俺は異世界召喚された『セイジョ』として。

田子タコ

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のんびり高速移動旅

064、岩と雑草 8(存在意義)。

ジララの家の一部屋に泊まった。
客室として用意しているので、ベッドは二つ。
ドワーフサイズではなく、こちらの一般サイズらしくセミダブルとかの、シングルよりデカいベッド。
リンが寝るには丁度いいが俺だけだと広いと感じてしまうやつ。
そんな部屋を割り当てられ、別々のベッドで寝ていると、下半身に訪れた感覚に覚醒させられた。
「んっ……リン……」
いつも感じているこの手腕はめちゃくちゃ心地いいもので、手触りのいいリンの髪に手を伸ばして、快楽を享楽する。
だが、その時、ここがどこかを理解して飛び起きた。
「待ったっ!ここジララんち!」
「あっちも楽しんでいるんだ、いいだろう」
「いやっ、それは違うだろ……んっ?どうした?」
その言葉の言い方にトゲがあるような気がして、リンの顔を覗き込んだ。
「何でもない」
「んな顔して、何でもないとかないし」
ザ・精悍イケメンの眉間に皺を寄せて、困っているような、怒っているような、はたまた泣く直前の子供のような、なんとも形容しがたい表情。
「……コウ、お前にとって、俺は?」
「待て、まずはそこから手を離せ」
少し重くなりそうな言葉を吐かれたが、息子をホールドされては、人質を取られてるような気もするので、離させるとズボンを履き、イムリンを探した。
イムリンはベッドの端に、いつものようにペタを乗せたまま寝ているような雰囲気でいるので、ペタを起こさないようにイムリンに触れると息子と体の熱は冷めた。
そんな俺の様子を見ているようで見ていない、焦点が合っていない目線で見ているリンの居ずまいを正させた。
もしかしたら、臨戦態勢なのかと下を見たが、リンの下半身は高ぶっている様子はない。
「リン、おい、俺が見えてるか?」
「……見えてはいる」
「こっち見ろ、俺ここ」
なぜそんなことを言ったのか分からないが、その言葉に反応するかのように徐々に焦点が合っていく。
「……コウ」
「どうした?」
「……俺の存在意義が分からなくなった」
しばらく、こちらをじっと見てから放った言葉に疑問符が頭の上に浮かんだ。
「んっ?お前はお前だろ?」
「それは知ってる。ではなくて、コウにとっての俺の存在意義だ」
「それは……」
「これで二組目だ。お前がキューピッドやらをしたのは、お前がいなかったら、二組の伴侶は生まれなかったかもしれない。それはいい。だが俺はそれを心から喜べない、反対に冷めていく」
「……」
色々と頭を過るが、言葉にはならなくて口をつぐんだまま次の言葉を待つ。
「俺の気持ちを放っているコウが、また誰かをくっつけるのをどんな心持ちで見ていればいい?」
次第にリンの顔が見れなくなって、下を向いた。
「もう一度、いや何度でも言う、俺はコウタを愛している。伴侶になって欲しい」
その言葉に前と違って、言われる度に心臓をギュっと鷲掴まれたような感覚と嬉しさのような昂揚感を感じるが、頷くことは出来ない。
「……俺は帰るんだ、あっちに」
「なぜ?確かにクエントと話している時の話の内容は全て向こうのことだが、クエントは帰りたくないと言ってる場所だぞ。コウもいい思い出はないように思う。そんな場所に帰るのはなぜだ?」
ぶっちゃけ、クエントと同意見なのだ。
あっちに帰っても、こっちを思い出を糧にそれこそ死んでるかのように生きていくだけだろう。
「……いい思い出はなくても、それこそ帰ったら作ればいい。こっちで性格的には変わったし、帰ったら今までの分も楽しめんじゃない」
「コウ?」
リンに頬を優しく挟み込まれ、上向かせようとするのを手を掴んで阻止しようとしたが、うまくいかず顔を上げさせられた。
「コウ、何がお前をそんなに意固地にさせているんだ」
先程までの表情は消え、いつものカッコいいリンの表情に戻っている。
こいつはこの顔がいい、それこそ凜としていて、どこを向いても粗を見付けることが出来ないカッコ良さ。
「帰る。俺はそう決めてんの」
俺はそう自分にも植え付けるように言った。
「……俺は帰ってほしくない。この命が果てるその日まで一緒にいて欲しい、伴侶として」
これぞ、プロポーズなセリフを真剣な顔で言うリン。
嬉しいとは思う、だが頭に過るのは、ラリスアット国王その人、リンの将来の姿だ。
あれを奪うことは、俺には出来ない。
今は、聖女としてコイツの隣にいることが出来るが、聖女の役目を終えたら、魔法もまともに使えない、それこそただの人だ。
卑下しているとも言えるが、実際そうなのだ。
それこそセミのような魔法剣士とかだったら、クエントのようなドラゴンでダンマスとかなら、少しは胸を張れるのかもしれないが、そうではない。
小さな子供でも魔法が使える世界で、まともに使えず、補助してくれる精霊さえも寄り付かない異端児。
ある意味、この世界に俺は不必要だとも言われているような気もする。
聖女としての役目を終えたら、出ていけと。
存在意義がないのは、『セイジョ』が無くなった後の俺の方。
「コウ、教えてくれ。なぜそんなにも……俺では駄目なのか?」
「違う、お前じゃない、俺じゃダメなんだ、俺じゃ……」
言う気もなかった言葉が出てしまい、俺は自分で自分の口を塞いだ。
「コウがダメって、どういう……」
その後の言葉を言わせないように、俺はリンに口付けた。
リンも一瞬固まった後、受け入れ、俺たちは交わった。
何も考えないようにと思ったが、聖女体質ではどんな激しいものも心地好い快楽として受け入れることが出来てしまう。
だから、俺はリンの上に跨がり、自分から激しく腰を蠢かした。
なるべく考えないように、動くことだけに集中した。

それから数回こなし、一息付いたときにイムリンの掃除が始まり、それで熱が冷めたので、終わらせた。
細部まで掃除してくれてるイムリンが体を這い回るのも、リンも慣れたようで早くも寝ていた。
少しだけ寝るのが遅かった俺は、リンの寝顔と寝息に胸の辺りがほわっと温かくなったまま寝付いた。
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