1 / 1
第01歩 帰宅を極めし者
しおりを挟む
「帰る」
そう言って己に宿る最大限の脚力と、帰宅に対する並々ならぬ熱意をもって教室を後にした。いつものように放課のチャイムがこだまする。俺は音を置き去りにし、ソニックブームではだけながら走って帰る。帰宅部部長として誰よりも早く帰宅する責務があるのだ。
学校関係者は俺を《メロス》と呼ぶ。まあ何とも言い難いセンスをしてらっしゃる訳だが、あながち間違いでもないのが悔しい。毎日己の限界に挑み徐々にタイムを縮めてきている俺は今日、少し調子に乗ってしまった。部長らしからぬ失態だ。一秒も縮まるとその分、世の出来事はワンテンポずれ始める。普段、決まった時間に俺の前方を横切っていく車があった。それが一秒ずれたらどうだろう。
ードゴォォンッ!!
少し考えれば分かるはずのことだった。車に跳ね飛ばされた俺は、いつの間にか見知らぬ土地に放り出されていた。激しい頭痛に苛まれながら何とか体を起こす。
「e………、え……」
そこは荒野のど真ん中。灼熱の太陽に串刺しにされながら再び意識を失うのだった。
『帰宅部が本気を出せば世界だって救える』
「うぅ…」
目を覚ますと、そこには青く燃え盛る空ではなく、青々とした涼しげな葉っぱの天井があった。
「目を覚ましたか。ひとまず水分を取りなさい、話はそれから茶でも飲みながらにしよう」
ほれ、と差し出された皮袋がたぷぷぅんっと揺れる。ヒンヤリとしたそれの中には美味しそうな水が入っていた。ガブガブと飲み込み、ぷはぁーっと息をつくと彼もまた水を飲むと微笑したのであった。
「それで、君はなぜあんなところで倒れていたんだ?」
「分かりません。急いで帰っている途中で車に轢かれてしまって、気がついたらあんなことに…」
「なるほど。聞きなれない言葉もあったが、それより俺に聞きたいことの方が多いのだろう?知っている範囲で答えよう」
俺が質問を始めると、一つずつ丁寧に教えてくれた。まず、この世界は魔王に侵略されていること。次に、この世界にはスキルと呼ばれる特殊能力が存在していること。他にも、マナの存在や剣・魔法の知識。最後に、恐らく元の世界に帰るには魔王を倒す必要があると言うこと。帰宅部の部長として、何としてでも帰宅する所存だ。
「待ってろよ!魔王っ!!」
「すまん。言い忘れてたが、魔王さ…我」
「へ?」
彼は再度、自らを指差して間の抜けた声と表情で繰り返す。
「魔王…我」
「絶対帰るので。帰宅部の部長として全力で帰らせていただきますから!」
「何気に殺害予告受けてるの戸惑うんだけどなぁ…」
神妙な面持ちをしつつ、魔王は結局街まで送り届けてくれたのであった。
《コラム~魔王様の帰宅日記~》
ー余談ですが、我、魔王から少しお話しさせてくださいー
いつの間にか奴はいた。気絶してるし面倒見るか、とか思った我がバカだった。街まで送ってやったが、最後、我の背後にひたりと付いて、帰宅部を舐めないでくださいね?などと抜かす。こいつは常軌を逸している。ステータスに変なこと書いてあるんだもん。
ー帰宅を極めし者ー
何じゃそりゃ、そのうち厄介な存在になりかねないので早く手を打たねば。我が土に還るのも時間の問題となってしまうだろう。帰宅だけに。
そう言って己に宿る最大限の脚力と、帰宅に対する並々ならぬ熱意をもって教室を後にした。いつものように放課のチャイムがこだまする。俺は音を置き去りにし、ソニックブームではだけながら走って帰る。帰宅部部長として誰よりも早く帰宅する責務があるのだ。
学校関係者は俺を《メロス》と呼ぶ。まあ何とも言い難いセンスをしてらっしゃる訳だが、あながち間違いでもないのが悔しい。毎日己の限界に挑み徐々にタイムを縮めてきている俺は今日、少し調子に乗ってしまった。部長らしからぬ失態だ。一秒も縮まるとその分、世の出来事はワンテンポずれ始める。普段、決まった時間に俺の前方を横切っていく車があった。それが一秒ずれたらどうだろう。
ードゴォォンッ!!
少し考えれば分かるはずのことだった。車に跳ね飛ばされた俺は、いつの間にか見知らぬ土地に放り出されていた。激しい頭痛に苛まれながら何とか体を起こす。
「e………、え……」
そこは荒野のど真ん中。灼熱の太陽に串刺しにされながら再び意識を失うのだった。
『帰宅部が本気を出せば世界だって救える』
「うぅ…」
目を覚ますと、そこには青く燃え盛る空ではなく、青々とした涼しげな葉っぱの天井があった。
「目を覚ましたか。ひとまず水分を取りなさい、話はそれから茶でも飲みながらにしよう」
ほれ、と差し出された皮袋がたぷぷぅんっと揺れる。ヒンヤリとしたそれの中には美味しそうな水が入っていた。ガブガブと飲み込み、ぷはぁーっと息をつくと彼もまた水を飲むと微笑したのであった。
「それで、君はなぜあんなところで倒れていたんだ?」
「分かりません。急いで帰っている途中で車に轢かれてしまって、気がついたらあんなことに…」
「なるほど。聞きなれない言葉もあったが、それより俺に聞きたいことの方が多いのだろう?知っている範囲で答えよう」
俺が質問を始めると、一つずつ丁寧に教えてくれた。まず、この世界は魔王に侵略されていること。次に、この世界にはスキルと呼ばれる特殊能力が存在していること。他にも、マナの存在や剣・魔法の知識。最後に、恐らく元の世界に帰るには魔王を倒す必要があると言うこと。帰宅部の部長として、何としてでも帰宅する所存だ。
「待ってろよ!魔王っ!!」
「すまん。言い忘れてたが、魔王さ…我」
「へ?」
彼は再度、自らを指差して間の抜けた声と表情で繰り返す。
「魔王…我」
「絶対帰るので。帰宅部の部長として全力で帰らせていただきますから!」
「何気に殺害予告受けてるの戸惑うんだけどなぁ…」
神妙な面持ちをしつつ、魔王は結局街まで送り届けてくれたのであった。
《コラム~魔王様の帰宅日記~》
ー余談ですが、我、魔王から少しお話しさせてくださいー
いつの間にか奴はいた。気絶してるし面倒見るか、とか思った我がバカだった。街まで送ってやったが、最後、我の背後にひたりと付いて、帰宅部を舐めないでくださいね?などと抜かす。こいつは常軌を逸している。ステータスに変なこと書いてあるんだもん。
ー帰宅を極めし者ー
何じゃそりゃ、そのうち厄介な存在になりかねないので早く手を打たねば。我が土に還るのも時間の問題となってしまうだろう。帰宅だけに。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる