衛星魔法は最強なのに俺のレベルが上がらないのは何故だろう

うしさん

文字の大きさ
147 / 224
第08章 魔王

第09話 勝敗は。

しおりを挟む
 
 まさかの勝利と目の前まで迫った魔王の剣の恐ろしさで、二重の驚きのため、その場に立ち尽くす俺。
 周りも魔王の敗北など考えてなかったようで、何が起こったか分からず呆然としている。
 魔王と俺。どう贔屓目に見ても俺の勝利など誰も予想してなかっただろう。
 もちろん俺も魔王の勝利を疑ってなかった。

 そんな中、一番初めに覚醒したのは意外にもマーラだった。
 なぜか嬉しそうな笑顔で俺に駆け寄って来ると、笑顔のまま声を掛けられた。

「婿殿! 凄い! お父様を倒したのだから、今日から婿殿が魔王を名乗るのだな」
 そして私は王妃…ぷぷぷ、と言ってるが、俺には何を言ってるのかわからない。

 魔王? 婿殿? 王妃? なに言ってんの?

 このままではマズいと思い、俺は魔王に出血大サービスで回復薬を十本、全部振りかけてやった。
 すぐに意識を取り戻した魔王は、何事も無かったかのように、すぐに立ち上がった。
 こうやって落ち着いて見てみると、凄くデカかったのだと遅まきながら気がついた。

 二メートル半はあるだろう。俺は一六五センチぐらいだけど、倍以上大きく見えるほどデカい大男だった。
 髪は燃えるような赤で、ツーブロックでアップにしてツンツンヘア。顎鬚も赤く、目つきは鋭いを超えていて、見られるだけで射殺されそうな眼光を放っていた。
 その魔王が、俺の前で見下ろすように俺を見ている。というか睨んでる。

「次は魔法戦だ」
「え?」
 え―――――! まだやるの? 魔王って超負けず嫌い?

「お父様。それはあんまりではありませんか?」
 王女マーラが、すぐに雪辱戦を始めようとする魔王を止めてくれた。
 おお! 王女様! ナイスフォローです!

「まずは、お父様に勝った褒美が先ですわ。仕方がありません、私がエイジの戦利品として捧げられましょう」
 はい?

「もし、次にエイジが勝てば、お父様はどうされるのですか?」
「……配下に下ろう」
「わかりました。もう私はエイジ側の者です。その言質、しっかりと頂きました」

 え? 茶番? この親娘は何の話をしてんの? いつから王女様は俺側になったの?

「エイジ、お父様から言質は取りました。後はあなたが勝つだけです。この勝負、あなたの妻として負ける事は許しませんよ」
 はい? まったく付いて行けてないんですけど。俺はこれからどうなるの?

「ファイッ!」
 王女が試合開始とばかりに声を上げた。

 あ、やっぱり試合をするんだね。
 王女は止めに入ってくれたんじゃないのかよ。ファイ! じゃねーし!

 王女の声に反応し、素早く浮かび上がる魔王。魔王は既に戦闘体勢だ。
 マジか……よく分からないけど、俺も何かしないと瞬殺されそうだ。

「極炎魔法【獄炎黒点コロナ】!」
 魔王が叫ぶと巨大な炎の塊が四つ、魔王の周辺に現れた。

「ま、まさか、お父様が最終究極魔法【獄炎黒点コロナ乱撃】をこんな所で唱えるとは……終わった」

 魔王は異様なほど汗を掻き、俺を見据えたまま動かない。巨大な炎がまだ更に大きくなって行くところを見ると魔法はまだ完成していないようだ。

 なんだよあれ。あんなのどうやって防げって言うの! ここにいる全員が死んじゃうんじゃないの?
 王女様だって終わったって呟くぐらいのものだろ? 絶対無理じゃん! たかが試合で、何でそんなの使うかなぁ。だから魔王なのか? いやいや最早アホウだよ。

 周囲を見回すと、全員がさっき見た呆けた状態のままだ。まだ覚醒してなかったようだ。
 魔王があの魔法をあのまま放つと全員が焼かれてしまうんじゃないのか?
 うちの連中は覚醒してるようだが、炎の大きさを見て諦めてるように見える。それとも防ぐ自信があるのかもしれない。

「クラマ! マイア! ユー! お前達はアレ防げるの?」
「無理じゃな」
「無理ですね」
「うん、無理」

 全員、諦めてる方だったか。

「だったら何でそんなに余裕があるの!」
「エイジと一緒じゃからかの」
「エイジが一緒ですからね」
「うん、エイジが一緒だもん! そっちに行っていい?」

 俺ってそんなに愛されてたの? マジ嬉しいー!

「もちろん。でも、俺は諦めないよ。最後まで頑張ってみる」
 と言っても、俺の魔法で太刀打ちできない事は分かってる。衛星に頼むしかない。でも、衛星で俺だけじゃなく、ここにいる全員を救えるのか? 俺だけならさっきの結界で助かりそうだけど、せめてうちの連中は助けたい。
 最終手段だな。
 俺の下に集まったクラマ、マイア、ユーを背に、魔王に向かって叫んだ。

「魔王様! 参りました!」

 魔王の作った巨大炎球が超巨大になり、完成に至ったようだ。
 あんなの衛星でも防げないから。絶対に無理だから。
 降参したんだから早く魔法を消せよ!

「【乱撃】!」

 俺の言葉なんて聞いちゃいねぇ。本当に撃って来やがった。やっぱりお前はアホウだ!
 四つの超巨大球が、ゴオォォォォ! っと、螺旋を描きながら降って来る。

「タマちゃん! 頼む! あの魔法を消せない? 防ぐだけじゃ他の人達がやられちゃうんだよ! クラマもマイアもユーもやられちゃうんだ! 助けて衛星ー!」

『Sir, yes, sir』

 十三個の衛星が俺の前に陣取り魔王の魔法に備えた。
 その上で、大きい球のタマちゃんだけが魔法に向かって突っ込んで行った。
 えっ、タマちゃん、大丈夫か?

 ヒュ―――――――! シュポン!
 ヒュ―――――――! シュポン!
 ヒュ―――――――! シュポン!
 ヒュ―――――――! シュポン!

 タマちゃんが四つの超巨大炎球を一瞬で吸い込んでしまった。

 マジか……

 そうして戻って来るタマちゃんと入れ替わりに十三の衛星が魔王に向かった。

 ゴンガンゴンギンゴンゴンガンゴン……チッ!

 衛星の攻撃を受け、上空で舞う魔王。もう無慈悲なぐらい魔王が空中で乱舞している。最後のチッに行くまでに既に意識は無かった気がする。
 魔王はそのまま落下して地面へと激突した。

 ドゴ――――ンッ!!

「……」

 勝ったには勝ったが、こいつを回復させたくないって思ってるのは俺だけだろうか……
「どうしよっか。このまま放置して行っちゃってもいいかな」
 振り返りながら皆に尋ねた。

「そうじゃな。よいのではないかの」
「ええ、私ももういいと思います」
「そうだね、こんなの放っておいて行っちゃおうよ」
「そうよな。放置で構わぬ、許す」

 あれ? 一人多い? いや、でも四人だな。一人男がいなかったか?
 そう、ラーセンがいたよな。だったら今のは……

「王女?」
「なんだ」
「なんでここにいるの?」
「お父様の魔法から逃げるためだ」
「いやいや、そうじゃなくって。あなたは魔王の娘でしょ?」
「そうだが」
「だったらあなたがいるのは向こうでしょ?」
「なんだ、さっきの話を聞いてなかったのか。私は既にエイジのものだ…ポッ」

 ポッじゃねーし! こんな曰く付きの不良物件はいらないんですけど! 一緒にいるだけで面倒事を持って来そうで嫌なんですけど!

「いや、俺は望んでませんけど。そもそもそっちが勝手に戦いを挑んで来ただけで、こっちが負けても何も出しませんでしたよ。俺は何も賭けてませんから」
「そっちがそうでも、こっちはこうなのだ。だから私はエイジのものだ…ポッ」
 意味わかんねー。

「ま、俺達はこの魔族領の出入りと、このダンジョンの許可が貰えたので助かりましたけど、俺はここに住む気もありませんし、もう嫁候補もこうしていますから」
「私は何番目でも構わぬぞ」
「俺が構います! 俺達はもう行きますけど、付いて来ないでくださいね」

 クラマ達に目配せして出発を促した。

「待てぃ!」
 誰かが回復させたのだろう。魔王が復活して俺達を呼び止めた。あ、さっき俺が余分に渡した回復薬のせいみたいだ。

「さっきの勝負、我の勝ちだな」
「えっ?」
 別にそれでもいいけど、本当に負けず嫌いな人なんだな。

「お前はさっき『参りました』と言ったな」
「はい、言いました」
「では、お前の負けだな」
「はい、あなたがそれで良ければ。気絶させられたあなたがそれで良ければ、あなたの勝ちで結構です。元々俺から仕掛けた戦いでもありませんので」

 あの魔法をタマちゃんが防がなければ何人死んだと思ってるんだ。それなのに、そんなに勝敗が大事なのか! と思ったら、結構イラっと来たので言いたい事を言ってやった。

「むぐっ、それでは引き分けでどうだ」
「俺はそれで結構ですよ。負けでもいいと言ってるではありませんか」
「ぐぐっ、では、こうしよう。あの降参で二戦目は我の勝ち。そして三戦目がお前の勝ちだ」

 どうあっても一勝はした事にしたいんだな。ホント超負けず嫌いな人なんだな。

「なんでもいいです、好きにしてください。ただ、今後もこの鉱石ダンジョンは利用させてもらいますので」
「……わかった」

 言いたい事を言って、場を離れようとしたら、魔族達が俺達に向かって頭を下げている。
 一糸乱れぬ四十五度の敬礼。手を使う敬礼ではないが、全員が同じ角度で頭を下げる姿は絶賛もので、俺達に敬意を表してるのが凄く伝わって来た。
 さっきま魔王を倒した事で、俺達を認めてくれての敬礼なんだろう。もしかしたら、その上……いや、何も言うまい。
 これ以上、魔族には関わりたくない。人族から恐れられている魔族なんだ。これ以上関わると、俺も魔族の一員と思われてしまう。それでなくても既に五人も魔族がいるのに、これ以上は勘弁だ。

「では、俺達はこれで失礼します」

「「「はっ! お疲れ様でした!!」」」

 兵士全員から返事を受けるエイジであった。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...