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失敗作少女
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私の名前は涼花。最近まで小学校に通っていたはずなのに、いつの間にかもう中学二年生。ホント、時が経つのって早いよね。
実は私最近少し人生に疲れていて、学校に行くのも憂鬱だ。「なんで勉強しなくちゃいけないの?」とか、「なんで私はみんなより劣ってるの?」とか…。──なんで生きないといけないの、とか。自殺したいだなんて思ってしまったりもする。私はいわゆる自殺志願者だ。
でも私には最高の親友がいる。その人が生きがいと言っても過言ではないくらい、本当に私はその子が大好きだ。その子の名前は、花実という。花実は優しくてスタイルが良くて可愛いくせに、私と同じく自殺志願者だ。正直それでも人生を諦めたがっているだなんて、信じられない。
でも前は花実に、「完璧すぎて話しかけづらい」という印象があって話しかけることすらできていなかった。しかし花実と話すようになって自分と同じ自殺志願者と知ってから、急に親近感が湧いたのだ。
そのことから学んだことがある。やはり何もかも完璧な人は逆に怖くて話せないため、少しくらい欠けているところがあった方が親しみやすいということ。まぁ、私は花実のように欠けている部品が一つではないのだけれど。
そう、私は失敗作少女だ。工場に例えると、何らかの作る工程で失敗してその辺に捨てられるような、そんな失敗作。きっと私はみんなの劣化版なのだ。
今日は私も花実も部活はないし、花実と一緒に帰ることができる。いつもはクラスの友達と帰っているが、それの何倍も、何十倍も花実と一緒に帰路につく方が幸せ。クラスの友達には悪いけど。
「あっ、すーちゃんっ!帰ろーっ!」
この可愛らしくてスタイルが良い子が花実だ。本当はこんな私がこんなすごい子と並んで歩くのが少し恥ずかしいのだが、そんなことよりも私は花実と一緒にいたいのだ。
花実は私のことを「すーちゃん」と呼ぶ。花実は元気でコミュ力が高いうえに可愛いから、きっとすごくモテるだろう。羨ましいなぁ…。
「花実ー!今日一緒に帰んない?」
ほら、今日も花実は小学校すら違う女の子に話しかけられている。花実は女子にもモテるのだ。すると花実は困ったように私の方をちらっと見てからこう言った。
「ごめーん、今日はすーちゃんと帰るから、また明日ねっ?」
こんな時にも友達を優先してくれる優しさ…本当に花実はいい子だなぁ…。私は少し罪悪感に包まれながらも、小さな声で花実に「なんかごめんね」と謝った。
平和な私の日々に悲劇が訪れたのは、ある日のことだった。いつもの朝、いつもの日常、いつもの感じ…。私はその日、普段と何も変わらないいつもを味わっていた。すると、そこにイレギュラーな人物が現れたのだった。
「トンッ」と肩を叩かれて後ろを振り向くと、そこには私より少し背の高い女の子が立っていた。あ、この人知ってる!そう思った瞬間だった──。
「チッ。」
そんな舌打ちが聞こえたかと思うと、その女子生徒は私に肩をぶつけて去って行ってしまったのだ。私は戸惑いすぎてその場に立ち尽くす。
その女の子は、昨日花実と親し気に話していた生徒だった。もしかして、私が花実との会話を邪魔したから目をつけられた…!?そんな最悪な考えとは裏腹に、いつもの廊下は賑やかだった。
「すーちゃ~んっ!」
今日も花実と一緒に帰路につくことができる。それはすごく嬉しい。だが、私はあの女子生徒が気掛かりだった。また何かされるのではないか、もしかしたら暴力を振るわれてしまうのではないか、と。
「──ちゃん!すーちゃんってば!」
「…へっ?」
私は焦点を花実に合わせて「ごめんごめん」と謝罪を入れる。そんな私に花実は眉を下げてこう言った。
「すーちゃん…もしかしてすーちゃん、ミウになんか嫌がらせされてる…?」
「…えっ?」
ミウ…?誰だろう、それ…。そう思いつつも私は花実を見返すと、「はっ」と我に返った。昨日私がやってしまったこと、今日の廊下のこと、そして「ミウ」という名前──。
確かミウちゃんは花実の幼なじみだ。いつも一緒にいて仲良しだと、花実から聞いたことがある。でも小学校が離れてその間に私と花実が親友になって…きっとミウちゃんは私を恨んでいるだろう。
ここで私が「今日そのミウちゃんに舌打ちされて肩をぶつけられた」なんて言ったら、きっと花実とミウちゃんの関係が崩れてしまうだろう。そんなの、だめだ──!
「ミウって誰だろー?それより早く帰ろうよぉー!」
「…涼花?」
「…っ。」
私は唾を呑んだ。いつも笑顔で私のことを「すーちゃん」と呼ぶ花実が、急に私を「涼花」と呼んだから。なんだろう、背筋が凍ったような感覚に近い。
「すーちゃんはそうやっていつもヘラヘラしてるから嫌がらせとかされちゃうんだよ。もっと、しゃきっとしなよ。」
本来ならば花実のこの言葉は辛辣にあたるのだろう。でも今の私にこの言葉は、正直クリーンヒットでしかなかった。ひとことで言うならば、「正解」。
「…私はただミウちゃんと花実の関係が壊れちゃうと思って──」
「そういうところだよ。いつも自分に言い訳して現実から逃げて、そういうのって、ダサくない?」
さらに言い訳を重ねる私に、花実はまたひとこと背中を押す。
そうか、私は現実やダサい自分から逃げていたのか。どんどん言い当てられていく感覚に、私はまた背中を勢いよく押されていった。
「確かにそれって、ダサいな…。」
半ば呟くように言った私だったが、この言葉は花実に向けたものではなかった。
前を向ける、そう思った瞬間、花実はこう言った。
「すーちゃん、一緒に前を向こう。」
人を変えるのは偽物の想いじゃない。歪んだ友情でもない。人が変わる瞬間って、思ったより一瞬。そう、人を動かすのはたった一握りの勇気なんだ。それに気がついた時、私が見たのは──
実は私最近少し人生に疲れていて、学校に行くのも憂鬱だ。「なんで勉強しなくちゃいけないの?」とか、「なんで私はみんなより劣ってるの?」とか…。──なんで生きないといけないの、とか。自殺したいだなんて思ってしまったりもする。私はいわゆる自殺志願者だ。
でも私には最高の親友がいる。その人が生きがいと言っても過言ではないくらい、本当に私はその子が大好きだ。その子の名前は、花実という。花実は優しくてスタイルが良くて可愛いくせに、私と同じく自殺志願者だ。正直それでも人生を諦めたがっているだなんて、信じられない。
でも前は花実に、「完璧すぎて話しかけづらい」という印象があって話しかけることすらできていなかった。しかし花実と話すようになって自分と同じ自殺志願者と知ってから、急に親近感が湧いたのだ。
そのことから学んだことがある。やはり何もかも完璧な人は逆に怖くて話せないため、少しくらい欠けているところがあった方が親しみやすいということ。まぁ、私は花実のように欠けている部品が一つではないのだけれど。
そう、私は失敗作少女だ。工場に例えると、何らかの作る工程で失敗してその辺に捨てられるような、そんな失敗作。きっと私はみんなの劣化版なのだ。
今日は私も花実も部活はないし、花実と一緒に帰ることができる。いつもはクラスの友達と帰っているが、それの何倍も、何十倍も花実と一緒に帰路につく方が幸せ。クラスの友達には悪いけど。
「あっ、すーちゃんっ!帰ろーっ!」
この可愛らしくてスタイルが良い子が花実だ。本当はこんな私がこんなすごい子と並んで歩くのが少し恥ずかしいのだが、そんなことよりも私は花実と一緒にいたいのだ。
花実は私のことを「すーちゃん」と呼ぶ。花実は元気でコミュ力が高いうえに可愛いから、きっとすごくモテるだろう。羨ましいなぁ…。
「花実ー!今日一緒に帰んない?」
ほら、今日も花実は小学校すら違う女の子に話しかけられている。花実は女子にもモテるのだ。すると花実は困ったように私の方をちらっと見てからこう言った。
「ごめーん、今日はすーちゃんと帰るから、また明日ねっ?」
こんな時にも友達を優先してくれる優しさ…本当に花実はいい子だなぁ…。私は少し罪悪感に包まれながらも、小さな声で花実に「なんかごめんね」と謝った。
平和な私の日々に悲劇が訪れたのは、ある日のことだった。いつもの朝、いつもの日常、いつもの感じ…。私はその日、普段と何も変わらないいつもを味わっていた。すると、そこにイレギュラーな人物が現れたのだった。
「トンッ」と肩を叩かれて後ろを振り向くと、そこには私より少し背の高い女の子が立っていた。あ、この人知ってる!そう思った瞬間だった──。
「チッ。」
そんな舌打ちが聞こえたかと思うと、その女子生徒は私に肩をぶつけて去って行ってしまったのだ。私は戸惑いすぎてその場に立ち尽くす。
その女の子は、昨日花実と親し気に話していた生徒だった。もしかして、私が花実との会話を邪魔したから目をつけられた…!?そんな最悪な考えとは裏腹に、いつもの廊下は賑やかだった。
「すーちゃ~んっ!」
今日も花実と一緒に帰路につくことができる。それはすごく嬉しい。だが、私はあの女子生徒が気掛かりだった。また何かされるのではないか、もしかしたら暴力を振るわれてしまうのではないか、と。
「──ちゃん!すーちゃんってば!」
「…へっ?」
私は焦点を花実に合わせて「ごめんごめん」と謝罪を入れる。そんな私に花実は眉を下げてこう言った。
「すーちゃん…もしかしてすーちゃん、ミウになんか嫌がらせされてる…?」
「…えっ?」
ミウ…?誰だろう、それ…。そう思いつつも私は花実を見返すと、「はっ」と我に返った。昨日私がやってしまったこと、今日の廊下のこと、そして「ミウ」という名前──。
確かミウちゃんは花実の幼なじみだ。いつも一緒にいて仲良しだと、花実から聞いたことがある。でも小学校が離れてその間に私と花実が親友になって…きっとミウちゃんは私を恨んでいるだろう。
ここで私が「今日そのミウちゃんに舌打ちされて肩をぶつけられた」なんて言ったら、きっと花実とミウちゃんの関係が崩れてしまうだろう。そんなの、だめだ──!
「ミウって誰だろー?それより早く帰ろうよぉー!」
「…涼花?」
「…っ。」
私は唾を呑んだ。いつも笑顔で私のことを「すーちゃん」と呼ぶ花実が、急に私を「涼花」と呼んだから。なんだろう、背筋が凍ったような感覚に近い。
「すーちゃんはそうやっていつもヘラヘラしてるから嫌がらせとかされちゃうんだよ。もっと、しゃきっとしなよ。」
本来ならば花実のこの言葉は辛辣にあたるのだろう。でも今の私にこの言葉は、正直クリーンヒットでしかなかった。ひとことで言うならば、「正解」。
「…私はただミウちゃんと花実の関係が壊れちゃうと思って──」
「そういうところだよ。いつも自分に言い訳して現実から逃げて、そういうのって、ダサくない?」
さらに言い訳を重ねる私に、花実はまたひとこと背中を押す。
そうか、私は現実やダサい自分から逃げていたのか。どんどん言い当てられていく感覚に、私はまた背中を勢いよく押されていった。
「確かにそれって、ダサいな…。」
半ば呟くように言った私だったが、この言葉は花実に向けたものではなかった。
前を向ける、そう思った瞬間、花実はこう言った。
「すーちゃん、一緒に前を向こう。」
人を変えるのは偽物の想いじゃない。歪んだ友情でもない。人が変わる瞬間って、思ったより一瞬。そう、人を動かすのはたった一握りの勇気なんだ。それに気がついた時、私が見たのは──
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