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旦那様の寝起き
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「すみません、俺ちょっと旦那様を起こしてきますね」
キッチンの隣のお座敷へ行き、 組員さん達と朝ごはんを食べている咲良のことを少しお願いしようと声を掛けると、組員さん達は俺の言葉にひっ、と顔を引き吊らせた。
しかし、イーウェンさんがそんな組員さん達を見て朝ごはんを食べている咲良の頭を撫でながら笑う。
「あははっ、咲耶ならだーいじょーぶだってぇ。ねぇ、依鶴?」
「え?あー…まぁそうですね。咲耶、旦那様のことは頼んだ」
「咲良は任せて~」
ひらひらと手を振るイーウェンさんと、口に米粒をたくさんつけた咲良の世話をしてくれている依鶴さんに首を傾げながら、とりあえず俺は旦那様の部屋へと向かう。
階段を昇り二階へと足を運び、俺や組員さん達の部屋よりも一回り大きな扉の前へと向かう。そしてコンコン、と扉をノックしてみるが返事がない。
「旦那様ー?俺です、咲耶です」
もう一度、今度は強めにノックしてみる。
けれども部屋からは物音も旦那様の声も聞こえない。どうしようかと少し悩んだ結果、俺は再度ノックをし、ドアノブに手を掛ける。
「旦那様、入りますよー?」
そーっと扉を開けて、中の様子を窺う。
遮光カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいて、耳を澄ませば微かに寝息が聞こえる。
大きなベッドにはまだ深い眠りにいるであろう旦那様がいた。
ゆっくりと近付いてみると、起こすのも気が引けるくらいによく寝ているのが分かる。
けれども確か今日は予定が詰まっているとこの前ため息をついていた覚えがある。
「旦那様?朝ですよ?今日は予定が詰まっているんじゃないですか?」
「………………」
声を掛けてみるが、反応は無し。
さてさてどうしようかな、と改めて悩んでしまう。
俺なら大丈夫、そう言って笑っていたイーウェンさんが少し気になるけれどそれを信じて起こしてみるか。
「旦那様ー?…っへ!?」
肩を掴み揺らしてみようと手を伸ばすと、ぱしっと旦那様に掴まれてしまう。
何が起きているのか理解出来ないままの俺はその腕に引っ張られたかと思えば、背中にベッドの柔らかさ。スプリングが効いたベッドはキシリと小さな音を立て、俺の体が軽く跳ねた。
「……だんな、さま…?」
目をとろんとさせて、すごい色気を放っている旦那様の後ろには天井が広がる。
え、あれ、俺もしかして押し倒されてる?
「旦那様?起きてますか?」
この状況、どうしたらいいか分からない。
俺は躊躇いながらも旦那様の髪を撫でてみる。金糸のような細い髪が何度も何度も俺の指を通っていく。サラリと前髪を掻き上げるとチラチラと見え隠れしていたとろんとした青い目が、俺を映していた。
「……サクヤ…」
「~~~っ!!」
蕩けるような甘い声に、甘い笑み。
レディキラーなその笑みは男の俺ですらうっかりときめいてしまう。めちゃくちゃ危ないなこれは。
「旦那様……え?」
うっかり旦那様の色気にやられかけている俺の顔はきっと真っ赤だろう。
英国紳士恐るべし、なんて考えていたがそんな思考は一瞬で吹き飛んだ。
「あ、ぁぁあ、あのっ…だ、だだっ…旦那様っ…!?」
旦那様の少し冷たい手が、俺のシャツを捲る。長い指先が晒された腹を撫で、つぅ、と体のラインをなぞった。
慌てふためく俺に対して、旦那様の表情は変わらずあの笑みを浮かべたまま。
「…や…待って、くださっ…旦那、様っ…!」
旦那様の腕を掴んで止めようとしても、俺の腕じゃびくともしない。
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