異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て

パナマ

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7 終章 秋冬コレクション

7-3. 終章 秋冬コレクション

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ソゴゥが真っ青な顔で、黙々とクレモンをむいて食べているところへ、ナタリーが真っ赤な司書服を持ってやって来た。
レベル5の暗赤色の落ち着いたボルドーとは違い、明るく鮮やかな赤だ。
ナタリーはルキに渡し、キュッツキュッツとルキに話しかける。
「これを着て、兄について行くようにと言っているのデフが」
「ああ、このイグドラシルにいる以上、他の司書達に事情を説明する必要がある。食事が終わったら、下の階に行くから、部屋でそれに着替えておいて、あとで呼びに行く」
「分かったニョン」

ルキがイグドラシルに来たのには、ルキの核となっている樹木の粋が関係していた。この樹木の粋には、以前この核によって顕現していた樹精霊の記憶が残っているらしく、ルキの意識に少なからず影響を与えている。
ルキが精霊の森の樹精獣達を愛おしいと思うのも、樹精獣たちがルキにとても懐いているのも、この樹精霊の記憶をお互いに感じているからだ。
樹精獣たちが自分を慕うのではなく、樹精霊を慕っているのだと分かっても、ルキは樹精霊にとても感謝していた。それまで知らなかったこの尊い感情を、知ることが出来たと。
だから、ルキは会ったこともない樹精霊のことも好きだった。
それに、樹精獣たちは、自分に樹精霊の面影を見ながらも、きちんとルキを見ていると知らせてくる。彼らは賢く、情が深い。自分たちは樹精霊を慕っているが、ルキが好きだと全身で伝えてくるのだ。

兄や悪魔の着ている服と似た、赤い服に着替えると兄が迎えに来た。
「おお、似合っているな、ってか、ほぼ俺か、なんか複雑だな。ともかく、イグドラシルにいる際は、この第七区画以外ではその司書服を着ておくように。王に、樹精霊代理として、精霊の森に住む権利を得たが、このイグドラシルでもやはり樹精霊としてイグドラシルに仕える者という立場で、イグドラシルの第七区画への立ち入りを許可するという名目とする。異存はあるか?」
「ないノス」
「ああ、あと一つ、重要な事を忘れていた。司書達の前では、俺の事は兄ではなく館長と呼ぶように、いいね?」
「分かったニョス」
「語尾、ちょっとの間だけ、普通にできる?」
「問題ありませんよ」
「おお、ものすごく賢そうになった」
「ご婦人方から血を分けていただく際は、こちらの話し方の方が受けがいいと思い、夜は普段からこのような話し方をしておりますので」
「グッ、そうだった、それについてはまた後で要相談だな。俺が、イヲンで妙なあだ名で呼ばれないようにしたい」
ソゴゥはルキを伴い、レベル5の集まる執務室へと向かった。
ルキを見るなり、アベリアが言葉を失い、他の司書達のどよめきが室内に広がる。

「館長、いつの間に娘さんがいらしたのですか?」
「いや、俺まだ二十だけど? このルキが娘だとして、俺のいつの時の子なんだ?」
サンダーソニアのボケともつかない言葉に律儀に応える。
「しかし、赤目黒髪、館長と生き写しの容姿と言い、そこのヨルさんとの子かと・・・・・・冗談です、アベリア落ち着きなさい、どうしてペーパーナイフをヨルさんに向けているの?」
セアノサスが目にもとまらぬ速さでアベリアから凶器を取り上げ、周辺の凶器となりそうなものを退かした。
「ルキは、イグドラム領海から発見された海底の箱から復活した邪神だ。少し前に、目抜き通りを、トゲ通りに変えた吸血鬼騒動があっただろう? その時の吸血鬼がルキだ」
「なんと、ルキというのはルキフグスの事でしたか」
古参の一人が、驚きながらも冷静に応える。
「ルキは、魔族によって殺された樹精霊の核を依り代として顕現し、精霊の森の樹精獣たちの庇護下にある。王も、これを認められ、ルキは精霊の森の居住権を得ている」
「しかしながら、その赤い司書服は一体?」
「恐らくなのだが、ルキを俺の側に置いておきたいという、イグドラシルの意向ではないかと思っている」
「どういうことでしょうか、館長」
サンダーソニアが尋ねる。
「ルキは、今の所、唯一の『世界樹伐りの斧』に対抗できる手段だからだ。樹精霊を殺した世界樹伐りの斧は、世界樹などの樹精霊の神聖域に取り付くウイルスのようなものだ。このウイルスを取り除くことが、このルキには出来る」
「館長」
「なんだ?」
「館長、イヲンの街に行かれましたよね?」
「ああ」
「その時の報告を伺っていないのですが、セアノサス、貴方からもです」
「え、ああ、うん」
「あの時、イグドラシル中の樹精獣たちの様子がおかしかったのです」
「おお」
「まさか、世界樹伐りの斧に感染していたという事はないですよね」
サンダーソニアの追及に、ソゴゥとセアノサスの目が泳ぐ。
ヨルとルキは魂の抜けた人形の様に、この場から意識を遠ざけて無関係を装っている。
「済んだことだ」
「報告書、報告書を提出してください。あの時は公務でした、あったことを全て、書き出してお見せください」
「グウッ、分かった、後で必ず提出する」
「館長、我々は樹精獣のように館長の危機を直ぐに察知出来ませんが、館長の事をいつだって助けたいと思っているのです。心配くらいさせてください」
「分かった、報告せず済まなかった。ルキは俺の命の恩人だ、それに、イグドラシルの第七区画の立ち入りが認められている。全ての樹精霊を守護する邪神として、これからも皆には承知おいて欲しい」
「護衛の悪魔に、守護の邪神ですか、イグドラシルはいよいよ楽しくなってきましたね」
予想外のサンダーソニアの言葉に、ソゴゥはポカンとする。
「館長、我々は変化を嫌っていないのですよ。イグドラシルを守る仲間が、必ずしもエルフでなくともよいのです」
「我々は、長生きであることと、気性が穏やかでありつつも知的好奇心が高いところが、イグドラシルを支えるための性質と合致していただけにすぎません」
ソゴゥはレベル5の司書達の言葉に、胸が震える思いだった。
「あの、館長、ところで、ルキさんはどうして館長とそっくりなのでしょう?」
アベリアが尋ねる。
「ああ、それは俺も気になっていた。俺がルキにウイルスと一緒に血を吸われたせいかと思っていたが?」
ソゴゥがルキに尋ねる。
「私が、この樹木の粋に憑りつく前に、一度エルフに憑りついたのですが、その者の目を通して初めて人の姿をはっきりと認識したのが、館長でしたので、その姿を写し取って顕現したのです。私はもともと女性の性質を持つ邪神ですので、女性型となっておりますが、男性型にもなれます」
「ちょっと、男性型になってもらえる?」
ソゴゥが言うと、ルキは頷いて男性型に変身した。
「これだと、瞳の色以外、区別がつきませんね」
「そうだろう? なあ、セアノサス、こっちが例のイヲンの街の『王子』だから」
「分かっておりますよ、まさかずっと気にされておられたのですか?」
「いや、まあ、ともかく、そういうわけなので、何かあったら言ってくれ」
ソゴゥはレベル5の司書達の目を一人ずつ見つめる。
「大丈夫ですよ、館長。ルキさんの事は、ヨルさんと同じ同僚と思って接しますので」
ソゴゥはほっとしたように頷いた。

こうして、真っ赤な司書服の美女がレアキャラとして図書館に出没するようになり、妙な図書館通いのエルフが増えてしまったのだった。
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