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終章
深いIで満たして
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「…ん、ここはどこ…?」
私はあの日のように慌てることもなく、ゆっくりと周囲を見渡した。
「なんだ、ただの地獄か…。」
どこまでも広がる暗黒な虚空に、私は安堵していた。やっとあの地獄から抜け出すことができたと思ったから。
ここはいわゆる地獄だ。でも、ここよりも現実の方がずっと地獄だったから。
「おやおや、未緒さんではないですか。」
私はもう振り返りもせずに返事をした。
「天使さん、ここに連れてきてくれてありがとう。ここの方が、ずっと楽だよ。」
そんな呑気な私の言葉。だがそんな私とは裏腹に、自体は思ったよりも深刻だった。
「すみませんね、私は天使ではなく悪魔なんですよ。」
「…え?」
私は勢いよく振り返った。するとそこには、赤い瞳に大きな黒い翼の少女がいた。確かに先程見た天使とは、話し方だけでなく容姿も全く違う。
「まぁいいや、別に私はもう、ずっとここでぼーっとしてるだけだから。」
まぁ、私には天使や悪魔など関係ないのだ。そう、思っていたのに──。
「そういえば未緒さん、遺族のお方たちの様子を見て行かれますか?」
「え、まぁ、暇だし見ようかな。」
悪魔が指をL字にすると、一瞬で大きな画面が目の前に現れた。もはや、もう驚くことなんてなかった。
「では、ちょうど今のご遺族様の様子をお見せ致しますね。」
きっとみんな私の死を喜んでいるだろう、そう思っていた。だがその大きな画面に映ったのは、大粒の涙を流した両親だった。
「ズズ──」
雑音と共に、何か声が聞こえてくる。
『ごめんね、未緒っ。本当にごめんなさい…!!ただ私たちは、未緒を心配していただけなのに…っ!なのに、それがあの子を追い詰めてしまっていたのかしら…!』
お母さんは私の写真を見て、大声で謝り、お父さんは声すらも出さずに下を向いていた。
「嘘…。これ本当に、私が死んだ後の両親…?」
「えぇ、そうですよ。でもまぁ、人の死は取り消せませんので、転生か何かして立ち直りましょう。」
「嘘…そんな…。そんなぁ…。」
死を選んだのは自分なのに、私はお母さんにつられるように泣いた。人の目を気にせずに泣けるここでは、大きな声で赤子のように泣きわめいた。ただただ現実が苦しくて、泣き叫んだ。
私にきつく当たっていたはずの両親が、私を想って悲しんでいるのが信じられなかった。いや、正確には、「受け入れられなかった」が正しいだろう。
両親がもっと深い愛をくれれば気づけたかもしれないのに、と、両親を責めることしかできなかった。自分が悪いなんて、思いたくなかったから。
「愛を…どうかIを……ください…。」
私の嗚咽と泣き喚く声が、ただその地獄に響いていた。
私はあの日のように慌てることもなく、ゆっくりと周囲を見渡した。
「なんだ、ただの地獄か…。」
どこまでも広がる暗黒な虚空に、私は安堵していた。やっとあの地獄から抜け出すことができたと思ったから。
ここはいわゆる地獄だ。でも、ここよりも現実の方がずっと地獄だったから。
「おやおや、未緒さんではないですか。」
私はもう振り返りもせずに返事をした。
「天使さん、ここに連れてきてくれてありがとう。ここの方が、ずっと楽だよ。」
そんな呑気な私の言葉。だがそんな私とは裏腹に、自体は思ったよりも深刻だった。
「すみませんね、私は天使ではなく悪魔なんですよ。」
「…え?」
私は勢いよく振り返った。するとそこには、赤い瞳に大きな黒い翼の少女がいた。確かに先程見た天使とは、話し方だけでなく容姿も全く違う。
「まぁいいや、別に私はもう、ずっとここでぼーっとしてるだけだから。」
まぁ、私には天使や悪魔など関係ないのだ。そう、思っていたのに──。
「そういえば未緒さん、遺族のお方たちの様子を見て行かれますか?」
「え、まぁ、暇だし見ようかな。」
悪魔が指をL字にすると、一瞬で大きな画面が目の前に現れた。もはや、もう驚くことなんてなかった。
「では、ちょうど今のご遺族様の様子をお見せ致しますね。」
きっとみんな私の死を喜んでいるだろう、そう思っていた。だがその大きな画面に映ったのは、大粒の涙を流した両親だった。
「ズズ──」
雑音と共に、何か声が聞こえてくる。
『ごめんね、未緒っ。本当にごめんなさい…!!ただ私たちは、未緒を心配していただけなのに…っ!なのに、それがあの子を追い詰めてしまっていたのかしら…!』
お母さんは私の写真を見て、大声で謝り、お父さんは声すらも出さずに下を向いていた。
「嘘…。これ本当に、私が死んだ後の両親…?」
「えぇ、そうですよ。でもまぁ、人の死は取り消せませんので、転生か何かして立ち直りましょう。」
「嘘…そんな…。そんなぁ…。」
死を選んだのは自分なのに、私はお母さんにつられるように泣いた。人の目を気にせずに泣けるここでは、大きな声で赤子のように泣きわめいた。ただただ現実が苦しくて、泣き叫んだ。
私にきつく当たっていたはずの両親が、私を想って悲しんでいるのが信じられなかった。いや、正確には、「受け入れられなかった」が正しいだろう。
両親がもっと深い愛をくれれば気づけたかもしれないのに、と、両親を責めることしかできなかった。自分が悪いなんて、思いたくなかったから。
「愛を…どうかIを……ください…。」
私の嗚咽と泣き喚く声が、ただその地獄に響いていた。
応援ありがとうございます!
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「深いIで満たして」ってそういうことかぁー!?
辛いけどめちゃくちゃ面白かった………
私は最近Badendにどハマり中なので嬉しいです!!!
感想有難う御座います𝕋𝕙𝕒𝕟𝕜 𝕪𝕠𝕦 ❤︎"(*´˘`*)♡
私もバットエンドは以前から書きたいと思っていたので、有難う御座います(*´˘`*)♡
歌乃ちゃんの新作!!!
もう、1話からエモみ(?)が溢れすぎてて好きすぎる……_:(´ཀ`」 ∠):_
返信遅れてごめんなさい(m´・ω・`)m
そして新しい小説にまで感想有難う御座います(*´˘`*)♡
まだあまり方向は定まっていないけれど、とりあえずのプロローグです💦
すずめちゃんがくれた小説案だから、頑張っちゃうゾ!( •̀ᄇ• ́)ﻭ✧