儚くて痛くて青い

瑞木歌乃

文字の大きさ
上 下
5 / 10
第一章

4 恋する乙女たち

しおりを挟む
    夕暮れの放課後に、教室で二人きり。
「それでそれで、その時かけるが話しかけてくれて──。」
    嬉々とした口調で話す彩乃の言葉がその場に木霊した。の話をする彩乃は、いつも心底幸せそうだ。は彩乃と幼なじみ。そして、私と彩乃の好きな人──。
    とは、水野くんのことだ。幼い頃から彩乃は水野くんのことを想っていて、それからだんだんと私も水野くんに惹かれていった。「罪な恋」、そんな名がこの恋には相応しいだろう。
    水野くんに恋をしている時間は圧倒的に彩乃の方が長いし、きっと水野くんへの想いも彩乃の方が強いのだろう。

    叶わない──。

    そんなのとっくに分かっていることだ。痛いほど、分かっている。けれど水野くんが私に向けるその言葉が、あの笑顔が、私をこの恋から離してくれなかった。
「いっそ諦められたらいいのにな──。」
 
しおりを挟む

処理中です...