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ライラの友達
しおりを挟む雨が降ると人々は嫌そうに眉をひそめる。
でもライラは雨が降ると笑顔になる。
雨が降れば、あの子に会える。
雨が降っているときだけ、あの子がいる。
ライラにとって、学校でも家でも自分の居場所はなかった。
いつもひとりきり。
だから、いつだってひとりで外にでかけて風に揺れる緑と遊んでいた。学校帰りの道すがらにある小さな森に道をそれ、緑と遊んで帰る。そうすることで良い息抜きになったし、家へ帰ろうと思えた。
そんなとき雨が降りしきるなか、傘をなくしてしまったライラは雨に濡れながら、森で見慣れない湖を見つけた。
湖といっても小さな森のなかにある湖だ。ライラが小走りすればあっという間に一周できてしまうような湖だった。
その湖は綺麗だった。
表面の透き通った青が、上から降りてくる水の粒を飲み込む様子。
良く見かける光景だというのに、なぜかとても綺麗で、ライラはその光景から目を話すことができなかった。
「君は誰?」
突然――
声が聞こえた。
雨が地面に落ちる音とその声は調和していて…自然と心に入り込んでくる声。
「…っラ、イラ」
「…ライラ…。ライラっていうんだ、君」
ライラは人間ではない、何かに接している気がした。
それでも、この声の主がライラに悪意がないということを、本能で察していた。
だからこそ恐怖を覚えることはなかった。
「久しぶりに人間に会えて嬉しいな。ライラ、君が忙しくないのであれば何か話をしよう?ひとりきりでとっても、つまらなくて」
「…ひとりきり…?あなたもひとりなの?」
この声の主もひとりきり。
ライラと同じ。
このときから、ライラはこの不思議な湖で出会える声の主と友達になった。
ライラは雨が降り出せば、学校のない日でも外に出かける。
雨が降れば湖のあの子に会えると思うと、傘がなくなる、嫌いだった雨がとてもとても好きになれた。
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