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第五章 救出に向けて
【自衛隊異世界へ行く5】
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【自衛隊異世界へ行く5】
ファンテーヌ領、アルバハ平原陸上自衛隊仮設訓練所
早朝、4時30分、まだ、夜も明けておらず地平線の向こうが少し明るくなり出した頃である。こちらの世界の朝は早い、日の出と供に起きて働き、日没と供に寝ると言う自然に沿った生き方をしている。無論、ランプなどの明かりはあるが平民の農家だと、夜なべをする為には明かりの燃料となる魔石はそうそう消費出来ないのだ。
今まで魔物相手の訓練だったのだが、今回から盗賊を対象とした人間を相手の訓練が始まるのだった。無限に生まれてくる魔物とは違い、盗賊は絶対数が少ないので事前の調査により二つの盗賊団を突き止めていた。今回の訓練ではその二つを壊滅させてから実際の救出を想定した訓練に移る予定になっていた。
そんな夜も明けきらない午前4:30、自衛隊の仮設訓練所では隊員が奈津の訓示を受けていた。
「おはよう、諸君!!、今日は盗賊の壊滅訓練を行う。訓練とは言っても相手は本物の盗賊である。よって容赦する必要は一切ない、躊躇すれば自分自身が死ぬ事になる、『僕は人を殺せません』という甘ちゃんな隊員はここにはいないと思うがもしいるようなら一歩前に出てくれたまえ。
即刻、荷物をまとめて帰還して貰う。」
「さぁ、出来ない物は前に出ろ!!」
隊員達は顔を見合わせてはいるようだが、実際に前に出る者はいないようだ・・
一部には実戦経験もある隊員もいる精鋭の中でここで腰を引くようなやつは既におかしいのだが・・・
「玉無しは誰もいないようだな・・・では、今回の訓練の概要を説明する、ここから南南東に約40km程、行った処に盗賊団のアジトがある、その壊滅が今回の主な目的だ。」
「現場まではATV3台に分乗していく、そこからの実際の作戦行動は諸君らに一任する、私は一切、口出しはしない。なお、アジトの内部には女子供が監禁されている可能性も高いのでその救出を前提に作戦を立案、実行して貰いたい。」
(おい、おい、ここに来て作戦は丸投げかよ。)
「言って置くが盗賊連中に遅れを取るようなら特定失踪者の救助なんて夢のまた夢だと理解して欲しい。
それと盗賊は基本、抹殺だが事情を聞きたいので数名は生かし於いて欲しい残りは全て殺してかまわない。一つ忠告して於くが人を殺した経験のないものは殺す時に相手の目を見ない事だ・・・そうしないと暫くは眠れなくなるぞ!!」
「なにか質問がある者はいるか?」
隊員達は皆それぞれに緊張の面持ちで奈津の話を聞いていた。
奈津は出発前訓示の終わりに隊員達の顔を見渡しながら質問を受け付けた。
「有りません。」
隊長の香川1佐は暫く間を置いた後に他の隊員から何も声が上がらない事を確認すると代表して答えた。
「では、装備を点検して10分後にここに集合、では解散!」
隊員達は装備している武器弾薬を点検している。
隊員A:なぁ、向かってきていない相手でも撃つのか?
隊員B:あぁ、教官の言う事をそのまま聞けばそう言う事になるんだろうな
隊員C:俺、実際に人を撃った事がまだ無いんだけど、撃てるかなぁ。ハァ、ちょっと気が重い。
いくら特戦のエリート集団とは言え実際に人を撃った事があるのはごく一部、これはいくら訓練しようとも体験しない事にはそれを乗り越える事は出来ない。
だが、中には殺したいから殺したなんて犯罪者もいる、ああ言うのって元々から殺すという事に対しての忌諱感がないんだろうか・・・なんて思ってしまいす。
「集合!!」
奈津の号令と供に既に集まっていた隊員達が一斉に整列を行う。整列の早さは流石と言える、教育隊で散々やるだろうが、それ以降もやっぱりやるのだろうかなんて考えてしまった。
「各自、別れて乗車!!」
隊員達は用意されたATVに適当に分乗して乗り込んだ。
隊員を乗せたATVは街道をそれなりに速い速度で進んでいた。幹線道路である街道はきちんと整備されているので速度を上げて走る事が可能になっていた。
1時間ほど走ると街道からそれ脇道へと入っていく、道の悪さもあるが何より余計な音を立てない為に静かにATVを進めて行く。
目標地点まで後2kmの距離まで近づくとATVを下りて、ATVを偽装ネットの上に草や枝などで隠して偽装しておく。ATVを隠し終えると盗賊の本拠地である洞窟へと足を進める、本来、盗賊が使っているであろう道は避けて森の中を行軍するが隊員達は全く問題が無いようだ・・・
森の中に盗賊らが整地したのかある程度の広さがあり、その奥に洞窟の入り口があった。洞窟の入り口では2名の見張りがいたが、緊張感がないのか眠りこけている様子だ。
一旦、そこから離れる。
暫く離れた所で全員でまとまって話をする。
「これから盗賊の討伐作戦を行う。リーダー、もしくは幹部と思われる盗賊は出来るだけ生かして確保する事が望ましい。
後の者は全員処分して構わない。なお、なかには奴隷目的で誘拐されている女子供もいる可能性もあるので、その場合は保護を優先する。私からは以上だ。
準備が整い次第掛かってくれ・・健闘を祈る」
「ちょっと待って下さい、作戦は?、どの様な作戦で行うのですか?」
隊長の香川1佐は作戦内容も何も言わない奈津に不満のようでどうするのか聞いてきた。
「君たちの作戦に任せるよ。
何も考えていない訳ではあるまい。
君たちも一国の軍隊の中でも優秀な特殊部隊の一員だろう、作戦ぐらい考えてはいるだろうから君たちのやり方に任せるって言っただけよ。
注意事項は先に話したでしょ。」
隊長は、正直な所頭を抱え込んでいた、何となくは考えていた物の実は作戦らしい作戦は考えていなかったのだ。
「渡部、岩原、お前達はクロスボウで見張りの二人を倒せ、倒したらそのまま出入り口の警戒に当たってくれ。三木は此処から逃げ出す奴を始末してくれ...残りは俺と一緒に突入するぞ!!
可能な限りナイフでやる、どうしても駄目な場合は拳銃の使用を認める。」
隊員全員に緊張が走った。
「渡部、岩原やれ!」
「はい、俺は左、岩原は右を頼む」
「領解!」
クロスボウを持った渡部と岩原がクロスボウを見張りの二人に向かって狙いを付ける。
「いつでもOKです、」、「こちらもOKです。」
準備が出来た事を隊長に伝えてきた。
「ヨシ!!、3・2・1・”テツ”」
「パシュッ」
距離にして約30m、両隊員の放った矢は見張りの盗賊2名の頭部に命中した。
「突撃!!、前へ...音を立てるなよ。」
スナイパーの三木を残した8人は静かに洞窟へと向かっていった。洞窟の入り口に付くと渡部と岩原の2名は倒れている盗賊をどかして出入り口の警戒を行う。
残りの隊員はポイントマンをかってでた佐藤隊員を先頭に警戒しながら先へと進んでいく...
洞窟の中は暗く、隊員達は暗視装置を付けて進んでいく、暫く行くと少し広い場所がありそこに3名ほどの盗賊が地べたに転がるようにして寝ていた。
佐藤、住田、下村の三名は盗賊の口を押さえると同時に首にナイフを突き立てて頸動脈を切断する。
首を刺された盗賊は口をふさがれているので「うぐっ」と叫び声にならない声を上げてそのままものを言わぬ物体となった。
ほぼ同時に3名を始末した時だった。3名とばかり思っていたところに、荷物の影になっていたのかもう一人の盗賊が物音で目を覚ましたようで体を起こした。
「ふうん?、あれ、わー」
盗賊は最後まで叫びきらないうちに後から口をふさがれて、口をふさいだ隊員は口を押さえたまま手元に引き寄せるようにして耳の後からナイフを斜め上に向かって刺しこんだ、脳幹を破壊された盗賊は”ビクッ”と一瞬痙攣した後、ものも言わずに息絶えた。..
「3人と思ったら4人か、危なかったな。
先に進むぞ!」
すぐに扉が有り扉の隙間から覗いて見るとざっと覗いただけでも10人以上の盗賊が寝ているようだった。
「佐藤、下村はフルオートでバックアップしろ、まずは俺が降伏勧告をやる」
「自分の意思で発砲を許可する、いいか躊躇うな!」
隊長の香川は両隊員に指示を出した。
『領解!!』と隊員はハンドサインで答える。
隊長の香川は大きく深呼吸をすると、ドアを開けるなり叫んだ。
「全員、武器を捨てて降伏しろ!
降伏すれば危害は加えない。」
「ふざけんじゃねぇ~、てめぇらぶち殺してやる!」
もともと盗賊達は武器を持ってはいなかったが、隊長の怒号により飛び起きて手元にあった剣などの武器を取り襲いかかってきた。
「撃て!!」
隊長は後にいる佐藤隊員と下村隊員は隊長の前に出て発砲を開始した。
「ダ、ダダダダダーーン」
二人は盗賊に向かってMP5Kをフルオートで発射した。毎分800発を誇る2丁のサブマシンガンから発射された銃弾はほんの数秒で弾倉に込められた30発の弾丸は盗賊達を蹂躙し尽くす。
隊員達は撃ち尽くした弾倉をすぐに入れ替えすぐに備えると、もう、そこは血と埃にまみれて、まともに立てる者は一人も居なかった。
9mmの銃弾で死ねなかった者達のうめき声が響いていた。..
それを見た隊員達は流石に吐いたりはしないものの相当緊張しているようだった。
佐藤、下村隊員が銃撃を開始した直後、隊長は次の部屋へ隊員を伴いが突入すると一人の男が武器を取り向かってきた。
「ウォリャー、ぶち殺してやるーーーっ」
男は片手剣を大きく振りかぶり隊長へと切りか掛かってきた。
結果、惜しかった。実に惜しかったのだった、あと一歩踏み込めていればその刃の切っ先は隊長へと届いたのだが・・・
「ダン、ダン、ダン」
隊長の香川が拳銃から発射した3発の9mmの銃弾は全て斬り掛かってきた盗賊の腹部へと吸い込まれて行った。
他の隊員は64式自動小銃を盗賊に向けてポイントしている。
しばしの沈黙が辺りを包む。
隣の部屋からは死にきれなかった者達のうめき声が聞こえている。
その頃、隣の部屋では奈津が死にきれずに呻いている盗賊にサクサクと止めを刺して回っていた。
「わ、わかった。降伏する助けてくれ・・・」
それを聞いた香川隊長は隊員へ盗賊を拘束するように指示を飛ばした。
2名の隊員は盗賊に小銃を向けたまま警戒しているなか他の隊員が盗賊を後ろ手にタイラップで締め上げて拘束していく。
「他の部屋を調べろ!!」
隊長の指示で他の部屋の捜索が始まった。
板を打ち付けた扉を開けると簡単な牢が作られていて4名の女生と2名の幼女が監禁されていた。
捕らわれている女性達は見た事もない格好をしている隊員達を見て脅え部屋の隅によって体を寄せて縮こまっていた。
「だ、大丈夫、大丈夫ですよ。助けに来ました。安心して下さい。」
女性達は顔を見合わせながらとにかく従うしかないと思った様子で隊員に促され牢から出されて一旦外へと連れて行かれる。
捕縛された4名の盗賊も引きずられるようにして洞窟の外へと連れ出されて行った。
他の隊員が洞窟を出ようとすると奈津からの指示が飛ぶ。
「あんた達、盗賊のお宝もちゃんと回収しなきゃ駄目でしょ。」
盗賊の戦利品置き場には多数の武器や金銭、宝飾品などが於かれていた。
奈津に促されて隊員立ちは盗賊のお宝も回収していく。
「あぁ~やっぱり誘拐されていたのよねぇ・・応援呼ばないと運べないわ。
奈津はそう呟くと無線で応援を呼んでいた。」
「はい、取り敢えず、大変だったわね、もう大丈夫よ、私はファンテーヌ領の防衛参謀長をしている奈津よ。あなた達はちゃんと元の場所に帰して上げるから心配しなくて良いわよ。」
「ほ、本当に私達助かったんですか?」
女性達はまだ、助かったのかどうか不安な様子でまた、今度はどっかへ売られるんじゃないかと不安になっていたが奈津の言葉を聞いて納得して様だった
「わ、私達、本当に助かったんですね。」
そう言うと、皆、緊張から解放されたのか泣きだした。。。
助け出された女性は殆どがボロを纏っている様子で中には半裸の女性もいた。
「はい、これを纏っていて、まだ、冷えるから」
奈津はそう言って体温保護シートを女性陣に手渡していった。
「それからお腹すいてるでしょう、これも食べてね!!」
そう言って固形の栄養補助食品とジュースを配っていく。
「ほら、あんたボーッとしてないで食べ方を教えて上げて」
手の空いている隊員に向かって奈津は栄養補助食品の食べ方を教えるように指示をだす。
一瞬、硬直した隊員はすぐに復帰して女性達に食べ方を丁寧に教えていた。
「ん、んわぁ、お、美味しい、美味しいわぁ、こんなの生まれて初めて食べたわ。」
皆、助かった嬉しさと、栄養補助食品の美味しさの相乗効果か泣きながら食べている。
まあ、それもそのはず、固形の栄養補助食品なんてこの世界にはないものだから生まれて初めてなのは当然とも言えるのだけど・・・
それもこの世界では家畜の餌としか考えられていない大豆を主原料とした者だと知ったら驚くだろう。
助け出された女性達はようやく落ち着きを取り戻したようだ・・・
これで今回の盗賊討伐作戦はおおむね成功したと言える。
♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*゚♪
最後まで読んで頂きましてありがとう御座います。
誤字、脱字等ありましたらお知らせ頂けると助かります
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♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*♪゚*☆*゚♪*☆*゚♪゚*☆*゚♪
ファンテーヌ領、アルバハ平原陸上自衛隊仮設訓練所
早朝、4時30分、まだ、夜も明けておらず地平線の向こうが少し明るくなり出した頃である。こちらの世界の朝は早い、日の出と供に起きて働き、日没と供に寝ると言う自然に沿った生き方をしている。無論、ランプなどの明かりはあるが平民の農家だと、夜なべをする為には明かりの燃料となる魔石はそうそう消費出来ないのだ。
今まで魔物相手の訓練だったのだが、今回から盗賊を対象とした人間を相手の訓練が始まるのだった。無限に生まれてくる魔物とは違い、盗賊は絶対数が少ないので事前の調査により二つの盗賊団を突き止めていた。今回の訓練ではその二つを壊滅させてから実際の救出を想定した訓練に移る予定になっていた。
そんな夜も明けきらない午前4:30、自衛隊の仮設訓練所では隊員が奈津の訓示を受けていた。
「おはよう、諸君!!、今日は盗賊の壊滅訓練を行う。訓練とは言っても相手は本物の盗賊である。よって容赦する必要は一切ない、躊躇すれば自分自身が死ぬ事になる、『僕は人を殺せません』という甘ちゃんな隊員はここにはいないと思うがもしいるようなら一歩前に出てくれたまえ。
即刻、荷物をまとめて帰還して貰う。」
「さぁ、出来ない物は前に出ろ!!」
隊員達は顔を見合わせてはいるようだが、実際に前に出る者はいないようだ・・
一部には実戦経験もある隊員もいる精鋭の中でここで腰を引くようなやつは既におかしいのだが・・・
「玉無しは誰もいないようだな・・・では、今回の訓練の概要を説明する、ここから南南東に約40km程、行った処に盗賊団のアジトがある、その壊滅が今回の主な目的だ。」
「現場まではATV3台に分乗していく、そこからの実際の作戦行動は諸君らに一任する、私は一切、口出しはしない。なお、アジトの内部には女子供が監禁されている可能性も高いのでその救出を前提に作戦を立案、実行して貰いたい。」
(おい、おい、ここに来て作戦は丸投げかよ。)
「言って置くが盗賊連中に遅れを取るようなら特定失踪者の救助なんて夢のまた夢だと理解して欲しい。
それと盗賊は基本、抹殺だが事情を聞きたいので数名は生かし於いて欲しい残りは全て殺してかまわない。一つ忠告して於くが人を殺した経験のないものは殺す時に相手の目を見ない事だ・・・そうしないと暫くは眠れなくなるぞ!!」
「なにか質問がある者はいるか?」
隊員達は皆それぞれに緊張の面持ちで奈津の話を聞いていた。
奈津は出発前訓示の終わりに隊員達の顔を見渡しながら質問を受け付けた。
「有りません。」
隊長の香川1佐は暫く間を置いた後に他の隊員から何も声が上がらない事を確認すると代表して答えた。
「では、装備を点検して10分後にここに集合、では解散!」
隊員達は装備している武器弾薬を点検している。
隊員A:なぁ、向かってきていない相手でも撃つのか?
隊員B:あぁ、教官の言う事をそのまま聞けばそう言う事になるんだろうな
隊員C:俺、実際に人を撃った事がまだ無いんだけど、撃てるかなぁ。ハァ、ちょっと気が重い。
いくら特戦のエリート集団とは言え実際に人を撃った事があるのはごく一部、これはいくら訓練しようとも体験しない事にはそれを乗り越える事は出来ない。
だが、中には殺したいから殺したなんて犯罪者もいる、ああ言うのって元々から殺すという事に対しての忌諱感がないんだろうか・・・なんて思ってしまいす。
「集合!!」
奈津の号令と供に既に集まっていた隊員達が一斉に整列を行う。整列の早さは流石と言える、教育隊で散々やるだろうが、それ以降もやっぱりやるのだろうかなんて考えてしまった。
「各自、別れて乗車!!」
隊員達は用意されたATVに適当に分乗して乗り込んだ。
隊員を乗せたATVは街道をそれなりに速い速度で進んでいた。幹線道路である街道はきちんと整備されているので速度を上げて走る事が可能になっていた。
1時間ほど走ると街道からそれ脇道へと入っていく、道の悪さもあるが何より余計な音を立てない為に静かにATVを進めて行く。
目標地点まで後2kmの距離まで近づくとATVを下りて、ATVを偽装ネットの上に草や枝などで隠して偽装しておく。ATVを隠し終えると盗賊の本拠地である洞窟へと足を進める、本来、盗賊が使っているであろう道は避けて森の中を行軍するが隊員達は全く問題が無いようだ・・・
森の中に盗賊らが整地したのかある程度の広さがあり、その奥に洞窟の入り口があった。洞窟の入り口では2名の見張りがいたが、緊張感がないのか眠りこけている様子だ。
一旦、そこから離れる。
暫く離れた所で全員でまとまって話をする。
「これから盗賊の討伐作戦を行う。リーダー、もしくは幹部と思われる盗賊は出来るだけ生かして確保する事が望ましい。
後の者は全員処分して構わない。なお、なかには奴隷目的で誘拐されている女子供もいる可能性もあるので、その場合は保護を優先する。私からは以上だ。
準備が整い次第掛かってくれ・・健闘を祈る」
「ちょっと待って下さい、作戦は?、どの様な作戦で行うのですか?」
隊長の香川1佐は作戦内容も何も言わない奈津に不満のようでどうするのか聞いてきた。
「君たちの作戦に任せるよ。
何も考えていない訳ではあるまい。
君たちも一国の軍隊の中でも優秀な特殊部隊の一員だろう、作戦ぐらい考えてはいるだろうから君たちのやり方に任せるって言っただけよ。
注意事項は先に話したでしょ。」
隊長は、正直な所頭を抱え込んでいた、何となくは考えていた物の実は作戦らしい作戦は考えていなかったのだ。
「渡部、岩原、お前達はクロスボウで見張りの二人を倒せ、倒したらそのまま出入り口の警戒に当たってくれ。三木は此処から逃げ出す奴を始末してくれ...残りは俺と一緒に突入するぞ!!
可能な限りナイフでやる、どうしても駄目な場合は拳銃の使用を認める。」
隊員全員に緊張が走った。
「渡部、岩原やれ!」
「はい、俺は左、岩原は右を頼む」
「領解!」
クロスボウを持った渡部と岩原がクロスボウを見張りの二人に向かって狙いを付ける。
「いつでもOKです、」、「こちらもOKです。」
準備が出来た事を隊長に伝えてきた。
「ヨシ!!、3・2・1・”テツ”」
「パシュッ」
距離にして約30m、両隊員の放った矢は見張りの盗賊2名の頭部に命中した。
「突撃!!、前へ...音を立てるなよ。」
スナイパーの三木を残した8人は静かに洞窟へと向かっていった。洞窟の入り口に付くと渡部と岩原の2名は倒れている盗賊をどかして出入り口の警戒を行う。
残りの隊員はポイントマンをかってでた佐藤隊員を先頭に警戒しながら先へと進んでいく...
洞窟の中は暗く、隊員達は暗視装置を付けて進んでいく、暫く行くと少し広い場所がありそこに3名ほどの盗賊が地べたに転がるようにして寝ていた。
佐藤、住田、下村の三名は盗賊の口を押さえると同時に首にナイフを突き立てて頸動脈を切断する。
首を刺された盗賊は口をふさがれているので「うぐっ」と叫び声にならない声を上げてそのままものを言わぬ物体となった。
ほぼ同時に3名を始末した時だった。3名とばかり思っていたところに、荷物の影になっていたのかもう一人の盗賊が物音で目を覚ましたようで体を起こした。
「ふうん?、あれ、わー」
盗賊は最後まで叫びきらないうちに後から口をふさがれて、口をふさいだ隊員は口を押さえたまま手元に引き寄せるようにして耳の後からナイフを斜め上に向かって刺しこんだ、脳幹を破壊された盗賊は”ビクッ”と一瞬痙攣した後、ものも言わずに息絶えた。..
「3人と思ったら4人か、危なかったな。
先に進むぞ!」
すぐに扉が有り扉の隙間から覗いて見るとざっと覗いただけでも10人以上の盗賊が寝ているようだった。
「佐藤、下村はフルオートでバックアップしろ、まずは俺が降伏勧告をやる」
「自分の意思で発砲を許可する、いいか躊躇うな!」
隊長の香川は両隊員に指示を出した。
『領解!!』と隊員はハンドサインで答える。
隊長の香川は大きく深呼吸をすると、ドアを開けるなり叫んだ。
「全員、武器を捨てて降伏しろ!
降伏すれば危害は加えない。」
「ふざけんじゃねぇ~、てめぇらぶち殺してやる!」
もともと盗賊達は武器を持ってはいなかったが、隊長の怒号により飛び起きて手元にあった剣などの武器を取り襲いかかってきた。
「撃て!!」
隊長は後にいる佐藤隊員と下村隊員は隊長の前に出て発砲を開始した。
「ダ、ダダダダダーーン」
二人は盗賊に向かってMP5Kをフルオートで発射した。毎分800発を誇る2丁のサブマシンガンから発射された銃弾はほんの数秒で弾倉に込められた30発の弾丸は盗賊達を蹂躙し尽くす。
隊員達は撃ち尽くした弾倉をすぐに入れ替えすぐに備えると、もう、そこは血と埃にまみれて、まともに立てる者は一人も居なかった。
9mmの銃弾で死ねなかった者達のうめき声が響いていた。..
それを見た隊員達は流石に吐いたりはしないものの相当緊張しているようだった。
佐藤、下村隊員が銃撃を開始した直後、隊長は次の部屋へ隊員を伴いが突入すると一人の男が武器を取り向かってきた。
「ウォリャー、ぶち殺してやるーーーっ」
男は片手剣を大きく振りかぶり隊長へと切りか掛かってきた。
結果、惜しかった。実に惜しかったのだった、あと一歩踏み込めていればその刃の切っ先は隊長へと届いたのだが・・・
「ダン、ダン、ダン」
隊長の香川が拳銃から発射した3発の9mmの銃弾は全て斬り掛かってきた盗賊の腹部へと吸い込まれて行った。
他の隊員は64式自動小銃を盗賊に向けてポイントしている。
しばしの沈黙が辺りを包む。
隣の部屋からは死にきれなかった者達のうめき声が聞こえている。
その頃、隣の部屋では奈津が死にきれずに呻いている盗賊にサクサクと止めを刺して回っていた。
「わ、わかった。降伏する助けてくれ・・・」
それを聞いた香川隊長は隊員へ盗賊を拘束するように指示を飛ばした。
2名の隊員は盗賊に小銃を向けたまま警戒しているなか他の隊員が盗賊を後ろ手にタイラップで締め上げて拘束していく。
「他の部屋を調べろ!!」
隊長の指示で他の部屋の捜索が始まった。
板を打ち付けた扉を開けると簡単な牢が作られていて4名の女生と2名の幼女が監禁されていた。
捕らわれている女性達は見た事もない格好をしている隊員達を見て脅え部屋の隅によって体を寄せて縮こまっていた。
「だ、大丈夫、大丈夫ですよ。助けに来ました。安心して下さい。」
女性達は顔を見合わせながらとにかく従うしかないと思った様子で隊員に促され牢から出されて一旦外へと連れて行かれる。
捕縛された4名の盗賊も引きずられるようにして洞窟の外へと連れ出されて行った。
他の隊員が洞窟を出ようとすると奈津からの指示が飛ぶ。
「あんた達、盗賊のお宝もちゃんと回収しなきゃ駄目でしょ。」
盗賊の戦利品置き場には多数の武器や金銭、宝飾品などが於かれていた。
奈津に促されて隊員立ちは盗賊のお宝も回収していく。
「あぁ~やっぱり誘拐されていたのよねぇ・・応援呼ばないと運べないわ。
奈津はそう呟くと無線で応援を呼んでいた。」
「はい、取り敢えず、大変だったわね、もう大丈夫よ、私はファンテーヌ領の防衛参謀長をしている奈津よ。あなた達はちゃんと元の場所に帰して上げるから心配しなくて良いわよ。」
「ほ、本当に私達助かったんですか?」
女性達はまだ、助かったのかどうか不安な様子でまた、今度はどっかへ売られるんじゃないかと不安になっていたが奈津の言葉を聞いて納得して様だった
「わ、私達、本当に助かったんですね。」
そう言うと、皆、緊張から解放されたのか泣きだした。。。
助け出された女性は殆どがボロを纏っている様子で中には半裸の女性もいた。
「はい、これを纏っていて、まだ、冷えるから」
奈津はそう言って体温保護シートを女性陣に手渡していった。
「それからお腹すいてるでしょう、これも食べてね!!」
そう言って固形の栄養補助食品とジュースを配っていく。
「ほら、あんたボーッとしてないで食べ方を教えて上げて」
手の空いている隊員に向かって奈津は栄養補助食品の食べ方を教えるように指示をだす。
一瞬、硬直した隊員はすぐに復帰して女性達に食べ方を丁寧に教えていた。
「ん、んわぁ、お、美味しい、美味しいわぁ、こんなの生まれて初めて食べたわ。」
皆、助かった嬉しさと、栄養補助食品の美味しさの相乗効果か泣きながら食べている。
まあ、それもそのはず、固形の栄養補助食品なんてこの世界にはないものだから生まれて初めてなのは当然とも言えるのだけど・・・
それもこの世界では家畜の餌としか考えられていない大豆を主原料とした者だと知ったら驚くだろう。
助け出された女性達はようやく落ち着きを取り戻したようだ・・・
これで今回の盗賊討伐作戦はおおむね成功したと言える。
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