのに。


(無性に、今、猛烈に)


式を抱きたい。
力づくで抉じ開けて奥の奥まで自分のものにしたい。


「おれなんかに出会わなきゃ……おかしくならずに済んだ……」


(……禍々しい欲に駆られている俺のことを言ってるのか……)


隹は振り返らずに窓の方を向いたまま「今日のところは家に帰れ」と大きな声ではっきり生徒に告げた。


非情なものだと自嘲した。
だが、今、この場における最善策であった。


(式の身を守るためだ)


「送る必要はないな、エレベーターで昇ればいいだけだ。話は明日学校で改めて聞かせてもらう」


項垂れた隹は式に気づかれないよう自分の手を噛んだ。

今にも暴走しそうな凶暴な欲望を少しでも紛らわせるために。


「……早く帰ってお母さんを安心させてやれ」


(早く逃げてくれ)


しかし、隹の願いも空しく、部屋から出て行くどころか。

立ち上がった式は担任の背中へ歩み寄ると、マンションの下で顔を合わせたときと同じように、ダークカラーのワイシャツをそっと掴んだ。


「おれ、隹先生のことがずっと怖いんです」


■■■


『担任になる隹と言います、どうぞよろしくお願いします』


αの教師だというから。

春休み中、母親と共に学校へ挨拶にいったときから式は身構えていた。

前の担任のことが脳裏を過ぎり、自己嫌悪や罪悪感に苛まれて、今後は距離をおこうと決めていた。


それなのに。


『大丈夫か?』


その目の青さに胸を掻き乱された。
心臓がバラバラになってしまいそうだった。


視線すら合わせないよう徹底して壁をつくったつもりだった。

だけど距離をおけばおくほど意識は彼に傾いた。


視界から締め出しても、いつだって自分の世界の真ん中にいた。



「怖いのなら早く出ていけばいい」



式は忙しげに瞬きした。

切れ長な目に満ちていた涙が滑らかな頬へと溢れていく。


「今すぐ帰れ、式」


視線を合わせずに背中を向けたまま、くぐもった声で指示してきた隹の後頭部を見上げた。


(……怖いのに、また、何回も見つめたくなる……)


指先は冷えているのに皮膚の内側は熱く。
式は一つの懸念を抱いた。


(これって発情期(ヒート)なんだろうか)


でもコクーン・オメガに発情期はなかったはずだ。
だからβを装うことができる。
本当の自分を偽って……。


「こんな世界、汚くて、嫌いだった」


担任の指示に従わずに式は話し続ける。


秘密を抱え込んで、徒労感や罪悪感に押し潰されそうになって、途方に暮れて居場所に迷っていたコクーン。


青水晶色の目をした担任に何もかも打ち明けたくなった。


「でも本当は違う。汚いのはおれ自身で。おれは自分が嫌いなんです。教室のみんなにずっと嘘をつき続けて、お父さんとお母さんの負担でしかなくて……どうしてコクーンなんかに生まれてきたんだろう……家族と同じβがよかった……番のいるせんせいを歪めてしまって……おれなんか生まれてこなきゃよかった……」



「汚くなんかない」



独りでに溢れてくる涙を止める術もわからずに、しとどに頬を濡らした式は、振り返った隹に目を見開かせた。


「隹先生……」


視線が繋がると甘やかな戦慄に全身を犯された。


「お前、やっぱり迷子になっていたんだな」


冷たくなった頬を両手で包み込まれ、涙を拭われると、掌の些細な温もりに頭の芯が溶け落ちそうになった。


ふわりと鼻先を掠めた血の匂い。


自身の血液を毎月採取している式は造作なく嗅ぎ取り、おもむろに眉根を寄せた。


(……先生、手を怪我してる……?)


「隹先生、血が……」
「平気だ」


いつの間に片手に傷を負っていた担任を気にしつつ、彷徨っていた末に辿り着いた場所で新たに呼吸を始めたコクーンは。


今までで一番近くにある青水晶の目に恐る恐る釘づけになった。


「先生の目、怖いくらい、きれいです」


式はそう言って笑った。

転校してきて初めて見せた、くすぐったそうな、心からの笑顔だった。


否(いな)。


コクーンであることを隠して第二の性を偽るようになり、この世界に深々と根付く階級に否応なしに気づかされてから、ようやく浮かべることができた安堵の表情だった。


「……」


その青水晶に釘づけになる余り。


隔たりが無に帰して、互いの唇が視線と同じく交わったことに、式は気づくのが遅れた……。


■■■


それはヒートともラットとも言い難く。
第二の性関係なく誰にでも訪れる、単なる原始的で本能的な衝動だった。


「ん……っ……っ……」


鼓膜に流れ込んでくるのは甘く上擦る声。
口内で起こる刺激に忠実に小さく鳴る喉。


小刻みに震える瞼。
爪まで立てて縋りついてくる両手。


(禁忌の味がする)


身を屈め、細い腰を抱き寄せ、式に口づけていた隹はそう思った。


「ふ」


隹は薄目がちに式を見つめていた。


息苦しそうに眉根を寄せ、瑞々しい頬を紅潮させた、初めてのキスにどうしようもなくなっているコクーンをずっと見守っていた。


ひた向きな眼差しの先で。
震えていた瞼がぎこちなく開かれていく。


「ッ……」


見られていたことに気づいた式は切れ長な目を見張らせ、しかし自ら顔を離すこともできずに、非難めいた捩れた視線を投げつけてきた。


「っ……ぷは……」


隹の方から離れてやれば、顔を伏せ、上目遣いに恨みがましそうに見つめてくる。


「……なんで、こんなこと……」
「嫌だったか」


式は答えなかった。

視線を逸らし、上下とも濡れそぼった唇を拭おうとしたので、隹はその手首を掴んだ。


「まだ、する」
「ッ……隹先生、ラットなんですか……おれは……ヒートは来ないはずなのに……」


整った耳殻まで仄赤く染め上げて静かに混乱している生徒は担任に問いかける。


「どうしてこんなに熱いんですか……?」


狭く暗い世界で息を潜めていた蛹がまるで羽化したような。

教室の片隅で物憂げに窓の外を見つめていた生徒の変貌ぶりに見惚れながら隹は言う。


「何でも第二の性に結び付けたがるな、式」
「……?……」
「俺は別に今すぐお前のうなじに噛みついて無理やり番にしたいとか思っていない」
「それじゃあ……ただの気紛れとか暇潰しですか……」


腕の中で目に見えてシュンとした式を隹は改めて抱きしめた。


「ただの恋だ」






純粋に恋といえども。
性欲に火が点るのは容易い。


隹は気を静めるためにマンションを一旦出、凍えた夜風にしばし身を曝した後にコンビニで買い物し、部屋へと戻った。


「式?」


最初、リビングに姿がなく首を傾げ、まさかと思い隣接する寝室を覗いてみれば。

式はベッドに横になって隹のことを待っていた。

クローゼットからありったけの服を引っ張り出し、こんもり盛って、その中で丸まっていた。


(オメガの発情期に見られる行為じゃないのか、これは)


巣作りベッドで温もっていた式は「勝手なことしてごめんなさい……」と、呆気にとられている隹に決まり悪そうに詫びた。


(そうだな、コクーンはまだ未知なる領域だとか)


コクーン・オメガである式独自の特徴なのかもしれない。
カテゴリー分けして一括りにはできない、式ならではの個性……。


「一人で先生のこと待ってたら、何だか、体が勝手に動いて……」


(これじゃあ、せっかく外で冷ましてきた熱がぶり返しそうだ)


隹はベッドに浅く腰掛けた。


レジ袋から取り出したソレに、巣作りして一段落つき、すっかり落ち着いてしまっていた式は目を丸くさせる。


「チョコレートですか……?」


頷いた隹はリボンを解き、包装紙を開くと、パカリと蓋を開いた。


一粒のトリュフを取り出すと式の唇へ。


「今日はバレンタインデーだからな」


ハイブランドの服に埋もれた式はお行儀悪く寝転がったまま素直に餌付けされた。


隹はもぐもぐ口を動かすコクーンを微笑ましそうに見つめる。

あんまりにも見つめてくるものだから、ゴクリと飲み込んだ後、いずれ繭の揺り籠に新しい息吹を宿すであろう生徒は呟いた。


「隹先生の目の中で溺れそうです」


(それはこっちの台詞だ)


甘い味のする本能に平伏した隹は、うとうとしている式の額にキスをする。


「でも。いつか二人で番に」
「おれと隹先生が……? 番に……?」
「ああ。俺をお前のαにしてくれ」
「隹先生がおれのものになるの……?」
「そうだよ、式」


今は無傷のうなじに誓いを立て、隹は、ただただ愛しい教え子に生涯を捧げることにした。


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