188 / 391
―オズヴァルドと共に―
187話 天才オズヴァルド
しおりを挟む
「はい到着っと!皆お疲れ様!」
村へ降り立ち、とりあえず家畜達を牧場へ入れるオズヴァルド。空から降ってきた牛たちは地上に降り立つと平然と草を食み始めた。あの兵2人は竜崎から何か頼まれたらしく、足早にどこかへと向かっていった。
そんな中、ネリーが駄々をこねた。
「いいなー!私も浮遊魔術を使いたい!オズヴァルド先生教えて!」
あれだけ楽しく空を飛べればそんな思いも当然生まれる。オズヴァルドは軽く了承すると、言葉を選びながら説明を始めた。
「えー。えっとね。まず〇×△□と詠唱してね、次に体の中にある魔力のうち、使う分をざっくり5等分にして、手足それぞれにえいやって振り分けて、あ、そこで失敗すると即座に落下してしまうからちょいちょい微調整を加えながら、足りなかったらどうにか補充するんだけど、そして空を飛ぶことを念じて、そこから体をふわふわさせて、でもそれでいて体の骨までぐにゃぐにゃにし過ぎて堅さを失わないように…」
「えっ、ちょ!何言っているのかわからないんですけど…」
そのあまりの意味不明さにネリーは頭を混乱させながらストップを入れる。詠唱呪文すら独自のものなのかもっと高度な魔術なのか、一応浮遊魔術を使えるさくらでも全く聞き覚えがなく、発音も出来ない代物であった。
とりあえず出来る限り真似してみるネリー達だが、そんな説明では当然浮くことすらできない。というか詠唱で引っかかったらしく、舌を噛んで悶えていた。
見兼ねたさくらが自分なりの浮遊魔術を使いお手本を示そうとするが…
「あ、違う違う。それじゃあ効率悪いから、魔力の位置をもっと下に。体が自然になる位置に…そこじゃなくてここ。できてないなぁ…あ、そもそも人によって違うんだっけ?そのほうが初めての子には使いやすいんだっけか?」
と、オズヴァルドに妙なアドバイスを入れられ、集中力を切らしてしまったさくらはストンと地面へ。それを見てオズヴァルドは申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ごめんね、他人に説明するのって苦手で。自分でやる分にはすぐなんだけどなぁ…」
そういうと呪文を口ずさむ彼。すぐさまフワッ浮き上がった。やはりかなりの感覚派らしい。だが、さくらは少し前の時のことを思い出す。
「でも基礎魔術の授業はわかりやすかったですけど」
あれ以降も何度か受講していた彼の基礎魔術学講座。その全ては実に分かりやすく、さくらもまあまあ魔術が使えるようになったのだが…。
「あぁ。あれ基本的にリュウザキ先生や賢者様の受け売りなんだ。教員採用試験の際、お二人に教わったんだよ」
と、オズヴァルドは笑う。そういえば何度も試験に挑戦したと言っていた。竜崎達も流石に見かねて口添えをしたようだ。
「そういえばリュウザキ先生は何を?」
話のついでで思い出したのか、アイナはオズヴァルドにそう問う。
「リュウザキ先生なら今じん…コホン、砦の調査をしているよ」
「ならお手伝いしたいです!」
先程の恩返しがしたいのか、手を挙げるアイナ。するとオズヴァルドは少し考える素振り。
「うーん、今行って大丈夫かな。まあ私もお手伝いしようとしてたし、行ってみようか!」
そう悩むことなく決定したオズヴァルド。さくら達も乗じ、結局全員で戻ることに。
「きゃっほー!」
ネリーの楽し気な声を聞きながら夜空を翔けるさくら達。そんなこんなであっという間に砦近くまで。既に鎮火はしている様子だが、砦を囲み探索するように光輝く球が幾つも飛び交っている。その正体は恐らく竜崎が呼び出した精霊達。幻想的な雰囲気である。
「あれならもう大丈夫かな、リュウザキせんせーい!」
そう叫ぶとオズヴァルドは砦にいた竜崎の元に急降下。さくら達もグイッと引っ張られる。
「あれ、さくらさん達連れてきちゃったの?まあもういいけど」
少し驚いた様子の竜崎。オズヴァルドは少し声を潜め問う。
「どうでした?」
すると竜崎は残念そうに首を振った。
「何も手がかり無しだね。彼らの言葉を信じるなら、そもそもここには来てないって。全部向こうでやってたみたい。あの兵隊さんに頼んだから即座に手配してくれるとは思うけど…」
―まあ何か証拠があったとしても、お前の爆破で焼失してそうだがな―
「すみません…」
ニアロンの皮肉にシュンとなるオズヴァルド。それを竜崎は宥めた。
「まあ過ぎたことだし仕方ないさ。でも良く花束は見つけたね。おかげで重要参考人を確保できたんだ。お手柄お手柄!」
そう言われ、オズヴァルドはまた元気な表情へと戻った。
「さて。ここにはもう用はないし、また悪人が根城にするかもしれない。砦壊しちゃおうか」
伸びをする竜崎は思わぬ台詞を吐く。砦を壊すとは…?ざわつくさくら達を余所にオズヴァルドが名乗り出た。
「あ、じゃあ私にやらせてください!」
「いいけど、周囲の森に全く被害出さずに出来る?」
「はい!気をつけてやります!」
「よし、じゃあ任せた!」
簡単に許可を出し、さくら達と伸びている盗賊達を連れ砦から少し離れた地へと移動する竜崎。と、ニアロンがさくら達へ囁いた。
―オズヴァルドが天才と呼ばれる由縁、見れるぞ―
「えっ?」
既に彼の実力は垣間見たが、それ以外にも?首を傾げるさくら達にニアロンは説明をする。
―オズヴァルドの魔術の才はミルスパールに匹敵するほどだ。しっかりと修行を積みさえすれば各専門の魔術士達と同等、または凌駕するほどの潜在能力を持つ。ミルスパールはあいつをなんとか学院に引き入れようと躍起になっていた時もあるんだぞ―
「でも召喚術は疎いって」
―お、本人から聞いていたか。その通り。あいつは人に教えるのと同じように、命令を出すのもド下手なんだ。そんなことをするなら自分が突っ込んでいったほうが楽という考えの持ち主でな。そんなことができるのは、あいつが既に基礎魔術を自由自在に操れるほど極めているからでもある―
それはどういう?そう聞こうとするさくら達だったが、それを遮るかのように砦から何者かが飛び上がる。砦に残っていたのはオズヴァルドだけだったはず、となると飛び上がったのは彼ということだが…。
「あ、始まるよ」
まるで花火を見るかのように楽しそうに見守る竜崎。さくら達もそれを見上げると…
「ん…?」
空高くに明るく輝く何かが発生する。星、にしては大きい。太陽、はとうに沈んでいる。ならあれは…?睨みつけている間に、その何かはどんどん大きくなり…。
「いや何ですかあれ!?」
地上に迫りくるそれは、巨大な隕石。燃え盛り、全てを破壊し尽くさんと勢いよく落下してきている。
ゴゴゴゴゴゴ…!
空気を震わせ、夜空を明るく染めながら落ちてくるそれに恐怖を覚え、さくら達は竜崎の服を引っ張る。
「逃げないと!」
「大丈夫だよ。あれは本物の隕石じゃない。土魔術と火の魔術、それらを高い技術で組み合わせ超上空から落下させたのがあれ、『隕滅の一撃』だよ。オズヴァルド先生の特製技だ」
カッコいいなぁと唸る竜崎。だがさくら達はそれどころではない。その隕石は砦の大きさとほぼ同等。そんなものが落ちたら近くにいるさくら達も巻き込まれてしまう。
「大丈夫だよ。気をつけるって言ってたし」
いやそれでなんとかなるのか。慌てふためくさくら達を気の毒に思ったのか、ようやく竜崎は障壁を展開する。とりあえず一安心だが、とうとう目前に迫った隕石に思わず体が竦み動かなくなるさくら達。もう逃げることは出来なくなった。
そして、とうとう隕石は砦を押しつぶし…!
カッ!
耳をつんざく衝撃音、そして砦をまるまる包むように火柱が天を衝く。その勢い、かつて竜崎だ呼び出した火の高位精霊イブリートの一撃に匹敵するほどである。
「うん、火焔と衝撃のコントロールも出来ている。やっぱ凄いなオズヴァルドは」
その竜崎の言葉にさくらはハッと気づく。障壁どころか周囲の森は少し揺れる程度。隕石が落ちたにしてはあまりにも被害が少ない。はた、と思い出す。かつて学園を盗賊が襲った際、オズヴァルドは彼らが乗る機動鎧ごと炎の渦に包んだ。しかし、ボロボロに壊された機動鎧に対して乗っていた盗賊達は僅かな火傷を負ったのみ。基礎魔術を自由自在に操る―。ニアロンの言葉の意味が今わかった。
火柱が消え、周囲はすぐさま闇に包まれる。竜崎が灯してくれた灯りによって見えたのは、大岩が埋まった地面。砦の壁も、塔も、地下も、全てが押しつぶされ、砕かれ消え去っていた。
呆然とするさくら達の横に、スタンと降り立つオズヴァルド。大技を打てて気持ち良かったのか、清々しい表情をしていた。
「お見事オズヴァルド。私も自分の力だけであんな大技撃ってみたいもんだよ」
パチパチと拍手しながら友人を迎える竜崎。と、ボソリと呟いた。
「もしかしたら、術士として選ばれるべきだったのはオズヴァルドだったかもね」
「いいえリュウザキ先生、私では間違いなく無理ですよ。魔界と人界を繋ぎ、20年たった今もなお誰かのために活躍する先生はいつまで経っても私の憧れです」
その歯に衣着せぬ賛辞に竜崎は照れたのか、唐突に話題を変える。
「そういえば選んでくれたこの眼鏡、大役立ちだったよ。ちょっと顔を変えるだけで案外バレにくくなるもんだね。おかげで逮捕が進んだ進んだ」
「でしょう!役立つとおもったんですよね。前ご一緒したとき変装用具に迷っていらしてましたし!」
やっぱり褒められた犬のように喜ぶオズヴァルドであった。
村へ降り立ち、とりあえず家畜達を牧場へ入れるオズヴァルド。空から降ってきた牛たちは地上に降り立つと平然と草を食み始めた。あの兵2人は竜崎から何か頼まれたらしく、足早にどこかへと向かっていった。
そんな中、ネリーが駄々をこねた。
「いいなー!私も浮遊魔術を使いたい!オズヴァルド先生教えて!」
あれだけ楽しく空を飛べればそんな思いも当然生まれる。オズヴァルドは軽く了承すると、言葉を選びながら説明を始めた。
「えー。えっとね。まず〇×△□と詠唱してね、次に体の中にある魔力のうち、使う分をざっくり5等分にして、手足それぞれにえいやって振り分けて、あ、そこで失敗すると即座に落下してしまうからちょいちょい微調整を加えながら、足りなかったらどうにか補充するんだけど、そして空を飛ぶことを念じて、そこから体をふわふわさせて、でもそれでいて体の骨までぐにゃぐにゃにし過ぎて堅さを失わないように…」
「えっ、ちょ!何言っているのかわからないんですけど…」
そのあまりの意味不明さにネリーは頭を混乱させながらストップを入れる。詠唱呪文すら独自のものなのかもっと高度な魔術なのか、一応浮遊魔術を使えるさくらでも全く聞き覚えがなく、発音も出来ない代物であった。
とりあえず出来る限り真似してみるネリー達だが、そんな説明では当然浮くことすらできない。というか詠唱で引っかかったらしく、舌を噛んで悶えていた。
見兼ねたさくらが自分なりの浮遊魔術を使いお手本を示そうとするが…
「あ、違う違う。それじゃあ効率悪いから、魔力の位置をもっと下に。体が自然になる位置に…そこじゃなくてここ。できてないなぁ…あ、そもそも人によって違うんだっけ?そのほうが初めての子には使いやすいんだっけか?」
と、オズヴァルドに妙なアドバイスを入れられ、集中力を切らしてしまったさくらはストンと地面へ。それを見てオズヴァルドは申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ごめんね、他人に説明するのって苦手で。自分でやる分にはすぐなんだけどなぁ…」
そういうと呪文を口ずさむ彼。すぐさまフワッ浮き上がった。やはりかなりの感覚派らしい。だが、さくらは少し前の時のことを思い出す。
「でも基礎魔術の授業はわかりやすかったですけど」
あれ以降も何度か受講していた彼の基礎魔術学講座。その全ては実に分かりやすく、さくらもまあまあ魔術が使えるようになったのだが…。
「あぁ。あれ基本的にリュウザキ先生や賢者様の受け売りなんだ。教員採用試験の際、お二人に教わったんだよ」
と、オズヴァルドは笑う。そういえば何度も試験に挑戦したと言っていた。竜崎達も流石に見かねて口添えをしたようだ。
「そういえばリュウザキ先生は何を?」
話のついでで思い出したのか、アイナはオズヴァルドにそう問う。
「リュウザキ先生なら今じん…コホン、砦の調査をしているよ」
「ならお手伝いしたいです!」
先程の恩返しがしたいのか、手を挙げるアイナ。するとオズヴァルドは少し考える素振り。
「うーん、今行って大丈夫かな。まあ私もお手伝いしようとしてたし、行ってみようか!」
そう悩むことなく決定したオズヴァルド。さくら達も乗じ、結局全員で戻ることに。
「きゃっほー!」
ネリーの楽し気な声を聞きながら夜空を翔けるさくら達。そんなこんなであっという間に砦近くまで。既に鎮火はしている様子だが、砦を囲み探索するように光輝く球が幾つも飛び交っている。その正体は恐らく竜崎が呼び出した精霊達。幻想的な雰囲気である。
「あれならもう大丈夫かな、リュウザキせんせーい!」
そう叫ぶとオズヴァルドは砦にいた竜崎の元に急降下。さくら達もグイッと引っ張られる。
「あれ、さくらさん達連れてきちゃったの?まあもういいけど」
少し驚いた様子の竜崎。オズヴァルドは少し声を潜め問う。
「どうでした?」
すると竜崎は残念そうに首を振った。
「何も手がかり無しだね。彼らの言葉を信じるなら、そもそもここには来てないって。全部向こうでやってたみたい。あの兵隊さんに頼んだから即座に手配してくれるとは思うけど…」
―まあ何か証拠があったとしても、お前の爆破で焼失してそうだがな―
「すみません…」
ニアロンの皮肉にシュンとなるオズヴァルド。それを竜崎は宥めた。
「まあ過ぎたことだし仕方ないさ。でも良く花束は見つけたね。おかげで重要参考人を確保できたんだ。お手柄お手柄!」
そう言われ、オズヴァルドはまた元気な表情へと戻った。
「さて。ここにはもう用はないし、また悪人が根城にするかもしれない。砦壊しちゃおうか」
伸びをする竜崎は思わぬ台詞を吐く。砦を壊すとは…?ざわつくさくら達を余所にオズヴァルドが名乗り出た。
「あ、じゃあ私にやらせてください!」
「いいけど、周囲の森に全く被害出さずに出来る?」
「はい!気をつけてやります!」
「よし、じゃあ任せた!」
簡単に許可を出し、さくら達と伸びている盗賊達を連れ砦から少し離れた地へと移動する竜崎。と、ニアロンがさくら達へ囁いた。
―オズヴァルドが天才と呼ばれる由縁、見れるぞ―
「えっ?」
既に彼の実力は垣間見たが、それ以外にも?首を傾げるさくら達にニアロンは説明をする。
―オズヴァルドの魔術の才はミルスパールに匹敵するほどだ。しっかりと修行を積みさえすれば各専門の魔術士達と同等、または凌駕するほどの潜在能力を持つ。ミルスパールはあいつをなんとか学院に引き入れようと躍起になっていた時もあるんだぞ―
「でも召喚術は疎いって」
―お、本人から聞いていたか。その通り。あいつは人に教えるのと同じように、命令を出すのもド下手なんだ。そんなことをするなら自分が突っ込んでいったほうが楽という考えの持ち主でな。そんなことができるのは、あいつが既に基礎魔術を自由自在に操れるほど極めているからでもある―
それはどういう?そう聞こうとするさくら達だったが、それを遮るかのように砦から何者かが飛び上がる。砦に残っていたのはオズヴァルドだけだったはず、となると飛び上がったのは彼ということだが…。
「あ、始まるよ」
まるで花火を見るかのように楽しそうに見守る竜崎。さくら達もそれを見上げると…
「ん…?」
空高くに明るく輝く何かが発生する。星、にしては大きい。太陽、はとうに沈んでいる。ならあれは…?睨みつけている間に、その何かはどんどん大きくなり…。
「いや何ですかあれ!?」
地上に迫りくるそれは、巨大な隕石。燃え盛り、全てを破壊し尽くさんと勢いよく落下してきている。
ゴゴゴゴゴゴ…!
空気を震わせ、夜空を明るく染めながら落ちてくるそれに恐怖を覚え、さくら達は竜崎の服を引っ張る。
「逃げないと!」
「大丈夫だよ。あれは本物の隕石じゃない。土魔術と火の魔術、それらを高い技術で組み合わせ超上空から落下させたのがあれ、『隕滅の一撃』だよ。オズヴァルド先生の特製技だ」
カッコいいなぁと唸る竜崎。だがさくら達はそれどころではない。その隕石は砦の大きさとほぼ同等。そんなものが落ちたら近くにいるさくら達も巻き込まれてしまう。
「大丈夫だよ。気をつけるって言ってたし」
いやそれでなんとかなるのか。慌てふためくさくら達を気の毒に思ったのか、ようやく竜崎は障壁を展開する。とりあえず一安心だが、とうとう目前に迫った隕石に思わず体が竦み動かなくなるさくら達。もう逃げることは出来なくなった。
そして、とうとう隕石は砦を押しつぶし…!
カッ!
耳をつんざく衝撃音、そして砦をまるまる包むように火柱が天を衝く。その勢い、かつて竜崎だ呼び出した火の高位精霊イブリートの一撃に匹敵するほどである。
「うん、火焔と衝撃のコントロールも出来ている。やっぱ凄いなオズヴァルドは」
その竜崎の言葉にさくらはハッと気づく。障壁どころか周囲の森は少し揺れる程度。隕石が落ちたにしてはあまりにも被害が少ない。はた、と思い出す。かつて学園を盗賊が襲った際、オズヴァルドは彼らが乗る機動鎧ごと炎の渦に包んだ。しかし、ボロボロに壊された機動鎧に対して乗っていた盗賊達は僅かな火傷を負ったのみ。基礎魔術を自由自在に操る―。ニアロンの言葉の意味が今わかった。
火柱が消え、周囲はすぐさま闇に包まれる。竜崎が灯してくれた灯りによって見えたのは、大岩が埋まった地面。砦の壁も、塔も、地下も、全てが押しつぶされ、砕かれ消え去っていた。
呆然とするさくら達の横に、スタンと降り立つオズヴァルド。大技を打てて気持ち良かったのか、清々しい表情をしていた。
「お見事オズヴァルド。私も自分の力だけであんな大技撃ってみたいもんだよ」
パチパチと拍手しながら友人を迎える竜崎。と、ボソリと呟いた。
「もしかしたら、術士として選ばれるべきだったのはオズヴァルドだったかもね」
「いいえリュウザキ先生、私では間違いなく無理ですよ。魔界と人界を繋ぎ、20年たった今もなお誰かのために活躍する先生はいつまで経っても私の憧れです」
その歯に衣着せぬ賛辞に竜崎は照れたのか、唐突に話題を変える。
「そういえば選んでくれたこの眼鏡、大役立ちだったよ。ちょっと顔を変えるだけで案外バレにくくなるもんだね。おかげで逮捕が進んだ進んだ」
「でしょう!役立つとおもったんですよね。前ご一緒したとき変装用具に迷っていらしてましたし!」
やっぱり褒められた犬のように喜ぶオズヴァルドであった。
0
あなたにおすすめの小説
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる