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第一章

退職の後の会社

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 ■ 退職の後の会社
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 ▼ 暗雲 ▼
 信二が退職して1ヶ月が過ぎた頃、特殊素材課宛にハンター協会から1通の通達が内容証明により届いた。
 
 内容は信二が辞めた後の後任者による買い取りは資格が無いために買い取り業務は一切、認められない。
 無資格による買い取った素材は全てハンター協会に提出すること、ない場合は協会が定める金額を支払うこと。
 
 特殊素材管理法第2⃣条、商業ライセンスの規定と権限に関する法律(無資格による特殊素材取得)に違反しているので2億8千万円の罰金を後日送付する支払い書によりダンジョン省に納めること。
 不服がある場合は到着日より2週間以内に申し立てを行い本裁判を受ける権利がある。
 
 「な、なんなんだ。一体どういうことなんだ……」
 新たに特殊素材課の役職についた山内史浩はわけが分からず、通達をもって派閥の上司である専務を訪ねた。
 
 「専務、こんなものが協会から送られて来ました。」
 
 課長は通達を専務に示しながら判断を仰いでいる。
 (まてよ、これって非常にやばいんじゃないか?、へたすりゃ就任早々責任を取って左遷もありうるぞ!、どうする、考えろ!)
 
 課長はこの危機をなんとか乗り切ろうと必死に考え、現在の派閥から抜けて副社長はに寝返る構想を練っていた。
 
 ▼ 対策 ▼
 
 「や、山内! とりあえず弁護士を呼べ」
 会社の顧問弁護士がすぐに呼ばれた。
 
 「先生!、どういうことですか?」
 「簡単に言えば無資格による買い取りです。素材を買い取るためには商業ライセンスが必要です。後任の山内課長は商業ライセンスをおもちでないのでは...」
 
 「山内くんどうなんだ?」
 
 「はっ、持っておりません。そもそも就任したばかりでライセンスがなにかも知りません。」
 
 「まず、やるべきことは、ダンジョン素材の買い取り及び販売を含む全ての取扱を停止して保有する素材は協会に返納して罰金は支払ったほうが良いでしょう。
 
 不服申立てをして本裁判になっても原因が原因ですからまず、勝てません、そうなると罰金に追徴金も加算されますし行政処分も来ますのでそうなると今後の会社の運営に支障が出る恐れがあります。」
 
 「買い取った素材をタダで協会に渡すのかね?、それに罰金が2億超えとは高すぎじゃないか?」
 
 協会はいくらなんでもぼったくりじゃないか?、そんな事になったらわが社の損害は計り知れない。儂もタダじゃ済まない、なんとか切り抜けなければ……そう入っても課長一人に責任を負わせるには自体は大きすぎるしなぁ、こりゃう肉を切らせるぐらいの覚悟はひつようになるかもな
 
 「不正に取得した素材は全て協会が没収する決まりですからどうしようもないでしょう。罰金は集めた素材の価格や数量により決定されます。交渉の余地が有るとしたらすでに販売などしてリストにない素材の価格ぐらいでしょうか?」
 
 「山内くん君はその商業ライセンスとやらをさっさと取ってきたまえ」
 「はぁ……、それでどうやって取ったら良いのでしょう?」
 
 「バカモンが!!、そんな事は協会に聞けばすぐに分かるだろう、少しは頭を使い給え……」
 
 「山内さん、ちょっとお待ち下さい。」
 慌てて協会に問い合わせをしようとする山内課長をみて弁護士は課長に声をかけるのだった。
 
 「はい?、何でしょう」
 
 「商業ライセンスには受験資格があります。Cランク以上のハンターライセンス保持者で買い取り実務経験が3年以上必要でもしくは鑑定のスキルを持っていて経験1年以上で受験資格があります。
 そのために普通の人にはまず取得不可能なので現在は司法試験より難関の国家資格と言われているほどです。」
 
 「仕方ない。募集をかけるしか無いな。山内、人事に言って募集をかけてくれ、正社員で構わん!」
 派遣でなく正社員なら今の御時世ならすぐにでも集まるだろう。
 今後はこれでいいとして、現状をなんとかしないとな、ふう、車長に頼んで政治家をうごかしてもらうか……
 
 
 「一般の募集で商業ライセンス持ちを見つけるのは不可能に近いかも知れません。先程調べたところ現在、商業ライセンスを使っていないフリーのライセンス保持者は2名しかいません。1名は退職された綺羅沢氏、他の1名はギルド呂風の風の代表である飯島氏です。
 飯島氏はギルド代表だから難しいでしょう。そうすると残りは退職された綺羅沢氏しか可能性はありません。」
 
 「しかしよくそんな資格をあんな大したことが無い奴が取れたな?」
 
 「先程経歴を見させてもらいましたがかなり優秀なかただったようですね、当時は経験とCランク保持の規定がありませんでしたから広く一般の方が受験できたみたいですがその分、合格率は低くてほんの数%程度だったようですね。」
 
 「…………」
 
 どうする?、かと言っていまさら綺羅沢を呼び戻せるものでもない、会社の規定によると一旦退職したものは再就職の場合は嘱託あつかいとなり給与もかなり安い……
 
 本来は定年退職者向けの制度だ……どうする?新しい制度を作るか?、それには役員会の同意が必要になる……
 何にしても対応を取らないと左遷ぐらいでは済まないぞ!
 
 ▼ 数日後 ▼
 
 「中田部長、今回の件は一体どうなってるんだ、買い取り、販売、研究の全てで止まってるそうじゃないか?」
 
 「鈴本副社長、それについてはこちらの石田くんが説明いたします。」
 「では特殊素材課の石田が説明させて頂きます。」
 石田は信二の直属の部下で業務内容や信二が退職した理由についても周知していた。
 石田は副社長にこれまでの経緯と現状を説明した。
 
 「儂としても彼の退職は止めたかったが、理由が理由だったからゴリ押しは出来なかった。しかしその後の事件を考えると退職自体は止む終えなかったと言えるな。
 現状をどうするかだ、彼を呼び戻すしか無いだろう。彼の元の奥さんの事件ももう、すでに風化仕掛けているしその辺はなんとかなるだろう。
 
 社長派の失態としてつけ込むには問題が大きすぎる下手すると会社が倒産するぞ!
 とにかく彼に連絡を取り給え……」
 
 「はい、早急に連絡を取って接触してみます。」
 
 すぐに連絡を取るが信二はマンションは引き払い固定電話は解約して移設していなかったしスマフォは元妻とのトラブルにより番号を変更していた。
 
 会社には特に親しい同僚もいなかったために彼の番号を知るのはハンター協会ぐらいだった。
 
 当然、ハンター協会はプライバシーの保護を理由に信二の番号を開示することはなかった。
 
 
 結局、本社は特殊素材事業部を切り離す決定をして同業他社に殆どの株式を売却して事実上の身売りとなった。
 管理職は本体に戻ることも叶わず一部を除いて殆どの者が解雇された。
 この時をもって信二が所属していた特殊素材課は消滅した。
 



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