衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

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第07章 チームエイジ

第13話 追加依頼

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「わかりました!」
 領主様の食堂にキバーツの声が響き渡った。
 次期料理ギルドのギルド長候補のキバーツが得意満面のドヤ顔で声を張り上げた。

 戻って来てからまだ解放されない俺も付き合い食堂で待っている。何かいいアイデアは無いかというのだが、そんなのあるわけない。俺は料理人では無いんだから。

「おお! さすがキバーツ殿。それで、その方法とは」
「ベタール殿、このパンに塗ってるマヨネーズと壷に入っているマヨネーズを食べ比べれば、意外と簡単に分かりましたぞ」
「して、その方法とは」
「ええ、いつも私達が使っているものでした。酢の代わりにワインビネガーをサラダ油の代わりにオリーブ油を使っているだけでしたな。だが、この方法ではイージ殿のマヨネーズが越えられないどころか数段下の味にしかならない事も同時に分かってしまいましたな」

 謎を解き明かした喜びも束の間、味としては十分美味しいのだが、エイジの出したマヨネーズには遠く及ばない出来に落胆するキバーツであった。

 それでも試作マヨネーズは上手に出来上がった。味見をするとハイグラッドから購入してきたマヨネーズにソックリだった。
 その横に衛星が作ったマヨネーズを置いて、そちらも味見してみると違いは明らかだった。
 初めて味わうのなら、キバーツ式でも十分なのだろうが、本来のマヨネーズの味を知った後だと納得が出来なかった。

「酢ですな」
「酢ですね」
「確かに酢だな」
「ですね」

 キバーツ、ベタール、領主様、俺の四人の意見が一致した。酢の違いがマヨネーズ全体の味の違いとなっている。
 油の違いも若干影響はあったが、酢ほどの違和感はなかった。

 酢は日本酒と関係があったはずだが日本酒などない。
 あるもので作ると満足行く味にならない。
 だったら作るか。
 元スラム民の住む居住区に日本酒と酢の工場も作れば、酢はマヨネーズ以外にも使い道はあるだろうし、日本酒は特産品になるかもしれないな。いずれにしても米がいるようだな。

「あの……」
「よし、これで行く。バーンズと同じというのは気にいらんが、負けたわけではないのだ。同じであればあの町のように活気付くだろう。更にこちらには他にも調味料があるのだ、マヨネーズを一押しにする必要もなかろう」
「さすがは領主様。それがよろしいかと存じます」
「現状ではそれがベストでございますな」

 ま、いいか。こっちはこっちで進めればいいし、出来上がってから話してもいいしね。
 領主様の決断で方針が決まり、料理ギルドがキバーツを中心に活動を始めた。
 俺もそろそろ一週間経つので居住区へと戻って最後の仕上げをしないといけない。ついでに衛星に頼んで酒蔵と醤油蔵を作って酢も作っておこう。

 居住区産のものが増えてしまうが、出所不明のものをいつまで領主様が隠せるかだな。
 できれば三年、いや五年隠せたら、領主様はこの国でもトップの領主になれるんじゃないかな。そうなれば俺が管理してるレッテ山付近の全てに対して茶々を入れて来る貴族もいなくなるだろうと思うんだけどね。
 完全に隠し切れなくてもいいんだ、グレーな感じでもどこで作ってるか分からなければいいだけなんだから。

「それと、イージ。お前にはまだ一仕事残っている」
 え? もう終わりじゃないの? 全部丸投げできるように凄く頑張ったよ?
 ベタールさんとキバーツさんを退出させた後、俺も挨拶して帰ろうとしたら領主様に引き止められてしまった。

「先日の魔族だが、前々からアイリスを狙ってた隣の領主のボッシュールが魔族と繋がっていた事が判明した。イージは魔族の扱いが上手いそうだな、王都でも話題になってるそうじゃないか。という事で頼むぞ」

 何が、というわけでなの? 魔族の扱いが上手いって誰が言ってんの? あ、魔族の尋問が話題になったとか?
 確か、衛星が目隠しして尋問に成功したんだよな。
 あの時、絶対秘密にするとか言ってたと思うんだけど、公開されまくってね?

 ……
 ……
 ……
 忘れてた!! あの二人の魔族って俺の奴隷になってなかった!? まさかそれがバレちゃった?

「何を急にソワソワしてるのだ? 分かってるだろうな」
 おぅふ、これってバレてるな。それを領主様が俺の事を匿ってくれてるから、その代償として隣の領主と魔族を何とかすれば不問とするって事だな。

 わかったよ、わかりましたよ。やってやろうじゃありませんか。
 居住区や砂糖の件が始まったばかりなんだ。こんな事で躓いてられないからね。

「はい、任せてください。ですから今後ともよろしくお願いします」
「お? お、おお……急にやる気になったようだな。では頼む」

 領主様と別れ、その足で居住区へと向かうのであった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【領主様目線】

 エイジが帰って行くと、ちょうど入れ替わりにアレクシアが儂の下へやって来た。

「あら、エイジはもう帰ったのですか?」
「ああ、今しがたな……アレクシア? …今……」
「エイジの名前ですか? ええ、アイリスにコツを教わりましたの。あれほどのものを食べさせてくれる方ですもの、名前ぐらいは呼んで差し上げませんとね」
 微笑を浮かべ答えるアレクシアに、領主アレックスは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 くっ…バーンズに続きアレクシアまでもがエイジの名前を呼べるとは。声に出さなければ呼べるのだが、声に出そうとするとちゃんと発音できなくなるのだ。忌々しい名前を付けおって。
 アレクシアも自慢げな表情をしおって。儂に勝ったとでも思っているのか!

 アレクシアにそんな気はさらさらない。ましてドヤ顔でもない。アレックスのただの被害妄想である。

「でも、あのマヨネーズですか。他のソースやケチャップにも驚きましたが、マヨネーズは別格ですわね。他にもわさび醤油やカラシもお肉に凄く合うんですのね。今晩からの食事が楽しみになりましたわ」
 食卓に並びますわよね? と聞くアレクシアにアレックスが答える。

「確かにどれも美味かったな。ベタールに申し付けておいたから今晩から出るだろう。ハンバーグも出せと言っておいた」
「まぁ! ハンバーグですね。あれにはケチャップが凄く合いましたが、マヨネーズとブレンドしたりソースとブレンドすると一層美味しくなりましたものね」
 ぐっ、アレクシアはそんなブレンドまでやっていたのか。そんな上級技まで熟しているとは……一体いつの間に……

「た、た、確かにそうだったな…はは」
「あと、あのトッピングも美味しかったですわね」

 な、なんだ、まだあるのか!

「あのチーズというものを乗せると、トロ~っととろけて見た目から美味しくさせてくれますものね」
 なに! チーズだと! そんなものは儂は食っとらん! エイジめ……

「そうそう、ポタージュスープも最高でしたわね。ベタールは作り方を教わったのかしら。確かエイジがミルクがあるか確認してたから問題なさそうですわね」

 なんと! そのようなスープまで……くっ、あの野郎…
 そんな儂の恨み心など知らぬアレクシアが、さらりと話題を変えた。

「砂糖も安くなりそうなのですわね。しかも品質がとてもいいとか」
「そうだな、イージの用意した機械もそうだが、てん菜という作物から取れる事が分かったのが僥倖だった。あれならこの地でもいくらでも栽培できそうだからな」

 今まで市場に出回っていた砂糖は全てサトウキビから作られており、しかも南部の年中暑い土地でしか採れなかったため、出回る数も希少で価格も非常に高かった。
 品質も悪く、色も黒っぽい。エイジの機械で精製された砂糖は真っ白なのだ。あんなに白いと塩と間違えてしまうかもしれん。

「それは素晴らしいですわね。領民にも手軽に砂糖が買えるようになるのですね」
「そうだな」
「あのケーキという菓子も素晴らしいですわね。毎日アイリスと競争で買ってますわ」
「毎日? 毎日買いに出ているのか?」
 なんだと。儂は二週間に一度ぐらいしか食べてないぞ。

「買いに出るのは従者ですが、私の従者とアイリスの従者のどちらが先に買って戻るか競争してますの。いつも私の従者が勝ちますので、アイリスから一つ戦利品として頂いてますの」
 ぐぬぬ…明日からは、儂の従者にも買いに行かせよう。

「そうだ、あれはまだ知らぬだろう。あの甘味も捨てがたいぞ」
「水飴ですわね。あれはもう飽きましたわ。アイリスは好きなようですが、私は偶にで結構です」
 もう知ってるのか。しかも飽きたと。
 エイジの奴め、ジャガイモが余ってるからケーキ屋で新たに出したと言って儂にも分けてくれたが、アレクシアは既に飽きただと! 儂は水飴の虜になってしまったというのにか。

「でも、あなたの判断は正解のようでしたわね。エイジを国家公認冒険者に推薦したあなたの英断には敬服しました。こんなに食を極めた人を取り込めたのは大きな財産ですものね」

 それはアレクシアの言う通りだな。
 魔族から救ってもらったお礼代わりに土地を管理させてやろうと推薦に至ったが、今となってはあの時の判断が間違ってなかったと自画自賛してしまう。結果論ではあるが、あの時の儂を褒め称えたい。
 しかも、魔族にも強いとジュレ公爵から連絡があった時は何の事かと分からなかったが、王都に送った魔族に対して何かしたようだ。
 手紙での報告だったので、詳しくはジュレ公爵も書いてくれていなかったが、魔族に対してエイジが活躍したようだ。しかも、王都専属の要請があったが、それは丁重にお断りさせて頂いた。その返事を出した時に、詳細を教えて欲しいと書いて送ったのだが、返事はまだ来ていない。恐らく秘匿され儂に知らされる事はないのだろうな。

「いっその事アイリスにどうかしら。あのもエイジの事は気に入ってるようだし」
「それは無理だ。イージは貴族ではない。いくら気に入ろうが貴族で無い者がアイリスとは結婚できぬ」
「では、誰に嫁がせるのですか? 隣のボッシュールは嫌ですわよ。それだけは辞めてくださいね」

 それは私も同感だ。ボッシュールは今までもアイリスを攫ってでも自分の物にしようと画策していた。分かってはいたが証拠がなかった。証拠が無ければ王に訴える事もできない。
 それが、エイジのお陰で魔族から救われた時、ついでに捕まえた間者がボッシュールの手の者だと分かったのだが、奴め、そんな奴は知らんと惚け通しよった。だが、今回は魔族が絡んでいる。もう言い逃れはできんだろう。
 魔族とつるんでいるのが発覚すれば、極刑は免れんだろう。

 ジュレ公爵からも対魔族のお墨付きをもらったエイジを行かせたのだ、奴ももう終わりだな。
 そこまで活躍すればエイジも授爵の話が出るかもしれん。そうなるとシルビアの相手でも相応しい資格を持つ事になるのだが、跡継ぎはアンソニーだ。果たしてアンソニーにエイジを使う事ができるだろうか。

 そうなる前に、エイジの名前ぐらいは儂も言えるようになっておかなくてはな。
 腹立たしいがバーンズまでが言えるのだ。アレクシアにコツを教えてもらうとするか。
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