悪役令息に転生した従兄弟は、オレの死亡フラグ回避に必死だっちゃ!

二月こまじ

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親密な二人

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 名前で呼び合うと言っただけで、不思議と親密度がぐっと上がった気がする。食べながら歩くとルディが人とぶつかりそうになるので、噴水の縁に腰掛けて食べることにした。
 ルディが初めて間近で見る噴水を振り返りながら食べるので、リカが落ちないように隣で支えてくれる。おのずと腰を抱かれる形になったが、そんな事しなくて大丈夫ですとも今更言いづらい。
 噴水をぼんやりと見上げながら、リカの話に耳を傾けつつチャパを堪能した。美味しいし、リカの話は面白いが、何か忘れている気がする。
 チャパを全部食べきったところで、ジャックのことを思い出した。

「あの、ジャックを探しにいかなくっちゃ」
「それなら、あそこにいる人がそうだと思いますよ」

 リカが指さした方を見てみると、遠くからでも分かる怒りのオーラを纏った人物がゆらゆらとこちらに近づいてきていた。ローブの隙間から鬼の形相でこちらを睨んでいるのは……確かにジャックだ。

「ひえっ」

 ルディが思わず悲鳴をあげると、リカが大丈夫ですよ、というように背中をポンポン叩いてくれた。
 途端、ジャックが走ってルディの腕を掴み抱き寄せる。

「どういうことだ!?」

 自分が怒られたのかと思い、思わず肩をすくめた。だが、仰ぎ見たジャックの視線は、まっすぐにリカの方を向いている。
 リカはというと。悪びれた風もなくどこか飄々とした風情で言った。

「ごめんごめん。この人混みで君に会える気がしなかったから、屋敷まで行ってルディを誘ったんだよ」
「なんでルディを巻き込む必要があるんだよ」
「だって、ルディがいれば君が僕たちを見つけてくれるんじゃないかと思ったんだ」
「だから、なんでそうなる」
「実際、君は見つけたじゃないか」

 言い合う二人を見て呆気にとられる。
 驚いたのは、ジャックに対するリカの気安い口調だ。ルディにさえ丁寧な言葉使いだったのに、まるで昔からの友人に対するようにジャックと話している。

「ほら、ルディが驚いているよ」
「ああ、災難だったなルディ」
「お、怒ってないっちゃ?」

 恐る恐る聞いたルディに、ジャックは片頬を上げて答えた。

「こいつが強引なのはもう知っているからな。大方無理矢理連れ出されたんだろう。怖い思いはしなかったか」
「お、美味しいチャパをもらったっちゃ……」
「また餌付けされたのか」

 仕方ない奴だな、と言いつつジャックはルディの頭をポンと撫でた。怒られなかったのは嬉しいが、なんとなく複雑な気持ちなのは何故だろう。
 昨日会ったばかりの筈のリカとジャックが、ひどく親密そうな様子に胸がざわつく。

「ルディ、大丈夫ですか? ぼんやりしてますね」

 リカが顔を覗いてくる。ルディは慌てて手を振った。

「だ、大丈夫だっ、です。それより、ジャックよりもオレに対しての方が丁寧な言葉なのは、お、おかしい気がするんですけど……」

 だからジャックにも、というつもりでそう言った。

「ジャックはいいんですよ。でも、ルディが気になるようなら僕達も、もっと親しげに話しましょうか。勿論ルディが許してくれるならだけど」

 ウィンクされながらそう言われ、ルディは頷くしかなかった。ジャックとの仲の良さを更に強調された形になり、モヤモヤは募るばかりだ。
 ジャックの方を伺うと、リカの言動に怒っている様子もない。どういうことかと思っているとジャックが言った。

「ルディ。こいつはな。オレと同じ種類の人間だ」
「そう、彼は夢だと言って譲らないけど。日本という国から、ゲームの世界に転生した人間なんだ」

 ゲームの世界──。ということは。

「未来視が出来る……っちゃ?」

 リカがなんとも言えない顔で頷いた。

「ああ、そういう事になってるのか。まあ、そんなものだと思ってもらえれば。ただ、僕はジャックよりも詳しくこの世界のことが分かるよ。例えば、ルディの好きな食べ物はチャパだとか、好きな色は紫で、誕生日は四月二十三日とか」
「なんだそれ。なんで知ってんだよ」

 ジャックが眉を上げて聞くと、リカは余裕の微笑みで答えた。

「ふふん。ボクは公式ガイドブックまで読みこんでるからね」
「そ、そんなもんあるのかっ」

 ジャックが驚いて声を上げるとリカは呆れた顔で言った。

「当然だよ。『オルベウス・ジュエルラブ』への愛が足りないんじゃない?」
「そもそも、俺はそんなに熱中してこのゲームやってない。R18要素があるクソゲーが好きなだけだ」

 ジャックが憮然と言うと、リカは嬉しそうに同意する。

「わ、か、る。なあ、あれやった? 桃男子三兄弟」
「おい、なんで俺が好きなゲーム知ってんだよ」
「やっぱりな。ジャックは絶対好きだと思った」

 あの死ぬほどバランスの悪いRPGパートがたまらないなどと言いながら、なんだか二人は楽しげに談笑している。
 暫くして、じっと黙って二人の話を聞いているルディにやっと気付いたように、ジャックが咳払いをして言った。

「でだ、お前を呼び出したのは他でもない。お前も分かってるだろうけど、このままだとルディが死ぬ」
「そうだね。このままっていうか、どうやっても死んじゃうね」
「それで、お前に頼みがある。誰とも恋愛ルートに入らないで欲しい」
「なるほどね。というか、君も僕と恋愛しないとと死ぬけどいいの?」
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