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別れ出会い、別れる
詩の持つ力
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『ホント第一印象間違えたな…』
顔の汚れを落としながら呟く。
だって仕方ないじゃん!人がいるとは思わないし!
『さて…こんなとこに子供1人。近くに村があるかも知れないな。それとも、俺みたく…』
俺は自分の刻印を見た。俺だって人間だ、いつだって最悪を想定してしまう。まぁどちらにしてもこの子が起きないと分からないけどな。
──
すこし辺りを散策することにした。どこにいっても木、木、木。ほんと変わり映えないのね、ここ。木を見るのにも疲れふと足元の木の葉を見る。葉は緑から少し赤く染まり始めたような色合いをしていた。
そろそろ涼しくなるな。さて、子供は起きただろうか。子供の所に戻る。
『って、まじかよ…何にもねぇ!』
さっきまで鞄を置いていて、子供を寝かせてた筈なのに気配すら無い。
もしかして、ひったくられ…いや!まだわからない。誘拐かもしれない。
若干の焦りもあったがそれほど冷静さは失わなかった。
こう言う時には効くあるおまじないをしっている、俺は落ち着いてその詩うたを口ずさむ。
"かの者は千里まで見渡した。かの者は千里先の助けの声を聞いた。あらゆる者に力を貸し、世界の均衡を守る者がいた。"
これは、詩の可能性を信じた者が生み出した力だ。言葉に想いを持たせて自身に新たな力を与える力。
今のは大昔に存在したとされる勇者を基に作られた詩で、視覚と聴覚の強化を行える。
『っし!聴こえる!これだと左から3番目の木からまっすぐに走れば追いつける!』
あとは全速で走るのみ。それしても今日はよく走る日だ…
程なくしてその背中は見えた。まぁ後ろ姿は鞄なんだが…ってことはあの少年が盗んだに違いない。少年は最初こそかなりの速さで走っていたが、徐々に失速していき追い着くことができた。
『目が覚めて何よりだけど盗みはいかんだろ君。何か訳でもあるのかい?』
相手は子供だ怒鳴っちゃいけない。
俺が少年を見つめるとみるみるうちに顔が歪み始めた。
『だって、だって…母さんが…病気で危ないんだ!』
少年はついに泣き出してしまった。
『おいおい泣くなって…』
『まだ死んでないもん!』
違う 亡 じゃないぞ少年。
『落ち着けって。お母さんが病気で薬が欲しかったのかい?悪いが楽器以外持ち合わせてないぞ』
少年の背中をさする。少し落ち着いた後、少年は俺の鞄を指さした。
『お母さんの病気を治せるって教えてもらって、その花を探していました…でもなかなか見つからなくて、起きたら目の前にそれがあって、それだけ持っていこうとしたんですが、なかなか取れなくて、持っていってしまいました』
少年の指したのは俺の鞄。よく見てみると何処で付いたか分からない紫の花が付いていた。
『少年。今、君はひとりかい?』
思った事を聞く。冷静に考えると、こんな森のど真ん中に子供1人でいるのはおかしい。
『はい…誰もいません』
少年の顔は暗くなり、聞かない方がいい事情があるように思えてくる。でも聞く。職業柄知らないことがあるのは許せないからだ。
『どうしてだい?君みたいな子が一人でいると危ないと思うんだけど』
少年は俯いた。そして重々しく事情を語る。
『それは、…僕が"忌子"だから皆に嫌われてるんです』
『忌子?』
少年は脱ぎ始め背中を見せてきた。
『それって…』
少年の背中には何度も見てきて俺がここにいる原因にもなったあの「刻印」があった。
『僕、生まれた時からこれがあったみたいで理由は聞いたことないんですけど、どうやら不吉なものだからって避けられ続けてきたんです』
不吉なものか…俺の"刻印"は今のところ実害はないからいいものの何かあったらどうなっちまうんだろう。
『つまりはだ、少年は…って面倒だな。名前は?』
『え?あ、バードって言います』
『なるほどバードね。俺はバリード、似てるな。で、先程の続きなんだが今君は花を見つけるという目的は達成できた訳だ。で、母さんの居る村はどこだい?』
『分かりません…印の通りにきたんですが』
バードの指した木には深く掘られたバツ印が刻まれていた。
『うーん。あ、なんか村の情報とかない?言い伝えとかさ』
『言い伝え…ですか』
数秒の沈黙の後、また呟く
『あ、確か昔から村が襲われることが多くて魔除けのお守りがあるとかは聞いたことあります。外からは入れなくなると聞きました』
外から入れなくなる、か。どうやら村の連中は本気でバードが嫌いらしい。最もらしい理由をつけて帰れなくなる守りの外に出したんだろ。
ふとバードを見る。心なしかさっきより焦っている。
『どうしたバード催したか?まあそんなすぐには方法なんて思い浮かばないからな、あんまり焦るな』
『あ、すいません…今どのくらい時間が経ったかなと思っただけです』
そういえば空が少し赤くなってきている。そろそろ夜が来てしまうのだろう。
『そろそろ夜になるくらいじゃないか?』
そう言うとバードの顔はみるみる青ざめていった。
『早く村に戻らないと!今日の夜までに薬を飲ませなきゃ、母さんが!母さんが…死んじゃうって』
ここで俺はことの重大さに気付いた、この礼儀正しい少年が盗みまでして焦った理由を知ってしまったから。
『って!あと数刻だぞ!どこなんだ村は!』
聞くが返事などない。
消えた謎を解くため思考を巡らせる。与えられた情報は、お守り…ぐらいか。どんな力が働いているのだろうか。まずは、知ってる理論から考えてみることにした。
──
この世界の技術は大きく分けて二つある。一つはバードを追いかけた時のような身体に巡る「魔素」というものに働きかけて身体能力を向上させる技術。
もう一つはどの空間にも存在する「空素」というものに念じることで形を与えるもの。これはいきなり空中に何かの塊を作れたり出来る感じだ。
大まかな技法はこの二つだ。他に少数民族だけが使える技術や俺が使う詩の力など細かに種類があるのだが、あいにく知っているのはこの2つだけだ。
だが、ここの村のお守りに使われてる技術は分かる。おそらく"空素"の技術が使われているんだと思う。空間を歪め、村に真っ直ぐ歩けない様にする、これで見つからない村の理由はつく。
『これが正しいとすれば、俺がすべきはこの森を正常にして体の自由を取り戻すこと…待っててくれバード、絶対お前を帰らせてやる』
バードは諦め始めている様だ、座り込んでやがる。
…あとで泣くぐらいお礼を言わせてやる。
どの詩が相応しいのだろうか。
あ、…アイツが丁度いいかな。
俺はバードに返してもらったカバンから弦楽器をだす。前回は使えなくて効力も減っていたからこれでちょうど良い筈。
──ジャララーン。
乾いた木材に音が反響し、静かさが増していく
"旅人の目は曇ることはなかった。ただ己が望む道を突き進み、真実を知る事を望んだ"
とある貴族が周りの噂を自分の目で確認したいがために、旅に出たという話。彼は数々の困難に巻き込まれたが、結果的に自分の望む結末に進めた。
これはその彼の様に望む"道"を見つけることのできる詩だ。
唱えたすぐ景色が歪み始めた。そしてすぐ先にポツンと松明の光が見えた。
『村だ!確かに僕の村だ!』
『おいおい…ほんとに出てくるのかよ』
この時ほど自分の才を恐れる日は今後訪れないだろう。非現実的な出来事はそれほど衝撃的だった。
顔の汚れを落としながら呟く。
だって仕方ないじゃん!人がいるとは思わないし!
『さて…こんなとこに子供1人。近くに村があるかも知れないな。それとも、俺みたく…』
俺は自分の刻印を見た。俺だって人間だ、いつだって最悪を想定してしまう。まぁどちらにしてもこの子が起きないと分からないけどな。
──
すこし辺りを散策することにした。どこにいっても木、木、木。ほんと変わり映えないのね、ここ。木を見るのにも疲れふと足元の木の葉を見る。葉は緑から少し赤く染まり始めたような色合いをしていた。
そろそろ涼しくなるな。さて、子供は起きただろうか。子供の所に戻る。
『って、まじかよ…何にもねぇ!』
さっきまで鞄を置いていて、子供を寝かせてた筈なのに気配すら無い。
もしかして、ひったくられ…いや!まだわからない。誘拐かもしれない。
若干の焦りもあったがそれほど冷静さは失わなかった。
こう言う時には効くあるおまじないをしっている、俺は落ち着いてその詩うたを口ずさむ。
"かの者は千里まで見渡した。かの者は千里先の助けの声を聞いた。あらゆる者に力を貸し、世界の均衡を守る者がいた。"
これは、詩の可能性を信じた者が生み出した力だ。言葉に想いを持たせて自身に新たな力を与える力。
今のは大昔に存在したとされる勇者を基に作られた詩で、視覚と聴覚の強化を行える。
『っし!聴こえる!これだと左から3番目の木からまっすぐに走れば追いつける!』
あとは全速で走るのみ。それしても今日はよく走る日だ…
程なくしてその背中は見えた。まぁ後ろ姿は鞄なんだが…ってことはあの少年が盗んだに違いない。少年は最初こそかなりの速さで走っていたが、徐々に失速していき追い着くことができた。
『目が覚めて何よりだけど盗みはいかんだろ君。何か訳でもあるのかい?』
相手は子供だ怒鳴っちゃいけない。
俺が少年を見つめるとみるみるうちに顔が歪み始めた。
『だって、だって…母さんが…病気で危ないんだ!』
少年はついに泣き出してしまった。
『おいおい泣くなって…』
『まだ死んでないもん!』
違う 亡 じゃないぞ少年。
『落ち着けって。お母さんが病気で薬が欲しかったのかい?悪いが楽器以外持ち合わせてないぞ』
少年の背中をさする。少し落ち着いた後、少年は俺の鞄を指さした。
『お母さんの病気を治せるって教えてもらって、その花を探していました…でもなかなか見つからなくて、起きたら目の前にそれがあって、それだけ持っていこうとしたんですが、なかなか取れなくて、持っていってしまいました』
少年の指したのは俺の鞄。よく見てみると何処で付いたか分からない紫の花が付いていた。
『少年。今、君はひとりかい?』
思った事を聞く。冷静に考えると、こんな森のど真ん中に子供1人でいるのはおかしい。
『はい…誰もいません』
少年の顔は暗くなり、聞かない方がいい事情があるように思えてくる。でも聞く。職業柄知らないことがあるのは許せないからだ。
『どうしてだい?君みたいな子が一人でいると危ないと思うんだけど』
少年は俯いた。そして重々しく事情を語る。
『それは、…僕が"忌子"だから皆に嫌われてるんです』
『忌子?』
少年は脱ぎ始め背中を見せてきた。
『それって…』
少年の背中には何度も見てきて俺がここにいる原因にもなったあの「刻印」があった。
『僕、生まれた時からこれがあったみたいで理由は聞いたことないんですけど、どうやら不吉なものだからって避けられ続けてきたんです』
不吉なものか…俺の"刻印"は今のところ実害はないからいいものの何かあったらどうなっちまうんだろう。
『つまりはだ、少年は…って面倒だな。名前は?』
『え?あ、バードって言います』
『なるほどバードね。俺はバリード、似てるな。で、先程の続きなんだが今君は花を見つけるという目的は達成できた訳だ。で、母さんの居る村はどこだい?』
『分かりません…印の通りにきたんですが』
バードの指した木には深く掘られたバツ印が刻まれていた。
『うーん。あ、なんか村の情報とかない?言い伝えとかさ』
『言い伝え…ですか』
数秒の沈黙の後、また呟く
『あ、確か昔から村が襲われることが多くて魔除けのお守りがあるとかは聞いたことあります。外からは入れなくなると聞きました』
外から入れなくなる、か。どうやら村の連中は本気でバードが嫌いらしい。最もらしい理由をつけて帰れなくなる守りの外に出したんだろ。
ふとバードを見る。心なしかさっきより焦っている。
『どうしたバード催したか?まあそんなすぐには方法なんて思い浮かばないからな、あんまり焦るな』
『あ、すいません…今どのくらい時間が経ったかなと思っただけです』
そういえば空が少し赤くなってきている。そろそろ夜が来てしまうのだろう。
『そろそろ夜になるくらいじゃないか?』
そう言うとバードの顔はみるみる青ざめていった。
『早く村に戻らないと!今日の夜までに薬を飲ませなきゃ、母さんが!母さんが…死んじゃうって』
ここで俺はことの重大さに気付いた、この礼儀正しい少年が盗みまでして焦った理由を知ってしまったから。
『って!あと数刻だぞ!どこなんだ村は!』
聞くが返事などない。
消えた謎を解くため思考を巡らせる。与えられた情報は、お守り…ぐらいか。どんな力が働いているのだろうか。まずは、知ってる理論から考えてみることにした。
──
この世界の技術は大きく分けて二つある。一つはバードを追いかけた時のような身体に巡る「魔素」というものに働きかけて身体能力を向上させる技術。
もう一つはどの空間にも存在する「空素」というものに念じることで形を与えるもの。これはいきなり空中に何かの塊を作れたり出来る感じだ。
大まかな技法はこの二つだ。他に少数民族だけが使える技術や俺が使う詩の力など細かに種類があるのだが、あいにく知っているのはこの2つだけだ。
だが、ここの村のお守りに使われてる技術は分かる。おそらく"空素"の技術が使われているんだと思う。空間を歪め、村に真っ直ぐ歩けない様にする、これで見つからない村の理由はつく。
『これが正しいとすれば、俺がすべきはこの森を正常にして体の自由を取り戻すこと…待っててくれバード、絶対お前を帰らせてやる』
バードは諦め始めている様だ、座り込んでやがる。
…あとで泣くぐらいお礼を言わせてやる。
どの詩が相応しいのだろうか。
あ、…アイツが丁度いいかな。
俺はバードに返してもらったカバンから弦楽器をだす。前回は使えなくて効力も減っていたからこれでちょうど良い筈。
──ジャララーン。
乾いた木材に音が反響し、静かさが増していく
"旅人の目は曇ることはなかった。ただ己が望む道を突き進み、真実を知る事を望んだ"
とある貴族が周りの噂を自分の目で確認したいがために、旅に出たという話。彼は数々の困難に巻き込まれたが、結果的に自分の望む結末に進めた。
これはその彼の様に望む"道"を見つけることのできる詩だ。
唱えたすぐ景色が歪み始めた。そしてすぐ先にポツンと松明の光が見えた。
『村だ!確かに僕の村だ!』
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