アイドル・インシデント〜偶像慈変〜

朱鷺羽処理

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第31話「ガチ恋ファンを護衛せよ!邪を滅する漆黒の刃」

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2023年 5月31日 18:15分

「え?!私がディブくんに狙われてるって!?」

 達樹と未萌奈は山田京子と合流していた。京子は歌舞伎町内にあるメンズバーにて酒を嗜んでいた。
 ディブくんというのは達樹達が追っている今回の連続殺人事件の犯人である金塚謙也を指す別称であり、芸名は今宵夜殴士こよいやおうじ
 名に込められた意味合いとしては今宵の夜君を殴りたいという意味が込められているとの事だ。

 (ありのまますぎんだろネーミングがよ!)

 心の中で激しいツッコミを入れる中、山田京子は荒ぶっていた。

「やっぱりあの噂は本当だったのね!私が貢ぎに貢ぎまくった愛しのディブ君が生きてた!!
 どことなく素っ気なかった彼がこれだけの時間が流れたにも関わらず必死に私を探してるだなんて!ハァン!!モオン!!DMくれたら喜んでぶっちゅうしにいくのにぃ!!」

「……貴方はその男に殺されそうになってる。申し訳ないけど会わせる事は出来ない」

「ちょちょおぉぉぉ!!どしてよぉん!!あんた達私とディブ君との愛の営みを邪魔するって言うの!?良い?ディブ君のDVは私への愛なの!私にできるのはそれをただ受け止めてあげる事だけ!それが私にとっての快楽であり人生なの!!私が尽くしてあげないとダメなの!!わかる!?」

「1ミリもわからない。今私はお前の顔面を原型が無くなるほどボコボコにしてやろうかと思ってる」

 目の前で事の重大さを理解できず荒ぶり欲情する京子の前に軽蔑と苛立ちをを少しも隠す様子がない未萌奈。
 このままでは事態が拗れかねないと判断した達樹が割って入る。

「ま、まぁまぁ落ち着けって二人とも。未萌奈ちゃんの言う通りこのままじゃ京子ちゃんが危ねぇんだよ。
 殴る蹴る通り越して本当に殺されかねないんだよこのままじゃ……理解できるか?」

「私、ディブ君に殺されるなら……本望っ!♡ディブ君と心中するのもエモくて良きだわぁ~~!」

 (は、話が通じねぇ!こんな奴初めてだ……こいつ、歳上なんだよな?)

 あからさまに困惑する達樹と今にも殴り掛からんとする未萌奈に見兼ねて先ほどまで京子と談笑していたスタッフの男性キャストが話しかけてくる。

「えっと、京子ちゃん。その人は京子ちゃんを安否を心配してわざわざ来てくれてるんだから熱りが冷めるまではその人達の言う事は聞いた方が良いと思うよ」

 「じゅっ純きゅぅぅん!うんわかった!このイカつい人達の言う事一旦聞いてあげるねっ!」

 一瞬にして男の一言で掌を返す京子。謎な上から目線にも苛立ちを覚えるがようやく本題に入る事が出来るようになった。

「それで君達は警察……じゃないよね?こういうのって警察の仕事なんじゃないの?」

 達樹達に痛い質問が突き刺さる。奏者、抗者の存在は一般人には秘匿。
 この手の任務を受け持つ度にこれらの説明を求められるのかと思うと憂鬱になる中、飲んでいたお茶から口を離し未萌奈が切り出す。

「SPのような物。少なくともあなた達に害ある者じゃない。細かい事は考えなくて良い」

「君達みたいな子どもがかい?信じられないなぁ。そこら辺にいる高校生となんら変わらないように見えるよ?」

「そうよ!私と同じ地雷系女子って感じじゃないっ!そっちの男はただのガキンチョだし!」

 未萌奈は気だるげにため息をつく。面倒ごとはことごとく嫌いらしい。
 未萌奈はカウンター席から立ち上がりテーブル席の前まで移動する。

「ちょっとだけ持ち上げても良い?」

「い、良いけどそれ結構重いよ?女の子一人で持てるようなもんじゃない」

 了承を得た未萌奈は最も簡単に総重量50kgは優に超えるテーブルを片手で持ち上げる。
 そのまま手を振るわせる事なく持ち上げた状態を保ち続ける。
 その姿を見て純、京子は常人を凌駕するスペックを持っている事を把握した。

「よ、傭兵か何かなのかな?」

「そんな所」

 かなり強引ではあったが二人に納得してもらう事に成功した。
 京子の酔いも程よく回って来たようで酔いが回る前に店を後にし、彼女の自宅へと向かう。

 ――――――――
同日 Delight 社長室 19:30分

 仙道巳早は下國昇斗により呼び出されていた。
 深刻な空気が流れる中、昇斗が切り出す。

「やはり昨今の憎愚の発展速度はあからさまにこれまでとは異なる。特異性や出現頻度はここ数年の比ではない。この世界に於けるアイドルその物の質が著しく下がってるんだろうね」

「そう手厳しい事を言うな昇斗……彼女、彼らの中に穢れに惑わされずに高みを目指し努力している人間もいる」

「わかってるさ。でもそれもほんの一握りだろう。大半の奴らは金の為か異性へ媚びへつらう為、もしくは自己顕示欲の為に利用……おっと流石に言い過ぎたかな。
 でもそのほんの一握りの光も有象無象の闇によって閉ざされそうになっているのは確かな事だろう」

「そうだとして彼女達に正しきアイドル像を押し付けるべきでも強いるべきでもない。彼女達の大半に悪気は決して無いのだから。人間誰にでも弱さは持っている物だろう」

「だぁからこそ厄介なんじゃないか……わかっちゃいるけどこのままじゃジリ貧。何かしらテコ入れはしないとと思ってるんだ。だからちょっとだけ巳早にも協力して欲しいんだ」

「ほう?」

 ――――――――――
 同日 都内 新宿付近夜道 19:45分

「そろそろあたしの家着くけど……あんた、変な気起こすんじゃ無いわよ?」

「起こさねぇよ……」
 
 呆れながらもそう答える達樹。京子の家も近くなって来たその矢先、聞こえてくる女性の悲鳴。
 同時に憎愚の気配も感知する。距離もここからかなり近い。

 「ちょっ!何この悲鳴っ!ま、まさかディブきゅんが私に会いにっ!?♡」

 数年ぶりに最推しに会えるかもしれないと心躍る京子。相変わらず危機感と言うものは欠片も持ち合わせてはいない。
 不測の事態にも関わらず嬉々としてはしゃぎ回る京子に困惑する達樹すらもどう立ち回るべきか困惑している。
 そんな達樹を見兼ねて未萌奈は一人先陣を切る事にする。

「あんたはそこのボンレスハムを連れて先に行ってて」

「誰がボンレスハムよっ!?」

「バカ言え!だったら俺がやる!女の子一人で戦わせられっかよ!!」

「あんた微顕現すら出来ないんでしょ」

「っ!?」

 痛い所を突かれ何も言えなくなる。
 ここ数日間達樹を悩ませている難題。
 シンプルに考えれば信頼関係を構築出来ていないという要因が考えられるが両者は不仲な訳でもましてや喧嘩をしている訳でもない。
 接する上で特に居心地の悪さは感じなく、むしろ両者友達のように接してはいる。
 だがそれでも少女の名前は聞き取る事が何故か出来ない。
 巳早に助言されてからひたすらに答えを考えはしたがこれといった答えは見つけられていなかった。

「純粋に私の方が強いし効率が良いの。わかったらさっさと行く」

「……っ、無茶すんなよ!!」

 達樹は嫌がる京子の手を取りそのまま京子宅へ向かい駆け出していく。
 対照的に未萌奈は宿幻輪シュテルンリングに宿る擬似アイドル因子の力を解放させ人間離れした超スピードで憎愚発生地点へと向かう。

宿幻輪シュテルンリング』とは
 Delightのアイドル因子研究班の長年の研究により完成した現存、もしくはそこから派生して形となった人口アイドル因子の力が指輪に宿った物。
 過酷な訓練を経て心身共に強靭な物となった人間のみ宿幻輪の力に耐えうる事ができる。
 宿幻輪を装備する事で非アイドル因子持ちの人間は憎愚を滅する事が可能となる。

「ハヤク、モッテ帰る!モテカエル!」

「シタラ褒めてもらウ!ホメモラウ!」

 前方に複数体の憎愚を確認する。一人は女性を肩で抱え込み、その両隣に憎愚が4体の合計5体。

幻装げんそう

 未萌奈がそう呟くと同時に入念に研ぎ澄まされた漆黒の刃と右腕を囲うようにマゼンタ色と黒の装甲が出現する。
 瞬間。斬撃と共に一体の憎愚の首が宙を舞う。抱き抱えられていた女性の姿は憎愚の元からいなくなる。

「オ、オオオォォォ!!?ナニゴト!?」

 未萌奈は救出した女性をそっとベンチへ寝かしつけ再び憎愚達へ鋭い殺意と刃を向ける。

「お、オンナヒトリ!!コイツも捉えてツレテクゾ!!」

「オオ!!」

 一斉に憎愚が未萌奈へ肉体の形を凶暴化させ襲いかかってくる。
 だがその憎愚達の一撃は未萌奈へ届く事はなく朽ちる事になる。

絶喰刹ぜっくうせつ

 未萌奈の想力を漆黒の刃。『黒鴉こくう』から放たれた刹那の一太刀は全ての憎愚の肉体を瞬く間に両断。憎愚達は命を絶たれ消滅していく。

「あれれ?帰りが遅いと思って来てみればやられちゃったのかぁ」

 上空にから男の声。見上げると人影を確認する。月夜の光と街灯に照らされて顔が判別出来たがその顔は間違いなく金塚謙也であった。

「お早い登場ね。クソカスオワコンDV男君だっけ?」

「あははっ。いいね君。一瞬で好きになっちゃったなぁ。君みたいな生意気なおんなのこは死ぬまで虐めたくなっちゃうんだよ

ーーーー to be continued ーーーー
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