題名はまだ決まってません！

題名はまだ決まってません！

 しんと静まり返った音ひとつない暗闇の中、僕、優は突っ立っていた。見慣れた路地の壁にまぶしいほどに光を放つ空間が壁の一部にあった。一瞬車のライトかと思って後ろを振り向くが、そこには平然と道があるだけだった。
 「おはよ、 優、やっと来たか、」
 「おぅ、」
 「なあよー、朝から数学だぜ、
だりぃ～、早く給食の時間にならねぇかな～」
 「はえーわ」 
 「そうか？ 腹減った～」
 いつも通り教室の後ろにメンバーと集まる。優、体育会系でやんちゃな元太、メガネの方は和也、そして、背の高い瑠夏の4人である。
「なぁ優ー放課後サッカーしよーぜ！」 
………………
「なぁ！」 
「おいっ！」
……    
「聞いてんのかっ、 優！」
「…お、 おう？、どうしたんだ？」
「どうしたんだって、お前、大丈夫か？ 今日はやけに静かだぞ？」
「なんだ、好きな人でもいるのか？？」と、ニヤニヤしながら瑠夏、
「あ？ っんなわけ、！」
「じゃあなんだよ、」と和也。
「そうだそうだ！ なんかあったのか？」
「…いや、なんもないよ、
ちょっと考え事してただけだ。」
「ふーん、無理しすぎんなよ。」
「ところで今日、サッカーするよな？」
「え、… 今日はやめとくや」
「お、おう。」
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン…
「席につけー」
「じゃ、」
………………
「今日の優、おかしいよな、」
「うん、いつもと違う」
「考え事って言ってたけど…」
「おい！そこの3人、早く席につけー」
「はーい」

 授業中、優は内容なんか１つも入って来ずにただ長い1日を過ごした。ずっとあの光のことを考えていた。そんなに大したことでは無かったが、優の頭から全く離れなかった。
 放課後になった。
「バイバーイ！」
「うん また明日ね～」
「一緒に帰ろ～」
みんなが挨拶を交わしたい、混み合う廊下をすり抜けて、優は一直線にあの路地へと走った。 
行くかどうか迷ったが、やっぱり気になって行かないわけにはいかなかった。冷たい風がほおを撫でてくる。そのせいか体が震えていた。
「……え…」
一気に緊張が解けた気がした。そこには跡形もなく、少ししみのついたいつもの壁があるだけだった。恐る恐る触れてみる。何も起こらない。
「……俺、疲れてたのか………？」
そのまま3分ほどじっとしていた。やはり何も起こらない。
（6時になりました。桜沢市の皆さんはお家に帰りましょう）
市の公共アナウンスで我に返った。「…もう帰らないと」
家の方向へ向き直ろうとしたとたん、あの時と同じまぶしい光が目をくらませた。やっとの思いで目を開ける。思わず息を飲んだ。冗談じゃない。本当に一瞬呼吸が止まった。心臓飲んだ鼓動が速くなっていく。全身に鼓動が伝わる。