悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん

文字の大きさ
55 / 155

第55話 お嬢様誘拐事件3

しおりを挟む
今度は表通りから少し奥に入った場所にあるそこそこ大きな屋敷だった。

「ここっすか?今度は間違いないっすよね」

「ゴブゴブ」(反抗的で邪悪な気配が集まっているゴブ)

ばんっ、と勢いよく扉を開けて中に入る。

「お嬢様を返してもらうっす!ここにいるのは分かっているっすよ!」

何かさっきよりも陰気な奴らが一斉にこちらを振り向いた。

「くくく、えらく威勢がいいのが乗り込んできたな」
「ここが闇魔法ギルドと分かって来てるのかねぇ」
「新しい実験を試してみたいと思っていたところだよ、活きのいいのがきたねぇ」

次々と薬瓶や袋が投げつけられる。
足元から草の蔓っぽいのが伸びて拘束してきた。

「さぁてどこのバカだか知らないがここに来たのが運のつき・・ぐべぁ!」

ひょこひょこと近づいてきたフードを被った男をライアンが切り飛ばす。

「な、なんだてめぇ。まだ動けるのか!」
「おれの拘束魔法が効いていない!」
「おれの睡眠魔法も無効化されているぞ!」

驚き狼狽している7,8人を一瞬で切り刻んでおとなしくさせた。
毒も麻痺もすぐに浄化して無効にしているゴブ。
拘束魔法や精神魔法も結界で完全に防いでいるし死角はないゴブ。

こいつらぺらぺらとよく喋るわりに一撃で気を失っているゴブな。
体格もよくないし魔法使い系のチンピラってところか。

「お嬢様を早く連れてくるっす」

「げぶぶ、だからさっきから何なんだよぉぉ、お嬢様ってのは!」

インテリ系チンピラさんたちの中で一番服装が上等そうな男を捕まえて尋問を始めた
質問の前に剣をぶっ刺すのはよくないことだと思うゴブ。
まるで奇跡のつるぎが拷問用に製作したみたいになっているゴブ。

特に有用な情報を得られないまま1階の男たちは気絶してしまった。

「しょうがない、2階に行けばボスがいるっすか。そこでまた聞くしかないっす」

2階に上がり廊下をずんずんと歩いていく。結構奥に細長い感じですね。
さっきからまた同じように魔法やら毒の霧やらがまわりから掛けられているがとりあえず無視ゴブ。
一番奥に装飾が豪華な扉が見えた。
なんかさっきと同じゴブな。
チンピラなりに格の違いをまわりにアピールしているのかゴブ。

少し身なりのいい若い奴がわたしたちより先に走っていって扉を開けている。

「ボス!大変です!魔法もクスリも効かねえヤバい奴が乗り込んできて・・・ってあれぇ?ボスがいない?転送陣が光っているし・・・うわっ爆弾がセットされてる!」

チッチッチッ・・・ドドンッ。

どうやら扉を開けるとすぐに爆発する爆弾が仕掛けられていたようだ。
転送陣がどうのとか言っていたからボスはもう逃げてしまったようゴブ。
さすがインテリ系チンピラ、危険を察知して勝てないと分かると逃げ足も早いな。
部下をあっさり捨てていくとはなかなかやる奴ゴブ。

「え~っと・・・降参します。すみませんでした。僕たちで出来ることがあれば全面的に協力しますのでこれ以上うちを荒らさないでください」

気絶から回復した奴らもボスに逃げられたことが分かって急に従順になったゴブ。
分かるよその気持ち。信頼していた上司に裏切られ自分で責任を取らされるハメになった哀れなサラリーマンは会社への忠誠心はゼロになってしまうものゴブ。

「ここも違ったっす。ああ、別に探し人がいなければそれでいいっすよ。特に個人的なうらみとか無いっすから。他に人攫いしそうな組織とかあるっすかね」

「あ~、うちは魔法と薬を生業としていますが・・・あと大きな組織としては娼館を仕切っているドノバン一家と賭博関係を仕切っているサイモン一家ぐらいですね」

最初に行った派手な建物にはドノバンと看板が上がっていたような気がするゴブ。

「ドノバン一家はもう行ってきたから次はサイモン一家の場所を教えてほしいっす」

「ええっ、貧民街最大のドノバン一家を潰してきたんですか!さっ、さすがゴブリン騎士の兄貴ですね~。いや~うちが瞬殺されるはずですよ~。へへへ」

何か妙な称号を付けているゴブ。
騎士がゴブリンを装備しているのではなくて、ゴブリンが騎士に騎乗しているのに。
例えるならゴブリンライダー(騎士)とでも呼んでほしいところだゴブ。

~~~~
「朝早くから邪魔するっす。うちのお嬢様がいたら返してほしいっす」

貧民街のほぼ中心にあったサイモン一家のアジト兼賭博場に乗り込んだ。
夜に開催される賭博が稼ぎの中心のため、人影が少ないな。

「ああん?小僧、朝から物騒なもん振り回して人探しだとぉ?ここは領主様の威光も届かねぇ違法賭博場だ、遊びたかったら鎧を脱いで現金をたんまり持ってきな」

「やっぱ何か知ってそうな人は2階っすよね~」

ライアンもかちこみ3回目ともなると慣れてきたのか、1階でたむろしているザコや中間管理職レベルからはたいした情報を得られないことを勉強したようだな。
さっきからかっこつけているおっさんを無視して階段のほうへ歩きだす。

「おいコラ、てめぇ無視してんじゃねぇ。そっちは関係者以外・・・ぶふぇ!」

階段を上がろうとしたライアンの肩をつかもうとしたおっさんを振り向きざまに頭から縦に両断した。
もちろんヒールが掛かるので切ったところから繋がって回復しているが、切られたおっさんはショックで口から泡をふいて気絶してしまった。

「うわぁぁ!タマキンさん、大丈夫ですか!何しやがる!てめぇ」

何か後ろから怒号が浴びせられモノが投げつけられてきているが無視ゴブ。
かっこつけていたおっさんの名前はタマキンっていうのか・・・。
まあ、そのへんはどうでもいいゴブ、お嬢様を探すゴブ。

「てめぇ、さっきから俺らを無視してんじゃねぇ!ぐはっ」
「やりやがったな!生きてここから・・げぶっ」

どこの組織も自分の力量を知らず突っ込んでくるバカはいるもんだゴブ。
こちらは聖魔法レベル7の身体強化に結界、浄化で武装しているから下町のチンピラごときではキズひとつ負わないゴブ。

向かってきたザコたちを切り飛ばしながらボス部屋へ向かう。
一番奥にある装飾された扉があるのがボス部屋だ、もう定番すぎて飽きてきたゴブ。
ライアンの奴も同じパターンばかりで面倒くさくなってきてるな。

「ちょっとお邪魔するっす」

部屋の中には太ったおっさんと神経質そうな眼鏡をかけた若者が声もださずに座ってこちらを見ている。

「お嬢様はいないっすね。奥の金庫室も調べさせてもらうっす」

2人の横を通り過ぎて金属でできた金庫室の扉を剣で切り開く。
ごとん。と重たい音を出して扉が倒れた。

「う~ん。中には金貨ばかりでお嬢様がいるようには見えないっす。やっぱりここでもなかったようっすね。邪魔したっす。うちらはもう帰るっす」

「お、おう。気を付けてな・・・」

幹部っぽい2人は椅子に座って硬直したままわたしたちを見送った。
さんざん邪魔してきた奴らも帰りは大人しくわたしたちを見守るだけだった。

はぁ~。ここも違ったゴブ。
もうこの町で悪意が集まっているところは無さそうゴブ。

「朝からアジトを3つ潰してちょっと疲れたっす」
「ゴブ~」(こっちも聖魔法を掛け続けてピリピリするから休みたいゴブ)

とりあえずここに来るときにあった教会にでも寄って一旦休憩ゴブ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

【モブ魂】~ゲームの下っ端ザコキャラに転生したオレ、知識チートで無双したらハーレムできました~なお、妹は激怒している模様

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
よくゲームとかで敵を回復するうざい敵キャラっているだろ? ――――それ、オレなんだわ……。 昔流行ったゲーム『魔剣伝説』の中で、悪事を働く辺境伯の息子……の取り巻きの一人に転生してしまったオレ。 そんなオレには、病に侵された双子の妹がいた。 妹を死なせないために、オレがとった秘策とは――――。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

最強剣士が転生した世界は魔法しかない異世界でした! ~基礎魔法しか使えませんが魔法剣で成り上がります~

渡琉兎
ファンタジー
政権争いに巻き込まれた騎士団長で天才剣士のアルベルト・マリノワーナ。 彼はどこにも属していなかったが、敵に回ると厄介だという理由だけで毒を盛られて殺されてしまった。 剣の道を極める──志半ばで死んでしまったアルベルトを不憫に思った女神は、アルベルトの望む能力をそのままに転生する権利を与えた。 アルベルトが望んだ能力はもちろん、剣術の能力。 転生した先で剣の道を極めることを心に誓ったアルベルトだったが──転生先は魔法が発展した、魔法師だらけの異世界だった! 剣術が廃れた世界で、剣術で最強を目指すアルベルト──改め、アル・ノワールの成り上がり物語。 ※アルファポリス、カクヨム、小説家になろうにて同時掲載しています。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...