帰宅部が本気を出せば世界すら救えるー俺には帰る場所があるー

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第01歩 帰宅を極めし者

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「帰る」
 そう言って己に宿る最大限の脚力と、帰宅に対する並々ならぬ熱意をもって教室を後にした。いつものように放課のチャイムがこだまする。俺はチャイムを置き去りにし、ソニックブームではだけながら走って帰る。帰宅部部長として誰よりも早く帰宅する責務があるのだ。

 学校関係者は俺を《メロス》と呼ぶ。まあ何とも言い難いセンスをしてらっしゃる訳だが、あながち間違いでもないのが悔しい。毎日己の限界に挑み徐々にタイムを縮めてきている俺は今日、少し調子に乗ってしまった。部長らしからぬ失態だ。一秒も縮まるとその分、世の出来事はワンテンポずれ始める。普段、決まった時間に俺の前方を横切っていく車があった。それが一秒ずれたらどうだろう。
ードゴォォンッ!!
 少し考えれば分かるはずのことだった。車に跳ね飛ばされた俺は、いつの間にか見知らぬ土地に放り出されていた。激しい頭痛に苛まれながら何とか体を起こす。
「e………、え……」
 そこは荒野のど真ん中。灼熱の太陽に串刺しにされながら再び意識を失うのだった。



『帰宅部が本気を出せば世界だって救える』



「うぅ…」
 目を覚ますと、そこには青く燃え盛る空ではなく、青々とした涼しげな葉っぱの天井があった。
「目を覚ましたか。ひとまず水分を取りなさい、話はそれから茶でも飲みながらにしよう」
 ほれ、と差し出された皮袋がたぷぷぅんっと揺れる。ヒンヤリとしたそれの中には美味しそうな水が入っていた。ガブガブと飲み込み、ぷはぁーっと息をつくと彼もまた水を飲むと微笑したのであった。

「それで、君はなぜあんなところで倒れていたんだ?」
「分かりません。急いで帰っている途中で車に轢かれてしまって、気がついたらあんなことに…」
「なるほど。聞きなれない言葉もあったが、それより俺に聞きたいことの方が多いのだろう?知っている範囲で答えよう」
 俺が質問を始めると、一つずつ丁寧に教えてくれた。まず、この世界は魔王に侵略されていること。次に、この世界にはスキルと呼ばれる特殊能力が存在していること。他にも、マナの存在や剣・魔法の知識。最後に、恐らく元の世界に帰るには魔王を倒す必要があると言うこと。帰宅部の部長として、何としてでも帰宅する所存だ。
「待ってろよ!魔王っ!!」
「すまん。言い忘れてたが、魔王さ…我」
「へ?」
 彼は再度、自らを指差して間の抜けた声と表情で繰り返す。
「魔王…我」
「絶対帰るので。帰宅部の部長として全力で帰らせていただきますから!」
「何気に殺害予告受けてるの戸惑うんだけどなぁ…」
 神妙な面持ちをしつつ、魔王は結局街まで送り届けてくれたのであった。


《コラム~魔王様の帰宅日記~》
ー余談ですが、我、魔王から少しお話しさせてくださいー

 いつの間にか奴はいた。気絶してるし面倒見るか、とか思った我がバカだった。街まで送ってやったが、最後、我の背後にひたりと付いて、帰宅部を舐めないでくださいね?などと抜かす。こいつは常軌を逸している。ステータスに変なこと書いてあるんだもん。
ー帰宅を極めし者ー
何じゃそりゃ、そのうち厄介な存在になりかねないので早く手を打たねば。我が土に還るのも時間の問題となってしまうだろう。帰宅だけに。
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