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異世界召喚されたった

027、エネル。

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買い出しを終えて城に入ったらすぐに、姫様登場。
「ごきげんよう、リンスラン様、聖女様。ちょうど良かったですわ。私もこちらに来たばかりですの」
「聖女様かぁ……」
俺が嫌そうに呟いた小さな声を聞き取った姫様は、チラリと俺を見ると、すぐにリンに目線を移した。
「あらっそうですの。リンスラン様、そのお眼鏡はお取りになった方がよろしいと思いますわよ。せっかくの麗しいお顔が隠れてしまいますわ。して、リンスラン様は聖女様をどのように呼んでいらっしゃるの?」  
「……タチバナ様と」
眼鏡のとこは完全スルーと、出てきたいつもとは違う呼び名に、リンを見たがこちらの視線もスルーされた。
「でしたら、タチバナ様と。では、本日こそはエネルを受け取って頂きたいですわ、さあ、お手をお貸し下さるかしら」
「ここで?」
ここは、城の玄関近くの廊下。
この姫様は、場所とかあまり気になることではないのかもしれないが、俺は違う。
「ニアニクラ様、場所を移しましょう」
「あら、そうでしたわね。昨日、アンゼルフ様にも言われていたのについ。申し訳ありません。どこかお部屋はあるかしら?」
「セミエール様に伺ってみないと分かりませんので、セミエール様のもとへ行きましょう」

異色の組み合わせで城の廊下を歩く。
姫様はリンに色々と話しかけ、リンはそれに相づちを打つ感じで、俺は二人の後ろを一人歩く。
今日のドレスは薄いピンクのヒラヒラ系。
昨日よりもヒラヒラが多くて豪華さが増したように見えるが、長いウェーブヘアはきっちりとお団子に結わえているからか、昨日よりはお転婆感は薄れているように感じた。
イケメン高身長のリンが手を取り、プリンセスと歩く様はまさにザ・プリンス。
ねずみがシンボル会社のお姫様が出る映画のワンシーンのようだ。
リンは乗り気じゃないかもしれないが、この二人はお似合いだと思う。
この自己中気味な姫様が国王になったのなら、ジヒル国?だったか、ここの隣国は心配だが、そこをしっかり者のリンが支えたら、安心出来るとかも思ってみたり。
もしかしたら、それも込みでリンを国王にと押されているのかもしれない。
リンが政治に強いかは分からないが、まあ、精霊さんがなんとかしてくれるのだろう。

リフの間に着き、リンがノックし、名前を告げるとセミがドアを開けてくれた。
先に二人の顔を見て、次に俺の顔を見る。
「何か、ご用でしょうか?」
「私のエネルをタチバナ様にお譲りしたいのです。どこかお部屋を貸して頂きたくて、ご存じかしら」
「でしたら昨日の部屋が良いかと、ご案内致しましょう」
無言のセミの後を付き、昨日の部屋に行く。
目的の部屋に着き、何か言いたげなセミだが、何も聞かず、部屋を出ようとしたので、なぜか引き止めた。
「そうですか。ニアニクラ様、私もここにいても宜しいでしょうか?」
「ええ、構いませんわ。では、タチバナ様お手をお貸しくださいますか?」
俺の前まで来て、膝を突き手を差し出す姫様に、思わずセミを見るが、セミが頷いたので、おずおずと手を取った。
「我がエネルをタチバナ様に、巡礼でのお力になりますよう」
じんわりと手が温かくなっただけで、何も変わった気配はなかったが、その時、姫様の頬に涙が伝った。
「なっ、なんで泣く?」
「私のエネルを送ろうとしましたが、一欠片も送れませんでしたわ。私の願望が入ったエネルなど入る余地などないようですわ」
「どういうこと?」
セミを見るが、首を振って分からないと示し、少し考えてから姫様に伺いをたてた。
「ニアニクラ様、少し宜しいですか?……タチバナ様、お手を」
姫様が立ち上がり、今度はその場にセミが膝を突き、手を差し出すので、訳もわからず取ってみた。
これもじんわりと手が温かくなるだけ。
「リンスラン様、替わって頂けますか?」
すぐに立ち上がり、今度はリンが膝を突き、手を差し出す。
今度はじんわりと手から、温かな何かが流れ込んでくる感覚。
「おっすごっ」
「えっ?」
疑問符のリンの声に、リンを見ると不思議そうにこちらを見ている。
「どうした?」
「エネルを送ろうとしたんだが、こちらにも流れ込んで来た」
「俺は何かが来たぞ、送ったとか分からないけど」
「聖女と勇聖者は、ここでも特別枠のようですね」
セミがそう言ってしまえば、そうなのだろうと納得するしかない。
姫様は残念そうにしていたが、すぐに気を取り直した。
「……でしたらタチバナ様、言葉だけでも受け取って頂けますか」
キリッとした表情をされて、コクりと頷いた。

姫様と別れ、三人でリフの間に戻るとアンが中で待っていた。
「おおっコウタ、終わったかな?」
何かがあったのかは知ってる様子だが、詳細は知らないので教えてみた。
「ほう、姫様やセミのエネルは送られず、お主らだと送り合うとな、なんとも不可解。じゃが、今までは誰も研究もしてこなかったから仕方がないだろう」
「アンは研究するん?」
「お主らが全て話してくれたなら、この頭で記録し研究しようと思っておる、紙には残せんのでな」
「全て?それはー……でも話していいと前は言ったけどさー」
「300年後にはまた誰かが108もの聖地を巡礼せねばならん、それを未来永劫じゃ。このたった二人に委ねるしかない状況をどうにかならんものかと思ってな」
聖地の中でヤることは二人とも知っているが、全てを話すとなるとさすがに羞恥心が出る。
聖女仕様のこの体のことは、まだ話してはいない。
「アンゼルフ様は、この巡礼を失したいと思っておられるのですか?」
「できる事ならな。その方法を、糸口を持っているのは二人だけじゃ。模索するためにも教えてもらわねば、何も考えられぬのよ」
そんなことを言われたら、話さないわけがなくなってしまう。
恥ずかしさもありながら、リンと二人で聖地でのこと、それ以外のも、全て話した。
「疲れない体とは、それのことも入っていたのか」
「あ、いや、大体がそれのことだけど。あん時は濁して言ってた」
「ほーっ、コウタにも羞恥心があったかっ」
「今もハズいって」
「裏通りや獣舎でコトをなせるのに、ここで恥ずかしがってどうする」
「それとこれは……だってさ、こいつ人が来ないって思えば来ないって言うから」
「ほぉー聖愛の勇者殿。そちらも詳しく聞こうかの」
「コウ、余計なっ」
「だってさー」

一通り話終えると、アンは思案すると隣の書斎へ籠った。
そして、俺はまた訓練所に向かっていた。
セミに一つ確認したいと言われたからだ。
魔法について。
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