私の愛した召喚獣

Azanasi

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第四章 内政

思惑1

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【思惑1】
 
 茜ちゃんから連絡があって先遣隊のメンバーが決まったそうなので来て欲しいとの事だった。また、リネーネの方からも連絡があってエージェントから連絡があったので相手の連絡先を聞いて貰っていた。
 
 午前中に先発メンバーの話を付けて午後にCIAの方の話をすれば良いだろう、夜に悠人の親父さんを迎えに行って連れて来れば完了と・・何かせわしい一日に成りそうな予感がしていた。
 
 当日の朝:7:00
 リビングに下りていくと奈津と愛彩は既に日本でおかしくない服装に着替えて待っていた。軽く朝食を食べて二人を連れて東京へのマンションへと転移した。
 
 リネーネを含めた4人だけで打ち合わせをした。
 奈津達は2日後の夜にまた、こちらに来て貰う事にして後は自由となった。
 
 久しぶりに実家に帰るらしい・・・
 海外で仕事をしているって事になっていても1年も帰ってこないでは親は心配するだろうしもっとのんびりしてきても良いと言ったのだが領地の事も気がかりらしくて二日が限界と言っていた・・・まあ、ある程度、領内も安定してきたし、もう少し頻繁に帰った方が良いだろうと思う。
 
 □■□ 自衛隊駐屯地 □■□
 
 やっぱり早すぎたのだろうか?、いつもの部屋に転移して来たが誰もいない。廊下に出て見ても誰もいない・・・
 自衛隊って朝早いんじゃないかぁ・・
 仕方がないので外へ出てみると隊員達がいたので声を掛けてから部屋で待っていると工藤2尉がやって来た。
 「おはよう御座います、早いですねぇ・・」
 「ちょっと早すぎましたか?」
 
 「は、は、は、は、そんな事はないですよ、いや、朝一と聞いてましたから・・・」
 工藤2尉はいかにも慌ててきたって感じでもしかすると朝食もまだなんじゃないかと思う、工藤2尉ゴメン、と心で手を合わせる。
 
 「いや、どうも田舎は朝早くて・・・済みません。」
 「いやいや、そんな事ないですよ。もうすぐ来ると思いますので暫くお待ち下さい。」
 
 暫く間待っていると面子がそろった。
 
 「お久しぶりです。お待たせしました~早いんですねぇ・・・」
 茜が癖毛を手で押さえながらやって来た。手を離すとまた、癖毛が立つのが面白い・・本人は何度もなでつけているが収まる気配はないみたい。
 「おはよう御座います。」、「遅くなりました。」
 
 「さて、早速、本題に入らせて貰いますが、調査員が決まりました。人数は5名に工藤2尉と伊能警部が護衛として計7名でお願いしたいと思います。」
 公安の山崎が参加者の名前や経歴を伝えてきたがまあ、書類に書いてあるので後で目を通しておけば良いだろう。護衛の警官2名って、護衛になるのだろうかって思うがまあ、色々と思うと所もあるのだろうと思って了承する。
 
 「一つ気を付けて頂きたいのですが、護衛の警官はまさま拳銃1丁って事はないですよね。せめてサブマシンガンぐらいは持たせてあげて下さい。不可能ならこちらで冒険者を護衛として傭う方法もありますが・・・」
 
 菅原警視正と伊能基部が顔を見合わせている。
 サブマシンガンとか使った事ないし・・・警官でもサブマシンガンの経験があるのはSATなど一部の警官だけなので実質拳銃だけでやるしかないよなぁ・・ここは現地の護衛を雇う方が現実的だろう。
 
 「護衛は傭えますか?、費用は幾らぐらい掛かります。?」
 自分たちで武装するよりも護衛を依頼する方を選んだ様だった。確かにその方法が正解と言える。
 
 「費用は調査員が一人250万ですね、護衛は冒険者を傭う場合はCクラス以上でなければ護衛は出来ない決まりになっています、冒険者はSクラスからFクラスまで有り、S、A、B、C、D,E、Fとありますが、Cクラスに日当2万と考えて下さい。当然ランクが高い方が優秀です、お薦めとしてはBクラス5名ですね、Bクラスだと日当5万になります、ちなみにAクラスだと日当は10万ですね、Sクラスだと時価です。」
 
 「まあ、大抵の所でしたらBクラスの冒険者で大丈夫でしょう、こちらで言う帰らずの森という所に入るのでしたらSクラスが必要になりますが、まあ、魔獣しかいないのでいかないでしょうから問題はないでしょう。
 
 「いつ派遣しますか?、出来れば隊員達と被らない方が良いですけど」
 結局の所、俺か奈津が交代で付くしかないので両方一遍に来られるととても対応出来ない恐れがある・・
 どうせ、お上りさんてきに来るんだろうし、死なせる訳にもいかないだろうし面倒臭い気もするが・・・
 
 「自衛隊の方は現在、武器の検討中ですので調査隊の方を先に派遣したいと思います。」
 本来は政府の意向としては生徒の救出を最優先にしたいところだがあやふやな所でやる訳にもいかない、陸自の工藤2尉を同行させるのは護衛と言うより現地の下見的な要素がおおきい。
 
 「あのう、ケモ耳とかもいますか?」
 伊能警部が聞いてきた・・・
 (異世界と言ったらやっぱり獣人だよなぁ、ケモナーとしては獣人と会えない事には意味がないと言い切っても良いぐらいだ・・・あぁ・・ケモ耳いて欲しいなぁ・・)
 
 「えぇ、いますよ。王都の方では少ないですが、領地の方であれば人族、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族が暮らしています。まあ、魔族が暮らしているのはうちの領地ぐらいですけどね。」
 
 「そ、そうですか・・」
 ”良かった”、小声でぽつりと呟いた伊能だった。
 (良かったーケモ耳いるんだぁ、会いたいなぁ・・リアルケモ耳に絶対会おうぞ・・)
 「日程はどうします、うちでは既に受け入れはいつでも良いですよ。」
 山崎はどこかへ電話を掛けているようだった・・内容からすると官邸か?、どうやら許可は下りたみたいだ・・・
 「許可は下りました、こちらは明日にでも出せますよ。」
 「分かりました、明日、早朝に迎えに来ましょう。」
 
 「費用の方ですが250×7=+25×7=1,925、手数料も込みで2,000万で良いですか?
 」
 「はい、大丈夫ですよ。支払いは鉄でも現金でも構いませんよ。」
 「そうですか、前回の分は鉄で用意していますので帰りにお持ち帰り下さい。」
 (これで鉄は完全に輸入から輸出へと代わってしまったな。当面は鉄での仕入れも続けて良いな)
 
 「そうそう、日本での窓口を設けましたのでお知らせしておきます、御用の際はこちらに連絡を下さい。」
 俺は東京の会社の連絡先を渡した。
 
 「茜ちゃん、実は古竜が呼んでるんだ、来てくれるかな?」
 「はい、良いですよ。」
 「じゃ、明日一緒に連れて行くので準備しておいてね」
 「はい」
 
 「では、今日はこれで失礼します。」
 「はい、では明日お待ちしております。」
 
 俺は都内へのマンションへと転移して日本仕様の体に変更する。
 リネーネから聞いていた先に電話をしてアポを取った。
 
 指定された都内へのレストランへと急ぐ・・・
 誰か着いて来てるのが分かったので途中で転移を使って撒いてからレストランへと向かった。
 指定されたレストランは都内でも高級のフレンチレストランだった。
 店へ入り名前を告げると個室へと案内された。
 部屋へと入ると一人の白人女性が待っており、俺が席に付くなり立ち上がり自己紹介をして来た。
 
 「初めまして、在日米国大使館、文化担当官のアリエル・マルティネスです。宜しく!」
 そう言って手を伸ばして来たので軽く握手をする。
 「どうぞ、おかけ下さい」
 との言葉で軽く挨拶して座る。
 
 彼女は身長は170cm弱、髪は明るめのブラウン、瞳はブルー普通の体型で特に巨乳という訳では無い。。その後、おきまりの名刺交換をした。名刺にはやはりアリエルの名が記されていた。
 
 彼女を鑑定してみる
 名前:アデライン・ディビス
 年齢:26歳
 配偶者:無し、未婚
 所属:CIA情報本部、情報資源部
 職種:分析官
 趣味:日本のアニメ
 語学:英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、ロシア語、日本語
 武器:バック内に拳銃
 
 俺はミスリルで出来た。特別製の名刺を渡す。表示されているのは名前だけだ・・
 「代わった名刺ですね。この材質は何ですか?」
 その質問には答えずに
 
 「右下の角を親指で軽く押してみて下さい。」
 「はぁ、あれ・・・何これ・・」
 彼女が名刺に親指を当てるとその他の情報が浮かび上がってきた。
 「それは魔力を流すと名刺に書かれている情報を見る事が出来ます。指を離すと大体10秒ほどで表示されている文字は消えます。ちなみ”CALL”を押すとわたしに連絡が付きます、まあ、それでは話は出来ませんが、ページャーみたいなものですね。」
 
 「えっ、私に魔力があるんですか?」
 「えぇ、ありますよ、とても少ないですが、0って人の方が珍しいと思います。」
 「そうなんですかぁ。」
 「その名刺の材質はミスリルと言って地球上にはない金属です。」
 (これでこの男がハミルトン氏に繋がっているのはほぼ間違いないとみて良いわね)
 ボーッと名刺を眺めたまま、アリエルは口を半開きにしたまま、余所の世界に行ってるようだ・・・
 「マルティネスさん?」
 
 「あっ、はい、失礼しました。」
 
 「ずいぶん、日本語が堪能なんですね。」
 「えぇ、日本のアニメが好きで勉強しました。」
 彼女は軽く笑いながら訳を話しているがどうやら嘘は言っていないようだ・・・
 
 「所でアメリカの文化担当官が私に何の用でしょうか?、まさか、アニメと日本の文化について語り合いたいって訳でも無いでしょう。」
 
 「いえいえ、日本の文化とアニメには多大な影響があると思ってます、それについて話したいって言うのも本当です、ただ、御社の事業内容にも興味が引かれるのも事実なのでアニメをとっかかりにもう少し友好を深めて行きたいって言うのが本音です。」
 
 彼女にとって失敗は許されないのだろう、まずは気を許すまで親しくなってから色々と聞き出していきたいと言うのが本音か、失敗は許されないからこそあえて慎重な作戦に出たのかも知れない。暫くは付き合うか・・そう考えていた。
 
 その後、アニメや映画の話で盛り上がった・・盛り上がらない訳がない、盛り上がるように彼女が言葉を選んで盛り上げているからだ・・・確かにアニメやラノベの知識が豊富な事もちょっと愕いた。
 
 彼女と話していて悪印象はなかった、割と好印象を持ったのも事実だった。もちろん、作為的に言葉を選んで話しているのは承知した上での考えだ。
 
 「マルティネスさん・・・」
 「あっ、アリエルと呼んで下さい。」
 
 「そうですか、では、アリエルさん私の事は久志とお呼び下さい。」
 「はい、久志さん」
 
 「アリエルさん、今日は顔つなぎ程度でノルマ達成ですか?」
 「えっ、どう言う事でしょうか?」
 
 「では、単刀直入に聞きます。」
 「何が欲しいんですか?、うちが日本や海外から仕入れている商品に興味がある訳ではないですよね。」
 
 「はぁ、やっぱりお見通しだったんですねぇ・・・」
 「そりゃそうでしょう、うちみたいな零細企業それも仕入れしかしない企業にCIAが来るなんてそれ以外に理由はありませんから・・」
 
 「やっぱり、あなたが日本の窓口なんですね。」
 「えぇ、そう思って貰って結構ですよ。」
 
 「ハミルトン氏に会う事は可能ですか?」
 「不可能ではありませんが、基本的にこちらの世界での取引は私が全て委任されています、彼は忙しいんですよ、本業もありますしね。会う事は可能でしょうが取引は窓口は私になりますね。」
 
 「出来れば本人と話をしたいと思っていたんですが・・・」
 「そうですか、では、そうして下さい。私はこれで失礼します。」
 立ち上がろうとすると・・
 
 「ちょ、ちょっと、お待ち下さい、困ります。」
 「そう、言われても私には用はないみたいなので・・・」
 
 「あなたでは駄目って訳では無いんです、ただ、今後の事を考えると一度は本人に会って於きたいと思ってまして・・・後の商談は久志様を窓口として行いたいと思っておりますので、何とかアポを取って頂けないでしょうか?」
 (恐らく彼がルーカス・ハミルトンと繋がっているのは間違いなだろう、しかし絶対ではない確実な確証が欲しい。その為にはやはり本人に会いたい・・・」
 
 「こちらの世界でのやり取りは私が任されています、それを通り抜かしてしまうとわたし単なる役立たずになってしまいますが・・・」
 
 「はっ、申し訳御座いません。」
 
 「これをお渡ししましょう。」
 そう言って、テーブルに魔石を2つおいた2cm弱と3cm強の魔石だ・・・
 「水属性と火属性の魔石です。」
 
 「へぇーーっ、これが魔石ですかぁ・・・」
 アリエルは魔石を手に取り照明に透かして見たり、ポン、ポンっと手のひらで挙げてみて魔石の感触を確かめてうっとりとした表情で魔石を見つめている。
 まるで魔石に魅了されるかのように・・・
 
 「魔石って不思議な感じですねぇ・・何だか吸い込まれて行きそう。。。」
 あぁ、不思議だわ、なんかとっても引き込まれる気がして・・・これって出回ったりしたら取り合いになって殺し会いにまで発展しそうな気がするわ・・
 (宝石じゃないのは確か、そうすると本物の魔石の可能性が高い。ほぼ確実に彼がハミルトン氏に繋がっているのは確定だわ、そうと決まれば逃がす訳には行かないわ)
 
 「アポの件は別にして、そちらの希望は何ですか?、それが分からない事にはどうしようも無いです。」
 「魔石を含む資源ですね。」
 
 「もう少し具体的言って貰えませんか?」
 「魔石、魔物の素材、難病を治したような薬、あとはあれば一般資源ですね。」
 「記者会見で使われたような瞬間的に移動するような魔石も欲しています。」
 
 「それで窓口である私ではなく本人と直接取引がしたいと言う事ですね。」
 「そこまでは行ってません、最初は本人とお会いしたいって事です。」
 
 「こちらの世界の輸出入に関して何処の国と取引するかは私の一存で決める事が出来ます。」
 「彼が求めている物は殆どの国にある物なのでこちらには選択肢は幾らでもあるのです。」
 「何を欲しているかおわかりですか?」
 「えぇ、兵器、それも小火器だと考えていますが・・・」
 
 「そうです、ほぼほぼ合っています。近代兵器は望んでいないので選択肢はあると申し上げたのです。、貴国では輸出する気がありますか?」
 「商談さえまとまれば望むだけ提供出来ますよ。恐らく我が国以外には量質とも満足頂ける所はあまりないと思っています。」
 
 「分かりました、では私の個人的な条件を呑んで貰えれば直接、交渉出来るようにしましょう、但し交渉がまとまった後の事務処理などは私の方でやる事になりますが・」
 
 「その条件とは何ですか?、可能な限り要望にお応えしたいと考えますが・・」
 「空母に乗ってみたい、ただ乗るだけではなく戦闘機の発着艦を見たいって事です。」
 「・・・・」
 「はぁ?、そんな事ですか?」
 「えぇ・・個人的に興味がありますしね。以前、横須賀で公開された時は並んだのですが規制で入れなかったのが悔しくて・・・」
 
 「帰って相談してみますが、恐らくOKだと思いますよ。」
 「では、確約が取れたらお知らせ下さい、実現出来れば翌日でもお引き合わせしましょう」
 
 「所でマルティネスさん、一つ、忠告しておきます、私は本名をさらしています、いくら紹介しても彼は本名を名乗らない相手とは取引はしないでしょう。」
 
 「ま、空母の件が実現すれば米国政府にかなり近い人間だとは想像出来ますが・・・現時点でマルティネスさんが米国のエージェントだという保証は何処にもありません、仮に身分証を見せられてもフェイクはネットで幾らでも注文出来ますし、それが本物だと調べる手段はこちらにはありませんから・・・」
 
 「私の名前が偽名だと・・・?」
 「そうは言っていませんよ、ただ、良くあるじゃないですかぁ?、CIAエージェントは大抵、カバーで働いてるって、映画の見過ぎですかね」
 俺がそう言って笑うとマルティネスは一瞬、口角が上がった後に笑っていた・・・
 「・・・・」
 「私が言いたいのは取引には信頼関係が大事って事ですよ。継続するつもりなら・・・」
 「むろん、1回切りというのであれば物々交換でも可能ですよ。」
 
 「ご検討頂いて見て下さい。結論が出ましたらさっきお渡しした名刺で連絡して下さい、こちらから電話を入れます。」
 「もし、連絡先が違う場合は、事務所に連絡して下さい。ただ、事務所だと数週間、帰らない場合もあるので遅くなるかも知れません。」
 
 「最後に一つだけ、結果は出ていませんが、あまりゆっくりされているとこちらが欲している物を日本が用意するかも知れません。その場合はお断りになりますので・・・」
 
 「日本が用意すると言っているのですか?」
 「えぇ、少数は実際に提供して貰いました。その見返りとして一次視察、とは言っても、まあ、見学みたいな物ですが、受け入れる約束が出来ています。」
 
 「ただ、政府としては正式には出せないみたいですが、何とかしてみるとは言ってますが・・・」
 「そのつもりなら急がれた方が良いでしょう。」
 「では、連絡をお待ちしております。」
 そう言い残すとその場を立ち去った。
 
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