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1 悪夢と海底の箱
1-3. 悪夢と海底の箱
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その箱を海底に見つけたのは二か月前。
極東の人間の脱出を成功させ、彼らを乗せた客船と、護衛の軍艦、そしてニルヤカナヤ国の潜水艇でイグドラム国の近海を航行していた時に、それを発見したのである。
軍艦や潜水艇に搭載されている魔力感知機器が、故障したのではないかと疑われるほど、強大な魔力を検知しのだ。
イグドラムの軍艦とニルヤカナヤの潜水艇で連絡を取り合い、その時は避難民の命を最優先としてその場を速やかに離脱し、後日確認するという事となった。
イグドラムとニルヤカナヤの合同で、その強力な魔力の場となった海域を調査したところ、二十から三十メートルにもなる鋭角な多角錐の岩が、ウニの棘のように海底の岩盤が変質し、無数に突き出している個所を発見した。その中央に、その岩の棘で守られるように黒い箱があり、その箱から魔力が漏れ出していることが分かった。長さが二メートルほど、高さと幅が六十センチほどで、成人したエルフが横たわって入れるほどの大きさから、棺のようなものと推測された。
ニルヤカナヤとの合同調査後、発見場所がイグドラムの領海にあるため、箱の処遇についてはイグドラム預かりとなった。
そして何日にもわたり、箱をそのままにしておくか、引き上げるかの協議が繰り返し行われた。最も多い意見が、箱には触れずそのままにしておいて、定期的な監視を行うといったものだった。いたずらに引き上げて、太歳のときのように世界中を巻き込む災厄を掘り起こす羽目になることは、何としても避けたいところであったからだ。
しかし、箱が何者かに持ち去られ、悪用される危険性を常に抱え持っているというのも健全な状態ではないという意見も上がった。
結果、箱は細心の注意をもって引き上げ、中を調査した上で、地中深くに封印するか、海洋に戻すかを決定するという事となった。
箱を引き上げるのには、警察機関の魔法安全対策課が主体となり、イグドラム国の五指に入る大魔術師のうちの二人が立ち会う事となった。また、箱は警察機関の施設である、魔法試料の実験や保管、隔離を行う地下四十メートルにある実験施設に運び入れることが決定されていた。その海洋上での警察機関の船と、サルベージ船の警護を任された海軍に所属するミトゥコッシーは、早朝から開始した作業を軍艦の船首にて監視の任に就いていた。
黎明時には雲一つなかった空が、作業が進むにつれ曇り出し、昼に差し掛かる辺りで黒い雲が雨を降らせた。風はなく、雨雲は停滞し、ただ陰鬱な雨を降らせ、海面が静かに雨を受け止めていた。これで風でもあれば、作業は中止となっていただろうが、波は今のところ穏やかだった。
動きがあったのは、午後を過ぎてからだ。
海底の邪魔な石柱をある程度切り崩し、牽引のためのロープを対象に巻き付ける作業が完了し、後は引き揚げ作業を残すのみとなった。
サルベージ船のカニの足のようなクレーンが動き始め、魔力を九割遮断する素材で出来た箱を収めるためのケースが平らに展開された。
いよいよだ。
ミトゥコッシー達は、船舶の護衛でもあるが、万が一箱から何かが出てきた際、これを攻撃して破壊する役割もある。軍艦の全門は吊り上げられた箱へと向けられる。
万が一攻撃が必要となる事態が発生した場合、サルベージ船の船員は海中へ避難し、待機している海難救助のエキスパートを乗せた数隻の警備艇から救助隊がサルベージ船の船員を救い出す手はずとなっている。
これらの作戦は、箱の引き上げ決定後、何度もリハーサルが行われている。
海底からの箱の引き上げ、ケースへの格納そして運搬と陸揚げ。陸揚げしたケースの輸送から、実験施設への搬入。
陸揚げから施設への搬入は、王都であるセイヴの街に人が少ない深夜に行われる手筈となっている。
また道中は軍部と警察機関、そして王宮騎士それぞれの戦闘能力の高い者が警護にあたり、箱が施設に収められるまでが、今回の作戦であった。
極東の人間の脱出を成功させ、彼らを乗せた客船と、護衛の軍艦、そしてニルヤカナヤ国の潜水艇でイグドラム国の近海を航行していた時に、それを発見したのである。
軍艦や潜水艇に搭載されている魔力感知機器が、故障したのではないかと疑われるほど、強大な魔力を検知しのだ。
イグドラムの軍艦とニルヤカナヤの潜水艇で連絡を取り合い、その時は避難民の命を最優先としてその場を速やかに離脱し、後日確認するという事となった。
イグドラムとニルヤカナヤの合同で、その強力な魔力の場となった海域を調査したところ、二十から三十メートルにもなる鋭角な多角錐の岩が、ウニの棘のように海底の岩盤が変質し、無数に突き出している個所を発見した。その中央に、その岩の棘で守られるように黒い箱があり、その箱から魔力が漏れ出していることが分かった。長さが二メートルほど、高さと幅が六十センチほどで、成人したエルフが横たわって入れるほどの大きさから、棺のようなものと推測された。
ニルヤカナヤとの合同調査後、発見場所がイグドラムの領海にあるため、箱の処遇についてはイグドラム預かりとなった。
そして何日にもわたり、箱をそのままにしておくか、引き上げるかの協議が繰り返し行われた。最も多い意見が、箱には触れずそのままにしておいて、定期的な監視を行うといったものだった。いたずらに引き上げて、太歳のときのように世界中を巻き込む災厄を掘り起こす羽目になることは、何としても避けたいところであったからだ。
しかし、箱が何者かに持ち去られ、悪用される危険性を常に抱え持っているというのも健全な状態ではないという意見も上がった。
結果、箱は細心の注意をもって引き上げ、中を調査した上で、地中深くに封印するか、海洋に戻すかを決定するという事となった。
箱を引き上げるのには、警察機関の魔法安全対策課が主体となり、イグドラム国の五指に入る大魔術師のうちの二人が立ち会う事となった。また、箱は警察機関の施設である、魔法試料の実験や保管、隔離を行う地下四十メートルにある実験施設に運び入れることが決定されていた。その海洋上での警察機関の船と、サルベージ船の警護を任された海軍に所属するミトゥコッシーは、早朝から開始した作業を軍艦の船首にて監視の任に就いていた。
黎明時には雲一つなかった空が、作業が進むにつれ曇り出し、昼に差し掛かる辺りで黒い雲が雨を降らせた。風はなく、雨雲は停滞し、ただ陰鬱な雨を降らせ、海面が静かに雨を受け止めていた。これで風でもあれば、作業は中止となっていただろうが、波は今のところ穏やかだった。
動きがあったのは、午後を過ぎてからだ。
海底の邪魔な石柱をある程度切り崩し、牽引のためのロープを対象に巻き付ける作業が完了し、後は引き揚げ作業を残すのみとなった。
サルベージ船のカニの足のようなクレーンが動き始め、魔力を九割遮断する素材で出来た箱を収めるためのケースが平らに展開された。
いよいよだ。
ミトゥコッシー達は、船舶の護衛でもあるが、万が一箱から何かが出てきた際、これを攻撃して破壊する役割もある。軍艦の全門は吊り上げられた箱へと向けられる。
万が一攻撃が必要となる事態が発生した場合、サルベージ船の船員は海中へ避難し、待機している海難救助のエキスパートを乗せた数隻の警備艇から救助隊がサルベージ船の船員を救い出す手はずとなっている。
これらの作戦は、箱の引き上げ決定後、何度もリハーサルが行われている。
海底からの箱の引き上げ、ケースへの格納そして運搬と陸揚げ。陸揚げしたケースの輸送から、実験施設への搬入。
陸揚げから施設への搬入は、王都であるセイヴの街に人が少ない深夜に行われる手筈となっている。
また道中は軍部と警察機関、そして王宮騎士それぞれの戦闘能力の高い者が警護にあたり、箱が施設に収められるまでが、今回の作戦であった。
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