それぞれの空~another story~

藤原葉月

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第34話

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そして、東さんの決意もまだ、知らない彼女達は・・・・

🎵🎶🎵🎵🎵🎵🎵🎶🎵🎵🎵

「あっ!ピアノの音がする」
「《えっ?》」

凛子さんは、手話をしなかったから何を言ったかわからずにいる榊さん。
「《大地君、帰ってきてるんだね。》」
《・・・・・彼、ピアノ弾きますからね》
「《そうなの?ピアノ弾けるんだ・・・・》」
それは、凛子さんの知らない東さんの一面だった。

「《・・・でも・・・・。なんだか、切ない曲だね・・・なんとなく音が・・・・》」
《切ない?・・・分かるんですか?》

2人でお出かけでもしていたのだろうか。
「・・・・誰かを思って弾くと、切なくなるって・・・・よくドラマとかで言ってない?」
《・・・・・・・》

「《誰かを一途に思ってる・・・・・》」


だけど、その思いは届かない・・・・・

「《でも、このピアノの音は、もっと切なくて悲しい・・・・って、ただの私の予想だよ?音楽のことはよくわからないけど・・・そんな気がするだけ》」
《・・・・・・・》

⇳「・・・・・・・・」

僕は黙って弾いていた。
と、そこへ
「大地くん、ただいまー」
「あっ、お、おかえりなさい・・・・」

ちょっとびっくりしている。
集中しすぎたかな。

「大地君、ピアノ弾けるんだね!凄い」

「別に凄くないよ?視力戻ってからはずっと弾いてなかったから久しぶりに弾きたくなって。でも、指動かなくて」
「そう?すごく素敵な曲だったよ!愛が詰まった曲!!」
「そうかなー」
「えー?まさか、大地君が作ったの?」
「まさかー(笑)」
「じゃあさ、その曲は写真の彼女に捧げる曲とか?」
「えっΣ(゚д゚;)」
ピアノの上には写真があり・・・


「・・・・違うよ・・・」

「えっ?」
いま、すごく悲しそうな顔をした。

「彼女はもう、この世に居ないから・・・でも、僕の初めての彼女・・・・」
「・・・・・」
「視力が良くなった日に彼女と出会った。けど、彼女は目が見えなくなる病に侵されていた。」
「・・・・・・」
僕はいつの間にか明菜のことを、凛子ちゃんに話していた。

「実は彼女とは、日本でも会ってたみたいで・・・。彼女は踊る僕を描き続けてくれていたらしい。」
それがわかったのは、彼女が最後に書いていたという絵を見たからだ。

「・・・それで・・・」
東さんが説明している時に、凛子さんはなぜだか泣き始めた。
「えっ?ちょっと待って!な、なんで凛子ちゃんが泣いてるの?」
「さっきの曲は、彼女が亡くなったから弾いていたの?」
「えっ?」
それは・・・・

「ううん、彼女が亡くなったのはもう半年以上前だから・・・・」
僕が、考えていたのは・・・・

「えっ・・・そうなんだ」
「そんなに悲しい音に聞こえた?」
「うん。ピアノのことはよくわからないけど・・・なんかそんな気がしたの。じゃあ、もしかして他に好きな人が出来て、その人のことを考えていたからとか?」
「!!」
な、なんで?
「あっ!当たりだ!いま、好きな人のこと考えていたからだ」
「いまは・・・・・」
「いまは?」
と、近づく凛子さん。
「な、内緒だよ・・・💦それより、夕飯できてますよ?」
と、凛子ちゃんからはなれた。
ダメだ。近づいたら、ドキドキしてるのバレるから。

「・・・・・・」
「ほら、今日は2人の好きなハンバーグ作りました。これは、自信作なんです」
「美味しそうですね。ありがとう、東さん。
いただきますね」
と、榊さん。

「本当だ!美味しそう!いただきます」
2人は、早速食べてくれた。


だけど、東さんの秘めた思いを、2人はしばらく知らずにいた。


そして
「えっ?部屋を譲って欲しい?」
「・・・・はい。ダメ・・・ですか?」
東さんは、莉佐さん達に頼んでいたのだ。
近いうちにどちらかの部屋を引き払うなら、自分に譲ってほしいと・・・・。


-「なぁ?東さん、やっぱりなんかあった?」
「・・・・・・」
「やっぱり、2人の邪魔になるから・・・・」
(でも、これは嘘だ。これ以上2人のそばにいたら・・・。心が壊れてしまいそうだから・・・・)

「・・・・・」

《凛子?どうかしましたか?》

凛子さんが、東さんの電話を少し聞いてしまったようで?

「ううん、なんでもないよ?・・・大地くん寝ちゃったみたいだね。」
と、誤魔化していた。

《・・・そうですか。明日早いですしね。》
「《そうだったね!》」
《おやすみ、凛子》

「《うん、おやすみ》」

それぞれ、思いを募らせてゆく・・・・。

そして次の日の朝早く・・・、榊さんはいつも通りある場所にいた。

《・・・・・・・》

「・・・・裕・・・」

そこに、なぜか凛子さんが現れた。

榊さんは、どうやらこの場所であることをするのが日課となっていた。

🎵🎶🎵🎶🎶🎶🎶🎶🎵🎶🎻
この場所で、バイオリンを、奏でることだった。


「(こんな朝早くから・・・・)」

凛子さんは、榊さんが毎朝どこかに行くのをしっていたようで?

今日こそはとついてきたみたいだ。かれはまだ、気づいていない。
そして、いつも奏でたあとすぐ帰るのだが・・・今日はようすがちがった。
驚かせようと声を掛けようとしたその時だった!
「ゆ-・・」

《父さん、母さん・・・・》
「・・・・!」
かれは、急に手話で会話をし始めたのだ。

誰かに話しかけるように。

《父さん、母さん。僕は、あなた達が亡くなった年齢と同じ歳になりました》


(裕のご両親って確か・・・・)

凛子さんは、その会話を静かに聞いていた。


《僕は、いまこうして生きています。素晴らしい仲間に恵まれて・・・・》

「・・・・・」
《けれど、僕にはまだ家族はいません》
「・・・・・」

《僕は今、ある女性を愛してます》
「・・・・」
それって・・・・

《今でも、愛してます》
「えっ・・・・」
いま、自分のことだと思ったのに、彼の手話は・・・・

《忘れようとしても、忘れられないんです・・・・・・》

明らかに自分のことではない。


《どんなに冷たくされても・・・嫌われていたとしても・・・・》

「・・・・・・」
《僕の中から、その人は消えてくれないのです・・・・》

「・・・・・」
その手話を見た凛子さんは、いたたまれなくなりその場を去ってしまった。
榊さんが思っているのは、自分でないと思い込んだからだ。

「裕が好きなのは・・・"愛しているのは今でも・・・"」

だが、
《でも・・・・》
榊さんの手話にはまだ続きがあった。


凛子さんは、最後までその手話を見なかったのだ。


《僕は、忘れる決意が出来ました。
新しい出会いをしたからです》



・・・・・そして・・意気消沈のまま、部屋に戻ると・・・

「おはよう!あれ?凛子ちゃん・・・榊さんは?」

「・・・・」
なぜだか泣き顔の凛子さん。
「凛子ちゃん?どうしたの?なんかあった?」
「・・・・・裕の声は、あの人に届かない。私の想いも、裕に届かない・・・・」
「えっ?凛子ちゃん・・・?」

「わかってるの。裕が今でも暁美さんが好きだって・・・分かってるんだけど・・・
ねぇ?大地君・・・わたし、どうすればいいかな?」
何故か泣き出す凛子ちゃん。

けれど、東さんは理由は何も聞かず優しく凛子さんの手を取り・・・

「凛子ちゃん、今日は何も考えないでいこうよ」
「大地君・・・・」

「今日は・・・。今日だけは僕がエスコートするから」
「エスコート・・・・」
「そう、ダンス大会のエスコート役は僕がするから安心して」
「えっ?大地君が?いいの?他にも誘われてるんじゃ」
「知ってる人の方がいいでしょ?」
と、ウィンク。
「・・・・・」
「それにね、ちょうど休みだし、息抜きしたかったんだ。言ったでしょう?僕がエスコートした方が凛子ちゃん、きっと楽しめるはずだから

と、にっこり。
「やだ、あたしってば朝からこんなこと。大地くんに甘えてばかりいるよね・・・」
「そんなことないよ?もうすぐ榊さん戻ってくるでしょう?朝ごはんできてるよ」

何も聞かないでおこうと思った。
なんとなくわかってしまったから。

そして、食卓にみんなそろうと・・・

《2人とも、今日は行けなくてごめんなさい。凛子、ごめんなさい。東さんもせっかくの休みなのにすみません》


「なんで謝るんですか?僕は構わないですよ。休みなんですから。榊さんこそ、気をつけて行ってきてくださいね」
《たぶん、1週間はかかると思います》

「教室はいいの?そんなに空けて・・・」
《優子さん夫婦が見てくれることになりました。これからも、交代でやってくれるそうです》
「《そう、それは良かった。じゃあ、気をつけて行ってらっしゃい》」
と、榊さんを見送った僕と凛子ちゃん。

そして、
「僕たちも行こうか」
「うん」


そして、会場に着くと・・・・

「いらっしゃい。東さん、凛子さん。お待ちしてました」
「あっ!【ひまわりの詩】をやってる方ですね?」
「知っていてくれたんですね。それは光栄だ。ありがとうございます。はい、春日部正也って言います。よろしくね」
「はい!今日は、よろしくお願いします」
と、頭を下げる凛子ちゃん。

「こちらこそ、楽しんでいってね」

そして、凛子ちゃんは知り合いがいたようでそっちに行った。

で、僕は・・・・・
「ねぇ?東さん、まって」
「えっ?」
凛子ちゃんの所へ行こうとした僕を呼び止めた。

「今日は、凛子さんと2人きりで参加なんだよね?」
「えっ?えーっと、まぁそうなるけど・-・」

「よかったじゃん!彼女のこと、好きなんでしょ?気持ち伝えるチャンスなんじゃないの?」
「ま、正也さん!それは・・・・しー!」
「いいの?このままで・・・・」



「久しぶりー」
「久しぶりだね」

笑い合う凛子ちゃんを僕は見つめて・・・

「いいんです。彼女には幸せになってもらいたいし・・・・」

「そっか。なんだか切ないな。俺は、東さんの味方したいのに。」
「・・・・・」
「一樹に聞いたよ。榊さんちを出ようとしてるって。それ、本気なの?」
「・・・うん、本気だよ?近いうちに探すつもりありがとう、正也さん。心配してくれて」

「まぁ、今日はせっかく二人で来たわけだし、楽しんでいってよ」
と、背中をポンとされた。
「うん、ありがとう」


僕は、正也さんのその気持ちが嬉しかった。

だけど、僕は・・・・・

この思いを封印するんだ。

そう、決めたんだ。
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