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君は俺にとって幻の魔石だ
祝賀会
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先の戦の勝利を記念した式典と祝賀会が開かれた。
実働部隊に区分される部署に所属しているオリヴィエも部隊の一員として式典と祝賀会に呼ばれた。逃げた上司はお呼びではない。
このような煌びやかな式典や祝賀会に参加するのは初めてのオリヴィエだったが、魔術師や軍人は制服での参加が許可されているため、服装に困らなかったことが救いだった。ライドール家は名家であるが貴族ではないため、こういったことに縁がないのである。
大広間で多くの人間が参列する式典と祝賀会に参加さえしていれば、仕事は終わりだ。
部隊の一員として式典に参列し、国王から労いの言葉をもらったのちに報奨について説明を受け、その後の祝賀会に参加すればいいのだ。
それだけだ。簡単だ。
…と、オリヴィエは自分自身に暗示をかけながら式典に参列していた。でなければ今すぐ仮病を使い、帰ってしまいそうだったのである。
正直に言おう。突き刺さる視線が痛い。
自意識過剰でなければ、数名の参列者からじろじろと視線を向けられているようである。こんな視線をもらう原因をオリヴィエはすぐに思い出せなかったが、苦痛の時間を耐えているうちに思い出した。
そういえば自分は国王に助けられたんだ、と。
戦時、オリヴィエは国王の姿を認めた途端に意識をなくしてしまったが、後から聞いた話によると、わざわざ国王は味方陣営まで気を失っているオリヴィエをご丁寧に自ら運び、送り届けたらしい。それを聞いたときは混乱した頭で「なんてことをしてくれるんだ!」と叫びかけたが、意識のないオリヴィエを戦場に放置するほうがもっと酷いことぐらいすぐに理解できた。そのため、すっかり忘れていた…のだが、この視線は恐らくその出来事が原因だろう。
めんどくさいことになっている…。
オリヴィエは退屈な時間を針のむしろのように過ごしながら「最初の約束を守らなかったな…蒼の君」と壇上にいる国王に悪態をついていた。
式典は何事もなく終了した。例えオリヴィエが様々な思惑を持った視線に晒されていたとしても無事に終了した。
部隊の仲間たちはアホなのか、オリヴィエの状況に気がついていないし、祝賀会で目当ての相手を探そうと躍起になっている。頑張れよ、と生暖かい視線を送っておいた。
あれだけの視線をもらったのだから祝賀会でそれなりの人に話しかけられるかと思ったが、先ほどから宮殿の料理人が腕を振るった美味しい料理を存分に堪能しているだけで、誰からも声をかけられない。
しかし観察されているような視線は感じる。
どういうことだろうか。鬱陶しい。
「ライドール魔術師」
……実際、オリヴィエはあまりにも暇だった。
だがよりによって誰が国王に話しかけられたい、と思うだろう。
オリヴィエは断じてそんなことは望んでいない。
「…国王陛下!」
エドモンドに声をかけられたことを理解すると、驚きを隠しきれないまま慌てて礼をとった。何しに来たんだ!
煌びやかな国王の正装を纏ったエドモンドはしっかりとした体格と見目麗しい外見とあいまって、神々しいほどに美しかった。オリヴィエが見慣れた蒼の君とは別人だと言われても納得できるほど、醸し出す雰囲気が違う。
こんな周囲の目がある状態でエドモンドに話しかけられたことは初めてだった。知り合う前も今も。
「君はダンスを踊れるか?」
「へっ?上手くはありませんが、踊れます」
「そうか。それは良かった。余と踊ろう」
「──はっ」
条件反射で返事は返したが、何言ってんだこいつ!と、オリヴィエの頭の中は混乱と疑問だらけだった。
何が楽しくて国王と魔術師がダンスを踊るのか?
実働部隊に区分される部署に所属しているオリヴィエも部隊の一員として式典と祝賀会に呼ばれた。逃げた上司はお呼びではない。
このような煌びやかな式典や祝賀会に参加するのは初めてのオリヴィエだったが、魔術師や軍人は制服での参加が許可されているため、服装に困らなかったことが救いだった。ライドール家は名家であるが貴族ではないため、こういったことに縁がないのである。
大広間で多くの人間が参列する式典と祝賀会に参加さえしていれば、仕事は終わりだ。
部隊の一員として式典に参列し、国王から労いの言葉をもらったのちに報奨について説明を受け、その後の祝賀会に参加すればいいのだ。
それだけだ。簡単だ。
…と、オリヴィエは自分自身に暗示をかけながら式典に参列していた。でなければ今すぐ仮病を使い、帰ってしまいそうだったのである。
正直に言おう。突き刺さる視線が痛い。
自意識過剰でなければ、数名の参列者からじろじろと視線を向けられているようである。こんな視線をもらう原因をオリヴィエはすぐに思い出せなかったが、苦痛の時間を耐えているうちに思い出した。
そういえば自分は国王に助けられたんだ、と。
戦時、オリヴィエは国王の姿を認めた途端に意識をなくしてしまったが、後から聞いた話によると、わざわざ国王は味方陣営まで気を失っているオリヴィエをご丁寧に自ら運び、送り届けたらしい。それを聞いたときは混乱した頭で「なんてことをしてくれるんだ!」と叫びかけたが、意識のないオリヴィエを戦場に放置するほうがもっと酷いことぐらいすぐに理解できた。そのため、すっかり忘れていた…のだが、この視線は恐らくその出来事が原因だろう。
めんどくさいことになっている…。
オリヴィエは退屈な時間を針のむしろのように過ごしながら「最初の約束を守らなかったな…蒼の君」と壇上にいる国王に悪態をついていた。
式典は何事もなく終了した。例えオリヴィエが様々な思惑を持った視線に晒されていたとしても無事に終了した。
部隊の仲間たちはアホなのか、オリヴィエの状況に気がついていないし、祝賀会で目当ての相手を探そうと躍起になっている。頑張れよ、と生暖かい視線を送っておいた。
あれだけの視線をもらったのだから祝賀会でそれなりの人に話しかけられるかと思ったが、先ほどから宮殿の料理人が腕を振るった美味しい料理を存分に堪能しているだけで、誰からも声をかけられない。
しかし観察されているような視線は感じる。
どういうことだろうか。鬱陶しい。
「ライドール魔術師」
……実際、オリヴィエはあまりにも暇だった。
だがよりによって誰が国王に話しかけられたい、と思うだろう。
オリヴィエは断じてそんなことは望んでいない。
「…国王陛下!」
エドモンドに声をかけられたことを理解すると、驚きを隠しきれないまま慌てて礼をとった。何しに来たんだ!
煌びやかな国王の正装を纏ったエドモンドはしっかりとした体格と見目麗しい外見とあいまって、神々しいほどに美しかった。オリヴィエが見慣れた蒼の君とは別人だと言われても納得できるほど、醸し出す雰囲気が違う。
こんな周囲の目がある状態でエドモンドに話しかけられたことは初めてだった。知り合う前も今も。
「君はダンスを踊れるか?」
「へっ?上手くはありませんが、踊れます」
「そうか。それは良かった。余と踊ろう」
「──はっ」
条件反射で返事は返したが、何言ってんだこいつ!と、オリヴィエの頭の中は混乱と疑問だらけだった。
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