アイドル・インシデント〜偶像慈変〜

朱鷺羽処理

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第79話「ぶち抜け信念の弾丸!エクハぜ・ブランブラスト!」

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 想武島へ前触れなく何処からともなく現れた複数の地下アイドル達は奏者達へその牙を向け襲いかかる。
 楠原隼人の前に現れたのはかつて地下アイドルをしていた際のユニット仲間である溺愛魔虞無。彼らの主な目的は虹霓世界のアイドル因子を持つ奏者達の勧誘或いは強奪。
 更に桜の系譜、日輪の系譜を宿す輝世達樹と姫村和斗もその標的となり狙われてしまう。
 想武島各地で激戦が繰り広げられる中、もぬけの殻同然となった日本本州では十番隊隊員である篠澤将人しのざわまさと此橋李世このばしりぜの二人が侵入者を迎え撃っていた。

 ――――――――――
2023年 8月2日 10:05分 Delight 重要物厳重保管室
 
 将人と毒独盛劉淵どくどくもりりゅうえんとの戦闘はデットヒートを迎えようとしていた。
 劉淵の異能。「害煙がいえん」はタバコを主たる成分とし有害性の増した副流煙を撒き散らしまともに吸い込めば呼吸障害を引き起こし身体の自由を奪う。
 将人は劉淵の撒き散らす毒煙に警戒しながら立ち回りつつ白狼を使役し応戦していたが一瞬の隙を突き白狼を撃退。更に距離を縮められてしまう。
 そして思い切り将人の眼前で副流煙を勢い良く放出。対処に遅れ否応なく大量の副流煙を吸い込んでしまう。

「はっはっ!モロにくらったな!」

 副流煙を喰らい呼吸障害に陥った将人は咽苦しむ。咳き込み続けざるおえない状況の過酷さに立っていられなくなりその場に跪く。

「同じ空間にいる中で完全に煙をシャットアウトするなんて生身の人間じゃどう足掻いても出来ねぇ。両耳を塞いでも完全に無音になる訳じゃないのと同じだ。てめぇがこうなるのも時間の問題だった訳だ」

 頭上で自分を見下してくる劉淵を察知し徐ろにルーンヴォルフ片手銃を手に取りやたらに弾丸を放ち劉淵を退かせる。

「当たるかよそんなもん……でかい口叩いてた割に散り際が見苦しいな」

 再び鳴り響く三発の銃声。それは紛れもなくルーンヴォルフから放たれた弾丸。
 将人は自分で自分の横腹を撃ち抜いた。身動きが取れない状況を打破すべく呼吸困難を上回る別の痛みによって力づくで意識をそちらは向ける事でかき消した。

「ごほっ……ちっと撃ちすぎたか」

 苦悶と憤怒が入り混じった表情を浮かべながら血反吐を吐きながら将人は再び立ち上がる。

「お前……頭のネジ外れてるってレベルじゃないだろ!」

「あぁ……お前をぶちのめす為なら何百本でも外してやる……!」

 篠澤将人はアイドルを忌み嫌っている。Delightはアイドル業界の更なる躍進を謳っている企業であるがそこに従事する人間誰しもがアイドルに対し好意的な印象を持っている訳ではない。
 憎愚の存在を知りアイドルの負の面と関わる仕事の性質上アイドルに対して特別入り込んでいる人間はむしろ奏者、抗者には向いていない。
 故にアイドルオタクの奏者、抗者の数の母数は多くはなく篠澤将人はアイドルオタクとは最も対極にいる存在と言える。

 劉淵は将人の常軌を逸した執念の前に恐怖していた。ここまでの殺意と対抗心をぶつけられた事は初めてでありその圧に気圧され生唾を飲む。

「……はっ。一丁前に口だけは動かしやがって!どのみちその怪我じゃろくに動けねぇだろうが!!」

 劉淵は所持するタバコを限界まで異形の右腕へと接種させ憎力を極限まで向上させる。そのまま右手へ毒素を集中させて球体のエネルギーを収束させていく。

「そのままおっ死ね!!」

 副流煙を含む毒素を混ぜ合わせた解き放とうとした矢先、消滅したはずの白狼が4匹へ分散。劉淵の両腕、両脚に噛みつき拘束する。

「こいつ……まだ動けたのかっ……!!」

「白狼はプライドの化身みたいな奴だ。どれだけズタボロにされようが息の根絶えない限り何度でも標的に喰らいにかかる。そして一度噛み付いたら意地でも離さない」

「終わりだ」

 将人は飛騨史音の力を宿した宿幻輪をスキャン部へとかざし己の武器ルーンヴォルフへ膨大な想力を充填させていく。
 そしてルーンヴォルフから想力をフルチャージして放たれる必殺の一撃『エクハゼ・ブランブラスト』が劉淵へ直撃。そのまま爆発と共に纏っていた憎力は破壊され気を失った劉淵は地に伏した。
 なんとか劉淵の撃破に成功した将人の元に同じくブーシェ・ユリノマ・ハサマルオを撃破した此橋李世が駆けつける。

「目立った損傷物無し。篠澤にしては上出来だな。敵襲を言い訳にストレス発散でもされかねないと思ってたよ」

「俺をなんだと思ってんだ……」

 そう言う将人の各所からは大量の流血。常人ならとっくに死んでいるであろう量を先程から垂れ流しにしている。
 戦闘後ズタボロになる様は見慣れた光景な李世は過剰に労わる姿勢を見せはせず将人の手を取り肩を組む。

「すぐに救護室へ行くぞ。痩せ我慢もそろそろ限界だろう」

「……そうさせてもらう」

 一仕事終えたと完全に油断し切っている二人。劉淵の拘束は他奏者へ任せ将人は李世の肩を借り救護室へと向かおうとした矢先。突如として背後に何者かの気配を感じる。

「やっぱり失敗しちゃったかぁ。無理に戦う必要はないって言ったのに」

 (新たな敵!?)

 新たに現れた敵。一瞬視界に捉えたその姿は女だと言うことは理解できた。だがそれ以上の記憶は両者にない。先程まで相対していた邪悪とは比にならない圧を感じ取り警戒の意を強める。
 再び戦闘態勢に入ろうとする二人であったが疲弊し切った将人と李世に無慈悲にも少女の掌から現出した水の刃が突き刺さり二人はその場に倒れ込む。

「悪いけどこれは貰っていくね。計画を確実なものにする為にもこれはどうしても必要なの」

 少女は陽葵の因子が格納された保管庫の解除パスワード、必要量以上の想力を流し込み保管庫のロックを解除。陽葵の因子を宿した宿幻輪を取り出し重要物厳重保管室を去っていった。

 ――――――――――
 同日 練馬区 郊外 10:10分

「そろそろ頃合いかな」

「あぁ」

 空中で激しい攻防を繰り広げていた巳早と負薄、悲哀。二人は徐ろに巳早から大きく距離を取る。

「そんじゃ俺達はここらでお暇させてもらうね」 

「なんだと?」

「なんか面白そうな事しようとしてる連中がいてさ。俺たちはちょっとの間時間稼ぎしてあげてただけ。もうこっち側の目的は果たせたらしいから俺達がここにいる意味ないの」

「逃すと思うか……!」

「老体に無理は禁物だよ。あんたは俺たちを殺そうと少しらしくもなく躍起になりすぎた。それにそう長い事完全聖転換なんてしてるもんじゃない。俺なりの気遣いわかってくれよ」

 実際問題巳早の体力、想力は既に底が尽きそうになっていた。老の都合もあるが久方ぶりに相対した因縁の敵故に冷静な判断が欠ける普段の巳早とは異なる荒々しい戦い方となってしまっていた。

「大丈夫とどめとか刺す気はないからさ。最後にこれだけ言っておくね」

「もう気付いてるとは思うけど、アイドル業界の陳腐化により世界の崩壊が近づいている。更にその始まりの一手が目前にまで迫ってる。他のみんなにも教えてあげて。お前達が今真っ先に対処しなければならない共通の敵は地下アイドルだ……ってね」

 そう言い残し負薄と悲哀は闇の渦の中に消えていった。

 「ま、待て!!……ぐっ!」

 力強く訴えかけるが巳早の想力が底をつき完全聖転換が解除されその場で片膝をつく。

 (地下アイドルが深く関わっている事は間違いない……!一早く情報を共有しなければ!)

 ―――― to be continued ――――

 
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