異世界転生者の図書館暮らし1 モフモフと悪魔を添えて

パナマ

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5原始の森と温泉宿

5-3.原始の森と温泉宿

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土足禁止で、板張りの上りカマチの横にある下足入れに、泥が白くこびり付いたブーツなどを格納して施錠する。
フダのようなカギを手に持って、何やらすぐに脱げてしまいそうな室内履きに履き替えると「火気厳禁、火属性魔法禁止」とある廊下入り口から入り、奥へ進む。
ソゴゥ様は先から上機嫌で、鼻歌を歌い出しそうな・・・・・・・いや、すでに歌っていらっしゃって、中庭などを眺めていらっしゃる。
細い板張りの廊下を、幾度も曲がり、階段を上がったり降りたりしながら、一旦建物の外の屋根付きの廊下を渡って、山に食い込む様にして建てられた別館に案内された。
別館には客室が二つしかないようで、手前の「二人静」とドアに貼られた客室を通り過ぎて、奥の突き当りの「曼珠沙華マンジュシャゲ」の部屋へ通される。

「こちらです、こちらの建物は新しいので部屋もきれいなんですよ」
「おお、タタミだ、すごい! 座卓に座布団に茶菓子、パーフェクト!」
ソゴゥ様が拳を握りしめて喜ばれていらっしゃるが、正直、椅子もベッドもないただの織った草の敷物の上に、低いテーブルが置いてあるだけの部屋で、体を休められる気がしないが、野宿よりは屋根や壁があるだけましというものだと諦める。
ブロンも似たような見解なのか、殺風景な部屋に悄然ショウゼンとしている。
ソゴゥ様が皆に座布団に座るように勧め、仲居が発酵が不十分なのか、まだ緑色をした茶を入れる。
何か草っぽくあるが、ソゴゥ様はやはり喜んで飲まれている。
「もしかして、ここってイグドラシルの大司書さんが提案した温泉街なんじゃないですか?」
「ええ、よくご存じで。以前、この町で翼にカビが生える疫病が流行って、その治療法などを相談した際に、ここの温泉で常に体を清めることと、今まで手掴みでしていた食事をハシを使うことを提案していただいて。その際に、わざわざ大司書様が来訪されまして、過疎化の進んでいた街の復興まで提案いただいたんですよ。建物の様式の珍しさ、宿のサービスの斬新さなどが話題になって、今では、ガルトマーン王国内だけでなく、世界中から観光や湯治目的でお客さんが来られるようになったんです」
「なんと、大司書様が考案されたんですか」
「ええ、ですからエルフのお客さんも増えましたよ」
ソゴゥ様が嬉しそうであったのはそのせいなのかと、納得した。
「お食事はこちらにお持ちいたしますか? それとも食堂でご用意いたしますか?」
「食堂に行くので、布団だけお願いします」
「かしこまりました。では失礼します」
仲居が出ていくと「布団を持って来てくれるのでしょうか?」とブロンがソゴゥ様に尋ねる。
「いや、そこの押し入れに入っている布団を、寝る前に敷いてくれるんですよ」
「そうなのですね、私はてっきり、この床で寝るのかと思っておりました」
「ちゃんとフカフカな寝床を用意してくれますよ。さてと、大風の書が今どこにあるか確認しよておこう。ガイド、大風の書を」とソゴゥ様が低いテーブルに地図を投影され、カギを槍のように大きくして床にトンと突く。
光が拡散し、やがて地図上に黄金の光が明滅する箇所が現れる。
光は昨日とほとんど変わらないウィドラ連邦国の北側、ガルトマーン王国との国境付近にあった。
昨日よりややガルトマーン王国のスーパービィバ活火山群に近い、ウィドラ連邦国側だ。
「活火山群に向かっているとすると、ティフォン・トーラスの目的として考え得る二つの事柄があげられますね。一つは、火山の噴煙フンエンの向きをイグドラムに向ける事。大風の書で偏西風とは逆向きのジェット気流を起して、灰をイグドラムに降らせればその被害は甚大ジンダイだ。スーパービィバ活火山群に植物が生えないのは、常に噴煙で曇っているからだけでなく、灰に毒性があるからです。もう一つは、まだ確証がないうちは話すことが出来ません。ガルトマーン王国とイグドラムでの決め事に関わることだからですが、お二人は他に何か考えられることはありますか?」
ソゴゥ様が聞かれる。
「今のところティフォン・トーラスの目的と行先については、ソゴゥ様のご推察以上の意見はございません」
「私もです」
「この地域でティフォン・トーラスが立ち寄って一番厄介な場所がスーパービィバ活火山群です、そこへ辿り着く前にティフォン・トーラスの身柄を抑えようと思います。距離的には早朝から馬で向かえば、向こうが飛行竜を使わない限り追い付けるでしょう」
「現在、ウィドラ連邦国とガルトマーン王国の国境を飛行竜で超えることは不可能と聞きます。しかし、万一のことがあった場合を考え、ここでは休憩するに留めて先を急いだほうがよろしいのではないでしょうか?」
「いいえ、明日万全の態勢でノゾむためにも今日はしっかり休みましょう。それに、万が一、ティフォン・トーラスに出し抜かれても、大丈夫なよう保険がありますから」
「分かりました」とブロンが応える。 
正直、ソゴゥ様の言葉にほっとしていた。
おそらくブロンもそうだろう。
「手紙を出したら、風呂へ行きましょう」
ソゴゥ様が驚くほどの速記で手紙を書きあげ、それを二羽の白いふっくらした丸い鳥に変化させて、窓辺から外へ放たれる。

「ソゴゥ様、大変恐縮ですが、ガルトマーン王国は猛禽類モウキンルイの宝庫とされ、小鳥はすぐに餌食エジキにされてしまいます。手紙を届けるのは難しいかと」
「ああ、大丈夫ですよ、強いので。ほら、あそこ見てください」
ソゴゥ様が指し示す方に目を向けると、ちょうど飛び立ったばかりのソゴゥ様の小さな白い鳥の一羽が、匍匐飛行ホフクヒコウしてきた大きな肉食の鳥に襲われていた。
爪で小突かれてバランスを崩したところで、小鳥は大きく膨れ上がって舞い上がり、ふっくらした可愛らしいフォルムから、スマートで強そうな大きな鳥に変化して、襲ってきた鳥を蹴り返している。
「さっさと振り切って手紙を届けてくれたらいいんですが、負けん気が強いみたいで、やられたらやり返すんですよ」と困ったようにソゴゥ様が仰る。
「イグドラシルの樹皮から作った紙に、マスターが魔法を掛けた鳥であれば、目的地に到達できないことなどまずない」
「マスターじゃなくて、ソゴゥね。ブロンさんも、ヴィントさんも、人前では私のことはソゴゥと呼びつけてください」
「そうは思っているのですが、なかなか・・・・・・・ソゴゥ様も、我々のことは呼びすてでお願いします」
「なるほど、急に呼び方を変えるというのは難しいですね」とソゴゥ様が苦笑される。
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