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―追悼式―
194話 来客
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悲しいかな、人の口に戸は立てられぬ。それが噂好きの子供達ならなおのこと。
「ねえねえ聞いた?追悼式の話…」
「うん…!魔王様達が戦うって…」
授業中、休み時間問わず学園内あちらこちらでモカ達が盗み聞きした話は広がってしまった。しかも当然の如く尾ひれがつきまくり、魔王が殺されるだの魔王軍が大規模な戦争を起こすだの、果てには20年前の戦争の繰り返しとまで。
流石に無視することはできず、学園長達が昼休みに正しい内容を通達し、張り紙も詳細が書かれた内容へと張り替えられた。なお、盗み聞きをした子達は見つかり次第こってりと絞られてしまった。
そんな中、さくらは竜崎の元に向かっていた。先程の「魔王が反乱軍を迎え撃つ」という件の詳細を聞きたかったのだ。モカの話が確かならば、竜崎も参加するらしい。ならば詳しいことを知っているはずである。
「お、さくらさん。さっき盗み聞きしていたでしょう?」
ようやく見つけた竜崎の開幕第一声はそれであった。悪戯っ子をメッと叱るような口調の彼にしっかり謝り、話を聞こうとするさくらだったが―。
「そうだ、この後時間ある?」
「え? はい」
「ちょっと王城に来客が来ていてね。ついでに来る?」
「え?どなたなんですか?」
―それは行ってのお楽しみだ。だが、さくらが聞きたいことに間違いなく関係はある奴だな―
はぐらかす彼らに首を捻りつつ、さくらはその提案に乗ることに。
「お疲れさまですリュウザキ様。皆様お揃いですよ」
さくら達が通されたのは王宮の応接間。うやうやしく一礼をして入る竜崎に続いてさくらも足を踏み入れると…。
「おぉリュウザキ。おやさくらちゃんも来たか」
親し気に名を呼ぶのはアリシャバージル王。そして『賢者』ミルスパールと『発明家』ソフィア。エルフの国にいる勇者を除いた『勇者一行』揃い踏みである。そんな彼らと歓談していたのは…。
「!? ま、魔王…様…!!?」
灰色の肌に端正な顔立ち、威厳とカリスマに溢れるその姿。かつて魔都の居城で謁見した、世界の半分を占める魔界を統治する王『魔王』である。しかもお供を誰一人つけていない。
そんな彼に軽く挨拶を交わし、空いている席によいしょと座る竜崎。さくらもおっかなびっくりそれに続く。
「どうださくら。この世界には慣れたか?」
「は、はい!楽しくやってます!」
突然の魔王からの問いにガチガチになるさくら。その様子を見た周囲からは笑いが漏れる。
「何故ここに…?」
「少々打ち合わせをな。それと、もしグレミリオ達が納得しなかったら説得しようと来たのだが…杞憂だったようだ。これはお忍びでの来国だ、秘密にしておいてくれ」
しー、とジェスチャーをされ、さくらは全力で頷く。先程の盗み聞きの比ではない秘匿事項である。
「で、でも…。大丈夫なんですか…?戦うって…。殺されちゃうんじゃ…」
不安気に問うさくら。すると、思わぬことが起こった。なんと竜崎達は爆笑したのだ。アリシャバージル王や魔王もご多分に漏れず。ニアロンに至っては一際大きく。
困惑するさくらに、竜崎は笑い涙を拭いながら教えてくれた。
「ここが剣と魔術の世界、そして今話している相手は魔神達にも認められた魔界を統べる『魔王』だというの忘れないでね」
そういえば、とさくらは思い出す。以前魔王の右腕であるラヴィと竜崎が闘った際、魔王自らアリーナの障壁を張っていた。となると、間違いなく魔術を扱えるということ。彼もゲームとかに出てくる魔王達のようにとてつもない実力をもっているだろう。
と、笑いを収めた魔王は微笑みながら竜崎達へ視線を送った。
「それに我には頼もしい友がいるからな」
「言うわね魔王様!」
ソフィアは楽しそうに魔王を小突く。『勇者一行』の彼らにとって、現魔王は仲良しの友達と同義のようだ。それを笑って流しながら、魔王はさくらへとある提案をする。
「丁度いい。さくらよ、追悼式に来ないか?」
「え、でも危険なんじゃ…」
「対策は既にしてある。それに、我が軍と『勇者一行』総動員だ。寧ろ安全まであるぞ?」
「絶対に危険とわかっている場所に連れて行きたくはないんだけどね…」
と竜崎は少し渋い顔。だが結局はいつもの如くさくらの意志に委ねた。そしてさくらが出した答えは…。
「行きます!」
怖いのは確か。だが竜崎を始めとする猛者達に守られるとなると安心できる。それに、自分達が端を掴んだ事件、その結末をこの目で見たくもあったのだ。
「ところで、何故さくらは反乱が起きることを知っている?リュウザキ、お前が教えたのか?」
「いやぁ。朝の教員会議を盗み聞きされていて…。生徒間で変な噂まで出てきちゃったんだよ…ごめん」
「そうだったか、可愛らしいものだ。なら、それを掻き消す戦果を挙げるだけのこと。さくらよ、見届け人の役は頼むぞ」
そう言い、魔王はさくらへと笑みを向けた。
「ねえねえ聞いた?追悼式の話…」
「うん…!魔王様達が戦うって…」
授業中、休み時間問わず学園内あちらこちらでモカ達が盗み聞きした話は広がってしまった。しかも当然の如く尾ひれがつきまくり、魔王が殺されるだの魔王軍が大規模な戦争を起こすだの、果てには20年前の戦争の繰り返しとまで。
流石に無視することはできず、学園長達が昼休みに正しい内容を通達し、張り紙も詳細が書かれた内容へと張り替えられた。なお、盗み聞きをした子達は見つかり次第こってりと絞られてしまった。
そんな中、さくらは竜崎の元に向かっていた。先程の「魔王が反乱軍を迎え撃つ」という件の詳細を聞きたかったのだ。モカの話が確かならば、竜崎も参加するらしい。ならば詳しいことを知っているはずである。
「お、さくらさん。さっき盗み聞きしていたでしょう?」
ようやく見つけた竜崎の開幕第一声はそれであった。悪戯っ子をメッと叱るような口調の彼にしっかり謝り、話を聞こうとするさくらだったが―。
「そうだ、この後時間ある?」
「え? はい」
「ちょっと王城に来客が来ていてね。ついでに来る?」
「え?どなたなんですか?」
―それは行ってのお楽しみだ。だが、さくらが聞きたいことに間違いなく関係はある奴だな―
はぐらかす彼らに首を捻りつつ、さくらはその提案に乗ることに。
「お疲れさまですリュウザキ様。皆様お揃いですよ」
さくら達が通されたのは王宮の応接間。うやうやしく一礼をして入る竜崎に続いてさくらも足を踏み入れると…。
「おぉリュウザキ。おやさくらちゃんも来たか」
親し気に名を呼ぶのはアリシャバージル王。そして『賢者』ミルスパールと『発明家』ソフィア。エルフの国にいる勇者を除いた『勇者一行』揃い踏みである。そんな彼らと歓談していたのは…。
「!? ま、魔王…様…!!?」
灰色の肌に端正な顔立ち、威厳とカリスマに溢れるその姿。かつて魔都の居城で謁見した、世界の半分を占める魔界を統治する王『魔王』である。しかもお供を誰一人つけていない。
そんな彼に軽く挨拶を交わし、空いている席によいしょと座る竜崎。さくらもおっかなびっくりそれに続く。
「どうださくら。この世界には慣れたか?」
「は、はい!楽しくやってます!」
突然の魔王からの問いにガチガチになるさくら。その様子を見た周囲からは笑いが漏れる。
「何故ここに…?」
「少々打ち合わせをな。それと、もしグレミリオ達が納得しなかったら説得しようと来たのだが…杞憂だったようだ。これはお忍びでの来国だ、秘密にしておいてくれ」
しー、とジェスチャーをされ、さくらは全力で頷く。先程の盗み聞きの比ではない秘匿事項である。
「で、でも…。大丈夫なんですか…?戦うって…。殺されちゃうんじゃ…」
不安気に問うさくら。すると、思わぬことが起こった。なんと竜崎達は爆笑したのだ。アリシャバージル王や魔王もご多分に漏れず。ニアロンに至っては一際大きく。
困惑するさくらに、竜崎は笑い涙を拭いながら教えてくれた。
「ここが剣と魔術の世界、そして今話している相手は魔神達にも認められた魔界を統べる『魔王』だというの忘れないでね」
そういえば、とさくらは思い出す。以前魔王の右腕であるラヴィと竜崎が闘った際、魔王自らアリーナの障壁を張っていた。となると、間違いなく魔術を扱えるということ。彼もゲームとかに出てくる魔王達のようにとてつもない実力をもっているだろう。
と、笑いを収めた魔王は微笑みながら竜崎達へ視線を送った。
「それに我には頼もしい友がいるからな」
「言うわね魔王様!」
ソフィアは楽しそうに魔王を小突く。『勇者一行』の彼らにとって、現魔王は仲良しの友達と同義のようだ。それを笑って流しながら、魔王はさくらへとある提案をする。
「丁度いい。さくらよ、追悼式に来ないか?」
「え、でも危険なんじゃ…」
「対策は既にしてある。それに、我が軍と『勇者一行』総動員だ。寧ろ安全まであるぞ?」
「絶対に危険とわかっている場所に連れて行きたくはないんだけどね…」
と竜崎は少し渋い顔。だが結局はいつもの如くさくらの意志に委ねた。そしてさくらが出した答えは…。
「行きます!」
怖いのは確か。だが竜崎を始めとする猛者達に守られるとなると安心できる。それに、自分達が端を掴んだ事件、その結末をこの目で見たくもあったのだ。
「ところで、何故さくらは反乱が起きることを知っている?リュウザキ、お前が教えたのか?」
「いやぁ。朝の教員会議を盗み聞きされていて…。生徒間で変な噂まで出てきちゃったんだよ…ごめん」
「そうだったか、可愛らしいものだ。なら、それを掻き消す戦果を挙げるだけのこと。さくらよ、見届け人の役は頼むぞ」
そう言い、魔王はさくらへと笑みを向けた。
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