遥かなる物語

うなぎ太郎

文字の大きさ
41 / 53
第5章

疫病退治と帰還

しおりを挟む
僕たちはペルシマール城を出発し、近隣のジタベテ村へと向かった。
僕たちは村に到着し、疫病が広がっている様子を目にした。村人たちは疫病に苦しみ、神に祈る姿が見られた。彼らは疫病の原因を「死神」と信じているようだった。

「ここからは危険です。聖魔法をかけ、マスクをして村へ入りましょう」オーバンが呪文を唱え、聖魔法をかけてから僕たちはマスクを着用し、村の中へと進んで行った。

村では疫病で死んだ者の死体があちこちに転がっていた。疫病の患者は小さな病院に集められており、病院の前を通りかかると患者たちのうめき声が聞こえて来た。医者や看護婦は看病に追われていた。

「まずは病院の責任者に話を聞こう。」僕は言った。「この状況を詳しく把握するために。」
フィリップが病院の中に入っていき、しばらくしてから病院の責任者である医者が出てきた。彼は疲れた顔をしていたが、僕たちを見て少し希望の表情を浮かべた。

「ようこそ。私たちはこの病気に対処するのに手一杯です。」医者は深い息をつきながら言った。「この病気は急速に広がり、連日多くの村人が感染しています。私たちは神に祈るだけでなく、様々な薬を使ったり、魔法使いを呼んで魔法を試してもらったりするのですが、状況は悪化する一方です。」

「我々が調査し、できる限りの援助を提供します。」アダンは真剣な表情で応じた。「まず、疫病の広がりや患者の症状について詳しく教えてください。」

医者はうなずきながら説明を始めた。「この病気の症状は高熱、咳、体の痛みで、やがて体力が奪われます。発病から数日で死亡するケースが多いです。また、何人かの患者は一時的に回復する兆しを見せたものの、再度悪化して亡くなってしまいます。これが死神の仕業だと信じられているのです。」

「この疫病が広がり始めたのはいつのことですか?」ピエールが尋ねた。
医者はしばらく考え込み、「疫病が広がり始めたのは約3週間前です。それまで村には異常はなく、突然感染が拡大し始めました。」と答えた。

「それでは、まずは疫病の原因を特定する必要があります。」僕は言った。「水源や空気が汚れていたり、誰かがこの村に呪いをかけた可能性も考えられます。」
「確かに。特に井戸の水源が怪しいですね。」医者は頷きながら言った。「私たちは井戸を調査し、清浄化する作業を進めましょう。」

ところが、井戸には何の異常も見つからなかった。また村の空気は特に汚染されておらず、村の長老たちに呪いの可能性について尋ねたが、最近魔女で告発された者はいないと言うことだった。

「これは困った…水も空気も呪いも無いか…」僕たちはその夜、宿で話していた。
「原因が分からないと余計に気味が悪い。いっそこの村から逃げ出したい気分だよ。」ピエールが言った。
「でもさ、ここから少し離れたアース村という所に、ロマンという名医がいるという噂だぜ?」フィリップが言った。

「ロマン?名医?」アダンが興味を示した。「名医と言われる医者なら、是非この村へ呼んで話を聞きたい。」
「なるほど、そうかもしれない。」僕は考え込んだ。「彼の助けを借りるのが最善かもしれない。」
「しかし、アース村までの道は険しいし、今の状態ではかなりの時間がかかるかもしれません。」オーバンが心配そうに言った。

「それでも、状況がこのまま続くのなら、早馬を送ってロマンを呼ぶ価値はあるかもしれない。」アダンはロマンを呼ぶことを決めた。

翌々日、ロマンがジタベテ村に到着した。彼は老医者で、色々な診察道具を持った大きなカバンを持っていた。
「ロマン殿、ぜひお願い致します。」僕は頼んだ。

「分かりました。まず疫病の原因についてお話しする必要がありますな。」ロマンは話し始めた。
「疫病は、基本的に、体の中に眼に見えないほど小さな虫が入ることで起きます。これは、私が発見したことです」
「「「えっ!?」」」

ロマンの言葉に、僕たちは驚きの声を上げた。彼の説明は常識からはかけ離れたものだったが、その真剣な表情から彼の確信を感じ取ることができた。

「その虫とは一体どのようなものですか?」僕は尋ねた。
ロマンは少し間を置いてから答えた。「それは私が「細菌」と呼んでいるものですが、肉眼では見えませんが、人間や動物の体内に入り込んで病気を引き起こします。様々な種類があり、それらを見るために使う道具、それがこの顕微鏡です」

ロマンは大きなカバンから、不思議な造りの道具を取り出した。
「これが顕微鏡です。」ロマンは説明を始めた。「細菌を観察するためのもので、通常の目では見えない小さな細菌を拡大して見ることができます。」
「その顕微鏡を使って、この疫病の原因を調べるわけですね。」アダンが理解を示した。

ロマンは顕微鏡を慎重に設置し、いくつかのサンプルを用意した。まずは井戸の水から採取したサンプルを顕微鏡にかけ、じっくりと観察を始めた。数分後、彼の顔に興奮の色が浮かび上がった。
「見てください。」ロマンは僕たちに向けて言った。「これが病気の原因となる細菌です。ここに見える小さな動く点が、まさにこれです。」

覗き込んでみると、確かに小さな点が動いているのが分かった。これが疫病を引き起こしている原因だと考えられるものだ。
「この細菌が体内に入ることで、病気が発症し、急速に広がるのです。」ロマンは続けた。「この細菌は井戸の水から見つかっています。つまり、井戸の水が汚染されているのです。」

「それではやはり、井戸の水をどうにかしないといけませんね。」僕は言った。「でも、この細菌をどうやって取り除くのでしょう?」

ロマンはカバンから特別な薬品を取り出し、説明を始めた。「この薬品は、薬草の成分を抽出したもので、細菌を殺すために用いるものです。井戸に撒いて消毒することで、病気の拡大を防ぐことができます。」

「既に感染した者についてはどうすれば良いですか?」ピエールが聞く。
ロマンは少し考え込み、答えた。「感染した者については、まず頭を冷やし、熱を下げることが必要です。また、この薬を少し薄め、水に混ぜて患者に飲ませると、少しずつ回復していきます。」

ロマンはカバンから別の薬を取り出した。「この薬はペニシリンと名付けたものですが、青カビから取り出したもので、いくつかの細菌に対し効果を確認しています。」
青カビと聞き、全員が不安を隠せなかった。「青カビだって!?先生、ちょっと待ってください!」ピエールが慌てた。

ロマンは説明した。「青カビから作られたペニシリンに対する不安は理解できます。しかし、私はこれを用いた治療を何度も行っており、確かな効果が確認されています。もちろん、どんな薬にも副作用があるため、使用に際しては慎重に行います。」

村人たちの反応は様々で、最初は不安が広がったが、ロマンの説明と治療により次第に安心感が増していった。ペニシリンによって患者の多くは症状が改善し、村の人々は希望を取り戻し始めた。数日後、村の患者たちの状態は目に見えて良くなり、井戸の水も清浄化され、新たな患者は出なくなった。

「ロマン殿、貴方の助けに心から感謝します。」僕は改めて感謝の言葉を述べた。
「皆さんの協力と努力もあって、村が救われました。」ロマンは微笑みながら答えた。「今後も、何かあればいつでも力をお貸します。」

こうして疫病が鎮圧され、帝都に早馬で報告がなされると、正式に僕たちに帰還の許可が出た。
帰還の準備が整った僕たちは、ジタベテ村の住人たちに別れを告げた。村人たちは感謝の意を示し、皆で手を振って見送ってくれた。ロマンの助けによって村は救われ、彼の名声はさらに高まった。

僕たちは再び赤道を縦断し、南半球へやって来た。
「ここで皆お別れだな。」アダンが言った。
「そうだね。」僕は頷きながら応じた。「ここから皆それぞれの故郷へ帰る。大陸統一が成ったら、また会おう。」

僕はラファエルとクロードを連れ、ボルフォーヌへの街道筋を進んでいった。
やがて景色は高原地帯へと移り、ボルフォーヌの山々が僕たちの目に映った。そしてボルフォーヌの小さな町が見えてきた。心の中で安堵の気持ちが広がる。

懐かしい我が家の門に到着し、アルベールを抱いたマリーが涙ながらに僕たちを出迎え、母上やジャン、フローランも元気な姿を見せた。ルネやイザークは帝都の学校にいるが、家族の温かさに包まれ、再び故郷に戻ることができたことを実感した。

マリーは涙を拭いながらも、笑顔で僕たちを迎えてくれた。「あなたが無事に帰ってきて、本当に安心したわ。アルベールも成長したわよ。」
僕はアルベールの小さな手を取った。「ありがとう、マリー。ありがとう、アルベール。長い間心配をかけたね。」

「おかえりなさい。」母上が温かい言葉で迎えてくれた。「無事に帰ってきてくれて、本当に良かった。」
「ありがとうございます、母上。」

僕たちはリビングルームへ向かった。新棟が出来てからすぐに戦場へ向かったため、新しい家にやって来たような不思議な感覚だったが、家族と再び一緒に過ごせることに胸がいっぱいだった。
僕たちは暖炉の前に集まり、平穏な時間を過ごした。

「ジャン、収穫はどうだった?」僕は尋ねた。
「今年の収穫は順調でしたよ。」ジャンが微笑んで答えた。「特に大麦と野菜が豊作でした。」
「それは良かった。」僕は安心して頷いた。「家族みんなが元気で、こうして一緒にいられることが何より嬉しい。」

夕日が沈むと、僕は家族と共に温かな食事を囲みながら、戦場での冒険や魔法研究会、ジタベテ村での出来事を語り合った。
安心感と充実感に包まれたこの瞬間を、僕は待ち望んでいた。

続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

ドラゴネット興隆記

椎井瑛弥
ファンタジー
ある世界、ある時代、ある国で、一人の若者が領地を取り上げられ、誰も人が住まない僻地に新しい領地を与えられた。その領地をいかに発展させるか。周囲を巻き込みつつ、周囲に巻き込まれつつ、それなりに領地を大きくしていく。 ざまぁっぽく見えて、意外とほのぼのです。『新米エルフとぶらり旅』と世界観は共通していますが、違う時代、違う場所でのお話です。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

エテルノ・レガーメ

りくあ
ファンタジー
主人公の少年“ルカ”は森の中で目覚め、心優しい青年に拾われてギルドに入る事に。記憶を無くした彼が、ギルドの仲間達と共に平穏な生活を送っていた。 ある日突然現れた1人の吸血鬼との出会いが、彼の人生を大きく変化させていく。 ■注意■ ・残酷な描写をしている場面や、血を連想させる言い回しをしている部分が若干含まれています。 ・登場人物イメージ絵は、作者自ら簡単に描いています。若干ネタバレを含んでいるので、ご注意下さい。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...