悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
77 / 173
3*

24

しおりを挟む
愛が突き飛ばしてから、ネヴィが僕の目の前から姿を消した。
幼少期時にあったあの出来事と同じ状況に、僕の手が震え始めた。

ネヴィが居なくなった恐怖を思い出してしまった。

「ネヴィレント!」

叫んでネヴィの名前を呼んだけど、この場にいない人の返事はない。
愛の所にまで駆け寄るけどそこにネヴィの姿が居ない。

心臓がバクバクしている。
僕の、僕のネヴィが…ここに居ない。

「痛かったよ~」

愛の泣き声が聞こえるけど、もうそれどころではない。
ネヴィが一人でいるのは危険なんだ。

今だにハイエルフにも狙われているのに、一人になってしまったらどうなるかわからない。

「ザインハルト様~」

ネヴィが居ない、その恐怖に意識を失いそうになるけど、ぐっと堪えてレラッサ先生の所に向かった。
僕の叫び声に気がついていたレラッサ先生が止まって待っていてくれている。

「ザインハルト、ネヴィレントに何があった」

「愛が…ネヴィを突き飛ばしたら、ネヴィが、目の前から…、目の前から消えたんですっ!僕の、僕のネヴィレント…」

視界が定まらない。

「落ち着け。詳細を確認したいから、ネヴィレントが消えた所に案内しろ」

そうだ。
ネヴィを助けるために僕が動かなければならない。

レラッサ先生を連れて、未だに倒れている愛の元まで連れていった。

「ザインハルト様~、足が痛いので起こしてください~」

起こす気力すら出ない。

「坂蔵さっさと立て、邪魔だ」

その一言でやっと立ち上がって、ゼーリア第三王子殿下の所に駆け寄っている姿を見送って地面を見た。
地面には魔法の痕跡が残っていて、愛がネヴィに危害を加えた事が分かった。

「はー、教会に抗議文を送らねばだな。精霊池の守り手を敵に回す事になる事を言わねばな」

僕の見立ては間違ってなかった。
愛に詰め寄りたいけど、ここで詰めたって解決しない。

ネヴィが見つかってから全てを聞こう。

「気まずいだろうが、ザインハルトお前からツェーリア伯爵家に連絡をするように」

「分かりました。すぐに連絡をします」

僕の家に伝わる少し特殊な魔法で鳥を創り、その鳥に今あった出来事を吹き込んでツェーリア伯爵家に行くように吹き込んでから飛ばした。
これで直ぐにツェーリア伯爵家に届く。

助ける事ができなかった僕にも追って沙汰が下されるだろう。
それ自体は甘んじて受け入れる。

「連絡しました。数分もしない内に学院に来られると考えられますので、早めに学院に戻りましょう」

「そうだな、早めに戻ろう。坂蔵」

レラッサ先生の呼び掛けに愛は一切反応しない。
ゼーリア第三王子殿下に隠れて、反応する感じがない。

「坂蔵がその態度であるなら、私はツェーリア伯爵家にお前の処分を全て任せるからな」

それでも愛は反応しなくて、レラッサ先生が大きなため息をついた。
ツェーリア伯爵と何回かお会いした事もあるが、ネヴィがいる時と居ない時では纏う空気の質が変わる人だ。

一対一で初めてお会いした時には、子供ながらに恐ろしい人の印象を持った。
そんな人に会うのに先生が間に入る事なく、愛が話合うなんて到底難しい。

どうにもできない事を考えるのも意味を持たないので、学院に戻る為に気を逸らせながら戻った。
森を抜ける直前に魔法の鳥が僕の元に戻ってきて、ツェーリア伯爵の怒りが滲んだ音声が流れてきた。

僕自身この声は僕が起こした過ちより、かなり強い口調だった。
これは愛がどうなるか分からないな。

気が重くなる中、学院まで早足で向かった。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。

竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。 男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。 家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。 前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。 前世の記憶チートで優秀なことも。 だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。 愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。

【8話完結】勇者の「便利な恋人」を辞めます。~世界を救うより、自分の幸せを守ることにしました~

キノア9g
BL
「君は便利だ」と笑った勇者を捨てたら、彼は全てを失い、私は伝説の魔導師へ。 あらすじ 勇者パーティーの万能魔術師・エリアスには、秘密があった。 それは、勇者ガウルの恋人でありながら、家事・雑用・魔力供給係として「便利な道具」のように扱われていること。 「お前は後ろで魔法撃ってるだけで楽だよな」 「俺のコンディション管理がお前の役目だろ?」 無神経な言葉と、徹夜で装備を直し自らの生命力を削って結界を維持する日々に疲れ果てたエリアスは、ある日ついに愛想を尽かして書き置きを残す。 『辞めます』 エリアスが去った翌日から、勇者パーティーは地獄に落ちた。 不味い飯、腐るアイテム、機能しない防御。 一方、エリアスは隣国の公爵に見初められ、国宝級の魔導師として華麗に転身し、正当な評価と敬意を与えられていた。 これは、自分の価値に気づいた受けが幸せになり、全てを失った攻めがプライドも聖剣も捨てて「狂犬」のような執着を見せるまでの、再構築の物語。 【勇者×魔導師/クズ勇者の転落劇】 ※攻めへのざまぁ要素(曇らせ)がメインの作品です。 ※糖度低め/精神的充足度高め ※最後の最後に、攻めは受けの忠実な「番犬」になります。 全8話。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

虐げられた令息の第二の人生はスローライフ

りまり
BL
 僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。  僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。  だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。  救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。  お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。        

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...