ヅァルトラント

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序章ー目覚めー

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「うう……」
「良かった…ほんとうに…。このまま…帰えしてやれないのかと思った…」
 熾火おきび色の凛々しい瞳、鋭利な牙、整った顔立ち、銀白色の毛色は月のようだ。少し大きな三角の耳がちょしちょしと動く。
「心配かけて悪かった…。もうあんな無茶しないよ。だからそんな顔するな……」
「俺だけ…!…だって、…俺だけ、生き残るなんて…」
 彼の熾火おきび色の瞳がより一層揺らめき、ぽたぽたとしずくが滴っている。
「大丈夫、シュラフトのおかげでまだ生きてる。このザマでもきっと帰れるさ。それより、俺のことを、勝手に殺さないで、くれよな?」
「じゃぁ、心配、かけんなよっ…」
 そう言って、彼は引き攣った笑顔で目一杯微笑みかける。俺も少し泣いていたかもしれない。俺の体が、はらはらと厚みの無いガラス片の花弁となって風に吹かれる。少しずつ、少しずつ、俺の存在が消え去っていく…。
「泣き虫だな、お前は」
「カナタも大概だろ?」
 そう言ってくる彼の目はいつもより赤い。
「お前は、本当に分かりやすいな」
 くすくすと肩を小刻みに震わせて、両の腕で熱く抱擁し、軽く背を叩き労う。

「シュラフト。お前と生きてきた日々は、何にも勝る剣だ。今までも、これからも」
「ああ。俺達はこの剣を以て生きるんだ。何があっても。俺達の剣を証明するために。それが…」

ーそれが、俺達が生きた証になる。
 この、《剣の国ヅァルトラント》の世界で。


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