悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん

文字の大きさ
97 / 155

第97話 招かざる客4

しおりを挟む
「ゴブ~」(今日もさわやかな朝~)

毎朝の日課のゴブリン体操と侯爵邸敷地をジョギング1周すれば体調も気分も絶好調
今日は馬屋の裏でお花摘みをしてしまったゴブ
最近はキラキラした草や花がわたしの腰上まで生い茂っているのでしゃがめば隠れるのでそんなに恥ずかしくないのだ

馬小屋のお馬さん達とも仲良くなって最近はあいさつしてくれるようになった
こちらもあいさつと回復、浄化のお礼を毎日かかさず行っている
おかげでお馬さんたちも健康でケガもせず毎日の訓練をこなしているようだ
まだ成長期らしく何か体格が前よりも1.2倍くらいになっているゴブ
みんな成長してうらやましいゴブ、わたしはちっとも大きくなれてないぞ

今日は王都からお館様と若様(アイラ様のおじい様とお父様)が帰ってこられるので奥方様は朝から上機嫌だ
屋敷内も心なしか慌ただしいような気がする
まぁゴブリンであるわたしにはほぼ関係ない話ですけどね
お休みの女神の日は最近毎週ライアンと貧民街・・じゃなかった南第2区にお出かけしているのだ、今日も行ってくるゴブ

コスタリア侯爵家が正式に領都の一部と認めたことで今日は一段と人が多いな
以前はみすぼらしい恰好をした子供たちや冒険者くずれの昼間から酒を大通りで飲んでいるような奴らばかりだったけど今は普段着の町人たちが温泉に入ったり食事をしたりしてここが元貧民街とは言われなければ気づかれないだろう

「ライアン様~、今日は聖女様と一緒じゃないんですかい~」
「ゴブリン様~今日も帰りに肉串を持って帰ってくだせぇ」

うん、活気があって非常に良いゴブ
ゴブリン差別も無いし本当に住みやすい町になったよな

教会にはまだ順番待ちの列が少し残っているが前よりは大分ましになったな
そして隣の聖水公衆浴場の方はすごい列が出来てしまっている

「ゴブ~」(今日が女神の日で本当は前日に入らなきゃいけないのに混んでるゴブ)
「あ~、もう女神の日とか関係なく癒しの温泉に一度でも入りたくて押し寄せてきてるっスね~、大変だこりゃ」

癒しと浄化の温泉の噂は領都中に広がっているようだゴブ
少し見上げると高台の丘の上にも湯気が上がっている、高い壁で囲われているが向こうは露天風呂になっているのかな
そしてでかでかと王家とコスタリア家の紋章が描かれているようだ、紋章知らんけど
コスタリア家の紋章は知っているのでその横に漢字の田のような4色のカラフルな紋章が王家の印ってことだな

「っスよ~、デン・セントラル王家の紋章は初代建国の勇者パーティの4人を表しているっス、正方形4つは永遠に続く安定を意味しているとか、なんとか・・・っス」

さすが公爵家の端くれのライアンは歴史にも詳しいですな~
まぁわたしはゴブリンなんでこの国の歴史とか貴族の紋章など関係ありません
向こうはさすがに元貧民街からではなく南区の大通りから入るようだ
温泉施設自体は南第2区にあるようだが休憩所は南区ってことか
ドノバンと南区の商業ギルドのお偉いさん達が色々協定を結んだとか言っていたな
面倒な上流客の相手は商人ギルドに任せて入浴料だけ高額で貸し出すとか
うまくやっているようでなによりゴブ

「ちゅ、ちゅちゅ~!」

んん?テトの従魔の白ネズミたちが呼んでいるゴブ
緊急事態発生のようだ

「ゴブ!」
「っス!分かっているっス。教会本部にすぐに向かうっス」

3匹同時に呼びにくるのは緊急度Aのサイン。聖水発生の施設が破壊工作されたか、シスターが拉致されたか、それとも・・・
とにかく急ぐゴブ!

「ゴブ」(聖魔法[強化][回復(持続)])

一応ライアンには聖魔法を付与しておく、いきなり戦闘もあり得るからな

「おおっライアン様、丁度良いところに。我々では対応しきれない事態なのです、どうぞこちら、聖水発生設備の地下室にお願いします」

どうやら侵入者があったらしい、幾重もの警備と結界を抜くとは中々の手練れだな
厄介な組織が絡んでなければいいけど

地下室に入るとまだ賊は中にいるようだ、何やらぎゃーぎゃー聞こえる

「ちょっとぉ!この玉、手から離れないんですけどーけっこう重いし!」
「お嬢様、まずいですって。もう人が来ちゃってます、早くそれをあきらめて捨てて逃げましょうって」
「だから~捨てられないから困ってるんじゃないのよ~」

地下室の中には若い女性が二人
スラリとした細身に金髪でものすごく整った人形のような顔立ちに薄緑の民族衣装
そして長い耳・・・
間違いなくエルフさんですね
この世界にもエルフはいるのかな~と思っていたがそのまんまのイメージ過ぎて逆に笑ってしまったゴブ

でもライアンと会計士さんは結構真剣な表情をしていて深刻な事態のようだ
エルフと人間族は対立しているのだろうか?
犯罪者を捕まえても国際問題になるから大げさに出来ないとかそういう感じ?

とりあえず宝珠(ガラス玉)に掛かっている結界魔法を解いてあげるゴブ

「ゴブ」(結界解除ゴブ)

背が小さいほうのエルフさんが両手で抱えていた玉がスルっと手から外れ床に落ちた

がしゃーーん

けっこう大きな音がなって玉が割れてしまった

「どひぃぃ!・・・宝珠、宝珠を落として割っちゃった!これじゃ里のみんなに怒られるぅ~世界樹の復活が~私の次期村長の座が~」
「お、お嬢様、それどころじゃないですよ!後ろ、後ろ」

小さい方のエルフが振り返ってこちらと目が合う

「・・・・」

5秒ぐらいは見つめあっただろうか

「初めてお目通りいたします、私、シャルナリリア大森林共同体はエルフ族七大氏族の族長が娘リリテララムと申します、こちらは従者のシャルルレリアです。みなさまごきげん麗しく」

「あ、はい。これはご丁寧にどうも」

「それでは私たちはこれにて失礼いたします」

エルフさん2人はすました顔で何事も無かったかのように部屋から出ようとしている
ライアンも会計士さんもあまりに自然な流れに思考が追い付かないようだ

「ゴブー!」(そんな訳あるかー!侵入者、器物損壊ゴブー!)

「うわぁ!やっぱりダメだった~、許して~これには深い訳が~」

確保!、確保ゴブ~
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

処理中です...